真凡プレジデント・31
大阪の高校でイジメがあった。
SNSを使った執拗で陰湿なものだったらしい。
被害者の生徒は不登校になるが、学校は認識が甘かったのか、マスコミが取り上げる事件になってしまった。
学校名は伏せられているので、ひょっとしたら、その学校の関係者でも知らない人が居るのかもしれない。
「初期対応のまずさだろうね……そのうち、みんな知るところになって……見えるようね、こじれるのが」
朝ごはん食べながらのお姉ちゃんの感想。
この三月まで女子アナだったお姉ちゃんは、ニュースなんかで日常茶飯にこういうニュースに接して来ているので、こういう事件の行方は予想が付くようなのだ。
「ニュースになるまでは何か月もほったらかしといたんだろうね……」
後の言葉は呑み込んで、チャンネルを変える。どこだかの知事がセクハラをやって進退窮まる……米軍の戦闘機が不時着……アイドルが二十歳のお誕生日……パリで万博のプレゼンテーション行われる……この夏のファッション……。
くるくる切り替わっているうちに、わたしはタイムリミット。鏡でササッと髪とリボンを整えて、行ってきまーす!
さっきのニュースの切れ切れ、夏のファッションが気になってスマホで確認しようと思ったのは、うまく空いたシートに座れたからなのかもしれない。
え…………ネットニュースが飛び込んできた。
――昨春の入試でミス、本当は合格していた――
そんなニュースで手が停まってしまった。
だって、出てきた学校名は、なにを隠そう、わが都立中町高校なのだ。
こんな噂は聞いたことが無い、中町高校入試ミスで検索してみる。
次の駅で下りなければならないところで概要が分かった。
昨春と言えば、わたしたちが受けた入試だ。
それだけでも気持ちが悪いのに、入試ミスで落ちた本人は、こう言っている。
――本当は、わたしが合格していた。ずっと言ってきたのに学校も教育委員会もなしのつぶて。だから訴えることにしました――
これは、大阪のイジメ問題と同じ……それ以上にこじれた問題になるかもしれない。
☆ 主な登場人物
- 田中 真凡(生徒会長) ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
- 福島 みずき(副会長) 真凡たちの一組とは反対の位置にある六組
- 橘 なつき(会計) 入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
- 北白川 綾乃(書記) モテカワ美少女の同級生
- 田中 美樹 真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
- 柳沢 琢磨 対立候補だった ちょっとサイコパス
- 橘 健二 なつきの弟
- 藤田先生 定年間近の生徒会顧問
- 中谷先生 若い生徒会顧問