この本に出会えたことがうれしい。
「アメリカよ、美しく年をとれ」
実は、猿谷要(1923年生まれ)という名前は随分前から見てはいた。そう何十年も前から。週刊誌だったか月刊誌に著者の名前を何度もみた記憶はあった。アメリカのことを書いている人だ、とそこまではぼんやり知っていた。でも、お恥ずかしいことに、その文章の1ページも読んだことはなかった。
先日、某週刊誌で絵本画家の安野光雅氏が猿谷氏が紹介し、この本を推薦していた。
これまで、見ていても素通りだった自分に呆れながら、ま、今出会えたことがうれしい。
著者の長年にわたるアメリカ研究に絡んだエッセイで、2006年に出版された当時は、ブッシュ大統領のアメリカです。その後アメリカは民主党のオバマ氏を大統領として選んだのですから、美しく年を取るための舵を失ってはいなかったということになるのでしょうか。
余談ですが、私が旅行で初めて(というか一度だけですが)アメリカに行ったのは、その選挙の丁度1週間前でした。旅行ガイドさんは、ワシントンのリンカーンの像を案内し、キング牧師が演説したという場所のプレートを説明したあと、「来週は大統領選です」と話題にしていたことを憶えています。そして、彼女は、今オバマ氏の「自叙伝(?ハーバードロースクールのローレビューの編集長になった縁で出版社から誘いがあり書くことになったという本)」を面白く読んでいる、と教えてくれたものです(帰国してすぐに読んだ)。
東部、西部といってもあのアメリカの西半分、東半分ではなく(州名や地名が出てくると巻頭に添付されているアメリカ地図に何度も戻って確認しながら読みました)、テキサス、ニューメキシコ、カルフォルニアなどは、メキシコとの戦争で勝ち取った地域であり、違法難民が押し寄せるといっても、もともとがメキシコだったところというのも妙なものです。
移民が作ったアメリカ合衆国。近い将来、白人が過半数を割ってしまう状況だという。200年程でナンバーワンの国になり、これからどう年月を経ていくのか。アメリカと拘わって65年になるという著者のアメリカへの思いは深い。
60年代以降のアメリカ政治史にも多く触れられており、ニュースなどで、ぼんやりと把握していたことの実態がわかりやすく語られていて、読みやすかった。
■付けたし雑記■
私たちは、欧米という言い方をするけれど、欧州の国々とアメリカは全く異なる性質の国なのだと思う。
アメリカは200年足らずに世界の覇者になった国。長らく「外国との戦争はよいもの」「国を富ませてくれるもの」という経験を持っている国だったのだ。
有能な人材をドンドン受け入れて、経済にも理系にも強いアメリカを拵えていったのだ。もともと移民たちが作った国だから、移民受入れには鷹揚なところがあったのだろう。結果として、豊なアメリカにあこがれて不法移民も押し寄せるのが現実。
強い国(軍事力でも)であるために、西欧や日本などに比して、社会保障の手当が置き去りにされがち。よって貧しさへの手当が薄いのか。本には貧しい層2000万人がいる、とある。軍事費はダントツであり、2位から14位の国の軍事費予算合計額の倍だと書かれている。日本の戦前も軍事費割合が国家予算の中の半分(?)を占めていたとかだったから、私たちは平和憲法下で暮らしてきたけれど、アメリカは世界の警察として多くを割いていた、というわけになるのか。経済に多大なしわ寄せをしながら軍備増強している北朝鮮という国があるけれど、アメリカも2000万人の貧しく捨て置かれている人たちの犠牲の下、世界に君臨し続けてきたというわけか。ルイジアナなど南部諸州は底辺の人たちが多く、そこにハリケーンの襲来があったという記述に、あのときのニュース映像を思い出した。
今、北アフリカで政権転覆はしたものの動乱の中にあるというニュースも耳にする。何故アメリカはこの状態を野放しにしているのか(これまでだったら、なんらかの助っ人として乗り出しただろう)、というフレーズも耳に入った。この本が書かれていた時代だったら、アメリカは乗り出していっていたかもしれない。
オバマの民主党政権に変わって、社会保障にも目配りの比重を置きだしたように思える。また、社会保障の進んだユーロ圏にも経済混乱の火種がある。
遠いところのアレコレを詮索しても、机上でしかないのだけれど、ヨーロッパと別物で、まだ独立して200年余りの世界に冠たるアメリカはどんな国だったかがわかる本だったな、とつくづく思った。
「アメリカよ、美しく年をとれ」
実は、猿谷要(1923年生まれ)という名前は随分前から見てはいた。そう何十年も前から。週刊誌だったか月刊誌に著者の名前を何度もみた記憶はあった。アメリカのことを書いている人だ、とそこまではぼんやり知っていた。でも、お恥ずかしいことに、その文章の1ページも読んだことはなかった。
先日、某週刊誌で絵本画家の安野光雅氏が猿谷氏が紹介し、この本を推薦していた。
これまで、見ていても素通りだった自分に呆れながら、ま、今出会えたことがうれしい。
著者の長年にわたるアメリカ研究に絡んだエッセイで、2006年に出版された当時は、ブッシュ大統領のアメリカです。その後アメリカは民主党のオバマ氏を大統領として選んだのですから、美しく年を取るための舵を失ってはいなかったということになるのでしょうか。
余談ですが、私が旅行で初めて(というか一度だけですが)アメリカに行ったのは、その選挙の丁度1週間前でした。旅行ガイドさんは、ワシントンのリンカーンの像を案内し、キング牧師が演説したという場所のプレートを説明したあと、「来週は大統領選です」と話題にしていたことを憶えています。そして、彼女は、今オバマ氏の「自叙伝(?ハーバードロースクールのローレビューの編集長になった縁で出版社から誘いがあり書くことになったという本)」を面白く読んでいる、と教えてくれたものです(帰国してすぐに読んだ)。
東部、西部といってもあのアメリカの西半分、東半分ではなく(州名や地名が出てくると巻頭に添付されているアメリカ地図に何度も戻って確認しながら読みました)、テキサス、ニューメキシコ、カルフォルニアなどは、メキシコとの戦争で勝ち取った地域であり、違法難民が押し寄せるといっても、もともとがメキシコだったところというのも妙なものです。
移民が作ったアメリカ合衆国。近い将来、白人が過半数を割ってしまう状況だという。200年程でナンバーワンの国になり、これからどう年月を経ていくのか。アメリカと拘わって65年になるという著者のアメリカへの思いは深い。
60年代以降のアメリカ政治史にも多く触れられており、ニュースなどで、ぼんやりと把握していたことの実態がわかりやすく語られていて、読みやすかった。
■付けたし雑記■
私たちは、欧米という言い方をするけれど、欧州の国々とアメリカは全く異なる性質の国なのだと思う。
アメリカは200年足らずに世界の覇者になった国。長らく「外国との戦争はよいもの」「国を富ませてくれるもの」という経験を持っている国だったのだ。
有能な人材をドンドン受け入れて、経済にも理系にも強いアメリカを拵えていったのだ。もともと移民たちが作った国だから、移民受入れには鷹揚なところがあったのだろう。結果として、豊なアメリカにあこがれて不法移民も押し寄せるのが現実。
強い国(軍事力でも)であるために、西欧や日本などに比して、社会保障の手当が置き去りにされがち。よって貧しさへの手当が薄いのか。本には貧しい層2000万人がいる、とある。軍事費はダントツであり、2位から14位の国の軍事費予算合計額の倍だと書かれている。日本の戦前も軍事費割合が国家予算の中の半分(?)を占めていたとかだったから、私たちは平和憲法下で暮らしてきたけれど、アメリカは世界の警察として多くを割いていた、というわけになるのか。経済に多大なしわ寄せをしながら軍備増強している北朝鮮という国があるけれど、アメリカも2000万人の貧しく捨て置かれている人たちの犠牲の下、世界に君臨し続けてきたというわけか。ルイジアナなど南部諸州は底辺の人たちが多く、そこにハリケーンの襲来があったという記述に、あのときのニュース映像を思い出した。
今、北アフリカで政権転覆はしたものの動乱の中にあるというニュースも耳にする。何故アメリカはこの状態を野放しにしているのか(これまでだったら、なんらかの助っ人として乗り出しただろう)、というフレーズも耳に入った。この本が書かれていた時代だったら、アメリカは乗り出していっていたかもしれない。
オバマの民主党政権に変わって、社会保障にも目配りの比重を置きだしたように思える。また、社会保障の進んだユーロ圏にも経済混乱の火種がある。
遠いところのアレコレを詮索しても、机上でしかないのだけれど、ヨーロッパと別物で、まだ独立して200年余りの世界に冠たるアメリカはどんな国だったかがわかる本だったな、とつくづく思った。
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