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『「世界と日本経済大予測2022-23」Economic risk to business and investment』
(渡邉哲也著 PHP研究所)
- ネット時代の経済評論家が著す「驚異の的中率9割」の予測(はじめに)
著者は、鋭くストレートな発言、幅広い視点などからYouTube“文化人放送局”の「渡邉哲也show」等で人気を博する、ネット時代の経済評論家です。著者は、ネット以外でも、テレビ・ラジオでの出演、世界経済・日本経済・中国経済に関する多数の著作などで活躍中です。リーマン・ショックや2016年のトランプ大統領当選などを的中させた実績もあります。
ところで、NHK放送文化研究所の国民生活時間調査2020(2021.5.25発表、2020.10調査)によれば、30才未満の世代では、インターネット利用時間がテレビ利用時間を上回ります。TwitterやYouTube等のSNSが社会の主要なメディア・インフラになる時代の到来もそう遠くはないかもしれません。
そんな時代の到来を予兆するかのように、ネット時代の経済評論家が著した経済大予測の紹介本がAmazonでベストセラー1位(国際経済カテゴリー)になっています。
紹介本は2022-23年に予測される50のリスクについて短く論評しています。著者の経済大予測シリーズは2020年、2021年に続く3作目です。2020年では48リスク、2021年では57リスクを論じましたが、2021年本は「脅威の的中率9割」として話題になっています。
紹介本が論じる2022-23年に予測される50のリスクの中で特に注目したリスクを次項でご紹介します。
- 注目のリスクを見てみよう(紹介本の記述を要約引用)
【巨大ダム三峡ダムが台風の流れを変えた-中国近隣の海水温を上昇させた-】
中国は、ダム湖の長さが約600kmの三峡ダムを100万人の住民を立ち退かせて2009年完成させ2012年水力発電を開始した。その結果、中国黄海・東シナ海に流れ込む水の量が減ったことで、温暖化を招き日本の気候にも大きな影響を与えていると言われている。
九州の西側海域は、海水温が26度以上に上昇した黄海・東シナ海に面しており、その結果水蒸気を生み出しそれがエネルギーとなって前線を刺激し、今まで大雨が降らなかった九州山地西側に大雨被害がもたらしている。
また、フィリピンで生まれた台風は黒潮に乗って日本列島に沿って北上するのがかつてのパターンであったが、今は中国大陸に向かうタイプのものが出てきた。
自然環境の破壊が温暖化を招き、それにより九州山地西側の大雨被害や三峡ダム下流域・重慶などの水害、さらには三峡ダムの決壊リスクを生み出しており、温暖化の原因を二酸化炭素だけに求めるのは間違っている。
【アメリカ大統領中間選挙】
2022年11月8日(火)、米国の中間選挙が行われる。上院の3分の1と下院の全議席が入れ替わる。「上院は法律、下院は予算において優越」というのがアメリカの議会構造であるから、重要なのは上院の行方だ。上院にはフィリバスター制度といって、少数党が定員100の内41を取れば法案の通過を止めることが出来る制度がある。上院の60議席を取ってはじめて政権与党が絶対安定多数を確保できることになる。
下院で過半数を維持できるか、上院で60議席を確保できるかが、バイデン政権の残り2年の最大の焦点となる。
民主党にとっては、中間派の人たちがどう動くか、極左の勢力がこれ以上拡大するかが鍵になる。カマラ・ハリスのような極左勢力が必要以上に拡大すると、アンチを生み出して排除に向かうのがこれまでのアメリカの歴史である。そこをトランプ陣営に付け込まれる可能性は十分にある。
【中国のEV市場】
大きな市場として期待される中国のEV市場だが、今後、外国企業の排除が加速度的に進む。2021年4月19日、上海国際モーターショーで展示車両の上に乗り、テスラにクレームへの対応に不満を叫んだ女性の動画がSNSで拡散された事件がその象徴だ。テスラの幹部が「彼女はクレームのプロで、背後に誰かがいる」とメディアに話して、事件が炎上した。このような特殊な中国EV市場に、外国企業は魅力を感じるだろうか。
一方、寒さでバッテリー性能が下がっている時に、駆動系に加えヒーター迄電気で賄うことになると、電欠が起こりやすい。特に寒い中国北部では遭難のリスクがある。
これらの観点から、中国のEV市場は‟宝の山”という幻想は捨てた方がいいだろう。
【次期台湾総統】
米中対立激化で揺れる台湾だが、香港の現状を見た台湾人が中国を選ぶはずがなく、蔡英文総統も日米との強固な関係の維持に尽力し、大きな成果を得ている。国際社会の台湾支持の流れもさらに増えていく。
注目すべきは2024年の総統選挙である。ポスト蔡英文を選ぶ戦いとなる。現時点での最有力候補は、蔡英文と共に内科医としてSARSの抑え込みに尽力した実績を持つ、頼清徳民進党副総裁である。
2020年の総統選で民進党・蔡英文が史上最高の817万票(得票率57.1%)の圧勝を飾り、現在でも高い支持率を誇るため、この勢いを借りて頼清徳が勝つ可能性は十分ある。
【韓国大統領選挙と在韓米軍撤退の可能性】
韓国は朝鮮戦争で戦った相手であり、現在休戦中の中国と「外交と安全保障の2プラス2」を展開している。2021年には6年ぶりに開催する方向で中国王毅外相と合意した(未だ開催はされていない)。中国と準軍事同盟が結ばれる可能性を含んでいる。
Quadプラスにも、NATOプラスにも韓国は参加しておらず、西側との唯一のパイプであるアメリカとの軍事同盟も、中国と手を結ぶのであれば不要になる。
米中さらに北朝鮮にまでいい顔をして、日本にだけ敵意を剥き出しにする、‟7方美人”外交を繰り返すばかり。韓国のふらつきぶりはどこまで続くのだろう。2022年3月の大統領選挙後も、韓国外交の不透明リスクは続く。
【ミヤンマー軍事政権】
ミヤンマーは2021年2月に軍事政権が成立。軍政権は「民主化に戻す」と言っているが、簡単には信じられない。1962年に軍事クーデターが発生し、2011年迄およそ半世紀軍事政権が続いたという過去がある。
中国と軍事政権との繋がりは深く、中国がミヤンマーの地政学上の重要性を認識していることに注意をしておく必要がある。
思い起こすのは、大東亜戦争当時の「援将ルート」である。 当時日本軍に押されて奥地に立て籠もっていた中国・国民党・蒋介石軍を英国などの連合軍がミヤンマー・ルートで武器や物資を供給して支えたのである。中国にとっては戦勝をもたらした縁起の良いルートであり、ミヤンマーを押さえることで、QUADが包囲しようとしている第一列島戦を通ることなく、海へ抜けられるルートを確保できる。軍事政権が早々引っ込んでしまえば、そのルートは断たれる。
そう考えると、ミヤンマーの軍事政権の行方は米中対立の帰趨に大きく影響するパワーがある。
- 予測されるリスクを回避する対策を(むすび)
紹介本が予測する50のリスク、その的中率はともかく、リスク回避のために最適な対応策による備えをしませんか。
紹介本の予測する50のリスクの内、トップの中国に係るリスクは16と32%を占めます。次は日本の15(30%)、アメリカの5(10%)と続きます。やはり注目すべきは日・米・中のリスクですね。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
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