変形労働時間制のひとつ、1年単位は制約の多い労働時間制度の例外規定です。制約が多い割には、中小零細企業に使用例がおおく、もっぱら週6日制を多用する目的と思われます。すなわち盆暮れ休みさせた分を、通期の土曜出勤にあてるという構図です。締結した協定書写しは労基署に届出書に添付。また就業規則にも変形労働時間制をとる場合の始業終業時刻、休憩時間帯、休日の定めを規定しおく必要があります。それでは、協定事項等を見ていきましょう。
協定事項
- 対象労働者の範囲
- 対象期間
- 特定期間(定めなくても可、対象期間のほとんどとするのは不可)
- 労働日とその各日の労働時間
- 有効期間(労働協約による場合を除く)
1年単位、元は3カ月単位の変形労働時間制でした。平成5年の労基法改正で、3カ月から1年に伸長し、変形期間3カ月以内であれば一部制約フリーの部分が生じたわけです。その違いを見ていきましょう。
項目 | 変形期間3カ月以内 | 3カ月超える変形期間 |
対象労働者 | 18歳未満は不可(日8時間週48時間以下であれば可)妊産婦の請求があれば週40時間、日8時間以下に限る | |
対象期間 | 1か月を超え1年以内 | |
労働日と労働時間の特定 | 全期間の労働日と労働時間を決定しておく ただし、1カ月以上の期間に区分して・最初の期間における労働日、労働日ごとの労働時間・次の期間以降の各期間の労働日数、各期間の総労働時間を協定しておくことで、次期以降の各期間初日30日前に各期間の労働日、各労働日の労働時間を労働者代表の同意をえる例外運用が可能。 | |
総労働日数の限度 | (制限なし) | 年280日(1年より短い対象期間は、按分比例した日数) 旧協定での1日または1週間の労働時間よりも、新協定の労働時間を長く定め、かつ日9時間または週48時間を超えることとした場合、280日または旧協定の総労働日数から1日減じた日数のいずれか少ない日数としなければならない。 |
日、週の労働時間の限度 | 日10時間、週52時間が限度 隔日タクシー運転業務は1日16時間まで | 左のほか※ ・週48時超える所定労働時間の設定は、連続3週以内 ・対象期間の初日から3カ月区切った各期間において、週48時間を超える所定労働時間を設けた週の初日は3以内 (ここでいう週は、対象期間の初日の曜日を起算日とする7日間を指す) 指定降雪地域の建設業の屋外労働者(およびその現場に出入りする貨物自動車運転業務)は非適用 |
対象期間の連続労働日数 | 最長6日まで。協定に特定期間*を設ければ1週間に1休日確保で可。 | |
36協定時間外労働の協定上限 | 月45時間、年360時間 | 月42時間、年320時間 |
・特定期間*は計測可能とするため、週を単位に期間指定することが望ましいと思われます。
対象期間の途中で出入りする労働者には、日、週で時間外労働としなかった時間が、在籍期間からもとまる法定総枠超えしている場合は、割増賃金つけて清算する義務があります(労基法32条の4の2)。これは同一事業場の、ことなるカレンダーを使用している部署異動にも適用されます。
48時間超える週の制限について
対象期間の初日の曜日を週の起算曜日として区切り、
- 48時間超えの週が連続3週以内、
- 対象期間の初日から3カ月ごとに区切り、48時間超える週の初日が3以下
2.がわかりづらいですが、要するに3カ月跨ぎの週は、その週の初日が属する3カ月期間にカウントするという意味です。下表は1月1日開始1年単位の変形労働時間制です。開始日の1/1と同曜日で週を区切り、48時間超えの週をピックアップし、3カ月ごとに48時間こえる週の初日が3回以下とする制限があります。下表によれば、1月~3月の3カ月の48時間超えの週が3週連続し、かつほかに48時間超えの週が同3カ月内にありませんので、適合。4月~6月の3カ月期間内に6/25の週が48時間超え週のカウントに入りますので、不適合となります。
週 | 40時間 | 48h | 52h | |
1/1~ | ||||
1/8~ | 1回目 | |||
1/15~ | 2回目 | |||
1/22~ | 3回目 | |||
1/29~ | ||||
… | ||||
3/26~ | ||||
4/2~ | 1回目 | |||
… | ||||
5/14~ | 2回目 | |||
5/21~ | 3回目 | |||
… | ||||
6/25~ | 4回目(不可) | |||
7/2~ | ||||
(2021年5月1日投稿 2023年10月30日投稿)