脳梗塞後に生じる現象として脳浮腫があり、脳圧亢進などを引き起こして脳のダメージを大きくすることが知られています。脳浮腫のメカニズムは血液脳関門(blood-brain barrier, BBB)の破綻による血液の流入と考えられていましたが、この論文で著者らは脳梗塞早期に生じる脳浮腫は、血液流入によるものではなく、阻血によって生じる広汎性脱分極(spreading depolarization)に引き続く血管収縮と、収縮によってできたスペース(perivascular space)への脳脊髄液(cerebrospinal fluid, CSF)の流入が重要であることを極めて詳細な解析から明らかにしました。このようなCSFの流入にはastrocyteに発現している細胞膜水チャンネルaquaporin-4(AQP4)が重要な役割を果たしており、AQP4ノックアウトマウスやAQP4阻害薬投与マウスでは阻血後の脳浮腫が軽減していることも示されました。また実際の脳梗塞患者の病理標本においてもperivascular spaceへのCSF蓄積が認められました。実際の論文は様々な手法やモデルを駆使した膨大なもので、すべては理解できていないのですが、このような現象はおそらく脊髄損傷の場合にもみられるものでしょう。AQP4阻害薬が脊髄の浮腫を軽減し、脊髄損傷による組織ダメージの進行を改善させる可能性があるのではないかと期待されます。
Science. 2020 Jan 30. pii: eaax7171. doi: 10.1126/science.aax7171. [Epub ahead of print]
Cerebrospinal fluid influx drives acute ischemic tissue swelling.
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