- 今日のおすすめ
①『企業経営の教科書』(遠藤功著 日経文庫)
②『「ISO9004:2018解説と活用ガイド」ISO9001からISO9004へそしてTQMへ』 (中條 武志 編集 日本規格協会発行)
③『2021年度版「日本経営品質賞アセスメント基準書」』 (日本経営品質賞委員会編集・発行 生産性出版/日本生産性本部発売)
- 「企業経営の教科書」を経営の革新に生かそう(はじめに)
紹介本①「企業経営の教科書」については本欄『私の本棚2021.4.27』でご紹介いたしました。
今日は「企業経営の教科書」で確認した“常”と“変”の経営の基本的知識を経営に活かすことを考えてみたいと思います。“学んだ「経営の基本知識」を「経営の革新」に活かすには”について次項で考えてみます。
- 経営革新は“To be”と“As is”から“Problem”を得て“Solution”で実現
【経営革新という問題を「T・A・P・Sフレーム」で解決】
経営革新の問題を簡単明瞭なフレームワーク「T・A・P・Sフレーム」で解決してみましょう。まず“あるべき姿(To be)”描きます。To beは紹介本①「企業経営の教科書」の経営の基本的知識を参考に策定します。次に“自社の現状(As is)”をアウトプットします。As isはTo beの項目を参考にしながら作成します。To beとAs isとのギャップ(課題:Problem)が見つかりましたね。
この課題(Problem)を解決する仕組み(Solution)は紹介本②の“ISO9001からISO9004:2009へそしてTQM;ISO9004:2018へ”がお勧めです。
まずは、ISO9001(品質マネジメントシステム)によりマネジメントシステムの文書化やプロセスアプローチ等QMSの基本に慣れ、次に、ISO9001の「製品・品質のマネジメントシステム」の領域を「経営・組織の品質マネジメント」の領域へ拡大しISO9004(2018:「品質マネジメント-組織の品質-持続的成功を達成するための指針」)に取組み、持続的成長を実現する組織のパーフォーマンスを高めISO9001のQMSを高度化しつつ同時に、ISO的TQMによる新たな価値を創造し、経営目標を達成し経営革新を実現します。
一方、“ISO9001のレベルは卒業している、要求事項には縛られたくない、自由で独自の経営革新をしたい、社内の認定セルフアセッサーを活用したい”と思う場合は紹介本③の日本経営品質賞を仕組みとして使うのもお勧めです。
【QMSとTQM-ISO9004はQMSの長所を生かしながらTQMを目指しますー】
QMS(Quality Management System)は「品質マネジメントシステム」の略です。
TQM(Total Quality Management)は「総合的品質マネジメント」の略です。「変化に対応し、変化を生み出し、持続的な成長を実現する組織能力を構築する方法論(JSQC規格:日本品質管理学会規格)」と定義されます。
QMSはMS(マネジメントシステム)、TQMはQM(品質マネジメント)と読むとより判り易いです。
ISO9001は「製品・サービス品質」を領域とする“要求事項”に基づく認証規恪のQMSです。
ISO9004は「経営・組織の品質」を領域とする“推奨事項(ガイダンス)”に基づく参考指針を示しISO的TQMを指向しています。認証規格ではありません。ISO9001のプロセスマネジメントの外周で同時並行的にISO9004のTQM的プロセスマネジメントを運用することでQMSの長所を生かしたISO的TQMを実行することができます。経営・組織の品質マネジメントを確立し、持続的な成長を実現する組織能力の構築を期待できます。
一方、日本経営品質賞は生粋のTQMです。ISO9004:2018のISO的TQM指向により、二つのTQMは互いに良い所を参考にし合える仕組みになりました。(デミング賞、マルコム・ボルトリッジ賞などもTQMの範疇に入ります。)
【ISO的TQM「ISO9004」と生粋のTQM「日本経営品質賞」の違い】
ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)は国際標準化機構が制定した国際規格です。ISO9001は規格なので、その適用範囲や内容、基準(要求事項)が明確になっており、審査機関の審査によって認証が行われます。そのISO9001を軸に並行的に運用するISO的TQM指向のISO9004は、認証規格ではないので、すべてに一律のルールを適用するのではなく、企業に合った経営・組織の品質マネジメントを構築するという自由度も併せ持っています。
TQMの代表である日本経営品質賞は、もともとQC(Quality Control:品質管理)から発展してきたものです。現在では直接的な品質管理以外のさまざまな範囲に拡張・発展しており、各社の目的・状況に応じた活動内容を取り入れていく自由度の高いものになっています。そのため、日本経営品質賞はより高い自由度を持っていますが、同時に自由度があるがゆえに、特に導入時など、活動のフレームワークを明確にするのに手探りになりがちなのも事実です。
ISO的TQMISO9004と生粋のTQM日本経営品質賞の「似ている部分=顧客満足や品質を高める目的」を軸に、「明確さや自由度などのそれぞれの特徴」を活かすことで、お互いを補完し、企業にとって有益な活動を進めることが肝要です。(日本科学技術連盟H/Pより引用。ISO9004のISO的TQM指向、認証規格ではないことを考慮し筆者が加筆。)
【自由度の高い日本経営品質賞とは-詳細は紹介本③をお読みください-】
日本経営品質賞は、組織プロフィール、8つのカテゴリー、1000点の配点から成る評点ガイドラインから成るTQMです。
経営理論の思考法が強く反映されており、納得性の高いTQMです。ISO9001の領域を拡大しISO9004:2018を運用・推進する際に参考になるTQMです。
- 経営革新のためのTQMは守破離のISO型?独自型の日本経営品質賞?(むすび)
世界的な基準・標準を身に付け(守)次に大いに独自色を入れ(破)更に大きく飛躍しよう(離)と考える守破離型のリーダーは、ISO9001の製品・サービス領域を経営・組織の品質に拡大し運用するISO型TQMのISO9004:2018がお勧めです。自由度が高く独自色を出せる、要求事項に縛られない、社内人材の経営品質協議会が認定するセルフアセッサーを活用する経営革新を指向するリーダーは日本経営品質賞でしょうか。
いずれにしても一番大切なことは、何らかの仕組みに取組むこと、熱意を持って経営革新に取組むこと、そして日々革新を続けることではないでしょうか。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
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