そんな死語は沢山あるのです。まさに死屍累々です。
ちゃぶ台(卓袱台)
畳敷きの居間で、丸や長四角の板に折り畳みの足が四本ついた食卓。パソコンで卓袱台と出てくるぐらい卑近な名詞だったのですが、今じゃそんなのはありえない。そんなおうちがあったとしたら、調査研究委員会が調査団を派遣しなくてはならないのです。
天板がデコラ張りだったりして。このデコラというのが何ともチープな感じなのです。
ちゃぶ台をひっくり返すという奴がいます。切れやすい男なのか、主人なのか、家族で飯を食べているのにちゃぶ台をひっくり返してしまいます。みんなのご飯や、鰺の開きの食べかけや、ショーユ注ぎや、お椀のおみおつけが畳の上に散乱します。黄色のおこーこも。
お豆腐のおみおつけという言い方なんかもとってもレトロなんです。
今じゃ、ちゃぶ台をひっくり返す奴はいません。そんな強気な男は一人もいません。奥さんから、全部自分で掃除しなと、怒られるのです。
お櫃
炊き上がった銀しゃりを、釜から出して、木のお櫃に移して湯気などを落ち着かせ、そののち、茶碗によそって食べます。
リゾートホテルの朝食などで、こういうお給仕をされると、朝から嬉しく、これぞ日本の原点という喜びに浸れるのです。
でも、ホテルもさまざまで、セルフの朝食のところなど、大きな業務用電気釜からお客がほしいだけ自分でよそいます。
しゃもじが、水の容器に突っ込んであったりします。ふやけた飯つぶとともに。
今は、普通の家庭では、電気釜からじかに茶碗によそいます。
土瓶
土瓶でお湯を沸かし、茶葉をいれた急須で茶を出して飲みます。この土瓶というのもすっかり出番がなくなりました。お湯は、魔法瓶の時代からポットの時代になり、土瓶も薬缶も失業してしまったのです。薬缶は、土瓶の代用品、形をアルミでつくったものです。
芸人で「なべやかん」というのがいました。なべおさみの息子でした。そいつもでてこなくなりましたが、もうじき、ヤカンて何のこと?というようになるでしょう。
蛇足ですが、ちゃびんという言葉があります。私の想像では、多分、急須の役目をする軽便な器だと思うのです。
禿げの蔑称ではありません。
からかみ
ふすまのことをからかみといいます。障子は障子紙。ふすまは唐紙です。からかみをあける。
川端康成の雪国じゃないが、からかみをあけると、そこは押入れだった。こういう言い方が普通だったのですが、今じゃからかみといっても、何のことやらわかりません。大昔、遣唐使が唐に渡り、彼の地の先進文化を持ちかえったその中に、唐紙があったのでしょう。舶来品だったらしいのです。
古い言葉、古い言い方、古い名前。こんなのに愛着をおぼえるのは、人間が古い証拠でしょうか。でも、過去のある時期、厳然として存在した言葉の記憶、記録、残したく思います。
皆さん、こういう古いものの例を発掘しませんか。
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Margarida Y.F
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