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酒井順子「高齢者の一人暮らしは不幸」は本当ですか?

2021-02-27 13:30:00 | 日記

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「家族終了」、老後の不安にはどう向き合えばいい?
―― 前回の「親孝行交換、家族の愛情は『掛け捨て型』」では、「強制力が働かない時代だから、家族は続きにくくなっている」と話されました。女性は男性より長生きなので、結婚していても「人生の最後は一人」という将来を迎える確率は高くなりそうです。「家族終了」後、老後の孤独に対する不安とは、どう向き合えばいいでしょうか。
酒井順子さん(以下、敬称略) 確かに一人暮らしで老後を迎える女性はこれから増えていくでしょう。ただ、高齢者の一人暮らしを全面的に「気の毒だ」とネガティブに捉える必要はないと思っています。
 体に自由が利かなくなったとき、身内に面倒を見てもらいながら暮らすのと、不便を承知で一人で暮らすのと、どちらがいいかといったら、私は迷わず後者を選びますね。それで多少寿命が縮まろうとも、いつも誰かに気を使って「ごめんね」と小さくなって生きるより、どれほど行動がゆっくりになろうと、他人の目を気にせず暮らすほうが、私には合っている。見られていなければ「みっともない」とも「恥ずかしい」とも感じませんから。誰にもみとられずに亡くなる人はいますが、本人はそれほど不幸と思っていないのではないでしょうか。
 「孤独死」という言葉もよろしくないですね。
「死に貴賎なし。孤独死という表現には『上から目線』を感じます」
酒井 たまたま一人で死んだだけで「孤独だから死んだ」のではないのに、まるで孤独が死因であるかのような言葉です。「孤独死だなんて、かわいそう」と上から目線で語ることで、「孤独ではない自分」を確認しようとしているのだと思いますが。一人暮らしで亡くなってもすぐに発見されるシステムさえ確立されればいいのであって、「在宅ひとり死」を安心して選ぶことができる社会になればいいですね。
血縁にとらわれずあらゆる場に「疑似家族」をつくる
酒井 もしも「やっぱり一人は寂しい」と、家族のようなつながりを求めたいのなら……血縁の家族にとらわれず、その場その場で「疑似家族」を積極的につくっていくのもいいのではないでしょうか。
―― 著書の『家族終了』の中でも、酒井さん自身の体験として、血縁家族以外の人との交流からつながりを得ている例をたくさん紹介されていますね。
酒井 そうですね。前回お話ししたような(*前回記事)「他人の親に優しく接する」のも、疑似家族の一つの形。つい先日も、わが家の給湯器が壊れたので近所の銭湯に行ったのですが、銭湯のお隣に旦那さんを亡くしたばかりの母の友人が住んでいることを思い出して、「お風呂のついでにちょっと寄ります」と電話をしてお邪魔しました。
 お仏壇の前でチーンとやって、みかんをいただいて帰って来たわけですが、何となく実家に戻ったような気分になりました。
「共通敵」の出現で「女友達のリユニオン」が始まる
酒井 会社員だった父の部下の方とも、いまだに交流があります。私は今、実家に住んでいるので幼なじみも近くに住んでいて、大みそかに紅白歌合戦を一緒に見るなど、その時々に応じて、「擬似家族感」を味わっています。
―― 大人になるにつれ、幼なじみや学生時代の同級生など、かつての交友関係が変化してしまうことも多いですが……。
酒井 心配しなくても大丈夫。女性は40代から、「女友達のリユニオン」が急速に進みます。子育てがひと段落した主婦の友達が、仕事を再開して自由に使えるお金を得て、一緒に食事に行けるようになったり、旅にも出掛けられるようになったり。
 「働いている・いない」「子どもがいる・いない」といった属性の違いでしばらく疎遠になっていたとしても、40代半ばを過ぎると「更年期」「親の介護」「墓問題」といった共通話題が登場し、再び女同士を結び付けてくれるものです。
 「加齢」が連れてくるいくつもの敵に、いかに立ち向かうか。人生後半に起きるネガティブな変化が、「友人関係の再構築」というポジティブな変化も生んでくれると実感しています。
「学生時代の女性の友人関係は、30代までは不安定。でも、その時に無理して連絡を取り合わなくてもいいのではないでしょうか。40代半ばすぎから『リユニオン』が進みますから」
「家族終了」後の出会いはお稽古事で
酒井 新たな出会いを求めるなら「お稽古事」がおすすめです。年を取るとなかなか自分の成長を感じられないものですが、「先生に習う」という場に身を置くだけで新鮮な気持ちに。
 「上達したい」という前向きな目標を共有する生徒仲間とは、楽しい交流が始まりやすいと思います。私は料理教室に15年以上、卓球教室に10年……。 実は今日もこの取材の前、午前中に墓参りと卓球のレッスンを済ませてきたところです(笑)。
―― 旧来のイエ制度を守る墓参り道具と、新しい交流につながる卓球道具と。ある意味対照的な二つの道具を一つのリュックに詰め込んでいる今の酒井さんは、まさに「家族終了とそれから」を象徴するような暮らしをしているのかもしれないですね。
取材・文/宮本恵理子 写真/洞澤佐智子    * 

酒井順子
さかいじゅんこ
1966年、東京都生まれ。高校在学中から雑誌にコラムを発表。立教大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆に専念。2004年に『負け犬の遠吠え』で婦人公論文芸賞、講談社エッセイ賞を受賞し「負け犬論争」を呼び起こす。著書に『ユーミンの罪』


《天皇陛下がついに“眞子さまご結婚”に言及》小室圭さん「一時金だのみ」の消えない疑念

2021-02-27 11:00:00 | 日記

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天皇陛下も「多くの人が納得し喜んでくれる状況に」と発言
「眞子内親王の結婚については、国民の間でさまざまな意見があることは私も承知しております。このことについては、眞子内親王が、ご両親とよく話し合い、秋篠宮が言ったように、多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願っております」ついに天皇陛下が眞子さまのご結婚問題に言及された 共同通信/JMPA
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 天皇陛下は2月23日の誕生日を前に同19日に行った記者会見で、秋篠宮家の長女・眞子さまと小室圭さんのご結婚問題について、宮内記者会の質問に回答する形でこう言及された。
 皇室担当記者が語る。
「この『多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願っております』というご表現は、秋篠宮さまが2018年11月の誕生日会見で眞子さまのご結婚問題について『多くの人がそのこと(=小室家の金銭トラブルへの対応)を納得し喜んでくれる状況、そういう状況にならなければ、私たちは、いわゆる婚約に当たる納采の儀というのを行うことはできません』と述べた上で、昨年の誕生日会見でも『決して多くの人が納得し喜んでくれている状況ではない』と改めて述べられたことを踏まえられたものです。
センシティブな問題に陛下が“沈黙”を破った意味2月19日に行われた、誕生日に際しての天皇陛下の会見 宮内庁提供
 天皇陛下は皇太子時代、皇室制度やご家族の問題などセンシティブ(繊細)な問題についての質問には、一貫して『発言を控えるべき』『発言は控えたい』などと回答されてこられました。しかし、眞子さまのご結婚問題については秋篠宮さまのご発言を引用する形ではありますが、敢えて発言をされたわけです」
 眞子さまは昨年11月に公表したお気持ちの文書の中で、天皇陛下が「私の気持ちを尊重して静かにお見守りくださっている」と綴っていた。今回はその“沈黙”を破るかたちで、ご発言されたことになる。
「皇室の家長」の言葉が重い理由
「これは国民の理解を得られるように努力しなさいと眞子さまに促されたとも受け取れるのです。皇室は天皇を頂点とした家父長制度的な慣習を残しており、女性皇族はご結婚で皇室を離れるのを前に『朝見の儀』に臨み天皇にお別れの挨拶をします。黒田清子さんは当時天皇だった父の上皇陛下に挨拶をされましたが、高円宮家の次女・千家典子さんも三女の守谷絢子さんも上皇陛下に挨拶をされています。上皇陛下は典子さんや絢子さんにとっては祖父の兄のご長男です。秋篠宮は2018年の会見で、「多くの人がそのことを納得し喜んでくれる状況、そういう状況にならなければ、私たちはいわゆる婚約にあたる納采の儀というのを行うことはできません」と発言 JMPA
 一般的には遠縁ですが、皇室の家長という立場で天皇陛下は眞子さまについて、今や静かに見守っているだけではいられないとの考えに至られたのではないでしょうか」(同前)
 眞子さまは前出のお気持ちの文書で小室さんとのご結婚について「生きていくために必要な選択」と言明され、秋篠宮さまはご自身の誕生日会見で「結婚することを認める」と応じられた。未だに小室家から国民に向けて納得のいく説明はなされていないが、婚姻関係が結ばれること自体は“既定路線化”されたと見る向きは多い。婚約内定会見での小室圭さんと眞子さま(2017年9月) JMPA
眞子さまの「週3勤務」だけでは心許ない
「それにしても、おふたりはご結婚後、どうやって生活していくつもりなのでしょうか。眞子さまは、東大が所蔵する学術標本などを展示する施設『インターメディアテク』で特任研究員として働いており、最長で2024年3月31日まで勤務がお出来になるそうです。ただ、週に3日程度の勤務というその収入だけでは心許ありません。
 小室さんは今年5月に米ニューヨークのフォーダム大学ロースクールを卒業し、7月に実施予定の現地の司法試験に臨むとみられています。秋には合否が判明するようですが、合格しただけでニューヨーク州の弁護士資格が得られるわけではないと聞きます。また、日本で弁護士登録をするにも米国で3年以上の実務経験が必要となるなどとされているそうです。小室さん自身の手でおふたりの生計を立てるには、まだまだ時間がかかる可能性があるのです。
「皇女」制度も夢と消えた?
 菅義偉政権は自民党の支持基盤の一つである保守派が忌避する女性宮家創設の代替案として、女性皇族が結婚により皇室を離れても、皇室の公務を担えるように『皇女』と称する特別職の国家公務員になる制度の構築を検討しているとされています。ただし、菅政権は新型コロナウイルス感染症の流行に翻弄され続けており、とてもではありませんがそうした皇室制度に関わる問題を議論する余裕はありません。2020年12月の佳子さまの誕生日に際して公表された眞子さまとの写真(宮内庁提供)
 ようやくワクチン接種も始まりましたが、ワクチン確保の問題や変異ウィルスの感染拡大など課題は山積みで、眞子さまと小室さんが30歳の誕生日を迎える今年の10月までに、皇女制度はおろかコロナ対応にも目途が立つというには程遠い状況です。眞子さまと小室さんが年内に入籍したとしても、やはりどうやって生計を立てていくのか、全く見えてこないのです」(同前)
結局は「1億5000万円の一時金」しかない?
 眞子さまはご結婚で皇室を離れるに当たり、元皇族としての品位を保つために最大で1億5000万円を超える一時金を手にされる可能性がある。そうなると、やはり当面の生計を立てる術はこの資金しかないということになろう。小室圭さん JMPA
「眞子さまのご結婚について反発する声が国民の間に根強い背景には、小室さんの母・佳代さんの元婚約者に対する小室家の冷徹に見える対応や3年間に亘ってしっかりと説明責任を果たしてこなかった事実があります。ですが、やはり最も大きいのは小室さんが一時金をあてにしているのではないかという疑念です。
 この一時金の原資は国民の税金であり、一時金はまさに皇室の尊厳を維持するためのものです。天皇陛下が、ご発言を控えるのではなく敢えて発言をされた背景には、一時金の支給には一点の曇りもあってはならないとのお考えがあるのではないでしょうか。そういう意味で、天皇陛下は今回、眞子さまだけではなく、弟の秋篠宮さまにも国民の理解が得られるよう努力しなさいと促されたとも受け取れるのです。天皇陛下の記者会見 宮内庁提供
 天皇陛下の誕生日会見でのご発言は、秋篠宮さまのご発言をトレース(なぞる)しただけのもののようにも見えますが、皇室の尊厳を守るという天皇陛下の強い思いが隠されているように思えてならないのです」(同前)


「遅寝遅起き」コロナで増加? 日光とリラックスがカギ

2021-02-27 08:30:00 | 日記

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夜更かしして朝起きられず、生活に支障が出ているなら「睡眠相後退障害」かもしれない。2020年には同様の症状に悩む人が多かったとの調査もあり、新型コロナウイルスの流行による生活の変化が影響したとみられる。朝に日光を浴び、夜は強い光を避けリラックスするほか、必要なら病院を受診するのもよい。
睡眠相後退障害は極端な遅寝遅起きが続き、遅刻するなど生活に支障が出てしまう病気だ。日中に強い眠気を感じることもある。患者は10~30代が中心で、多くは遅い時間帯に寝る方が自然な「夜型」の人だ。
東京都在住の男性(33)は睡眠相後退障害の患者の一人だ。高校時代から寝るのが遅く遅刻続きだった。就職後も同様で休職を余儀なくされ、5年前にこの障害と診断された。現在は朝日を意識的に浴びるなどし、治療薬も活用して仕事も続けている。
男性の治療にあたる東京医科大学病院の志村哲祥兼任講師は「新型コロナの流行などがきっかけで、睡眠リズムの不安定だった人が睡眠相後退障害を再発している」と話す。
医師などで作る「ウーマンウェルネス研究会」は20年7月、首都圏の20~50代男女約900人にインターネット調査を実施した。新型コロナの感染拡大後、睡眠の質が悪化した人に原因を聞くと、約4割が「遅寝遅起きの習慣化」をあげた。監修した国立精神・神経医療研究センターの栗山健一部長は「睡眠相後退障害の患者が増えていると思われる」と話す。
背景には、テレワークの増加など生活の変化があるという。人はもともと遅寝遅起きになりやすいが、朝に日光を浴びて体内時計をリセットすると、夜にほぼ同じ時間帯に眠気を感じるようになる。だが外出自粛などで、外よりも暗い室内にいる時間が増えると体内時計がずれて遅寝になりやすい。運動不足で血行が悪くなるのも入眠を妨げる。
新型コロナの流行が収まると、再び出勤中心になる企業もあった。テレワーク中心で遅起きが習慣になると、いざ出勤するときに早起きに戻しにくい。「感染や生活への不安といったストレスも睡眠に悪影響を及ぼしやすい」(栗山部長)
どう対処したらよいか。栗山部長は「起床後2時間以内か、遅くとも午前中に計30分程度屋外で日光を浴びるとよい」と話す。室内にいる場合は窓際で日を浴びるのもおすすめだ。
夜は強い光を避け、リラックスして入眠しやすくする。パソコンやスマホ、テレビなどの使用は避ける。睡眠に詳しい日本大学の鈴木正泰教授は「寝る2~3時間前にはスマホなどをやめ、寝る90分前くらいに風呂に入るとよい」と話す。
夜遅くまで仕事をするのも、緊張が解けず入眠しにくい原因になる。栗山部長は「日本人は勤務時間外でもメールを返しがちで、ある意味大問題だ」と、睡眠への悪影響を指摘する。
志村兼任講師はリラックスの方法として「筋弛緩(しかん)法」を勧める。体の部分ごとに力を入れ、ぱっと力を抜く動作を繰り返す。毎日続けると緊張をとりやすくなるという。
改善しない場合は、病院受診も検討するとよい。睡眠障害は一般に精神科で扱うことが多い。ただ睡眠相後退障害は精神科医の中でも認知度が低く、診断できる医師が多くはない。このため、睡眠外来や睡眠センターの受診がおすすめだ。日本睡眠学会がホームページで公表している「全ての睡眠障害に対応できる」と認定する病院などを参考にしたい。
病気の見分け難しく 診断重要睡眠相後退障害は、同じ睡眠障害の不眠症と違い、一度寝れば十分な睡眠時間が取れるのが特徴だ。朝起きられないのはうつ病などを患っている人にも多い。うつは気分が沈む病気で、睡眠相後退障害の症状とは異なる。ただ、うつと睡眠相後退障害を同時に発症することはあり、それぞれの対処が必要だ。生活に支障をきたす期間が短いと入眠障害や覚醒障害といった診断名になるが、「治療法は基本的に睡眠相後退障害と同じ」(志村兼任講師)という。
睡眠相後退障害に悩む人は10代では数%、成人では0.1~1%ほどいるとされるが、「医療の対象になることがあまり知られていない」(鈴木教授)という。家族など周囲の助けがあれば治療しやすいが、一人暮らしで発症すると、医師への相談や治療につながりにくいので注意したい。


「洗脳するまで目的は伝えない」起業を夢みてセミナーに通った20代女性の悲惨な末路

2021-02-26 15:30:00 | 日記

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気づいたらそこは悪徳商法の巣窟
「最初はあのお店がそんな場所だとは、まったく知りませんでした」
繁華街にある、小ぎれいでリーズナブルなダイニングバー。カクテルは1杯300円。食事の味も悪くない。何も知らなければ、単にコストパフォーマンスの良い便利な店だろう。
ところが、私が取材したAさん(20代・女性)が出入りしていた店は、経営者から従業員、常連までが悪徳商法集団の構成員という、魔窟のような場所だった。
Aさんが「彼ら」と関わるきっかけは、ありふれた路上に潜んでいた。
「すみません、このあたりでおいしいラーメン屋を知りませんか?」
ある日、友人との食事から帰宅していた彼女は、路上で男女二人組に声をかけられた。親切心から近場のラーメン店を教えた彼女は、話の流れでLINEを交換したという。
その翌日、路上で声をかけてきた女性から、食事を誘うLINEが届いた。予定の空いていたAさんは、誘われるままに食事の約束をした。場所として指定されたのは、繁華街の中心地にあるダイニングバー。立地と店構えの割にメニューが妙に安かったが、格別味が悪いわけでもなかった。
Aさんはその後も食事に誘われ、気づくとその店で行われるパーティーに参加するようになったという。参加者には起業を目指している人が多く、店の経営者という男性を紹介された。男性は客にひどく慕われており、その周りには会話を求める人の輪が出来上がっていた。
しかし、パーティーに通うなかで、Aさんはある違和感を持ったという。
「何というか、店員と常連の仲が良すぎるんです。不思議に思って聞いてみたら、常連が店員として働いていることがあると説明されました。そんなものかと思っていたんですが、話を聞くうちに、常連も店員も、なぜか皆同じ場所に住んでいることが分かりました。本当の理由が分かったのは、入会後だったのですが」
セミナーには店員や常連が参加していた
誘ってきた女性との会話のなかで、経営者の高収入と時間の自由を強調されたという。話の流れで起業に興味を持った彼女は、その女性から「経営の師匠」を紹介された。その人物はパーティーにいた経営者の男性だった。Aさんは起業の勉強をしている団体があると説明され、起業の意思を確かめられた後に入会を認められた。
その後始まったセミナーで、彼女は驚愕きょうがくした。
「あの店の経営者も店員も常連も、皆同じセミナーに参加していたんです。お店やパーティーにいたほとんどの人が同じ団体の会員でした」
その数カ月後に彼女を待っていたのは、シェアハウスで同じ組織の構成員と寝食をともにし、師匠に毎月15万円支払う生活だった。
個人情報はすべてスプレッドシートで管理
彼女が入会していた団体は「環境」や「事業家集団」などと通称されている。あくまで「通称」なのは、この団体に正式名称がないためだ。
違和感を覚える方もいると思うが、これにも狙いがある。彼らはネットで悪評を検索されないよう、あえて名前を付けていないのだ。いわば「逆SEO対策」である。以下、本稿では彼らを「環境」と呼ぶことにする。
「環境」の勧誘手法とビジネスは以下のようなものだ。
彼らはまず、街コンやボードゲーム会、あるいは主要駅の路上といった人が集まる場所に出向き、連絡先を大量に交換する。
その後、食事や飲み会、パーティーなどに誘い、属性を聞き出すとともに親交を深めていくという。ターゲットにされやすいのは独身の一人暮らしで、職場に不満を持っていたり、今の仕事とは他にやりたいことがあるなど、現状を変えたい志向を持つ人物だ。
ここで聞き出した情報はスプレッドシートで管理されるとともに「師匠」(上位階層メンバー)に報告されている。私が脱会者に見せてもらったスプレッドシートには、氏名や出身地、職業や生活形態といった個人情報がびっしりと書き込まれていた。
勧誘できそうだと判断すると、最初に接触した人物が師匠を紹介する。この時の組み合わせは、勧誘対象―構成員―師匠という、マルチ商法でもよく見る「ABC(A=アドバイザー:説明者、B=ブリッジ:勧誘しようとする人、C=カスタマー:勧誘される人)」である。
構成員は「起業で成功する方法を知っている」「何人もの弟子が独り立ちしている」といった言葉で師匠を持ち上げ、また師匠が経営している店舗や会社のウェブサイトを見せて信用させる。
こうして「環境」に心を許していると判断すると入会を勧め、師匠の近辺に引っ越すよう助言するのだ。
「自己投資」の正体は幹部への上納金
入会後はコミュニケーションやビジネスマインドに関するセミナーに毎週末参加させる。セミナーの内容で特徴的なものが「チームビルディング」と「自己投資」である。
「チームビルディング」とは、「起業するにあたってはチーム作りが重要なため、直下9人・総勢50人のチームを作り上げることが必要である。」と伝え、勧誘手法を叩き込むものだ。「環境」では、上記のチームを作り上げるとオーガニックショップの出店が「許可」されるが、これを実現する会員はほとんどいない。実現した場合も顧客のほとんどは「環境」の構成員である。
また「自己投資」とは、「起業のためには月15万円程度の『自己投資』が必要」と伝えるものだが、具体的な内容はまだ伝えない。
ひととおりのセミナーが終わると勧誘する側に回らせ、毎日深夜にまで及ぶ勧誘活動や師匠への報告を行わせて疲弊させていく。
そうして3カ月ほど経ち、完全に組織に染まった時、初めて「自己投資」の内容を明かす。15万円の自己投資の正体。それは、「師匠の店舗から15万円分のシャンプーやサプリメントを毎月購入する」ことなのだ。
一般的なマルチ商法ではないが…
構成員が勧誘した人物が自己投資を行った場合、「自己投資に使えるポイント」が付与される。このため構成員は自己投資の負担を下げ、チームを作って出店を許可されるため勧誘にいそしむこととなる。
つまり彼らは、構成員に勧誘を行わせ、商品販売を行うピラミッド状の組織を作るビジネスを行っている。これがマルチ商法、つまり特商法における連鎖販売取引にあたるかどうかは解釈が分かれるところだ。
彼らの特徴は月15万円もの買い込みを行わせることと、目標が起業=オーガニックショップの出店に置かれること、そしてビジネスの正体を徹底的に隠すことであり、筆者はこれが問題であると考えている。
一般的なマルチ商法であれば勧誘の早い段階で商品説明やデモを行うため、その企業の名前や業態を知ることができる(そもそも事前に企業名やマルチ商法であることを示さず勧誘するのは違法である)。
ところが「環境」の場合、単に起業を目指す集団であるとだけ伝えて入会させ、完全に染まりきるまで核心を伝えない。これは徹底しており、勧誘の場では組織で扱っている商品は絶対に見せず、自己投資の正体を明かす前にもその説明は行わない。勧誘の途中でターゲットから外れ、飲み会やパーティーの主催が「環境」だったと気付かないままの人も多くいるだろう。
勧誘の毎日で交友関係を「環境」周辺に限定させ、疲労で思考力を鈍らせてから初めて月15万円もの買い込みを勧める。この状態で15万円の自己投資を選択したとして、果たして「本人の意志」であると言えるだろうか
知らないうちに「環境」の店舗を利用している場合も
私の手元には脱会者から集めた「環境」関連の店舗リストがあり、その数は60を超えている。全ての情報を集めきれているわけではないので、実際の数はさらに多いはずだ。
冒頭で示したような飲食店は東京都内や大阪市内に多数あり、この他にも前述したオーガニックショップやレンタルキッチン、貸し会議室などがある。事例としてよく聞くのは東京だと品川や五反田、大阪では福島だ。これは、都内でも山手線の南側に多くの弟子を持つ「師匠」が多いことと、この団体の発祥の地が大阪だったためと考えられる。
特に飲食店の場合、オーガニックショップとは異なり一般客もそれなりにいるため、それと知らずに使っていることも十分あり得る。筆者がグルメサイトを確認したところ、彼らの店舗も掲載されており、肯定的なレビューも付いていた。
彼らはとにかく勧誘機会を求めており、その代表が前述した街コンである。東京・大阪で数千人の会員が毎日活動しているため、一時は大抵の街コンに「環境」の構成員が入り込んでいる状況で、同じ街コンで仲間を見かけることが何度もあったという。
この他にも駅や路上での声かけ、各種交流会、読書会、朝活会、ボードゲーム会、IT系の勉強会、フットサル、パブリックスタンド、スタンディングバーなど、およそ人が集まる場所のほとんどに入り込んでいる。
読書会やボードゲーム会といった集まりに出向かなくても、路上で声をかけてきた相手が構成員だったとしたら。彼らと出会うきっかけは、何げない日常の中に潜んでいるのだ。
将来の不安を抱えても絶対に相談してはいけない
コロナ禍で街コンや交流会が激減している昨今だが、彼らの活動は衰えていない。相変わらず路上での声かけは行われており、またオンラインでの街コン、読書会、勉強会などに入り込み、勧誘機会を窺うかがっている。
さらに筆者が取材した例では、オンラインビジネス講座サイトの講師が「環境」の構成員というケースもあった。リモートであっても人が集まる場所、特に参加ハードルが低い場所には彼らが潜んでいる。
ただ、怪しい場所や人物を判別し連絡を絶てば、このような集団に取り込まれることは防げる。そこで、人物や店舗が「環境」関連であると判断できるポイントをいくつか挙げる。
○人物編
・街コンで同性の連絡先を大量に集めている
・路上でおいしい店やおすすめの居酒屋を聞いてくる
・「友達が集まる飲み会」といったつながりの不明瞭な集まりに誘ってくる
・「自分が源」「過去は生ゴミ」といった言葉(彼らのセミナーで教え込まれる)を使う
・「起業や経営について学んでいる人物」を紹介しようとしてくる
________________________________
○店舗編
・メニューが不自然に安い(好立地で小ぎれいなのにハイボールが300円台、カクテルが400円台など。構成員を無給で働かせている場合もあり、それでなくても月15万円回収しているため。ただし普通の価格帯のこともある。)
・一般名詞や地名など、店名が妙にシンプル(団体名と同様の逆SEO目的)
・休日が貸切営業になっている(勧誘パーティーに使っているため)
・店員と常連の仲が不自然に良い
・店員も常連も皆同じ場所に住んでいる(師匠の近所への引っ越しを勧めたり、シェアハウスで集団生活をさせているため)
現状や将来への不安から、誰しも現状を劇的に変える希望に心惹かれてしまうことはある。しかしその希望を見せてくる相手が、もしもあなたの財産を狙っているとしたら。筆者が取材したなかには、「環境に入会して、貴重な時間と資産を奪われてしまった」と悲痛な声で実体験を話してくれた元会員もいた。
不安を抱えることは誰にでもあるが、そんなときに上記のような特徴をもった人物や店舗に遭遇したら要注意だ。悪質な団体に時間と資産を奪われないよう気を付けてほしい


老化を遅らせ、元気続く 最新研究が示す抗老化物質

2021-02-26 13:30:00 | 日記

下記の記事は日経グッディからの借用(コピー)です


最先端の研究により、老化を遅らせ、高齢になっても元気に人生を楽しんで天寿を全うする「ピンピンコロリ」が実現できる時代が近づきつつある。米国では国家予算をかけて抗老化研究が行われており、その成果の一つとして研究者の間で注目を集めているのが、「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」という物質だ。このNMNの抗老化効果などについて研究する、抗老化研究の第一人者、米国ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授に、抗老化研究の最前線や今すぐ実践できる老化制御法についてインタビューした。
◇   ◇   ◇
抗老化成分として研究者の間で注目されているNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)。これは、ビタミンB3からつくられ、ブロッコリーやアボカド、トマトなどにも微量に含まれる食品成分だ。NMNカプセルも販売され、米国や中国、日本の富裕層を中心に、老化を遅らせ、実年齢よりも身体機能を若く保つことが期待できるサプリメントとして人気を呼んでいるという。
NMNブームに火がついたのは、米国ワシントン大学の今井眞一郎教授(神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター・老化機構研究部特任部長を兼任)の研究を中心に、その抗老化効果が明らかになってきたためだ。
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今井教授は、酵母から人間まで、体内にあるサーチュインという酵素が、活性化することで老化を遅らせたり寿命を延ばしたりする老化・寿命制御因子であることを発見したことで世界的に有名な抗老化研究の第一人者だ。2020年12月初旬、日本に一時帰国中の今井教授に、NMNの抗老化効果などについて聞いた。
老化を遅らせ認知機能や免疫機能の低下を抑える効果も
――今、米国、そして日本でも、NMNという成分が、「寿命を延ばすかもしれない。特に、健康寿命の延伸の効果があるかもしれない」ということで、人気になりつつあります。その発端をつくったのが、今井先生の数々の研究です。今井先生のこれまでの研究で分かってきた、NMNの抗老化効果について教えてください。
今井 私たちワシントン大学のグループが、生後5カ月のマウスが17カ月齢になるまで1年間NMNを飲ませた研究では、さまざまな抗老化効果が見られました。5カ月齢というのは人間でいえば20代くらい、17カ月齢は60代くらいです。例えば、NMNを飲ませたマウスは、飲んでいないマウスよりたくさん食べるようになったにもかかわらず、体の代謝が上がって中年太りが抑えられました。ほかにも、骨格筋、肝臓、脂肪といったさまざまな場所で加齢に伴って起こる遺伝子の変化が抑えられ、身体活動量が上がり、血糖値を下げるインスリンの感受性、光を感じる目の網膜の機能が保たれ、免疫細胞の数が増えるなど、NMNには非常に多岐にわたる抗老化作用があることが分かっています。
2011年に発表した、糖尿病のマウスにNMNを与えた研究では、血糖値がほぼ正常になり、症状を劇的に改善させる効果が見られました。
NMNの主な老化抑制効果
今井教授の研究では、NMNの抗老化効果として、体重増加や骨密度低下の抑制、インスリン感受性の改善などが見られた。出典:Cell Metab. 2016;24(6):795-806.
――日本でも認知症患者の増加が問題になっています。NMNとアルツハイマー病との関係を調べた研究もあるようですね。
今井 他の研究機関でアルツハイマー病のモデルマウスにNMNを飲ませた研究では、記憶力や認知機能が回復し、アルツハイマー病の原因となる脳の海馬の細胞死が抑えられたと報告されています。NMNは血管の弾性を若い頃と同じように保つといった働きがあるなど、老化に伴う組織や臓器の機能低下、それから、老化に伴って起こる病気を改善させる効果も、世界各国の非常に多くの研究機関の論文で証明されています。
NMNを飲むとすぐにNADに変換されサーチュインが活性化
――なぜ、NMNには老化に伴う組織や臓器の機能低下を抑える作用があるのでしょうか。そのメカニズムを教えてください。
今井 NMNを飲むと、すぐにNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という、私たちが生きていくうえで欠かせない補酵素に変換され、サーチュインの働きが活性化されるからです。サーチュインは老化や寿命をコントロールする酵素で、その遺伝子は長寿遺伝子とも呼ばれます。哺乳類にはSIRT1(サーティワン)から7まで7種類のサーチュインがありますが、特に重要なのがサーティワンです。サーティワンは血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、糖や脂肪の代謝を良くしたり、神経細胞を守り記憶や行動を制御するなど、老化や寿命のコントロールに非常に重要な役割を果たしています。
その働きを解明するために、マウスの実験で、脳の司令塔である視床下部でサーティワンの機能を高めたところ、老化によって増える症状や病気の発症時期が遅くなり、メスでは16.4%、オスでは9.1%健康寿命が延びました。面白いことに、人間の60代に相当する17~18カ月齢のマウスの脳の視床下部でサーティワンを高めると、3~4カ月齢(人間の20代相当)の若いマウス並みに元気に動き回るようになり、体温が上がり代謝も高まったのです。
脳でサーチュインの機能を高めると健康寿命が延びた
出典:Cell Metab, 2013 Sep 3;18(3):416-430.
そして、こういったサーティワンの働きすべてに必要なのがNADです。組織中のNAD量は加齢と共に減少しますが、NMNを飲むとNADの量が増えてサーティワンの働きが活性化します。サーティワンが増えると、視床下部がコントロールセンターとなっていろいろな臓器や骨格筋、脂肪組織の機能が回復し、身体活動量や代謝が上がります。つまり、加齢に伴って減少するNADを増やし、サーティワンを活性化させることが老化を遅らせるカギとなるのです。
NMNが老化を制御する仕組み
体には、NMNを速やかに体に取り込むトランスポーター(運び屋)となるタンパク質が備わっており、NMNを飲むと体内でNADが増え、サーチュイン(老化や寿命をコントロールする酵素)が活性化されて老化が抑えられる
――人間にも、マウスと同じような効果が期待できるのでしょうか。
今井 ワシントン大学の私の研究室では、長年の同僚であるサミュエル・クライン教授(老年医学・栄養学)の研究室と共同で、糖尿病予備群で肥満かつ閉経後の女性(55~75歳)25人を対象にした第1次臨床試験を実施しました。被験者を2つのグループに分け、NMNかプラセボ(偽薬)を1日250mg 12週間投与し、体の代謝、心臓や血管の状態に関係のある検査数値がどのように変化したかを重点的に調べる高度な解析を行いました。人間の場合は、マウスと違って寿命が長いので、心臓や血管の状態を見る数値が、抗老化効果を見る指標になります。すべての解析は終わっており、現在、論文審査中です。
最初の臨床試験の結果を受けて、第2次の臨床試験も2020年10月からスタートしています。第2次の臨床試験には米国防省の予算がついています。今回は男性も対象にして人数を増やし、糖尿病予備群で肥満の男女56人を対象に被験者を募集中です。
NMNの効果が期待できるのは40~50代以降
――最初の臨床試験で、閉経後の女性を対象にしたのはどうしてですか。
今井 2011年に報告した糖尿病モデルマウスにNMNを投与した研究結果で、マウスではメスのほうがNMN投与による効果が大きいと分かっていたからです。ヒトとマウスが同じかは分かりませんが、肥満で糖尿病予備群の閉経後の女性というように、マウスで効果が見られたのと近い条件を設定しました。
マウスに対する効果になぜ性差があるのかは、まだ分かっていません。一つだけ分かっているのは、私たちが体の中でNADを合成するためにはNAMPT(ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)という酵素が必要で、そのうち血液の中を巡っているNAMPTをeNAMPT(細胞外に分泌されるNAMPT)と言いますが、その量は、マウスのメスではオスの2~3倍多いということです。つまり、メスは何らかの理由で大量のeNAMPTとNADを必要としていて、加齢に伴ってそれらが下がったときに、NMNを補充してNADを若いときに近い水準に戻すと、劇的な効果をもたらすのではないかと推測しています。ヒトに対する効果にも性差があるかは、男性も対象にしている第2次の臨床試験の結果を分析する過程で分かってくると思います。
――NMNを補充してNADを増やすのは、老眼になった、白髪が増えた、太りやすくなったといった老化現象を自覚してからでも間に合うということですか。
今井 マウスの実験から言えることは、人間の20~30代に相当する若い健康体にNMNを飲ませても特に大きな変化はなく、40~50代に相当する中高年になってから非投与群との差が出始めたということです。老化現象を自覚してからでも間に合いますし、ヒトの70代くらいに相当するマウスにNMNを飲ませても身体活動が高まるなどの効果が見られていますので、高齢者が飲んでも老化制御効果が期待できるのではないかと考えています。
――NMNのサプリメントはかなり高価です。NMNはビタミンB3(ナイアシン)からつくられているということですが、安価なナイアシンサプリメントで代用することはできますか。
今井 何か病気があってエネルギー産生に不可欠なNADが減っていると考えられる場合には、ナイアシンだけでも効果がある可能性があり、そのような臨床研究の結果も既に発表されています。ただ、ナイアシンの大量摂取は、肝臓障害を起こしたり、膵臓から分泌されるインスリンの効きが悪くなったりする副作用が出るので要注意です。
――NADを合成するビタミンB3由来のサプリメントとして、米国では「NR(ニコチンアミドリボシド)」も人気のようですが、NRとNMNではどちらがよいのでしょうか。
今井 NRを用いた抗老化研究も世界中で行われており、マウスでは代謝や認知機能の改善などさまざまな抗老化効果が報告されています。ただ、残念ながら、これまで10近い臨床試験の結果が公表されていますが、ヒトに対する抗老化効果が得られたとの報告は皆無です。NRは口から摂るとほぼ100%腸内細菌で分解されてしまうので、サーチュインを活性化するところまで至らないのではないでしょうか。
NMNも腸内細菌で分解されるのですが、その前に、ものすごい速さで血中に取り込まれてNADに変換されることが分かっています。私たちの体には、NMNを速やかに体に取り込むトランスポーター(運び屋)となるタンパク質が備わっていて、口からNMNが入ると速やかに血中に取り込んでNADに変換するのです。
私たち以外にも、大阪大学大学院医学系研究科の樂木宏実先生と中神啓徳先生たちの研究グループなど、すでにNMNの臨床試験の結果を解析中あるいは実施中の研究グループがいくつかあります。その結果が論文報告されれば、NRとNMNの差がはっきりしてくると思います。
老化を遅らせ「ピンピンコロリ」が実現できる時代に
――そもそも老化とは、NADが減少することなのですか。
今井 少し言葉が専門的になりますが、老化は生物の持つロバストネス(頑強性)の減少と崩壊です。ロバストネスは工学用語で、あるシステムの状態を一定のところに保つ能力のことを言います。加齢に伴って組織や臓器の状態が徐々に変化して衰えていくわけですが、そのシステムが弱まり保てなくなるのが老化です。人間を含め、マウス、線虫など生物の老化の引き金になるものが、NADの減少だということが、世界中の抗老化研究者の共通認識になりつつあります。
――NMNでNADを増やせば寿命が延び、若返りも期待できるのでしょうか。
今井 NMNで最大寿命が延びるかどうかはマウスによる研究でもまだ分かっていませんが、少なくとも健康寿命は延ばせるのではないかと考えています。そもそも私が抗老化研究をしているのは、多くの人が健康寿命を延ばして、「プロダクティブ・エイジング」を実現するためです。プロダクティブ・エイジングは、ロバート・N・バトラー博士が言い出した造語で、死ぬ直前まで健康を保って人生を楽しみ、生産性を維持し社会に貢献し続けながら年を重ねること、つまり、日本語で簡単に言えばいわゆる「ピンピンコロリ」を実現することです。
現時点では、老化をなくしたり若返りを図ったりといった、不老不死の実現はできません。それでも、最先端の抗老化研究の成果を社会実装することで、老化を遅らせ、実年齢よりも身体機能を若く保つなど、プロダクティブ・エイジングの実現が可能なところまで来ています。加齢によって減少したNADを増やすことがカギになることは間違いありません。
今井眞一郎さん

ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門教授/神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター・老化機構研究部特任部長。