労働法の散歩道

yahoo知恵袋で回答していて、繰り返し同じ投稿するロスを減らすために資料室としてもうけました。

高年齢雇用継続給付金

2021-04-03 09:07:45 | 雇用保険

同一労働同一賃金とやらで、将来的には縮小廃止の方向がきまっています(※)が、簡単に制度説明してみます。

60歳になる前の最後の半年間の月平均賃金をベースに、60歳から65歳に達するまでの月々の賃金額が75%(低下率)を割り込むと、給付金が発生し、低下率61%で最高の支給率(15%)に達します。低下率に応じ支給率が算出され、算出された支給率(~15%)を月額賃金に乗じて支給額がはじき出されます。

ベースとなる60歳前賃金額には、下限額と上限額が決まっています。下限額を割り込む場合は下限額が、上限額を上回っている場合は上限額が60歳前到達賃金となります(*1 例:到達賃金が480千円なら上限額の478,500円(R4/8~R5/7値)に置き換わる。)。これら月額賃金には月割りの通勤手当も込みとなります。ただ6カ月定期券等でまとめて支払われるときは、60歳到達前賃金には含まれますが、60歳後の月々の賃金に計上されるのは、最初に支払われるときからとなります。

それをベースに60歳後の月々の支払賃金が何%低下したか低下率が求められ、それに応じて支給率が定められます。なお欠勤等で賃金を受けない部分があると、その部分は賃金支払いを受けたものとしてみなし賃金額でもって、低下率を算出します。それに対する支給率は実際の賃金に乗じます。要するに欠勤控除による低めの低下率でなく、払われたとみなす高めの低下率を採用します。

支給率に毎月の月額賃金を乗じた額が給付金となりますが、これにも最低支給額と最高支給額が決められており、最低支給額を下回ると給付金は0円、最高支給額を上回るとある計算式の下で減額となります。また特別支給の厚生老齢年金を受けていると、年金のほうが調整減額となります(標準報酬月額の6%(令和5年現在))。

これら下限額、上限額、最低支給額は毎年8月に見直されます(表4参照)。2021年8月の上限額が一時期さがったのも、2020年のコロナ禍により労働市場へのダメージがいかに大きかったかがわかります。

60歳以降65歳前までの各月賃金額*1 ÷ 60歳前平均賃金月額 = 低下率%

低下率%(61%~75%) ⇒ 支給率%(15%~0%)

*1 × 支給率% = 支給額*2

*1+*2の和に限度額あり。上回ると限度額になるよう支給額減額。各月賃金そのものが限度額を上回るときは、支給されない。(ブログ者注:現行計算過程では、この制限に達するケースはないと思われます。)

*2に最低支給額あり。下回ると0円

【表1】各月賃金同一で、60歳前賃金がことなる場合

60歳前賃金(千円)(a) 480 440 400 390
各月賃金(千円)(b) 290
低下率(=b/a) 60.4% 65.9% 72.5% 74.4%
支給率(c) 15.0% 9.01% 2.25% 0.56%
支給額(円)
d(=b×c)
43,500 26,129 6,525 0(*1)
補填率(=d/a) 9.06% 5.94% 1.63% 0%

注*1)最低支給額を下回ったので支給額は0円(上限額、下限額、最低支給額はR4/8当時の額をもって計算)

【表2】各月賃金が増減する場合

60歳前賃金(千円)(a) 350
各月賃金(千円)(b) 210 230 250 260
低下率(=b/a) 60.0% 65.7% 71.4% 74.3%
支給率(c) 15.0% 9.24% 3.27% 0.62%
支給額(円)
d(=b×c)
31,500 21,252 8,175 0(*1)
補填率(=d/a) 9.00% 6.07% 2.34% 0%

注*1)最低支給額を下回ったので支給額は0円(上限額、下限額、最低支給額はR4/8当時の額をもって計算)

概算にて説明しますと、最大乗率適用する15%は、6割賃金に乗じますので、40%カットに対し9%補填(=60歳前賃金×0.6×0.15)という関係です。60歳前賃金が上限額こえてますと、補填率は低まります。支給率15%でも、各月賃金に乗じますので、賃金そのものが低ければ支給額は低まります。


手続きは定年に達したとき、マイナンバー、本人確認(免許証コピー)、通帳コピーをそろえ勤務先に依頼してしてもらいます。以後、65歳に達するまでふた月に1度のペースでの手続きになります。なお受給資格の要件の一つに、有効な被保険者期間が5年以上ある必要があります。過去に失業して求職手続きをしたり、被保険者資格をもたずに1年あけた場合、過去の期間がリセットされ、0年スタートとなります。再就職して65歳になるまでに、被保険者期間5年を満たせば受給開始となりますが、60歳到達前賃金はその5年達成時点前の半年間の賃金額をベースとします。


最後によく受ける相談で多いのは、60歳定年後年金給付金を多くもらえる方法はどうしたらいいのかという問い合わせです。支払われる給与、もらえる年金給付金だけでなく、差し引かれる社会保険料・税金も視野にいれてトータルに考えないとあとあと大損となってしまうかもしれません。そこまでいうと人それぞれですし、なんともいえません。ある専門家に言わせると、月収26万円の人と、同36万円の人とでは、最終手取りはほとんどかわらないとか。もちろんリタイアしたあとの年金も勘定にいれたたらまた違ってくるでしょう。

こういった仕組みをいったん脇に置いて、給付金だけを平たく説明すると、ある範囲の給与が前月より1000円増える(減る)と、給付金は500円減る(増える)関係にあります。賃金手取り+受給額の合計の伸びは緩やかに増え(減り)する関係にあります。そうすると以上の説明からして、給付金・年金など目もくれずにかせげるときに目一杯稼いでおくのが正解と言えるでしょう。働けどかせげないときに差し伸べられる制度だと。なお欠勤等は、出勤したものとしてみなしての賃金額に補正されますので、欠勤分減給がそのまま低下率にはなりません。

相対額は以上のとおりですが、絶対額で説明すると、60歳前5年の被保険者期間があり、同じく60歳前の半年間、平均月額が上限額(48万6千円あたり)以上の賃金を受け、60歳以降、上限額の61%相当賃金(29万6千円あたり)を受けるなら、最大の受給額(約44,400円)となります。

【計算流れ(概算)】

296千円÷486千円=61%(低下率)
低下率61% ⇒ 支給率15%
296千円×15%=44.4千円

【表3】 詳細な計算流れは次のとおりとなります。

低下率(%)=月々の賃金額(月割り交通費・みなしを含む)÷60歳前到達賃金額×100

支給率(%)=(-183×低下率(%)+13725)÷(280×低下率(%))×100

月額賃金290千円、60歳前賃金470千円で計算してみますと

低下率=290000÷470000×100=61.702⇒61.70

支給率=(-183×61.70+13725)÷(280×61.70)×100=14.088⇒14.09

支給額=290000×14.09÷100=40,861

低下率・支給率(%)は小数点以下第3位を四捨五入、支給額は円未満切り捨て

【表4】過去7年の上限額、下限額、最低支給額の推移

  aの上限額 aの下限額 最低支給額
R6.8.1~ 494,700 86,070 2,295
R5.8.1~ 486,300 82,380 2,196
R4.8.1~ 478,500 79,710 2,125
R3.8.1~ 473,100 77,310 2,061
R2.8.1~ 479,100 77,200 2,059
R1.8.1~ 476,700 75,000 2,000
H30.8.1~ 472,200 74,400 1,984
H29.8.1~ 469,500 74,100 1,976
H28.8.1~ 445,800 68,700 1,832

【表5】高年齢雇用継続給付制度の変遷

年次 1995(平7)年4月 2003(平15)年5月 2025(令7)年4月
支給率 月額賃金の25%(最高) 同15%(最高) 同10%(最高)
支給非対象 逓減率85%以上 同75%以上 左同

※制度化された1995年当時は支給率25%。令和7年度に支給額が半減し、令和12年度からは廃止される予定です。

お断り:本ページは、制度理解の助けを目的とし、正確な内容についてはハロワーの説明を受けるか、ハロワー配布手引き、厚生労働省サイト高年齢雇用継続給付Q&Aをご覧ください。

(2021年4月3日投稿・2024年8月5日編集)

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