益田川の水は順調に減っていた。
この分だと5連休は全て益田川で竿を出せると期待していた。
入るポイントの候補を幾つか挙げて順序も検討し、仕掛けも複数用意してその日を待っていた。
ところが連休に入る前の木曜の夜半に降雨があった。
最上流域から僕がよく竿を出す流域まで、広範囲にかなり多くの降雨があった。
不安な気持ちを抱きながら就寝前に水位を確認すると既に50cmほど高くなっていた。
朝の目覚めと同時に祈るような気持ちで再度水位を確認すると1m以上高くなっていた。
もう無理だろう。
前週末に80cm高の水況で竿を出したが散々な釣果だった。
釣行先を変えるべきだ。
そう判断せざるを得ない状況だった。
折しも山梨県在住のYさんから桂川を勧める声が上がっていた。
前週末の釣行は降雨で出水があったためかかなり良い釣果を上げていらっしゃった。
桂川で竿を出しているときに出会った釣り師に「岐阜から来た」と告げると決まってこう返される。
「えっ!?ギフ!? なんでわざわざここまで来たの?岐阜の川で釣ればいいじゃん」と。
確かにそう言いたくなる気持ちは分かる。
渓流釣りだけでなく鮎釣りにおいても、全国に名を馳せる名川が複数ある。
そして岐阜県は面積も広い。
ある川で釣りが無理でも別の水系では充分釣りが成立するということは珍しくない。
しかし、今の僕の目当ての岐阜県の川は、数多の名川の中でも益田川だけなのだ。
そしてその益田川では良い釣りは出来ない水況ときている。
尺上の獲れる可能性が少しでも高い川へと考えるとYさんの誘いに乗ろうとう気持ちになってきた。
益田川の水位が落ち着けば恐らく網師は待ってましたとばかりに挙って網を仕掛けるだろう。
その出され方の状況によっては、連休の後半に桂川に行ってみようかと考えていたが、予定を変更して前半に僕は桂川に向かった。
仕事が長引き帰宅が遅れ、自宅を発ったのは真夜中だった。
道中睡魔に襲われて車中で眠ったために、桂川への到着は午前10時頃だった。
Yさんに状況を尋ねたがあまり芳しくないようだ。
桂川を知り尽くしたYさんが苦労しているのだから、僕が竿を出しても更に苦労することになるだろう。
この状況で少しでも可能性のあるポイントをとYさんが勧めてくれたポイントを渡り歩きながら竿を出したが、ヤマメのアタリはない。
アタリが「遠い」ではなく「ない」のだ。
Yさんとともに上下流に分かれて同じポイントに入りもしたが、お互いにかすりもしない。
そんな中、嘗ては良かったんだがとあまり積極的ではない勧め方をされたポイントで奇跡的にヤマメを1匹釣った。
ポイントに向かう途中、遠くから川面を眺めると非常によさそうなポイントに見える。
しかし、近付くに連れそれは落胆に変わる。
川底が殆ど砂で覆われている。
「こりゃあ無理だろう」と思いながらも、他に入るポイントも知らないので丁寧に流していたら、24~25cmくらいの綺麗なヤマメが1匹釣れた。
しかしそれだけだった。
結局午後はYさんもまともな魚は釣らなかった。
桂川を熟知しているYさんをしてこの釣果なのだ。
僕の釣果が貧弱でも仕方あるまい。
その後二人で夕食を共にした後、明朝一番に入るポイントへそれぞれ向かった。
その晩はそれぞれがそのポイント近くで車中泊をした。
翌日目覚めたときはまだ夜明け前だった。
シルバーウィーク真っ只中の桂川には間違いなく首都圏から多くの釣り師が訪れるだろう。
初めて入るポイントだったが、投光器を頭に着けて僕は白み始めた空の下、桂川へ降りて行った。
恐らく平水よりかなり水が高いのだろう。
平水時を知らないためどれくらい高いのか分からないが流れを見ているとそう感じる。
しかし竿が出せないわけではない。
寧ろ、これは絶対に大物が着いているぞというポイントが、Yさんの言った通り次々に現れる。
平水時ならあそこが着き場だろうと思えるポイントはつぶれている。
ならばと思い、段差の後に広がる淵の終端付近、所謂淵尻がいい感じの流れだったため何度か探っていると待望のアタリが訪れた。
間違いなくサケ科魚類のアタリと引きだったが、岸近くに寄せてからの潜行や疾走からこれはヤマメではなくニジマスだろうと踏んだが、案の定35cmくらいのニジマスだった。
取り敢えず脂鰭のある魚、しかも尺上を釣ったのだからまあよしとしようと思い更に探ってみたが、そこでアタリは途絶えた。
少しずつ下流に移動しながら探っていると、掌より少し大きいくらいのヤマメが釣れた。
「間違いなく大物が入っている」とYさんが勧めてくれたポイント。
確かにその通りだと思う。
40cmクラスのヤマメが居ても当然と言える流れだった。
しかし、僕の竿には掛からない。
ポイントを休ませるためにも少しずつ上下流を移動しながら探っていったが、先ほど釣った35cmくらいのニジマスがもう一度掛かってくれただけで狙っていたヤマメの大物には会えなかった。
昼頃にYさんと落ち合った。
Yさんの方も厳しい釣りをされいるようだ。
もう帰ろうかと言い始めたくらいだった。
僕はせっかく岐阜から来たのだし、釣れないなら釣れないで構わないからとにかく可能性のある限り竿を出したかった。
「たぶんね、あそこはニジマスしかいないと思うよ」。
ひとしきり談笑した後、Yさんにそう言われたポイントに僕は向かった。
先ほどポイントを物色しているときに見かけた支流の淵だった。
僕が拝読しているとあるブログの主さんが竿を出しているのは恐らくこの支流の上流部だろうと思えた。
僕は長竿を振りたかったこともあるし、本流から遡上してきたヤマメがいるかもしれないという期待も抱き、そのポイントに降り立った。
ひと流し目は岸寄りの渦を巻いている緩流帯に投餌した。
すぐさまアタリがあったが、尺近いウグイだった。
ならばと思い流れ込み付近の深場に大きめのオモリをかまして投餌すると、またもやすぐにアタリがあった。
間違いなくサケ科魚類のアタリ。
ビシッとアワセをくれるとかなり鋭いシャープな引き。
やっぱり本流から差してきたヤマメが居るんだなと期待して遣り取りしてみるが、すぐさまその引きの主はニジマスだなと落胆した気持ちで思いなおした。
寄せてくるとやはりニジマスだった。
投餌点を変え、立ち位置を変え、流す筋やタナを変えて探ったが、ヤマメは1匹も居ない。
岸寄りを外せば何処を流してもほぼ毎回アタリがあり、その全てがニジマスだった。
小一時間で10匹ほどのニジマスを釣ったところでアタリが途絶えた。
恐らくそこに入っているニジマスを釣りきったのだろう。
釣ったら直ちにリリースしていたのでもしかしたら同じ個体が複数回掛かったかもしれない。
陽が傾き始める頃だった。
時刻は16時に差し掛かるところだった。
真夏の桂川で34cmのヤマメを獲ったポイントが気になった。
Yさんの推察によると、今の時期はそのポイントは期待できないだろうということだった。
「でも分かんないよ。あそこは魚は確実に入っているからね。なんかの加減で食い気が出た奴が居れば一発大物ってこともあるかもしれない」。
その言葉に期待して、夕まずめに思い出のポイントに向かった。
残念なことに、そのポイントは釣りが成立しない状況だった。
どこからか水辺に茂る草が間断なく流れてくる。
恐らく誰かが草刈りをしたのだろう。
糸に纏わりついてまともな流しが出来ない。
アタリも何もあったもんじゃない。
でもさすがに僕ももう気持ちが切れた。
今から別のポイントに移動する気力はなかった。
暮れゆく陽の中、僕は最後まで青々とした草を引っかけ続けて桂川での釣りを終えた。
本当に酷い釣りが続いている。
当日のタックル
竿:ダイワ 琥珀本流エアマスターメタルチューン105M
シマノ スーパーゲームベイシスMH75-80
水中糸:フロロ0.8号
ハリス:フロロ0.6号
鈎:オーナー スーパーヤマメ8.5号
餌:ミミズ、ブドウ虫、イクラ、秘密の餌
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この分だと5連休は全て益田川で竿を出せると期待していた。
入るポイントの候補を幾つか挙げて順序も検討し、仕掛けも複数用意してその日を待っていた。
ところが連休に入る前の木曜の夜半に降雨があった。
最上流域から僕がよく竿を出す流域まで、広範囲にかなり多くの降雨があった。
不安な気持ちを抱きながら就寝前に水位を確認すると既に50cmほど高くなっていた。
朝の目覚めと同時に祈るような気持ちで再度水位を確認すると1m以上高くなっていた。
もう無理だろう。
前週末に80cm高の水況で竿を出したが散々な釣果だった。
釣行先を変えるべきだ。
そう判断せざるを得ない状況だった。
折しも山梨県在住のYさんから桂川を勧める声が上がっていた。
前週末の釣行は降雨で出水があったためかかなり良い釣果を上げていらっしゃった。
桂川で竿を出しているときに出会った釣り師に「岐阜から来た」と告げると決まってこう返される。
「えっ!?ギフ!? なんでわざわざここまで来たの?岐阜の川で釣ればいいじゃん」と。
確かにそう言いたくなる気持ちは分かる。
渓流釣りだけでなく鮎釣りにおいても、全国に名を馳せる名川が複数ある。
そして岐阜県は面積も広い。
ある川で釣りが無理でも別の水系では充分釣りが成立するということは珍しくない。
しかし、今の僕の目当ての岐阜県の川は、数多の名川の中でも益田川だけなのだ。
そしてその益田川では良い釣りは出来ない水況ときている。
尺上の獲れる可能性が少しでも高い川へと考えるとYさんの誘いに乗ろうとう気持ちになってきた。
益田川の水位が落ち着けば恐らく網師は待ってましたとばかりに挙って網を仕掛けるだろう。
その出され方の状況によっては、連休の後半に桂川に行ってみようかと考えていたが、予定を変更して前半に僕は桂川に向かった。
仕事が長引き帰宅が遅れ、自宅を発ったのは真夜中だった。
道中睡魔に襲われて車中で眠ったために、桂川への到着は午前10時頃だった。
Yさんに状況を尋ねたがあまり芳しくないようだ。
桂川を知り尽くしたYさんが苦労しているのだから、僕が竿を出しても更に苦労することになるだろう。
この状況で少しでも可能性のあるポイントをとYさんが勧めてくれたポイントを渡り歩きながら竿を出したが、ヤマメのアタリはない。
アタリが「遠い」ではなく「ない」のだ。
Yさんとともに上下流に分かれて同じポイントに入りもしたが、お互いにかすりもしない。
そんな中、嘗ては良かったんだがとあまり積極的ではない勧め方をされたポイントで奇跡的にヤマメを1匹釣った。
ポイントに向かう途中、遠くから川面を眺めると非常によさそうなポイントに見える。
しかし、近付くに連れそれは落胆に変わる。
川底が殆ど砂で覆われている。
「こりゃあ無理だろう」と思いながらも、他に入るポイントも知らないので丁寧に流していたら、24~25cmくらいの綺麗なヤマメが1匹釣れた。
しかしそれだけだった。
結局午後はYさんもまともな魚は釣らなかった。
桂川を熟知しているYさんをしてこの釣果なのだ。
僕の釣果が貧弱でも仕方あるまい。
その後二人で夕食を共にした後、明朝一番に入るポイントへそれぞれ向かった。
その晩はそれぞれがそのポイント近くで車中泊をした。
翌日目覚めたときはまだ夜明け前だった。
シルバーウィーク真っ只中の桂川には間違いなく首都圏から多くの釣り師が訪れるだろう。
初めて入るポイントだったが、投光器を頭に着けて僕は白み始めた空の下、桂川へ降りて行った。
恐らく平水よりかなり水が高いのだろう。
平水時を知らないためどれくらい高いのか分からないが流れを見ているとそう感じる。
しかし竿が出せないわけではない。
寧ろ、これは絶対に大物が着いているぞというポイントが、Yさんの言った通り次々に現れる。
平水時ならあそこが着き場だろうと思えるポイントはつぶれている。
ならばと思い、段差の後に広がる淵の終端付近、所謂淵尻がいい感じの流れだったため何度か探っていると待望のアタリが訪れた。
間違いなくサケ科魚類のアタリと引きだったが、岸近くに寄せてからの潜行や疾走からこれはヤマメではなくニジマスだろうと踏んだが、案の定35cmくらいのニジマスだった。
取り敢えず脂鰭のある魚、しかも尺上を釣ったのだからまあよしとしようと思い更に探ってみたが、そこでアタリは途絶えた。
少しずつ下流に移動しながら探っていると、掌より少し大きいくらいのヤマメが釣れた。
「間違いなく大物が入っている」とYさんが勧めてくれたポイント。
確かにその通りだと思う。
40cmクラスのヤマメが居ても当然と言える流れだった。
しかし、僕の竿には掛からない。
ポイントを休ませるためにも少しずつ上下流を移動しながら探っていったが、先ほど釣った35cmくらいのニジマスがもう一度掛かってくれただけで狙っていたヤマメの大物には会えなかった。
昼頃にYさんと落ち合った。
Yさんの方も厳しい釣りをされいるようだ。
もう帰ろうかと言い始めたくらいだった。
僕はせっかく岐阜から来たのだし、釣れないなら釣れないで構わないからとにかく可能性のある限り竿を出したかった。
「たぶんね、あそこはニジマスしかいないと思うよ」。
ひとしきり談笑した後、Yさんにそう言われたポイントに僕は向かった。
先ほどポイントを物色しているときに見かけた支流の淵だった。
僕が拝読しているとあるブログの主さんが竿を出しているのは恐らくこの支流の上流部だろうと思えた。
僕は長竿を振りたかったこともあるし、本流から遡上してきたヤマメがいるかもしれないという期待も抱き、そのポイントに降り立った。
ひと流し目は岸寄りの渦を巻いている緩流帯に投餌した。
すぐさまアタリがあったが、尺近いウグイだった。
ならばと思い流れ込み付近の深場に大きめのオモリをかまして投餌すると、またもやすぐにアタリがあった。
間違いなくサケ科魚類のアタリ。
ビシッとアワセをくれるとかなり鋭いシャープな引き。
やっぱり本流から差してきたヤマメが居るんだなと期待して遣り取りしてみるが、すぐさまその引きの主はニジマスだなと落胆した気持ちで思いなおした。
寄せてくるとやはりニジマスだった。
投餌点を変え、立ち位置を変え、流す筋やタナを変えて探ったが、ヤマメは1匹も居ない。
岸寄りを外せば何処を流してもほぼ毎回アタリがあり、その全てがニジマスだった。
小一時間で10匹ほどのニジマスを釣ったところでアタリが途絶えた。
恐らくそこに入っているニジマスを釣りきったのだろう。
釣ったら直ちにリリースしていたのでもしかしたら同じ個体が複数回掛かったかもしれない。
陽が傾き始める頃だった。
時刻は16時に差し掛かるところだった。
真夏の桂川で34cmのヤマメを獲ったポイントが気になった。
Yさんの推察によると、今の時期はそのポイントは期待できないだろうということだった。
「でも分かんないよ。あそこは魚は確実に入っているからね。なんかの加減で食い気が出た奴が居れば一発大物ってこともあるかもしれない」。
その言葉に期待して、夕まずめに思い出のポイントに向かった。
残念なことに、そのポイントは釣りが成立しない状況だった。
どこからか水辺に茂る草が間断なく流れてくる。
恐らく誰かが草刈りをしたのだろう。
糸に纏わりついてまともな流しが出来ない。
アタリも何もあったもんじゃない。
でもさすがに僕ももう気持ちが切れた。
今から別のポイントに移動する気力はなかった。
暮れゆく陽の中、僕は最後まで青々とした草を引っかけ続けて桂川での釣りを終えた。
本当に酷い釣りが続いている。
当日のタックル
竿:ダイワ 琥珀本流エアマスターメタルチューン105M
シマノ スーパーゲームベイシスMH75-80
水中糸:フロロ0.8号
ハリス:フロロ0.6号
鈎:オーナー スーパーヤマメ8.5号
餌:ミミズ、ブドウ虫、イクラ、秘密の餌
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