How many rivers must I cross? I don't know...

幸せになりたくて川を渡る・・・

2015/09/19,20 桂川~釣果も秋仕様

2015-09-20 21:38:48 | 渓流釣り 釣行記(一般)
益田川の水は順調に減っていた。
この分だと5連休は全て益田川で竿を出せると期待していた。
入るポイントの候補を幾つか挙げて順序も検討し、仕掛けも複数用意してその日を待っていた。

ところが連休に入る前の木曜の夜半に降雨があった。
最上流域から僕がよく竿を出す流域まで、広範囲にかなり多くの降雨があった。
不安な気持ちを抱きながら就寝前に水位を確認すると既に50cmほど高くなっていた。
朝の目覚めと同時に祈るような気持ちで再度水位を確認すると1m以上高くなっていた。

もう無理だろう。
前週末に80cm高の水況で竿を出したが散々な釣果だった。
釣行先を変えるべきだ。
そう判断せざるを得ない状況だった。

折しも山梨県在住のYさんから桂川を勧める声が上がっていた。
前週末の釣行は降雨で出水があったためかかなり良い釣果を上げていらっしゃった。

桂川で竿を出しているときに出会った釣り師に「岐阜から来た」と告げると決まってこう返される。
「えっ!?ギフ!? なんでわざわざここまで来たの?岐阜の川で釣ればいいじゃん」と。
確かにそう言いたくなる気持ちは分かる。
渓流釣りだけでなく鮎釣りにおいても、全国に名を馳せる名川が複数ある。
そして岐阜県は面積も広い。
ある川で釣りが無理でも別の水系では充分釣りが成立するということは珍しくない。
しかし、今の僕の目当ての岐阜県の川は、数多の名川の中でも益田川だけなのだ。
そしてその益田川では良い釣りは出来ない水況ときている。
尺上の獲れる可能性が少しでも高い川へと考えるとYさんの誘いに乗ろうとう気持ちになってきた。



益田川の水位が落ち着けば恐らく網師は待ってましたとばかりに挙って網を仕掛けるだろう。
その出され方の状況によっては、連休の後半に桂川に行ってみようかと考えていたが、予定を変更して前半に僕は桂川に向かった。
仕事が長引き帰宅が遅れ、自宅を発ったのは真夜中だった。
道中睡魔に襲われて車中で眠ったために、桂川への到着は午前10時頃だった。
Yさんに状況を尋ねたがあまり芳しくないようだ。
桂川を知り尽くしたYさんが苦労しているのだから、僕が竿を出しても更に苦労することになるだろう。


この状況で少しでも可能性のあるポイントをとYさんが勧めてくれたポイントを渡り歩きながら竿を出したが、ヤマメのアタリはない。
アタリが「遠い」ではなく「ない」のだ。
Yさんとともに上下流に分かれて同じポイントに入りもしたが、お互いにかすりもしない。
そんな中、嘗ては良かったんだがとあまり積極的ではない勧め方をされたポイントで奇跡的にヤマメを1匹釣った。
ポイントに向かう途中、遠くから川面を眺めると非常によさそうなポイントに見える。
しかし、近付くに連れそれは落胆に変わる。
川底が殆ど砂で覆われている。
「こりゃあ無理だろう」と思いながらも、他に入るポイントも知らないので丁寧に流していたら、24~25cmくらいの綺麗なヤマメが1匹釣れた。
しかしそれだけだった。

結局午後はYさんもまともな魚は釣らなかった。
桂川を熟知しているYさんをしてこの釣果なのだ。
僕の釣果が貧弱でも仕方あるまい。


その後二人で夕食を共にした後、明朝一番に入るポイントへそれぞれ向かった。
その晩はそれぞれがそのポイント近くで車中泊をした。




翌日目覚めたときはまだ夜明け前だった。
シルバーウィーク真っ只中の桂川には間違いなく首都圏から多くの釣り師が訪れるだろう。
初めて入るポイントだったが、投光器を頭に着けて僕は白み始めた空の下、桂川へ降りて行った。

恐らく平水よりかなり水が高いのだろう。
平水時を知らないためどれくらい高いのか分からないが流れを見ているとそう感じる。
しかし竿が出せないわけではない。
寧ろ、これは絶対に大物が着いているぞというポイントが、Yさんの言った通り次々に現れる。
平水時ならあそこが着き場だろうと思えるポイントはつぶれている。
ならばと思い、段差の後に広がる淵の終端付近、所謂淵尻がいい感じの流れだったため何度か探っていると待望のアタリが訪れた。
間違いなくサケ科魚類のアタリと引きだったが、岸近くに寄せてからの潜行や疾走からこれはヤマメではなくニジマスだろうと踏んだが、案の定35cmくらいのニジマスだった。

取り敢えず脂鰭のある魚、しかも尺上を釣ったのだからまあよしとしようと思い更に探ってみたが、そこでアタリは途絶えた。
少しずつ下流に移動しながら探っていると、掌より少し大きいくらいのヤマメが釣れた。
「間違いなく大物が入っている」とYさんが勧めてくれたポイント。
確かにその通りだと思う。
40cmクラスのヤマメが居ても当然と言える流れだった。
しかし、僕の竿には掛からない。

ポイントを休ませるためにも少しずつ上下流を移動しながら探っていったが、先ほど釣った35cmくらいのニジマスがもう一度掛かってくれただけで狙っていたヤマメの大物には会えなかった。


昼頃にYさんと落ち合った。
Yさんの方も厳しい釣りをされいるようだ。
もう帰ろうかと言い始めたくらいだった。
僕はせっかく岐阜から来たのだし、釣れないなら釣れないで構わないからとにかく可能性のある限り竿を出したかった。
「たぶんね、あそこはニジマスしかいないと思うよ」。
ひとしきり談笑した後、Yさんにそう言われたポイントに僕は向かった。

先ほどポイントを物色しているときに見かけた支流の淵だった。
僕が拝読しているとあるブログの主さんが竿を出しているのは恐らくこの支流の上流部だろうと思えた。
僕は長竿を振りたかったこともあるし、本流から遡上してきたヤマメがいるかもしれないという期待も抱き、そのポイントに降り立った。

ひと流し目は岸寄りの渦を巻いている緩流帯に投餌した。
すぐさまアタリがあったが、尺近いウグイだった。

ならばと思い流れ込み付近の深場に大きめのオモリをかまして投餌すると、またもやすぐにアタリがあった。
間違いなくサケ科魚類のアタリ。
ビシッとアワセをくれるとかなり鋭いシャープな引き。
やっぱり本流から差してきたヤマメが居るんだなと期待して遣り取りしてみるが、すぐさまその引きの主はニジマスだなと落胆した気持ちで思いなおした。
寄せてくるとやはりニジマスだった。

投餌点を変え、立ち位置を変え、流す筋やタナを変えて探ったが、ヤマメは1匹も居ない。
岸寄りを外せば何処を流してもほぼ毎回アタリがあり、その全てがニジマスだった。
小一時間で10匹ほどのニジマスを釣ったところでアタリが途絶えた。
恐らくそこに入っているニジマスを釣りきったのだろう。
釣ったら直ちにリリースしていたのでもしかしたら同じ個体が複数回掛かったかもしれない。

陽が傾き始める頃だった。
時刻は16時に差し掛かるところだった。
真夏の桂川で34cmのヤマメを獲ったポイントが気になった。
Yさんの推察によると、今の時期はそのポイントは期待できないだろうということだった。
「でも分かんないよ。あそこは魚は確実に入っているからね。なんかの加減で食い気が出た奴が居れば一発大物ってこともあるかもしれない」。
その言葉に期待して、夕まずめに思い出のポイントに向かった。

残念なことに、そのポイントは釣りが成立しない状況だった。
どこからか水辺に茂る草が間断なく流れてくる。
恐らく誰かが草刈りをしたのだろう。
糸に纏わりついてまともな流しが出来ない。
アタリも何もあったもんじゃない。
でもさすがに僕ももう気持ちが切れた。
今から別のポイントに移動する気力はなかった。
暮れゆく陽の中、僕は最後まで青々とした草を引っかけ続けて桂川での釣りを終えた。


本当に酷い釣りが続いている。




当日のタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスターメタルチューン105M
  シマノ スーパーゲームベイシスMH75-80
水中糸:フロロ0.8号
ハリス:フロロ0.6号
鈎:オーナー スーパーヤマメ8.5号
餌:ミミズ、ブドウ虫、イクラ、秘密の餌


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2015/09/12,13 益田川~アマゴたちは何処へ

2015-09-20 21:29:46 | 渓流釣り 釣行記(益田川水系)
益田川は高水が続いている。
停滞する秋雨前線のおかげで8月末に増水してから約半月もの間かなり高い水が続いている。
網師たちは殆ど網を出せていない。
釣り師だってまともに竿を出せるポイントが限られる。
その限られたポイントで何とか尺上のアマゴを獲りたいと思い、暴挙とも言える80cm高の水況の益田川へ向かった。
もう2015年のシーズンも最終盤なのだ。


増水して増した水勢の影響を直に受けない淵。
流芯脇のトロ場でも流れが停滞せず適度な水通しがある。
アマゴたちが避難しながらも就餌行動を取れるポイント。
この条件を満たすポイントに朝一番に入った。
淵のキャパシティが思ったより大きく、水位が増しても淵の表面積が広がっただけで、水勢はアマゴが充分に就餌行動を取れるくらいだった。

これはいけるかもしれない。
期待が膨らむ。
膝辺りまで立ち込んで10.5mのエアマスターをもってしても届かない筋は幾つもある。
探れる範囲で丁寧に流したがアタリはない。
やはり、釣り師が見た目に感じるのと、実際にそこに生息する魚の受け取り方は異なるのだ。
充分に流れに出られそうだと思ったのだが、まだ早かったようだ。


少し立ち位置を移動した。
恐らくウグイの巣窟だろうと思い最初は探るのをためらっていたのだが、その淵の中で一番流れの緩い筋に餌を流してみた。

一流し目から明確なアタリがあった。
しかし、これはウグイだろうなと思い鈎に掛かって欲しくなかったためそのまま暫く放置していたのだが、どうやら相手さんの方で勝手に鈎にかかったようだ。

軽くアワセをくれると首を振って走り出す。
「これはウグイじゃないぞ」と少し丁寧にやり取りをして寄せてきた。
やはりウグイではない。
アマゴだ。
そのまま慎重に寄せて網に入れると、27cmの雄のアマゴだった。
※画像はありません。


更に粘ってみたがこのポイントはここまでだった。
しかしながらこの高水でも食い気のあるアマゴは居るのだと思い、上流へクルマを走らせながら竿を出せそうなポイントを探した。
ところが事はそんなにうまく運ばない。
淵を中心にポイントを眺めてみたが、どのポイントもとても竿の出せる水況ではなかった。
支流の小坂川に入ってみたが、掌より少し大きいくらいのアマゴが数匹釣れただけだった。


もうどうしようもないなと諦めざるを得なかった。
食い気はないだろうが魚は確実に入っているだろう、しかも入っているなら大物というポイントが益田川本流にある。
夕まずめ、一発勝負に出ることにした。



この水況で竿を出すなんて、なんて酔狂な釣り師だろうとくだらない駄洒落を言いたくなるほど目も当てられない流れだった。
しかし、何かに摂り憑かれたように黙々と繰り返し竿を振り、餌を流し続ける。
高水のため流す筋は限られている。
それでも僕は根気よく流し続けた。
今シーズンずっと耐えてきた。
天候と水況に悩まされる釣行が多い中、例年なら大物が入っているだろうポイントでもかすりもしない状況にも耐えてきた。
そろそろ、益田の神が微笑んでくれてもよい頃ではないか。

しかしながら神の表情に笑みは浮かばなかったようだ。
こんなサイズのアマゴが2匹遊んでくれただけだった。





翌日も益田川漁協管内の全域を見て回った。
前日よりは水位は落ち着いたが、まだまだ釣りには制約がある水位だった。
いっそのこと同じポイントで何とかのひとつ覚えのように竿を振り続けてみようか。
そんな考えが浮かんできた。

ある程度川を見て回った後、僕はそのような愚かとも言える釣り方を実行に移し始めた。
遡上魚を狙っているのかと錯覚するような釣りだった。
見事にアタリはない。
何度も挫折しそうになった。
しかし、他のポイントへ入ってもまともに竿は出せないのだと思いなおし、途中で自身の休息も兼ねて場を休めながら、とにかくひたすら同じポイントで竿を振り続けた。
しかし、結果は前日と何も変わらなかった。
こんなサイズのアマゴが2匹釣れただけ。





昨年は9月に入ってもほぼ釣行毎に尺以上の魚に出会えた。
帰り際は心の底から益田川に対する感謝の念を抱いていた。
今年はなかなかそうは思えない。
寧ろ恨めしく思う。

日暮れまで粘ってみたがいい魚には出会えなかった。
恨めしい気持ち、悪態をつきたい気持ち、それでもやはりどこかで期待したい気持ち・・・
色々な感情が入り混じった複雑な気持ちを抱きながら日暮れまで粘った。
この気持ちは何処にぶつければよいのだろう。



当日のタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスターメタルチューン105M
水中糸:フロロ0.8号 ナイロン0.8号
ハリス:フロロ0.6号
鈎:オーナー スーパーヤマメ 8.5号
餌:ミミズ、ブドウ虫



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2015/09/05,06 高原川~2015年最終釣行

2015-09-08 23:58:34 | 渓流釣り 釣行記(高原川水系)
8月後半から雨がちな天候が続いていた。
川の水位は上がり、ようやく落ち着くかと思う頃に再び激しい降雨があり増水。
その繰り返しだった。
渇水が続いた後の出水は魚の活性も高まるしありがたいのだが、釣りが困難になるほどの増水はありがたくない。

実はもう2015年のシーズンは高原川への釣行はやめようと思っていた。
それくらい状況は良くなかった。
禁漁前の最終週末であろうとそんなことは一切気にせず、気持ちはずっと南飛騨の益田川に向いていた。
しかし、前述の増水は高原川よりも益田川の方が程度が酷かった。
全く竿を出せないわけではないだろうが、ポイントはごく限られるし、その限られたポイントでも釣りにくいだろう。
それに、雨の合間の晴れの日に竿が出せたとしても、すぐそのあとまた雨がちな天候が続く。
これまでの経験から推測すると、出水の前の益田は食いが頗る悪い。
ならば、どうせ悪いのなら最終週末なのだから高原川へ行ってみようか。
さすがにこのままシーズンを終わらせるのは悔し過ぎる。
2015年9月5日と6日、高原川が禁漁に入る前の最終週末の僕の一泊二日の釣行が始まった。



昨シーズンの高原川を振り返るとよく釣れたなとつくづく思う。
確かに盛夏の頃はアタリは遠くなったが、それでも終日竿を振っていれば尺以上のヤマメにはほぼ確実に出会えた。
食いが悪い時期なのだから仕方ない。
一日に一本の尺以上の魚を獲れればそれでいいと思っていたので充分満足していた。
今シーズンも勿論そのつもりでいたがなかなか尺ヤマメは出てこない。
釣れるヤマメは全体的に小振りで痩せた個体も多い。
そして魚の数も少ない。
やはり長引いた雪代のせいだったのかな・・・
思いを巡らせながら飛騨路を北進する。
片道200kmの道程は時折睡魔が襲ってくるが、5分程度の仮眠で何とか凌いだ。
高原川の目当てのポイントに到着したのは夜が明ける2時間以上前だった。

魚が少ないならば、少しでも魚影の濃くなるポイントに入ろう。
そう考えて某堰堤下のポイントに目星を付けた。
朝一番でこのポイントに入るのは初めてだった。
暗いうちから川に降り立ち、見えにくい目印を目を凝らしながら追っていると後方を一人のルアーマンが通り過ぎた。

「無挨拶か・・・」。
気になったが、声をかけないということはかなり下流に行くものだろうと思っていたが、僕の下流側に延竿2本分くらいの距離のところからルアーを放り始めた。
最終週末の朝一番、自分が一番川だと思ってやって来たら既に先行者がいたという図式だろう。
入りたい気持ちは分かるがその距離は近過ぎる。
申し訳ないがもっと下流側に移動してもらった。

かなり具に探ったのだが釣れたのはウグイのみだった。
ヤマメらしいアタリは2~3回、餌にアタックしてるような強い衝撃を伴うものがあったが、恐らく小型のヤマメだろう。
アワセもせずそのまま放置した。



見切りをつけて僕は支流の双六川に向かった。
これだけ高水が続いていれば、日頃は水深の浅い双六の方に繁殖のために本流から差してくる大型の個体が居るのではないかと考えたからだ。
しかし、先行者が居た。
正確に言うと釣り場至近の駐車場所にクルマが停めてあった。
しかし、釣り師の姿は見えない。
僕がクルマから降りて辺りを見回していると、駐車車両の中から釣り師が一人出てきた。
朝一番で入ったが水が高過ぎて釣り上がれず寝ていたそうだ。
話を伺うとこれからまた入川するつもりでいらっしゃったため僕はそのポイントを譲った。



やっぱりあのポイントだなあ。
僕が朝一番に通常入るポイント、昨シーズンは多くの尺上のヤマメが竿を絞ってくれたポイント。
何本の尺以上のヤマメを獲っただろう。
覚えていないし見当もつかない。
そのポイントで今シーズンはまだ1本しか獲っていない。
期待は出来ないが、昨シーズンの最終釣行でもアタリが非常に遠かったもののなんとか38cmと35cmのヤマメを出した。
そのことを思い出し、賭けに出るつもりで僕は愛着のある通い慣れたポイントへ向かった。

やはり既に対岸にはいつものあの方が竿を振っていらっしゃった。
「今年は釣れんぞ!」
今シーズン初めて言葉を交わした時に聞いた開口一番の科白がこれだった。

地元の釣り師Iさんも同様のことを言った。
「高原は今シーズンまだ二度目なんですよ。一度目は雨の後で雪代が入って全く反応がなかったです。今日も渋いですね。」
「う~ん、今年は来る価値ないかなあ。俺はまだこのポイントで尺を釣ってないよ。信じられる?今年はホントにダメだわあ。」
高原を知り尽くしたIさんが言うのだから間違いない。
でも、梅雨が明けたら水温も上がるし、下流域でもたもたしていたヤマメが一気にここまで来るんじゃないか?などと期待を込めて祈るような気持ちでいた。

残念なことに今日までその祈りは届いていない。
僕が今シーズン高原川で獲った尺以上の個体はたった4本。
信じられない悪い数字だった。
長く通えばそんなシーズンもあるとは思いながらも納得できずにいた。



「腐っても高原」。
せめてそう思わせて欲しい。
岸辺に立って竿を振りながらそんなことを考えていた。
いつものように手前から順に遠くの筋を探っていった。
食い気のあるやつが居れば底ではなく中層付近にまで出てきているだろうと考え、最初はオモリをさほど重くせずに流した。
しかし全く反応はない。
時折波目に合わせて誘いを掛けたが一向に気配はない。

今日も食い気のあるやつはいないのか?
対岸のあの方は比較的よく竿が曲がっている。
今日はアタリが出る日ではないのか?
魚は向こう岸にかたまっているのか?

確かに対岸とこちらとでは底の地形や深さは異なる。
もしかしたら食い気のあるやつは本当に対岸の方に集まっているのかもしれない。
ならば、こちらに残った食い気の無い奴を掛けるしかない。
僕は底を探るためにオモリを付け変えた。
まだベタ底にはとどかせないが、底波に合わせてかなりゆっくり流れるように竿をコントロールした。
底波に入ると、場所によっては表層の流れと正反対の方向に流れる。
まるで魚が餌を咥えて泳いでいるのかと錯覚しそうなほど早く流れる時もある。
そんな流れに仕掛けを入れていた時、ググンと餌を奪って走るようなアタリがあった。

首の振り方が端正ではなかった。
水圧の掛かったホースの口が暴れているかのような首振りだった。
その後の疾走、深場への潜行からニジマスだと分かった。
案の定ジャンプした。
根に入られないよう気を付けながら竿を絞り、時折腰も落として対処して網に入れたのは35~36cmほどの鰭のピンと張った綺麗なニジマスだった。

取り敢えず魚は釣ったので少し安心した。
今の探り方が良かったかなと思いながら同様に底を流していると、再びゴンゴンという明確なアタリが襲った。
すかさずアワセをくれると、先ほどとは異なる整った首振り。
その後の疾走は数メートルで、再び立ち止まって首振り。
これはヤマメだと判断し丁寧に遣り取りをしていると、次第に目印が上に上がってきた。
魚体が水面を割って水飛沫が舞う。
間違いなく尺上のヤマメだ。
僕は慎重にいなし玉網に導き入れた。



32cmの秋らしい暗い色合いの雄のヤマメだった。
「そりゃあこれくらい釣らせてもらわんとなあ、なんてったってタカハラなんだからなあ」と、安堵の気持ちのあまりかなりの大声で独り言を放っていた。


その後のポイントで尺に満たないヤマメをもう一本獲った。
夕刻に入ったポイントでは35cmのニジマスが一本だった。
尺上のヤマメは一本のみで1日目の釣りを終了した。



一日目の釣りを終えた後、僕は日帰り温泉に浸かり、再び釣り場に戻ってきた。
明朝すぐに川に降りられるようある程度の身支度を整えて車中泊をした。

目覚めたのは午前4時。
雨音が聴こえる。
車外の様子を窺うと結構な振り方だった。
眠いことも手伝って気持ちが萎えてきた。
僕は一旦は釣りを諦めて二度寝した。

次に目覚めたのは午前7時前。
雨は止んでいた。
今の内に竿を出そう。
僕は直ちに川に降りて行った。
逸る気持ちを抑えながらの数投目の投餌でガツガツと噛み付くようなアタリを感じた。
ビシッと鋭くかつ短めのアワセで応答すると「ドンッ」という重い衝撃が手元に伝わった。
よし、完全に乗ったと思い、魚に主導権を握らせないよう竿を絞った。
最初の2~3秒はその場で首を振ってもがいていた。
その後はグルングルンと身を翻しながら必死で糸を振りほどこうとする。
手応えは充分。
かなりの重量感があり、これは40cm近いのではないかと慎重に遣り取りをしていたが、水面に顔を出した魚体は35cmもないくらいの通常の尺上ヤマメだった。
しかも、顔を水面に上げた時に見えたのだが、鈎の掛かり方が非常に心許なかった。
アワセの感触から上顎にガチっと食いこんだように感じたが、上唇の端に僅かに掛かっているだけだった。
「バレるなよ、バレるなよ」と祈りながら相当丁寧に岸に寄せて網に入れた。





33cmの鼻曲がりの雄だった。



この後36cmのニジマスを一本釣ったところで降雨が激しくなり納竿を余儀なくされた。
最後の逆転劇を狙ってビッグワン狙いの太めの仕掛けで挑んでいたのだが、どうやら今シーズンはもう出番が終わったようだ。

本当に釣れなかった2015年の高原川。
最後にカッコいい33cmの背中の盛り上がった雄のヤマメに出会えたものの、納竿時は殆ど強制終了という感じ。
モヤモヤと胸のつかえが取れないまま翌シーズンまでの禁漁期間に入る。
開幕前は今シーズンも40cmを獲ってやるぞと息巻いていたが、蓋を開けてみれば40cmどころか尺を獲るのにも苦労している有様。
昨シーズンは「良い釣りをしたな」と何度思わせてくれたことだろう。
それに比べると今シーズンは達成感、充足感が本当に少ない。
でも仕方あるまい。
自然相手のことなのだから長く通っていればこういうシーズンもある。
来季また40cmを狙おう。
今年は渋かったけど、それでもやっぱりありがとう、高原川。
来シーズンもよろしく頼むよ。





二日間のタックル

竿:ダイワ 琥珀本流エアマスターメタルチューン 105M
水中糸:フロロ0.8号~1.0号
ハリス:フロロ0.6号~0.8号
鈎:オーナー スーパーヤマメ8.5号、 サクラマススペシャル8号
餌:ミミズ





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2015/09/06 奥飛騨 高原川 ヤマメ 33cm

2015-09-07 01:09:33 | 原色美魚図鑑
今シーズンの高原川での最終釣行日。
週末の一泊二日釣行の二日目のこと、夜明け前に目覚めると降雨。
釣りを諦めて二度寝した後、目覚めると雨が止んでいる。
それから再び降雨があるまでの2時間余り。

試練しか与えてくれなかった2015年の高原川からの贈り物のような釣りの時間。
その時間でもうひとつの贈り物が高原川から。
への字のような精悍な鼻曲がりの33cmの雄のヤマメだった。










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2015/09/05 奥飛騨 高原川 ヤマメ 32cm

2015-09-07 01:07:26 | 原色美魚図鑑
婚姻色の出始めた、秋らしい暗い色合いの雄のヤマメ。
なんだか物凄く久し振りに尺上のヤマメを高原川で釣ったような気分だった。
それくらい今シーズンの高原は釣れないのだ。






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