つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

小林古径

2023年03月24日 | 小林古径
画商という仕事、仲間には、いろいろな方がいらしてお付き合いの難しいことも多くありますが、ただ、画商さんの眼は素晴らしいな、よく頑張っていらっしゃるなと思えるのは、例え全体の相場は下がっていても、変わらず速水御舟、小林古径、村上華岳作品を日本画の最高峰と位置づけ、皆で評価し合っている点だと感じています。

一般の方にも既にお馴染みの作家名ですので、例えば小林古径の作品を持っているとお伝えすれば、「凄い」と反応をお返しくださることも多いと思いますが、では、何が凄いのか?もちろん、時代背景やその作品の美術史的な位置づけとは別に、その作品自体にどんな魅力があるのか?を考えると、コレクターさんはもちろん、画商であっても首を傾げることがあるように思うのです。





仕入れた時に入っていた額ではなく、昨日、元々の色紙用の額にこの古径作品を入れてみました。





すっきりと日本画らしい作品となりました。

こちらの額に替えて、しばらくこの作品をご覧くださいましたご婦人のお客様が
「今の私には何だかとても厳しい作品に思えてきました」とおっしゃってくださいました。

このお客様は既に日本画を数点お持ちでいらっしゃいますが、ご主人様は洋画がお好きでいらっしゃいますので、
古径の作品を例えば購入のご検討に真剣にご覧いただくことは今までご経験がなかったことだと存じます。

「きびしい」

まずそのお言葉をお聞きでき、驚きました。そして、驚いたと同時にホッといたしました。

何を描かせても古径の作品は大変厳しいのですね。

「張り詰めた緊張感」と言えるものだと思います。

特に、色紙縁に入ると、その古径の作品のきびしさが強く表れてきます。


張り詰めた緊張感→そして、かなりの時間を費やして、やがて岩菲ののびのびとした明るさという順に作品の味わいが変わってくると思います。





何度か書かせていただきましたが、古径作品の素晴らしいのは、こちらが見たいと思わない時には、すっかりその作品の存在感を
消してくれる、私たちを気持ちよく素通りさせてくれるところです。

それでいて、こちらが見たいと思う時には、元気づけたり、何かをくれたりするのでなく、ただほのかに「そばに居ます」と
いう気配を届けてくれるのです。

それは日本人の伝統的な精神性を最も気高く表現するものであると私自身は考えています。










近代日本画、特に関東画壇の作家作品を東海地方でご覧いただく機会は随分減ってきてしまっているように思います。

こうした作品を皆さまに評価していただき、お納めさせていただくのにも時間を少し要するかもしれません。

けれど、せっかく、先程ご紹介させていただいたご婦人のように、作家の名前に頼るのでなく、今のご自分の眼とお気持ちできちんと作品をお感じくださり、評価してくださるお客様が当店にお通いくださるのですから、温かな希望を持ってこれからもこうした作品たちをご紹介していきたいと思っています。




小林古径 額 色紙 岩菲 がんぴ 東美鑑 26.9×23.9㎝
950,000

















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