<河童考>から
前回は<天狗による神かくし>から面白そうなところを拾い読みしてきたが、日本民話の代表的な存在として「河童」も長い間語り継がれてきた。
今回は、全国で採集されたたくさんの民話の中から、めぼしいものをいくつか紹介してみよう。
<1974年、すっぽりと雪に閉ざされた富山の利賀村に探報に入ったが、そのとき同行の金沢市在住の作家かつおきんや氏から、公害を告げに来た河童の話を聞いた。
ところは福井県大野郡和泉村で、この村は、かつおさんが女子学生を連れて村へ入るとすぐ、朝日宗太郎さんから縁先へたずねてきた河童の話を聞き、それからは会う人ごとに河童が耕運機の刃が川へ落ちたからとってくれと頼まれたからとってやったら、魚をお礼に持ってきたなどと聞かされたのだという。
*だれが主体かわからない話だが、これも民話ならではのことだろう。
三日目に会った三島重馬さんは、河童は人間の赤ちゃんそっくりで、川の中の岩棚にちょこんと腰かけてわしをじいっと見ておった。人間と違うとこちゅうたら頭に皿みたいもんを乗せとるだけで、髪の毛も赤ちゃんそっくりやった。あんたら、もう十年早う来たら見せてやったのに、その岩棚は九頭竜ダムができたために水面上に上がってしまったそうで、あいつ今ごろどうしておるやらと重馬さんは嘆いたという。
さて、公害を告げる河童の話は、この九頭竜川に関わる話なのであった。ある夜のこと、村の人は河童が悲しい声で「川の水をかえてくれ、水がおとろしい」と訴えるのを聞いた。そこで村人たちは川を見に行ったが九頭竜川は青く澄んで何の変りもない。ところが河童は「もう住んでおれん」とまたもや言ってくる。とりあわずにいるとある夜河童たちは雨の中を立ち去って行った。
それから二年たったある日、九頭竜川の上流の鉱山からカドミウムが流れ出して田が汚染されているので云々と、県から村長に呼び出しが来た。というのもある村人が何気なく河童の話をしたところ、聞いた学生が九頭竜川の水を検査に持ち込んで、汚染が発見されたのだという。村人は今さらながら申し訳なく、山へ登って河童に謝ったところ、霧の中から悲しい声がした。「百年たったら帰るさかい、水をきれいにしといてくれえ」。(話者は谷直右衛門さんときいた)
(つづく)
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