とはずがたり

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線虫において神経興奮は寿命を短くする

2020-03-13 17:42:29 | 神経科学・脳科学
線虫では神経系の制御が寿命と密接に関係していることが知られていますが、この論文で著者らは神経興奮(neural excitation)が線虫の老化とともに高まり、神経興奮を(特にglutamatergicあるいはcholinergic neuronsにおいて)抑制すると(例えばイベルメクチンでglutamate-gated chloride channelsを抑制すると)寿命が延びることを明らかにしました。驚くべきことにヒトにおいても神経興奮を抑制する転写因子RESTの発現が長寿者では上昇しており、RESTノックアウトマウスでは神経興奮が促進し、寿命が短い傾向にあることが明らかになりました。また線虫におけるREST othologであるspr-3およびspr-4を欠損させると神経興奮が高まり寿命が短くなること、これらの転写因子の下流にはFOXO1(哺乳類)およびDAF-16(線虫)が存在することを示しました。
私は以前から加齢に伴う運動器障害の根底には中枢神経の問題があると考えておりますが、寿命の制御においても中枢神経興奮が重要な役割を果たすことを分子レベルで示した本論文は極めて重要な意義を有すると思います。 
Nature. 2019 Oct;574(7778):359-364. doi: 10.1038/s41586-019-1647-8. Epub 2019 Oct 16.
Regulation of lifespan by neural excitation and REST.


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