【107】 2月9日(木)
小森千晶 細川直美
本間あかり つみきみほ
花山信太 林 泰文
本間洋一郎 笹野高史
本間二郎 三波豊和
本間三郎 丹羽貞仁
産婆 青木和子
小森晶乃 岸田今日子
・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★
湖水館。
都座から千晶と信太が駆けつけると、あかりの陣痛が始まっていた。
「20日も早い、気の早ええ子供だで」と二郎。
あかりの部屋の前では洋一郎、三郎がうろうろしている。
部屋に入るとちょうどあかりの陣痛は治まっているところだった。
順調なの?と千晶が訊くと、産婆さんが
「ちょっと出血があったで、油断はなんね、今日中には出てくるじゃろ。
まあ本人のがんばりしかないわな」
信太もちゃっかり千晶と部屋に入ってきていたが
産婆さんに「男の入ってくるところでない!」と注意され、すごすご出て行く。
あかりは「ちょっとだけ千晶と2人にして」と産婆さんに頼み、
産婆さんは、階下の帳場に行く。
産婆さんは、ソファーに正座している。
産婆さんの
「陣痛が早すぎるのと出血が気がかり、
もし赤ちゃんが出てきても出血が続くようなら、お医者さんを呼ばないと」
と説明する。
洋一郎は
「おしげさん(産婆)、どっちか一方だけしか助からん時は母体の方、
娘の方を頼むでね!」
「父ちゃん!」 「万が一だわ!」
あかりの部屋。
あかり「おしげさん、私達兄妹四人とも取り上げてくれたの。
この子、無事産まれてくるかしら、何だか怖いわ。
20日も早いしまだ育ってないかも知れない
産まれてくる力が無いかもしれないじゃないの。
あたしは新でもいいからこの子だけは無事に産まれてほしい」
千晶は励ますが
あかりは「あたしが死んだら、千晶を許さないままになってたわね。
そんな哀しいことはないわ。
千晶は何も悪いことしてないのに。 勝手に逆恨みして。
でもこの子が無事に産まれてきたら許せる気がする。それでいい?
そうさせてお願い。・・・・千晶、私が死んだら千晶がこの子を育てて。
約束して、私の代わりに母になってくれるって。
そしたら安心して死ねるわ。」
千晶 「わかりました」
あかり「ありがとう」
千晶 「駄々っ子みたい」
以前はあかりが振り払った千晶の手を、あかりが自ら握る。
するとあかりは千晶の腕の時計を見つけ「買ったの?」と聞く。
千晶 「間宮さんにもらったの。」
あかり「へえ、すごい。」
千晶 「自動巻腕時計第一号よ。」
あかり「そんな貴重なもの千晶に? 東京でなにかあったの?」
千晶 「何にもないわ」
あかり「千晶は何でも隠すんだから。ひょっとして何も成長してないんじゃないのぉ~
浩平さん、千晶のこと好きなんでしょう?」
千晶 「そんなこというんなら帰るわよ」
あかり「いいわよ」
千晶 「子どもも育てないわよ」
あかり「いいわよ かーえれ、かーえれ」とふざけあう。
そこへ晶乃が来る。
「女手があったほうがいいと思ってね 出産は女の一大事。
殿方が雁首並べてもどうにもならないわ」
あかりは「あたしのためにありがとうございます」と言うが
晶乃は「”あたし”の為じゃないの、女のために来たのよ」と言う。
そして「千晶、あかりさんががんばって赤ちゃんを産み落とすところ見とくのよ。
(あかりのお腹をいとおしそうになでながら)さあ!
いつでも出てらっしゃい!」と頼もしく言う。
帳場、男四人。
洋一郎「三郎、お湯は沸いてるか?
花山君、きみの仕事、力になるよ。
いっそ身内になっちまったらどうだね?」
二郎 「何考えてるんだおやじ」
洋一郎「万に一つってこともあるからな。
あかりを嫁に・・・」などと言っていると
おぎゃあ とゲンキな産声
「あかり!」「生まれた!」「お湯だ!」「でかした!」と大騒ぎ。
昭和25年5月13日日曜日大安吉日夜8時8分
男の子誕生、母子ともに健在でした
小森千晶 細川直美
本間あかり つみきみほ
花山信太 林 泰文
本間洋一郎 笹野高史
本間二郎 三波豊和
本間三郎 丹羽貞仁
産婆 青木和子
小森晶乃 岸田今日子
・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★
湖水館。
都座から千晶と信太が駆けつけると、あかりの陣痛が始まっていた。
「20日も早い、気の早ええ子供だで」と二郎。
あかりの部屋の前では洋一郎、三郎がうろうろしている。
部屋に入るとちょうどあかりの陣痛は治まっているところだった。
順調なの?と千晶が訊くと、産婆さんが
「ちょっと出血があったで、油断はなんね、今日中には出てくるじゃろ。
まあ本人のがんばりしかないわな」
信太もちゃっかり千晶と部屋に入ってきていたが
産婆さんに「男の入ってくるところでない!」と注意され、すごすご出て行く。
あかりは「ちょっとだけ千晶と2人にして」と産婆さんに頼み、
産婆さんは、階下の帳場に行く。
産婆さんは、ソファーに正座している。
産婆さんの
「陣痛が早すぎるのと出血が気がかり、
もし赤ちゃんが出てきても出血が続くようなら、お医者さんを呼ばないと」
と説明する。
洋一郎は
「おしげさん(産婆)、どっちか一方だけしか助からん時は母体の方、
娘の方を頼むでね!」
「父ちゃん!」 「万が一だわ!」
あかりの部屋。
あかり「おしげさん、私達兄妹四人とも取り上げてくれたの。
この子、無事産まれてくるかしら、何だか怖いわ。
20日も早いしまだ育ってないかも知れない
産まれてくる力が無いかもしれないじゃないの。
あたしは新でもいいからこの子だけは無事に産まれてほしい」
千晶は励ますが
あかりは「あたしが死んだら、千晶を許さないままになってたわね。
そんな哀しいことはないわ。
千晶は何も悪いことしてないのに。 勝手に逆恨みして。
でもこの子が無事に産まれてきたら許せる気がする。それでいい?
そうさせてお願い。・・・・千晶、私が死んだら千晶がこの子を育てて。
約束して、私の代わりに母になってくれるって。
そしたら安心して死ねるわ。」
千晶 「わかりました」
あかり「ありがとう」
千晶 「駄々っ子みたい」
以前はあかりが振り払った千晶の手を、あかりが自ら握る。
するとあかりは千晶の腕の時計を見つけ「買ったの?」と聞く。
千晶 「間宮さんにもらったの。」
あかり「へえ、すごい。」
千晶 「自動巻腕時計第一号よ。」
あかり「そんな貴重なもの千晶に? 東京でなにかあったの?」
千晶 「何にもないわ」
あかり「千晶は何でも隠すんだから。ひょっとして何も成長してないんじゃないのぉ~
浩平さん、千晶のこと好きなんでしょう?」
千晶 「そんなこというんなら帰るわよ」
あかり「いいわよ」
千晶 「子どもも育てないわよ」
あかり「いいわよ かーえれ、かーえれ」とふざけあう。
そこへ晶乃が来る。
「女手があったほうがいいと思ってね 出産は女の一大事。
殿方が雁首並べてもどうにもならないわ」
あかりは「あたしのためにありがとうございます」と言うが
晶乃は「”あたし”の為じゃないの、女のために来たのよ」と言う。
そして「千晶、あかりさんががんばって赤ちゃんを産み落とすところ見とくのよ。
(あかりのお腹をいとおしそうになでながら)さあ!
いつでも出てらっしゃい!」と頼もしく言う。
帳場、男四人。
洋一郎「三郎、お湯は沸いてるか?
花山君、きみの仕事、力になるよ。
いっそ身内になっちまったらどうだね?」
二郎 「何考えてるんだおやじ」
洋一郎「万に一つってこともあるからな。
あかりを嫁に・・・」などと言っていると
おぎゃあ とゲンキな産声
「あかり!」「生まれた!」「お湯だ!」「でかした!」と大騒ぎ。
昭和25年5月13日日曜日大安吉日夜8時8分
男の子誕生、母子ともに健在でした