大橋むつおのブログ

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ライトノベルベスト『宇宙人モエの危機・3』

2021-05-30 06:20:59 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『宇宙人モエの危機・3』  




 グァムの日本臨時政府は、戦後の日本国史上初の防衛出動を自衛隊に命じた。

 国内の自衛隊は、今やおそしと出動準備を整えていたが、命令無しの出動はできないと自粛していたのである。

 帝国陸軍そっくりの宇宙軍は専守防衛の名の下に、自らは一発の弾も撃たなかった。全ての戦いを語ることは不可能なので、その幾つかを紹介するに留める。

 まず、国会周辺を中心に戦闘が開始されたが、これがまったく勝負にもなにもならなかった。大は10式戦車から、隊員が撃ち出す小銃弾にいたるまで、宇宙軍は全てを無力化して撃ち落とした。

 千代田区界隈は、またたくうちに、不発弾と化した砲弾や銃弾ミサイルで埋め尽くされた。

 日米安保条約により出動した米軍も例外ではなかった。巡航ミサイルでさえ、故障したラジコン飛行機のように、ドスンドスンゴロゴロと撃ち落とされた。

 二日目に入り、自衛隊は肉弾攻撃を仕掛けてきたが、ことごとく三八式小銃の餌食になった。三八式小銃に撃たれた隊員は死にはしない。ただ昏々と眠り続けるのである。すぐに救護隊が昏睡者を収容するが、18000人を超えたところで、その無駄な攻撃を知り、米軍を含め、戦闘を中止した。

「どうだ、これでいいだろうモエ。一滴の血も流さず、膠着状態に持ち込んだ。いずれやつらは根負けする」

「いったい、あたしはジョ-ンズにどんな救援依頼をしたの?」

「覚えてないのか、助けてと叫んだのを?」

「叫んだとこまでは覚えている」

「だから、モエが集めたデータを基にして、我々はできるだけ目立たず、もっとも効果的な方法で日本を含む極東の安定化を図りにきたんだ」

「目立ちすぎなのよ!」

「それは、モエの勉強不足だ」

「それに、あたしは『時をかける少女』の真琴みたくなりたかったの!」

「それは、無理だな。われわれにも時間を自由に操ることはできないからな」

 お父さん犬が言った。

「報告します。周辺諸国が日本の無力さを知り、周辺の島々を攻撃準備中であります!」

 ビートたけしが報告に来た。

「連合艦隊の出撃だ!!」

 ジョーンズは怪気炎をあげた。

 まず、対馬沖で戦闘の火ぶたが切られた。

 相手国は、空対艦ミサイル、艦対艦ミサイルを撃ち込んできたが、連合艦隊の空母赤城、加賀などから発進したゼロ戦によって、全ミサイルが無力化され、虚しく海中に沈んだ。

 連合艦隊を襲った戦闘機や攻撃機は、対空射撃により実物大の模型に変えられ、これもパイロット達は緊急脱出以外に手が無くなった。

 トチクルった某国は、核ミサイルを撃ち込んできたが、大和の46サンチ砲をまともにくらい、発射直後に角砂糖ミサイルに変わり、辺り一面に角砂糖をばらまいて、飢えた民衆に喜ばれた。

 隣国では、自国軍隊のあまりの不甲斐なさに、各地で暴動が起こり、事実上、国は五つほどに分裂。

 また、ある国では国家が崩壊し、多数の難民が出たが、宇宙軍は、難民と分かった時点で、船や飛行機を模型に変えてしまい。難民達は移動することも出来ず。極東地域は、日本以外ほとんど無政府状態になってしまった。

「これでいいのだ!」

 マッカーサーに化けた宇宙軍最高司令官ジョ-ンズは、厚木基地に降り立った飛行機にコーンパイプをふかしながら呵々大笑した。

「困るよ、ジョ-ンズ。極東はめちゃくちゃだよ!」

「極東は、元来メチャクチャなのが普通の姿なのだ。その中で一人日本だけが平和を謳歌する……日本人の理想じゃないか。モエ、おまえの報告も、救援依頼も間違ってはいなかった。あとはよろしく任務に励み給え」

 そうカッコだけつけると、降りてきたばかりのダグラスに乗って行ってしまった。

 モエは、あそこで階段から落ちなければ……と、後悔した。

   おわり   


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