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「まあだだよ」
監督 黒澤明
主演 松村達雄
戦中から戦後にかけての、作家内田百間と弟子たちの交流を描いた黒澤監督の遺作。と同時に、演出補佐で名を連ねる本多猪四郎監督の遺作ともなった作品。その意味で、僕にとっては特別な意味のある作品です。
公開当時にも映画館で見ましたけど、今回改めて見直して、ようやくこの映画の真価が分かった気がします。何も語らない、全然ドラマチックな展開にならない。淡々と日常生活を追いかけていくだけの映像から滲み出す、何とも言えないおかしみ。
ラスト近く、喜寿の祝いで体調が悪化した主人公は、出席者みんなに頭を下げながら退場しますが、その姿が黒澤監督にだぶって仕方がありませんでした。
監督は、教え子達に、更にその後に続く後進達に、頭を下げてお礼をし、された方は敬意を込めて「仰げば尊し」を歌い、送り出したのです。
記事のタイトルは、その祝いの席での挨拶の一節。この後、「見つけたら、そのために努力してください」と続きます。
若い人には退屈なだけの映画かもしれないなあ、と思いつつも、しっかり堪能させていただきました。
歳を取るのも良いものです。