つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

2017年02月10日 | 小林古径

 

いつもは画集をパラパラとめくる程度の私ですが、今回は久しぶりに本を一冊読みきりました。

「小林古径」

作家藤森順三の著書です。

昭和19年、石原求龍堂からの出版。

70年前の本がどうしてこの本棚にあるのか??それさえもわかりませんが、なかなか魅力的な内容でした。

 

古径の作品を先日このブログでご紹介させていただきましたので

その内容には触れず、私がとても感動した文章を一部抜粋させていただきます。

 

セザンヌが懸命になって写実に苦しむのは林檎そのものを再現しようとしてではない。

かれは、林檎と必死に取り組むことによって個性を試そうとするのである。

個性とはなにか?個性は作品に向かって己を試みることによって刻々と発見され

築きあげられ、成長するものだ。人には無論わからず、自分にも分からないのが個性というものの本態である。

あらゆる芸術家は作りながら己を知り、己を確かめ、己を育てあげていくものなのだ。

よい絵というのは個性のあらわられた絵に他ならぬ。

作者の個性がいかされていない、よい絵というものはない。

それなら、個性が表れたりあらわれなかったりするのは何によるか?

素朴さの有無によるものである。

すぐれた芸術の持っている力は素朴さというものの持つ力に他ならぬ。

 

 

素朴さとは素直さ、誠実さ、真心という言葉にも置き換えられるのかもしません。

素朴さ。

今の私には特に、簡単でいて、とても難しい深い言葉です。

 

 

 

 

 

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