労働法の散歩道

yahoo知恵袋で回答していて、繰り返し同じ投稿するロスを減らすために資料室としてもうけました。

労基法の有期雇用契約

2021-12-11 09:01:08 | 労働条件

労基法には、労働者保護を名目に有期雇用契約に各種の制限を設けています。

長期契約制限

ひとつは1の契約において3年を超える長期有期契約を禁止しています(14条)。やむを得ない事情がないかぎり退職できず長期拘束をともなうからです。なお1年契約等であれば、繰り返し更新して通算3年超えてもこの制限にかかりません。

ただし長期契約の例外として、

  • 事業の完了が見込まれる有期事業にて雇用する契約
  • 専門知識、技術経験を活かしてもらう厚労大臣基準の資格をもつ労働者との契約(後述)
  • 60歳以上の労働者との契約

があります。前1者は必要とする期間、後2者は最長5年となります。前者はダム工事期間中等、プロジェクトの終結がはっきりしていることが条件で、必要とする期間例えば、7年、10年という長期契約を結ぶことができます。

さらに有期雇用に関する法的対処を講ずるまでの経過措置として、上にあげた3つの例外以外の雇用契約で、1年を超える期間の雇用契約は、やむを得ない事情(民628条)がなくても、1年を経過した日以降、いつでも即日退職する権利を労働者に付与しました(137条)。これにより1年を超える有期契約をみかけなくなったゆえんです。それにしてもこれが盛り込まれた平成15年改正法から今にいたるまで、有期短時間雇用について法的整備が順次なされてきたものの、この面の法的措置についてなんらかの形になされないのは残念なものです。

有期最長5年を結べる専門的知識を有する例(限定列挙)

  • 博士号の学位を有し、その専門知識を活かせる業務
  • 国家資格を有し、その専門知識を活かせる業務(公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士、弁理士)
  • システムアナリスト、アクチュアリー
  • 特許発明者、登録意匠創出者、登録品種育成者
  • 人文系をのぞき所定の学科を修め従事させる業務の所定年数経験のある者(年収1075万円以上)
  • すぐれた知識技術経験を持つ者として国等により認定を受けた者

更新基準の明示

雇入れ時に労働条件を明記した書面でもって労働者になる人に交付せねばなりません。更新するときも同様です。別ページにも書きましたが、更新後交付でなく、次期更新をきめたならその場で交付義務が発生します。明記する労働条件は法令で定められていますが、有期雇用にあっては契約期間だけでなく、次回更新の有無、更新有りなら更新する判断基準の条件を具体的に記載せねばなりません。これは平成25年4月施行規則改正により、大臣告示の紛争防止基準(いわゆる努力義務)から法定義務となりました。

更新の有無 更新判断基準の例
  • 更新しない
  • 自動的に更新する
  • 更新する場合がある
  • 契約期間満了時の業務量による
  • 労働者の勤務成績、態度による
  • 労働者の能力による
  • 会社の経営状況による
  • 従事している業務の進捗状況による

有期雇用にあっては、ちょっとしたことでいさかいがたえないので、個別労使紛争への発展することへの抑止を目的に、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が設けられています(労働基準法14条2項を根拠として大臣告示。「紛争防止基準」と呼ばせてもらってます)。ここでいう雇止めとは契約にもうけられていた期間終期において、新しい契約を結ばない更新しないことを言い、期間途中で契約解除する解雇とは区別します。労働契約法で、雇止めが無期雇用者の解雇と同視される場合についての扱いを述べていますが、あくまでも雇止めです。

雇止め予告

更新する場合がある有期雇用契約において、次のひとつにでもあてはまる場合は、雇止め30日前予告を勧告しています。

  該当するケース 該当しない例
3回以上更新している場合 2回更新して、3回目の更新を前にする雇止め(次項にあたる場合をのぞく)
契約更新して継続通算1年を超える場合 契約期間満了時の雇用期間がちょうど通算1年になる雇止め(前項にあたる場合をのぞく)
1年を超える有期雇用契約の場合 契約当初から更新しない契約
  この終期をもって雇止めする場合の30日前通告対象契約
  以後同様
契約期間
1年 1年未満 1年超
6カ月 8カ月 2カ月
タイプB   タイプB   タイプC
 
タイプA
タイプB  
   
 
         
 
 
   
   

自動更新

有期の労働契約にあって自動更新とは、どういう契約を結ぶのか疑問でしたが、次の例のようになります。

第 条  本契約の終期1か月以上前に一方が他方に書面にて期間満期をもって契約の終了を通知することがなければ、本契約終期の翌日において同一条件で更新するものとし、以後同様とする。

あらたな疑問です。自動更新で契約をあたらしく起こすことはありませんが、では更新のたび書面交付義務は消えるのでしょうか。労働条件通知書を都度渡しておく、という安全パイで。令和6年4月施行の労働条件通知書の記載項目に対応するには、毎回ではありませんが、無期転換権発生対応等応じなければならなくなりました。また、助成金対応ですとそれに応じた自動更新条項にしておく必要がありますので、官庁に事前問い合わせください。

追補

令和6年4月、雇い入れ通知書および紛争防止基準等に、あらたな項目が増えました。( ⇒ 下記関連記事参照)

(2021年12月11日投稿、2024年6月17日編集)

関連記事

労働条件通知書(有期雇用向け)

2022.12労政審議会報告

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