俺が死んでからのまりあはずっと一人暮らしだった。
十四歳の女子中学生が、いきなり一人になり、十七の歳まで暮らしてきたんだから、妹ながら大したものだと思う。
でも、やっぱり無理をしているところがある。
無理は歪になって現れる。
予期しないアクシデントが起こると、持ち前の瞬発力でねじ伏せてしまうのがまりあの行動パターンというか性癖なんだ。
例えば、クラスでイジメられている子がいたとする。
見て見ぬふりをするのが普通なんだけど、まりあは出しゃばってしまう。
授業中に回ってきたメモを見て顔色を変えた男子がいた。
「ちょっと、見せなさいよ!」とふんだくってしまう。
手紙の内容は、その男子に対する当てつけや脅迫で、マリアは読んだ瞬間にブチギレた。
「ウザったいことすんじゃねーよ!」
切れたまりあというのはド迫力で、イジメ犯どもは分かりやすくビビってしまう。
「テメーかああああああ!!」
まりあはイジメ犯どものところにダイブしてボコボコにしてしまった。
こういことが三回も続くと、良くも悪くも、まりあはクラスどころか学校から浮いた存在になってしまう。
まりあの周囲からはイジメとか授業妨害は無くなったが、まりあ本人は孤立してしまった。
だれもまりあに逆らったりしないが、心許せる友達もいなくなってしまった。
もういいや、仕切り直しだ!
まりあは親父の誘いに乗り、対ヨミ戦闘用ロボットに搭乗するために特務師団のベースにやってきたのだ。
今度こそいい子にしていよう!
で、新しい第二首都高でもやってしまった。自分にちょっかいを出してきた男子三人をフルボッコしてしまったのだ。
――もう、これっきりにしよう……。
心に誓って家に帰ると、アンドロイドのマリアが汗だくになって立ち働いている。
「なに忙しそうにしてんの?」
「忙しいの! まりあはどうして始末しとかないのかなー」
大きな段ボールを三つも抱えて、マリアはエレベーターの方へ急いでいった。
「なんなのよー!?」
家に入って驚いた。廊下と言わずリビングと言わず自分の部屋と言わず、段ボールの引っ越し荷物で溢れかえっている。
「あ、荷物きたんだー!」
着替えるのもそこそこに、まりあは引っ越し荷物をほどいていった。
「ちょっと、なにしてんのよー!?」
「え、荷物片づけてんだけど……」
「それは片づけているとは言わないの! 散らかしてんじゃないのよ!」
「なによ!……てか、微妙に無いものがあったりするんだけど……」
基本的にまりあはサバサバした性格なんだけど、物を捨てられないという悪癖がある。
なんとかしろよなーと仏壇にも入れてもらえず、ベッドの小物入れにイレッパにされた俺は思うんだけど、散らかりまくった荷物を見て気が付いた。
まりあのガラクタは、俺たちがリアルな家族であったころのアイテムばかりだった……。