大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・130『新総裁と文化祭の進行台本』

2024-09-29 12:03:32 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
130『新総裁と文化祭の進行台本』   




 ああ、今度もかぁ……


 おとつい学校から帰るとお祖母ちゃんが居眠りしていた。

 魔法少女だって風邪をひく、ましてお祖母ちゃんはとっくに現役を引退して、その後も再任用やら嘱託で余計に勤めて、やっと現場から離れた。

 でも、やっぱり時どき――応(こたえ)さんじゃなきゃ務まらない!――と言われて、しぶしぶ臨時の仕事に出かけていく。

 どうも、政府がボンクラだと仕事が増えるらしい。

 ナンチャラ眼鏡の総理大臣が辞めるんで、お祖母ちゃんは総裁選挙を楽しみにしていたらしい。

 お祖母ちゃんは、長年の勘で日本初の女性総理になると予想していたんだ。Tさんが総理になると、初の女性総理というだけじゃなくて、魔法少女の仕事が減るらしい。

 あ、そうそう。お祖母ちゃんは開票を見ているうちにうつらうつらして寝てしまったんだ。一回目の投票でTさんがトップになったんで、ちょっと気が緩んだんだね。

 で、わたしが玄関を開ける音で目が覚めて。ちょうどSNSでは株式やら円相場のニュースをやっていたんだ。

 モニター代わのテレビでは、総裁選の結果を受けて円高になったことやら日経平均が2000円も下がったことを報じていた。

 高校生のわたしには、よう分からんけど、この円高と株安はネット民からゲルと呼ばれているIさんが、決選投票のどんでん返しで総裁に選ばれたかららしい。

 まあ、お祖母ちゃんも年だ。思い込みが強くなってるんだろうね。

「なんか、大変だねぇ……」

 気の無い返事をして二階に上がった。

 文化祭の進行台本を書かなきゃいけないんだ。

 なんせ、クラスの女子24人がウェディングドレス着て、それをショーに仕立てるんだ。工夫が居る。

 体育館のステージも考えたんだけど、全員が並ぶのは、ちょっとキツイ。

「照明も音響も貧弱だからねぇ」

 演劇部の牧内さんも舞台は勧めない。「登場は、それこそ新郎新婦入場!」って感じで、ゆっくりやってもサマになるけど、大勢の花嫁が退場するのが大変で、次の取り組みに影響が出る。

「それに、ウェディングドレスってインパクト強いから、写真撮ったり人が集まったりで大変だと思うわ……」

「ああ、そうか……」

 いっしょに相談に行った真知子やたみ子も――さもありなん――と腕を組む。

「フォークの集いやクリスマスでも大変でしたよねぇ」

 アイデアマンのロコも、すぐにはプランは浮かばない。でも、フォークの集いやクリスマスをやったことは、みんなの自信にもなっている。大変だとは思っても音を上げることはない!

「そうだ!」

 やっぱり牧内さんが声を上げた。

「校舎エリアからグラウンドになるところに段差があるじゃない!」

「「「「「あ……ああ!」」」」」

「そうだ、あそこがいいわよ!」

 校舎エリアからグラウンド下りるところは階段とスロープになっている。球技大会の時なんかには、あそこが自然な観客席になってみんなで観ていた。体力測定の時は踏み台昇降とかもやってたしね。

「そうですよ! すぐ後ろの校舎には保健室がありますから、あそこを通らせてもらって、いったんグラウンドに下りて、バージンロードを歩いて階段上って、境目のところに並ぶんですよ! そうだ、ブラバンに頼んでウェディングマーチとかやってもらうのもいいですねえ! あ、そうなると、新婦の父親役がいりますよ!」

「そうね、新婦が一人で歩いちゃさまにならないかも!」

「でもでも、ファッションショーのノリなら、大勢ウェディングドレスが並ぶわけですからぁ」

「希望者だけとか?」

「父親役が入るんなら、新郎とかもいるんじゃない!?」

「ええ、新郎!」「キャー」「ウワァ!」「照れるぅ!」

 いやはや賑やかになるばかりで、話がまとまらず。けっきょく、場所だけ決定して、当日の進行はわたしが台本を書くことになったわけ!

 
『めぐり、わたしこれから仕事に行くからぁ!』


「ええ、そんなの聞いてないよぉ!」

『緊急の任務よ! 晩ご飯は自分で調達してちょうだいね!』

 お祖母ちゃんの思い込みはソッコー現実になってきた。


 久々にコンビニに行ってお弁当やらお菓子やらを買う。


「袋、どうなさいますかぁ?」

 しまった、エコバッグ忘れた。

「すみません、袋下さい」

 5円の中で間に合うかと思ったら入りきらなくて10円の大になる。

 ああ、これも総裁選挙で落ちたK君せいだ。

 ちょっと恨めしくなって、すっかり日の落ちた道を帰っていった。


 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  





 

 
 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 魔法少女なんかじゃねえぞ ... | トップ |   
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説」カテゴリの最新記事