鈴木聖也は、あたし(渡辺愛華)のとなりの家に住んでいる幼馴染(?)の亡命宇宙人。
秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
秋のある日、駅で暴漢に襲われ、学校では食堂の工事現場の鉄骨に潰されそうになるけど、聖也が時間を止めて救けてくれた。
犯人は、なんと、これまた幼馴染(?)の吉永紗耶香。紗耶香も宇宙人で、聖也を抹殺するために、あたしを殺そうとした。
あたしは聖也の命の素になる宇宙エネルギーを、聖也に合うように変換できるから。
そのために殺されそうになり、救けられもしたんだって……でも、それだけ?
南先生は、中学であたしたちの社会の先生だった。
だったというのは、この三月で辞めて大学にもどっていったから。
エジプト考古学が専門で、授業中もよく脱線してミイラの話とかしていた。
若いくせにオッサンの臭いが濃くて、最初はだれも「この先生はハズレ」と思った。
だけど授業になると俄然おもしろい。
「立ちションすると、オシッコが地面に着くまでに凍っちゃうのが南極。途中で蒸発するのがエジプト。で、これが凍ったオシッコを型どりしてシリコンで作ったの、こっちが蒸発したオシッコを瓶詰にしたの」
と氷雪気候と砂漠気候の違いを目に見えるかたちで爆笑とともに教えてくれた。むろん南極でオシッコしても、そんなに早くオシッコは凍らないし、エジプトでそんなに早く蒸発することもない。でも導入というか興味を持たせるのはうまい。
体育祭では劣勢な白組(運動部の生徒が紅組の半分しかいない)の応援に入り、担当の綱引きを優勝させた。
だったというのは、この三月で辞めて大学にもどっていったから。
エジプト考古学が専門で、授業中もよく脱線してミイラの話とかしていた。
若いくせにオッサンの臭いが濃くて、最初はだれも「この先生はハズレ」と思った。
だけど授業になると俄然おもしろい。
「立ちションすると、オシッコが地面に着くまでに凍っちゃうのが南極。途中で蒸発するのがエジプト。で、これが凍ったオシッコを型どりしてシリコンで作ったの、こっちが蒸発したオシッコを瓶詰にしたの」
と氷雪気候と砂漠気候の違いを目に見えるかたちで爆笑とともに教えてくれた。むろん南極でオシッコしても、そんなに早くオシッコは凍らないし、エジプトでそんなに早く蒸発することもない。でも導入というか興味を持たせるのはうまい。
体育祭では劣勢な白組(運動部の生徒が紅組の半分しかいない)の応援に入り、担当の綱引きを優勝させた。
日本では綱引きの掛け声は「オーエス!」が定番だけど、南先生に指導された白組は「ヘーラーホップ!」と掛け声をかけた。
「ヘーラホップ!」というのはエジプトの掛け声で、ピラミッドを作ったときも、この掛け声だったというのが南先生の説。
で、綱引きは「ヘーラーホップ!」の白組が優勝。白組の生徒も観覧席の先生や保護者も古代エジプトを目の当たりに体感。
「おーい、こっちこっち!」
校門に入ろうとしたら、脇に停まっていたマイクロバスの窓から南先生が手を振っていたのに気づいた。
「ヘーラホップ!」というのはエジプトの掛け声で、ピラミッドを作ったときも、この掛け声だったというのが南先生の説。
で、綱引きは「ヘーラーホップ!」の白組が優勝。白組の生徒も観覧席の先生や保護者も古代エジプトを目の当たりに体感。
「おーい、こっちこっち!」
校門に入ろうとしたら、脇に停まっていたマイクロバスの窓から南先生が手を振っていたのに気づいた。
「ここじゃ駐禁になりませんか?」
「ハハ、中に停めるのは気恥ずかしくってな。きみたちが最後だ、乗った乗った」
バスに乗ると、車内は盛り上がっていた。ヨッコのこと心配だったけど、紗耶香たちといっしょに笑い転げている。
「なによ、その手に持ってるの?」
バスの先客組は、手に手に百均のホコリとりのようなものを持っている。
「ほら、これあんたたちの!」
紗耶香がホコリとりを投げてよこした。聖也はうまくとったけど、あたしのは顔にぶつかってしまった。ドッとみんなが笑う。
「なによ、とりそこなったのが、そんなにおもしろいの?」
「それ、古代ローマの生活必需品!」
ヨッコが活き活きと叫ぶ。
「生活必需品?」
「これ、ガマの穂ですね」
聖也はニオイをかいでいる。またみんなが笑う。
「用を足したあと、それで拭くのよさ」
「なんの用?」
また笑われた。
「用を足すって、トイレに決まってるじゃん!」
「え、うそ!?」
あわてて放り出したのを、南先生がキャッチ。
「大丈夫、まだ未使用だから」
「ハハ、中に停めるのは気恥ずかしくってな。きみたちが最後だ、乗った乗った」
バスに乗ると、車内は盛り上がっていた。ヨッコのこと心配だったけど、紗耶香たちといっしょに笑い転げている。
「なによ、その手に持ってるの?」
バスの先客組は、手に手に百均のホコリとりのようなものを持っている。
「ほら、これあんたたちの!」
紗耶香がホコリとりを投げてよこした。聖也はうまくとったけど、あたしのは顔にぶつかってしまった。ドッとみんなが笑う。
「なによ、とりそこなったのが、そんなにおもしろいの?」
「それ、古代ローマの生活必需品!」
ヨッコが活き活きと叫ぶ。
「生活必需品?」
「これ、ガマの穂ですね」
聖也はニオイをかいでいる。またみんなが笑う。
「用を足したあと、それで拭くのよさ」
「なんの用?」
また笑われた。
「用を足すって、トイレに決まってるじゃん!」
「え、うそ!?」
あわてて放り出したのを、南先生がキャッチ。
「大丈夫、まだ未使用だから」
先生は、そう言ってニコニコとガマの穂を渡し直してくれた……!