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「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景

2021-06-21 15:30:00 | 日記

下記の記事はプレジデントオンラインからの借用(コピー)です

「君ら、何かの宗教とちゃうよね?」
大規模コンベンションセンターのステージでは、テレビでよく見る若手芸人がネタを披露した後、こう不安げに茶化して、参加者約3000人の笑いを取る。これは悪徳商法集団の「環境」で開催されている「全体会議」の一コマだ。
「初回参加のDさんです! 意気込みをどうぞ!」
別のプログラムでは、ステージ上に会員が立ち、求められるままに一言メッセージを述べる。すると、約3000人の構成員たちが異常にも思える拍手で祝福する。
この連載で取り上げている悪徳商法集団の「環境」では、多額の上納金や不衛生なシェアハウス、激しい勧誘といった負担を構成員に強いている。このような負荷を掛けながらも大勢に所属させ続けるため、「環境」ではセミナーで繰り返し承認を与えて動機付けを行っている。
本稿では彼らのセミナーと、そこで与えられた承認により団体の活動を手伝わせる「プロジェクト」という名のタダ働きの実態について迫る。なお、前回と同じく元会員への取材をもとに構成している。
2泊3日でセミナー漬けにされる
「環境」のセミナーには、大きく分けて内部セミナーと外部セミナーがある。このうち優先度が高いのが外部セミナーだ。これは外部の業者に委託しているセミナーで、入会者全員に勧められる基礎コースは2泊3日で行われ、会場は大阪にあるという。
この期間中、入会者は全員セミナー漬けにされる。セミナー費用は約10万円で、東京に住んでいた脱会者のDさんの場合は宿泊交通費を入れると10万円を越えたという。もちろん、全額自己負担だ。「部外者にはセミナーの内容を口外しない」という趣旨の誓約書を書かされているため全容は語らなかったが、集団を密室に閉じ込め、精神的に動揺させられるゲームや瞑想を行うようだ。
また、外部セミナーと言いつつトレーナー役は全員師匠やリーダー(一定数の勧誘実績がある構成員)で、人生の目標も「環境」での活動に結び付けられる。
そして、このセミナーの最後には、ある意味で“強制的に感動させる演出”が待っていた。
感動的な演出で“スイッチを押されたかのよう”に泣いてしまった
「セミナーの最後に『家族や友人、師匠のことを思い浮かべて下さい』と言われて瞑想が始まり、しばらくして促されるままに後ろを振り向くと、紹介者が立っていたんです。そして『これから一緒に頑張っていこう』という内容の手紙を渡されます。
ずっと密室で過ごしていたのと、感動的な音楽が掛かっていたこともあり、気付いたら感動し泣いていました。今思い返すと、まるで何かのスイッチを押されたようでした。」
自己啓発セミナーでは巧妙な集団心理操作が行われ、運営側が狙った心理状態へと誘導される。これにより勧誘にいそしむ動機を植え付けていると考えられ、外部のセミナーを優先して受けさせていることもうなずける。
また「環境」には多種多様な内部セミナーがある。入会するとまず100人規模の「スタートアップセミナー」が行われ、これが終わるとマインドセットや活動内容を学ぶ「基礎トレ」、その復習やロールプレーイングを丸一日かけて行う300人規模の「ワークショップ」が行われる。
そのほかにも、各管轄で結果を出しているメンバーが表彰されスピーチをする500人規模の「ビジネスセッション」というイベント性の高いセミナーもあるという。
これを1カ月サイクルで毎週末に繰り返していく。「環境」では、「成果=やる前提×やり方×やる量」という方程式が重要視されており、やる前提とやり方を基礎トレで学び、やる量である現場をこなすことで成果につながると指導される。
「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示される
また、セミナーでは入会数はもちろんのこと「初参加」「新規友人数」「プロジェクト参加(プロジェクトについては後述)」といった形で行う表彰が毎回行われる。表彰の基準は厳しくないため、真面目に活動していればかなりの割合で表彰されるが、これにちょっとした高揚感があるそうだ。
セミナーではオーバーリアクションが推奨されており、表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ。
この他にも師匠の話を聞く『師匠の部屋』や、師匠がさらに上位の幹部に質問する『東京カリスマ』など、幹部とのコミュニケーションが取れるセミナーもあるという。また、脱会者のDさんがもっとも記憶に残っていると語ったのが、「自己投資」と呼ばれる毎月15万円の上納金を達成していると参加できる限定セミナーだ。
このセミナーは上納金を支払っているだけで「自己投資を達成した」ということで表彰される。活動の成果ではなく、単にお金を払っているだけで表彰されることに衝撃を受けたという。
「環境」では毎週末のセミナーを通じてある種の勧誘マニュアルを教え込んでいるが、それは同時に承認の場にもなっている。数百人の前で熱烈に承認される場を普段から得られている人は稀であり、頻繁に承認儀礼を行うことで所属の動機付けをしていると考えられる。
そして、この動機付けとして団体内で強く機能しているのが「全体会議」だ。
有名芸能人も多く参加する「全体会議」
「全体会議」というのは毎月行われる「環境」全体のセミナーで、月初か月末の土日で開催される。例年は関東か関西のコンベンションセンターで開催されていたが、数千人が集まるイベントということもあって昨年の緊急事態宣言でいったん中断された。
だが、宣言解除後に復活し、今年の緊急事態宣言発令後も行われているようだ。内容としてはセミナーや表彰のほか、ゲストを招いてのインタビューや余興など、さまざまなプログラムが用意されている。また、テレビでよく見る芸能人もトークショーなどに参加していたという。
全体会議の様子。会場は幕張メッセで参加人数は3000名程度だという
筆者が確認したゲスト一覧には、テレビにもよく出演している辛口で有名な女性芸能人や若手お笑い芸人など、芸能人が数多く含まれていた。「有名芸能人がゲストとして来ているのを見ると、すごい団体に入会したような気持ちになった」とDさんが語っており、この芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。
芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っているという。なお、現在でもフロント団体のホームページには、全体会議のゲストも含めた芸能人へのインタビュー記事が掲載されている。
また、初回参加の場合は、それだけで紹介者も含め会場の座席を前方に設定される。前方に座れるのは成果を出している人で、団体内では名誉なことだとされている。
さらに、新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わうという。このように新規参加者に充実感を与える仕組みを作っているのだ。
オンラインサロンでは身分証明書を提出させている
ほかにも、「太っている人集合」や「童貞集合」というミニイベントも開催されていたようだ。普通なら指摘されたくないネガティブな特徴だが、壇上で顔を売れるのは気分が良いため、多くの構成員が登壇していたという。
普段は自分から言うと恥ずかしい特徴も、それを材料にして目立ち、肯定されるのは快感だ。これには強引に自己開示を行わせ、承認することでカタルシスを得させて組織への所属欲求を高める効果があると考えられる。
「全体会議」は関東か関西で行われるため、長距離移動が多く発生する。その実態も過酷なものだった。
「『全体会議』への移動には『環境』が借り上げたバスが使われます。バスは四列シートで、人数が多いため補助席で過ごす人もいました。金曜日の夜に出発し、月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かったです。
補助席で東京から大阪と聞くとハードに聞こえると思いますが、当時は普段から深夜まで勧誘やミーティングをしていたため、何も現場を入れる必要のない出発前はむしろ楽でした。さらに、月曜日に帰ってきた日か、その翌日の夜には振り返りのミーティングが設定されていました。
学習してから48時間以内に振り返りを行うことで、内容を定着させるためです。また、『全体会議』に参加するためには、『環境』が管理している月額1万円のオンラインサロンに登録する必要があり、これが参加チケット代わりとなっています。この登録にはなぜか運転免許証やパスポートといった身分証明書の画像提出が必要でした。」
写真=筆者提供
「環境」のオンラインサロンのログイン画面。月額1万円で登録時には身分証明書の写真を添付しなければいけないという
「環境」ではオンラインサロン登録時に身分証明書を提出させるため、ここで主な個人情報を握られてしまう。このため、取材の中でも身元割れが強く警戒されており、実際に取材を直前でキャンセルした脱会者がいた。
構成員を動員して通販サイトのランキングを操作
「全体会議」をはじめとしたセミナーの運営は構成員によって行われており、無給であるという。「環境」ではこのような活動を「プロジェクト」と呼ぶ。
具体的には、店舗の手伝いが「店舗プロジェクト」、大規模イベントや出版の手伝いが「全体プロジェクト」と呼ばれている。「店舗プロジェクト」はオーガニックショップ開店準備や仕入れの手伝い、飲食店の従業員などを指す。
飲食店の場合は給料をもらえることがあるようだが、オーガニックショップの場合はほぼ無給。このため、無給労働を行わせる場合は、従業員ではなくインターンとして働く趣旨の誓約書を書かされるという。
また、「全体プロジェクト」というのはイベントや出版の手伝いがメインだ。全体会議の開催前にスタッフ募集のメールが流され、構成員はGoogleフォームで応募する。
この際、応募条件には「自己投資15万円達成」や「勧誘実績3人以上」といった参加資格が設けられている。出版については、幹部が出版した本をWeb購入するよう指示され、恣意的にランキングを上昇させていたという。
「出版プロジェクト」の指示メール。管轄によって指示が異なっており、書店での事前予約や、指定日にアマゾンで購入するなど、戦略的に動いていたことがうかがえる
同様に、団体が応援するアーティストの曲を同時期にダウンロードしたり、師匠のブログにアクセスすることもあったようだ。しかも、支払いは自腹である。一方で、「プロジェクト」に参加しているとセミナーで表彰されるため、無給労働や自腹購入と引き換えに構成員に承認を与える仕組みになっていたと考えられる。
勧誘の初期段階で連絡を絶つべき
「環境」はさまざまセミナーで承認機会を繰り返し用意し、芸能人を呼んで組織の大きさを印象付け、特に新入りは特別扱いして組織に染めていく。集団の前で繰り返し承認する方法はカルト集団と類似しており、所属への強力な動機付けとなっている。
そうして所属し続けているうちに、15万円の上納金を支払うだけでなく、「プロジェクト」という名のタダ働きにも参加してしまう。数千人の前で壇上に立ち、はちきれんばかりの拍手を向けられれば、手口が分かっていても心理的影響を受けることは十分に考えられる。勧誘の初期段階で連絡を絶つことを強くおすすめする。



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