哺乳類の性は遺伝子で規定されており、遺伝的な要因によってオスでは精巣、メスでは卵巣が発達します。しかし少なくとも8種類のモグラでは、XX染色体を有するメスが卵精巣 (ovotestis)という臓器を発達させてオスっぽくなる間性 (intersexuality)という現象が見られます。因みにオスの精巣は他の哺乳類と同様です。Ovotestesはovarian part (OP)とtesticular part (TP)に分かれており、testicular partには生殖細胞はないものの、アンドロゲン産生Leydig細胞などは存在します。アンドロゲン濃度が上昇するため、メスは筋肉ムキムキになり攻撃的になります。
さてこのような不思議な現象がどのようにして生じるのかは興味深いですが、著者らはintersexualityを示すTalpa occidentalis (イベリアモグラ)のゲノムの解析から、様々な試行錯誤の末、この現象にCYP17A1, FGF9という2つの遺伝子の再編成 (rearrangement)が関与することを解明しました。イベリアモグラではアンドロゲン合成を制御するCYP17A1遺伝子のtandem triplicationが見られ、これによってエンハンサー領域の二重化(enhancer duplication)が生じてCYP17A1発現が上昇し、アンドロゲン産生が亢進すること、またFGF9遺伝子の染色体内反転が生じており、FGF9の発現が遷延化することでOPにおける卵細胞の減数分裂が遅延し、TPの発達を促すことなどが明らかになりました。同様の変異をマウスに導入すると、それぞれアンドロゲン濃度の上昇、メスのオス化が生じることも示されました。
そもそもどうしてこのような現象が必要なのかは不明ですが、メスの筋量を増加させるためではないかと考察しています。
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