ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

■『かりん』 第17週 (92)

2006-01-23 14:12:46 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【92】 1月23日(月)

作    松原敏春
音楽  渡辺俊幸 コンセール・レニエ(演奏)
主題歌 井上陽水
語り   松平定知アナウンサー 


時代考証 小野一成
方言指導 有賀ひろみ
資料協力 牛山尭雄 ・岡本英治 



小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
田上 渉  筒井道隆
池田文江  もたいまさこ
川原清三  河西健司
藤原    沖 恂一郎(中野の もと小森屋の卸問屋)
英      出雲崎 良
花江    佐藤春日(だるま食堂のお運びさん)
郵便配達員 角谷栄次(渉からのエア・メールを配達)
看守    田辺日太  刑務所の看守

      鳳プロ

小森弥之助 小林桂樹
野中辰彦  児玉 清
黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二



制作統括  西村与志木

美術    荒川 敬   
技術    三島泰明
音響効果  平塚 清
記録・編集 阿部 格   
撮影    熊木良次
照明    関 康明
音声    本 弘
映像技術  沼田繁晴 

演出    田中賢ニ・六山浩一


解説(副音声) 関根信昭

 
・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

何通かの手紙の中に、「田上渉」の字を見た千晶は裏庭に行き手紙を読む。

  ハロー小森。ハリウッドは今、夜。
      オレは眠い目をこすりながらこの手紙を書いている、いい知らせだ。
      オレはパラマウント社に採用された

ちょうど浩平がやって来て、渉からの手紙を見せる千晶。
「良かったわ」「本当に、本心から?」
「もちろん」
「好きな人がアメリカに渡って骨をうずめる覚悟だと書いてきてるんだよ」
「皮肉な言い方をするんですね。田上君自分の夢が現実になったんですもの
 良かったに決まってるじゃない」
「じゃ、もひとつ皮肉な言い方を。君の思いはどうなるんだ?
 そんなに深く思ってはいなかったということじゃないか?」
気分を害して席をたつ千晶。
「君は強いよ」と更に話し掛ける浩平。「また皮肉?」
「本心から。お母さんが亡くなって田上君がアメリカに渡っても
 笑顔で仕事に打ち込もうとしている。見習わないとね。
 ボクをガラクタじゃないと言ってくれたよね。嬉しかった。
 何か1つを完成させて自分がガラクタじゃないことを証明しようと
 思って・・・・ ガラクタ人間の卒業だ」

夜、布団の中で渉の手紙を思い起こす千晶。
  「日本には二度と帰らないつもりで、やれるところまでやってみる。
   もう会うことも無いだろうが、
   GOING MY WAY で頑張ってくれ」
 

翌日、もと小森屋の卸問屋をしていた中野の藤原さんが、
だるま食堂を訪問する。
3月31日の配給公団の解散に向けてアドバイスに来たのだ。
中野の藤原さんは、自分達もと卸問屋の5軒は、再開できないかわりに
他の小売店に
「小森屋のお嬢さんが根津の方で食堂をやっているから
 時間があったら、いって見てくれ」と紹介していたのだった。
何人も食べに来ていて「さすが弥之助さんの味噌だ」と評判はよく、
何軒かが「小森屋さんの味噌を扱わせてもらえないか」
と言って来ているというのだ。
藤原さんは近々連れてきて会わせるから と言ってくれる。

更に、配給公団が解散になったら、かつての問屋だった人が、
小売店と製造元の奪い合いになり、落ちこぼれになる人もいるから
そこに食い込むといいとアドバイスをくれる。


小森屋味噌蔵

友行が千晶からの電話の内容を弥之助に知らせにくるが、
ちょっと様子が違い はしゃいでいる。
「お義父さん、いい話なんです。聞きたいって言って下さいよー」

夕飯時
「問屋さんがだるま食堂に集まるのは明後日なんですよ」と友行。
弥之助は「友さん、顔つなぎにいってくれ」と頼む。
友行は妙に張り切り
「そうですよね。行ってきます、浩平さんの件もあるんで」と言うが
晶乃は
「まだ、縁談はちょっと・・ね。晶子が亡くなったばかりだし」と釘をさすが
「わかってますよー。なんとなくですよ、なんとなく聞くんです。」と
まだ食事中なのに「えーと、汽車の時間、帰社の時間」と立ち上がる。
そして、戻って来てたくあんを立ったまま齧り、うろうろする。

その様子に顔を見合わせる弥之助と晶乃、清三と英。
「友行さん、このところちょっとはしゃぎすぎなんですよ」


友行は東京に向かう汽車の中でポケットウイスキーを飲んでいる。
しかし、その表情は今度はとても硬く、何かを考え込んでいる。


東京についた友行がまず向かったのは刑務所だった。
面会室に、野中が看守に連れられてやってくる。
まず頭を下げる野中。

   「小森友行です」
   「野中辰彦です」


(つづく)

『かりん』(91) ★浩平さんはガラクタなんかじゃない

2006-01-21 21:21:21 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【91】 1月21日(土) ★浩平さんはガラクタなんかじゃない

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
池田文江  もたいまさこ
原口祥子  あめくみちこ
小森弥之助 小林桂樹
川原清三  河西健司
英     出雲崎 良
花江    佐藤春日(だるま食堂のお運びさん)
郵便配達員 角谷栄次  渉からのエア・メールを配達

      鳳プロ

黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森晶子  十朱文代
小森友行  石坂浩二

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

「こういう時にアレなんだけど悪い知らせがあるの。
 消費者友の会は 解散しました」
「何があったんだ」浩平が質す。
「内部分裂ね。あたしなりにずいぶん我慢したんだけど」
消費者友の会の会長は
”戦前からの女性解放運動家で 議論好きの頭でっかちな実践の伴わない”人で
祥子とは意見があわなかったようだ。

「でも、発展的な解散だから、あたしが中心となってまた活動を開始するの。
 メンバーも5人ついてきてくれるし ルートも握っている。
 で、浩平、手伝ってよ。手伝いというか パートナーかな」
「そういうのは性にあわないよ」と断る浩平。
「浩平、あたしが頼んでるのよ、この原口祥子が」
浩平は、夜勤があるからと出て行こうとする。

「待ちなさい、浩平! いつまで自分の殻に閉じこもっていれば気が済むの?
 いい加減出てらっしゃい」
祥子は感情を爆発させ、男言葉で
「 お前いつまでこんなガラクタ作ってるのかよッ!
と怒鳴り、浩平の発明品の目覚し時計を投げつける。
「戦闘機は浩平が作ったんじゃない! 
 あなたは学生で、工場をウロウロしてただけなんでしょ?
 戦地で亡くなった学友達への後ろめたさ・絶望感・ひっくるめての悲しみ 
 あたしにもわかる。でもふっきらなきゃ。 何か始めなきゃ。」
「それが君の仕事を手伝うことなのか?」
「そうは言ってないけど‥」
「健闘を祈るよ」

翌朝、千晶は朝ご飯の時間だと浩平を呼びに行く。
昨日、祥子が投げつけた目覚し時計を片付けていると
「作ってるものがガラクタってことは 作ってる人間もがらくたなんだよ‥」と
浩平が言う、しかし千晶は
「間宮さんはガラクタなんかじゃありません。アドバルーン嬉しかったもの」
と励ます。

夜、文江・千晶、忠治はお米を広げてごみを取り除きながら話をする。
「黒田さんから話を聞きましたよ。黒田さんが心置きなく働けるように
 後押しする所存でございます。
 だるま食堂さえお客様に来ていただければ‥」
「原口さんの方はあまりアテにしないで頑張りましょう」
リンタクも処分することにして、地図に向かい印つけをする忠治と千晶。

小森屋の工場では 弥之助が
「一番出来の良かった8番桶の味噌をタネ味噌として使いなさい」と
アドバイスする。

3月も半ばを過ぎ、諏訪にも春がやってきました (ナレーション)

一仕事終えて、お茶を飲みながら、晶乃は「おこがし」を作ったからと
出す。
「麦を打ってね、石臼で挽いたの」
食べる時に、ぶほっとむせる弥之助。

友行は、「近々東京にいってこようと思って」と言い出す。
「晶子の亡くなる前の晩のことですが」と
晶子が、千晶と浩平が結婚したらいいなぁと言っていたことを話す。
         (→ 【84】 1月13日(金)
「晶子の遺言のように思えて‥
 千晶と幸平さんの気持ちを聞いてみようと思って」

急な話に顔を見合わせる弥之助と晶乃。


だるま食堂では、千晶のもとに渉からのエア・メールが届いていた。


(つづく)

『かりん』(90) 

2006-01-20 21:32:25 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【90】 1月20日(金)

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
本間二郎  三波豊和
小森弥之助 小林桂樹
池田文江  もたいまさこ
原口祥子  あめくみちこ

      鳳プロ

黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

友行夫婦の部屋、
お正月に撮った3人(友行・晶子・千晶の)の写真が飾ってある。

友行が一人で布団を敷いているところに千晶が入ってきて
「ここで寝てもいい?」と頼み、晶子の布団を出して寝る。

弥之助・晶乃の部屋
「千晶は、東京はもう引き上げていいのでは」と晶乃は言うが
「千晶がやりたいんだから。ずっとというわけじゃないんだ、
 千晶が一人前になるためだ、それが小森家千年‥につながる」
と弥之助は諌める。

「千晶に男の子を産んで貰いたいなぁ」
「一人ぐらいはまじっていてほしいもんですねぇ」
と将来のことを語り合う二人。

友行・千晶も並べた布団に入り、話をしている。
「千晶、体には気をつけるんだぞ 無理しないで」
「お父さんこそ。おばあちゃんに監視してもらわないと」
「はやく向こうに行って晶子に会いたい気もするんだ」
「ダメダメ! 追い返されるわ
 ‥‥ホントよ、お父さん、元気でいてくれないと‥」


翌日、湖水館。
二郎があかりの部屋に入ってくる
「見送りに行かなかったのか。あんなに世話になったのに。
 あかり、どっかで気持ち切り替えないと‥ いつまでも後ろ向きじゃダメだぞ
 本気で心配してんだぞ」

東京への汽車の中、忠治が
「リンタクやめて、お嬢さんの手伝いをします。
 手となり足となり、卸問屋を見つけます」 と決心したと話す。
「奥さん達の生活は?」と千晶は心配するが
「だるま食堂があります、今のようにお客さんが入ればなんとか・・」と。


だるま食堂に到着すると、文江が出てくる。
千晶も一緒なのを見て驚き「この度は……」と頭を下げ、浩平を呼ぶ。

浩平は掘っ立て小屋でコーヒーをいれ、千晶と飲む。
自分の身の上を話す浩平。
「自分も親の死に目に会えなかったんだ。
 昭和20年3月10日の東京大空襲で、父・母・妹が死んでしまった。
 おやじもおふくろも働き者で、
 どうしてこんなオレみたいな怠け者が出てきたのか
 妹・カズコも生きていたら、24歳か。
 時々 夢に見るんだ。 君も夢で会えるよ」
頷く千晶。

そこに「浩平 いる?」と祥子が入ってくる。
「千晶さん、帰ってたの? この度は…」と弔意を述べ
「こんな時になんだけど、悪い知らせなの
 消費者友の会は 解散しました」

(つづく)

『かりん』(89) ★千晶とあかり、母校の新制桜ヶ丘高校へ

2006-01-19 19:08:23 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【89】 1月19日(木)

小森千晶  細川直美
田上 渉  筒井道隆
本間あかり つみきみほ
有倉道子  昌田千春  桜ヶ丘高校の今年の1年生
磯辺まさ子 菜地幸子  桜ヶ丘高校の今年の1年生

      劇団ひまわり
      若プロ

小森弥之助 小林桂樹

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

千晶が帰ってきて5日、味噌蔵の「第一號桶」の前に立つ弥之助と千晶。
「朝、目を覚ますと自然とここに・・」
「この蔵、おじいちゃんに一番居心地がいいのね」
「この匂いがな、頼むぞ千晶、小森屋をな」

晶子の思い出話をする弥之助。
「千晶の新制桜ヶ丘高校の開校式にな、晶子
 『千晶は 後継ぎはダメかもしれません、当面私が頑張ります』って言ったんだ。
 全くな、当面って1年未満のことを言うのかな‥‥
 友さんが小森屋の当主であることにはかわりがない、大事にすることはかわりない。 
 でも、血のつながりがあるのは千晶だけだ」
「お母さんに笑われないように、がんばります」


千晶が湖水館を訪ねると、あかりはオムツを縫っているところだった。
「やっぱり(東京)戻るの?」
「ずっとじゃないわ、東京営業所が軌道にのったら帰ってくる」
そして、信太の話、渉の話をする。
「東京、諏訪、松本、ハリウッド、4人ばらばらになっちゃったわね
 アメリカまで船で2週間かかるんですって」

「あたしが岸元のかわりに殺されれば良かったって思うわ。
 本間あかりは罪深い女です。そのくせ千晶のこと許せないでいる
 あたしはひどい女よ」
「でもあたしは死なないわ、また面白いこと見つけなきゃ」

千晶は学校にいってみないかと誘うがあかりはお腹を気にする。
目立たないわよ、と母校桜ヶ丘高校の校庭に立つ二人。

「かわってないわねー」と千晶、そして
「理科室行ってみない?」と話していると
女子生徒が二人並んで、千晶とあかりを見ている。
「1年生? 私たち先輩よ」と話すと
「本間さんと小森さんですか? わぁ~。有名です!」と1年生の女の子。
「本間さん、私も早稲田希望です、2年後、東京でよろしくお願いします」と
屈託なく話し掛けられ、顔を曇らせるあかり。
それでも「がんばって」と言う。

「場所は違っても友達は友達」
「千晶ごめんね。もう少し待って。
 もう少ししたら千晶のこと好きになるから・・」
「ねえ、拍手が聞こえない? 聞こえるわ」
文化祭でやったカルメンの時受けた拍手を思い起こす二人。
「本間あかり 小森千晶 頑張れよ! って言っている拍手なの」

二人並び、校庭で頭を下げる二人。

(つづく)

『かりん』(88) ★花山信太の弔問と 弥之助の現場復帰宣言

2006-01-18 22:32:07 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【88】 1月18日(水)

小森千晶  細川直美
花山信太  林 泰文
川原清三  河西健司
英     出雲崎 良
小森弥之助 小林桂樹
黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

弔問に訪れた信太を千晶は もと自分の部屋に案内し、いろいろ話す。
「驚いたよ・・ 小森のお母さんは元気印だったからな」
本間は? 田上は? と質問が出て、千晶は
あかりは諏訪にいる 田上君はハリウッド・・と答えられる範囲で教える。
逆に「花山君はどうなの? 信濃屋は・・?」と訊くと
「さっきはああ言ったけど・・・・ おやじにああ言えって言われてさ
 オヤジ飲んだくれて体こわして 情けない」と事情を話す。
信濃屋の再建は滞っているようだ。
「自分は、昼は呉服屋、夜は近所の子どもたちに勉強を教えている
 めだかのギャッキョウ(学校 と 逆境とかけて)!
 必ず、この諏訪に戻ってくる! でっかいことをするとか。
 精密機械をするとかね
 悪い時もあればいい時もある、下を見たらキリがないからな」と
最後は笑いながら言う信太。

「正直、君にどう言えば慰められるか 考えた。
 諺とか 故事とか 詩の引用とか・・・ いいのが無い。
 せめて俺も逆境にめげてないからって

   俺は悲しいコトは嫌いだ。
   でも生きている限りそれは無理だ、だから泣くことにしたんだ。
   おまじないもあるんだ

   悲しいの悲しいの 飛んでいけ・・・・・ 」

千晶は信太を見送りながら、「悲しいの悲しいの飛んでいけ」と言い
言いながら、涙を流す。


夜、友行は自分の布団を敷いている。

 「友さん、ワシだ」弥之助が入ってくる「なんだ、もう寝るのか」
 「(布団を)敷くだけ敷いとこうと思いまして」

弥之助は、一杯飲もうと「どうだ、冷やで いいな」と話しかけ、
今後のことを相談する。
みっちゃんにたいな子に来てもらいたいなぁ
今年は7年に1度の御柱祭りだ、千晶 引落し、しり込みするかな など話しをし
弥之助は
「ワシにも速醸教えてくれんか、わからんと味にも口を出せんずら」
と言う。そして
「おめさん、少し のんびりした方がいい」と 友行に言う。


翌日、速醸1号の樽詰めをし、千晶は速醸1号で味噌汁をつくり、供え
みなで飲む。

弥之助が話す。

「聞いてくれ。突然だったので取り乱して面目ねぇ
 だが、晶子は死んだ。 小森屋を死なすわけにはいかねぇ。 
 晶子の遺志に報いるためにも ワシは今日から現場に戻る。
 復帰して陣頭指揮を執る。」
「あなた」 と晶乃。
「味噌にまみれる。今まで通り、今まで以上 よろしく頼む」
頭を下げる弥之助に、まず清さんが居ずまいを正し、お辞儀する。
友行はもちろん 千晶、晶乃も 頭をさげ、忠治も頭を下げるのであった。

(つづく)



『かりん』(87) ★友さん第1号速醸味噌のお世話をね

2006-01-17 16:51:03 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【87】 1月17日(火)

小森千晶  細川直美
黒田忠治  佐藤B作
小森弥之助 小林桂樹
花山信太  林 泰文
川原清三  河西健司

      鳳プロ

小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

晶子のお葬式の翌日。
降った雪が屋根などに残った中、小森屋に一礼して通り過ぎる人々がいる。

友行は研究室で何をするともなく、ぼーっとしている。
「あまりにも急すぎて体も気持ちもどうしていいのかわからんのだろう」
そして弥之助は
「友さんは婿養子なんだからこれまで以上に気をつかってやらんと」
と言うが、晶乃は
「気を使い過ぎる方が気を使っているということになる。
 今までの通りでいいんですよ」と 弥之助に話す。
そして、何を話してもいても晶子の話題になってしまう。

祭壇の前で晶子の写真を見ている千晶のところに忠治と清三が来る。
清三が
「仕事を再開したいので、お嬢さんからダンナさんか大ダンナに許しを得てほしい」
と頼む。
そして、忠治と顔を合わせながら
「速醸の味噌が、明日出来上がる。世話をしないといけない。
 是非、ダンナさんにも加わってもらえるよう、話してくれないか」
と言う。
ふさぎこんだままも友行を心配した、清三・忠治なりの励まし方のようだ。

千晶は研究室の友行に、清三・忠治の言葉を伝えに行く。
「お父さん、一緒に味噌の面倒を見てやらないとって・・」
「今日はカンベンしてくれ って伝えてくれないか」
しかし、千晶が
「明日速醸の第1号ができあがるんでしょ?
 あたしも手伝うわ。
 明日、速醸のお味噌でお味噌汁作ってお母さんに供えるわ。
 そしてみんなでいただくの」
というのを聞き、考え直し、
清三・忠治の待つ味噌蔵に、千晶とともに入っていく。

速醸の味噌をお湯で溶いていると、弥之助が入ってくる。
色・匂い・味・・ 全てを厳しくそしていつものようにチェックする弥之助。
そして頷く。

茶の間。
友行は、晶乃と千晶にむかい、
晶子が急逝したことについて自分を責めて、思いを話し始める。
「晶子が死んだのは僕のせいです。僕がいけなかった。
 もっと晶子に思いをかければ良かった。
 晶子は野中さんに会いに行ったことで罪の意識を感じていたんです。
 その罪の償いが仕事に打ち込むことだった、
 それが晶子なりの僕への贖罪だったんです。
 その結果過労で・・・。
 僕が、わかっていると、野中さんのことを口に出していれば・・・・」
晶乃は
「友行さん、私が言ったわ」 と言う。
「あなたに何かあったら一番悲しむのは友行さんなんですからね って言ったわ。
 晶子『わかりました』って。
 だから、友行さん、それはもういいのよ」
千晶も
「お父さん、自分を責めないで。 それこそお母さんが悲しむわ」と言う。


そこに、焼香に花山信太がやって来る。

祭壇の晶子の写真に手を合わせ、弥之助たちの方に向き直る信太。
「訃報が届いたのが昨夜でしたので‥」
「信濃屋さんはお元気ですか」
「通風が少々ありまして、歩くのに難儀しております」
「家業はいかがですか」
「順調とは参りませんが 家族で力を合わせてがんばっています。
 皆さまの心中、お察し申し上げますが、お心落としなさらぬように・・・・」
と深々と頭を下げる信太 すっかり成長した信太であった。

千晶は、目を瞠ってしまっていた。

(つづく)

 

■『かりん』 第16週 (86) ★晶子ぉ、かわいかったなぁ、晶子ぉ

2006-01-16 16:45:55 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【86】 1月16日(月)

作    松原敏春
音楽  渡辺俊幸 コンセール・レニエ(演奏)
主題歌 井上陽水
語り   松平定知アナウンサー 


時代考証 小野一成
方言指導 有賀ひろみ




小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
黒田忠治  佐藤B作
池田文江  もたいまさこ
小森弥之助 小林桂樹
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代




制作統括  西村与志木

美術    深井保夫   
技術    横山隆一
音響効果  加藤直正
記録・編集 阿部 格   
撮影    石川一彦
照明    田中弘信
音声    岡本幹彦
映像技術  菊地正佳 

演出    鈴木 圭



解説(副音声) 関根信昭


・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

晶子は冷たくなっていた。


だるま食堂の裏庭、千晶は降ってくる雪を見ながら空を見上げている。
ちょうど浩平が帰ってきて後ろから「雪男だぞ!」と驚かす。
「間宮さーん(んもう という調子で)
 雪降っても、船は舟航しますよね」と千晶。
食堂のほうからリーンという電話の音が響いて聞こえる。
「誰か、船で出るのか?」
「田上くんが」
「‥‥いいのか、止めなかったのか」
「いいんです。夢の実現に向かっていってほしいんです」

そこに忠治が沈痛な面持ちで「お嬢さん、諏訪から電話です」と呼びに来る。

だるま食堂では文江もショックを隠せない様子で立っている。
浩平も心配そうに入ってくる。
電話にでる千晶。晶乃の声がする。

「千晶、落ち着いて聞きなさい。 すぐ帰ってらっしゃい。」
「どうして? どうしたの?」
「晶子が死んだの。心臓の発作でね。 とにかくすぐ帰ってらっしゃい」

「お嬢さん」と忠治 「帰る支度をして下さい」

「死んだお母さんなんて会いたくない!」
「帰るんだ ショックなのは君だけじゃないんだ。
 悲しみを共有するんだ」 諭す浩平。


味噌蔵の中で座り込む 弥之助。晶乃が入ってくる。
「あなた、お気持ちはわかりますけど、いろいろ取り仕切っていただかないと。
 友行さん、晶子のそばから動こうとしないんですから」
「‥逆だよ。
 どうして親が子どもの弔いを出さなきゃいけないんだ
 こんなことなら親になんてなるんじゃなかった。
 晶乃、どうして晶子を生んだんだ、バカ!」
「申し訳ありません」
「晶子ぉ、かわいかったなぁ・・・ 晶子ぉ。」

七五三の話、ランドセルの話など晶子の思い出話をする二人。
そして、埴生の宿 を泣きながら歌う弥之助。
気を張っていた晶乃も泣き出してしまう。

友行は晶子の枕頭に正座したまま微動だにしない。


千晶が忠治と一緒に 小森屋に帰って来た。


(つづく)

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆



七五三の時の晶子がどんなにかわいかったか、
ランドセルをどうして処分してしまったんだ と
責めてもムダだとわかっていても晶乃を責める弥之助・・ 

二人が語る場所が、味噌蔵だったのがなんとも言えない。

・・・だが、私は号泣とまではいかなかった のはナゼだろうか

『かりん』(85) ★晶子! 御神渡りの季節に・・・

2006-01-14 15:58:21 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【85】 1月14日(土)

小森千晶  細川直美
田上 渉  筒井道隆
小森弥之助 小林桂樹
黒田忠治  佐藤B作
池田文江  もたいまさこ
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

2月に入り速醸の完成は3日後。

朝、友行は晶子に話し掛ける。
「昨夜すごかったね、御神渡り。後で一緒に見に行こうよ」
「お供します」
「 諏訪の湖の氷の上の通ひ路は 」と詠う友行。
笑い出す晶子 「あなた、去年と同じ事おっしゃって」

新聞を読んでいた弥之助は、記事のことを口にする
「競輪が大流行なんだそうだ
 後楽園競輪で5万人の人出で入場制限 ・・・・
 妙なものが流行るねぇ」
「うたの流行ですか?」と晶乃が聞きつけて
「歌なら  水色のワルツね」と歌いだす。

蔵のほうに行っていた晶子が、胸をおさえて苦しそうに座り込む。

だるま食堂では、忠治がリンタクの仕事から
「冷えてきたー、今夜あたりから雪かも」と言いながら帰って来る。
「このごろ、タクシーが増えてきてリンタクはあがったりだ」

ちょっとして渉がだるま食堂にやって来て、明日、ハリウッドに行くんだ と
報告する。
「明日!」と驚く千晶だが、
「やるだけやてみる、GOING MY WAY だ」と言う渉を見て
「田上君、がんばって」と言う。
「あかりに言った?」と訊いたが渉は
「言っても仕方ないし。今度会ったら小森から言っといて」
渉が帰ろうとするとき、千晶は
「お願いがあるの もう一度抱きしめて 強く・・・」と頼む。
渉は強く抱きしめ、千晶も抱き返す。

「あたしたちには諏訪の思い出があるじゃないの」
「君の瞳に乾杯」


その頃、諏訪の小森家の茶の間では、お正月に撮った写真を
友行・晶子が見ていた。
「浩平さん あなたの若い頃に似ているわ」と晶子。
雰囲気が似ているのだと言う、発明好きなところも。
「浩平さん、千晶と結婚してくれないかしら」と言い出す晶子。

そして、決まってもいないのに、もし結婚して赤ちゃんが生まれたら・・と
話し合う二人。
「千晶が赤ちゃんうんだらおばあちゃんだわ」
「おじいちゃんかぁ」
「楽しみなような、急に老け込んだような・・」と言い
「あ、あなた白髪!」とふざける。
「とも白髪で」と言う友行に「添い遂げさせていただきます」と晶子。

「あと3日あと3日、速醸成功・・先に休ませていただきます」と
先に部屋に行く千晶。


朝、  雪が降っている。

トイレに起きたらしい友行は部屋に戻って来て「晶子、雪だよ」と話かけ
晶子に目をやる。

生気のない顔で晶子が眠っている。

「晶子? 晶子! 晶子ーーーーっ!!」 友行が叫ぶ。



だるま食堂  東京でも雪が降る中、千晶は空を見ていました。

(つづく)


去年と同じ事おっしゃって → 【34】 11月10日(木) の放送です

『かりん』(84) ★浩平諏訪に来る&小森家恒例の書初め 

2006-01-13 15:59:20 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【84】 1月13日(金) ★浩平諏訪に来る&小森家恒例の書初め 

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
小森弥之助 小林桂樹
本間二郎  三波豊和
田上伝六  不破万作
原口祥子  あめくみちこ

      劇団ひまわり
      鳳プロ

小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

千晶は、祖父母の弥之助・晶乃と諏訪大社上社へ初詣に行き帰ってくる。
友行と晶子は、あとで二人で行くらしい。
帰ってみると、お客さんが待っていた。

「間宮さーん!」 祥子もいる 「お邪魔してういます」
「どうしたんです?」と驚きを隠せない千晶だが、
お銚子も並んでいて、和やかな雰囲気の中、
弥之助・晶乃に「ほら、だるま食堂の裏で発明している間宮浩平さんと原口さん」
と紹介する。
「突然お伺いしまして」と浩平 「驚いたー」と千晶。
「あの味噌がどんなところで作られているか知りたかったしね」と祥子。
「蔵と倉庫に案内したところだ」と友行。
「さすが老舗、歴史と風格が感じられたわ」祥子
友行の研究室も案内済みのようで、浩平は
「お父さんの松風整粒機、あれはなかなかの苦心作」と言う。
晶子が
「消費者友の会のお話うかがってたのよ」と祥子の活動も紹介すると
「まだまだです」と祥子。
しかし晶子は
「可能性に挑戦することです、うちの小森屋もそれでやってるんです」
弥之助が「消費者友の会っちゅうのは?」と聞くが「あとでお話しますわ」

浩平と祥子が部屋は別でも湖水館に泊まることに
晶乃は「都会の人は進んでいるのね」と ちょっと納得いかない様子

千晶が着物を着替える前に家族写真をということになり、
浩平がシャターを押す。
また、浩平も小森家にまじって一緒に写る。
千晶と一人ずつ一枚のも撮る。


都座では 渉が帰省してきている。
ヤスさんは、のんだくれて使い物にならない と伝六が愚痴る。
渉は「俺、アメリカに行ってもいいか? ハリウッドだ」と 許しを得る。
映画がもともと夢のようなものなんだ、ダメ元で行ってくる・・と。
「英語は?」と伝六は心配するが「どうにかなるよ」と渉。


夕方、千晶は湖水館まで 浩平と祥子を案内する。
二郎は「千晶ちゃんも一緒か、あかり2階にいるぞ」と言う。

あかりの部屋、あかりが本を読んでいるところに二郎の案内で千晶が来る。
「昨日、東京から戻ったの」「そう」
「間宮さんがいるから驚いちゃった」
「三郎兄さんが言ってたけど、渉君も帰ってきてるそうよ」「そう」

「順調? 赤ちゃん」「ええ」
「大学やめたわ 休学することも考えたんだけど、子ども生まれたら・・・
 次のおもしろいこと見つけなきゃ。」
「みつかる あかりならすぐ見つかるわ」
「去年の今ごろはお正月返上で受験勉強してたのにね
 …… 東京へはいつ戻るの?」
「4日の朝」
「元気でね。   サヨナラ」   背を向けるあかり。



2日になり、小森家では、恒例の書初め。

晶子 「速醸成功」
弥之助「小森家千年」
晶乃 「初日の出」 でも失敗したらしい
友行 「夫唱婦随」 晶子に言われて、それにする・・と。
千晶 「友情」

「子どもみたい?」 でも、友情の字は千晶からあかりへの願いである。
新しい年がスタートしたのでした。

『かりん』(83) ★昭和24年大晦日から昭和25年元日へ 

2006-01-12 16:01:02 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【83】 1月12日(木)

小森千晶  細川直美
黒田忠治  佐藤B作
小森弥之助 小林桂樹
池田文江  もたいまさこ
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

昭和24年大晦日の晩、小森家の食卓には海の幸が並ぶ。

「明日で二十歳だな」「成人ね」 千晶に弥之助と晶乃が話し掛ける。
友行が
「明日から つまり昭和25年1月1日より 満年齢で数えるらしいですね」
と新聞で読んだ情報だろうか、言う。
弥之助は
「何だか知らんが家ではそういう言い方はワシが死んでからにしてもらいたい」
と渋い。
「縁起でもない」「そうですよあなた」と晶子と晶乃。
晶乃はお年玉つき年賀ハガキの話題を出す
「何枚くるかしら、特賞がミシン 1等が純毛洋服生地ですって!」

弥之助が「千晶 明日は晴れ着を着なさい」と言う
「あたしはいいわ」と乗り気でない千晶だが、
晶子がちゃんと準備をしているのだからと言い「着るのよ、千晶」
弥之助は「ワシと初詣に行こう」と張り切る。


だるま食堂、3兄弟が寝ている茶の間で
忠治と文江が除夜の鐘を聞きながらお酒を飲んでいる。
「1年後どうしてるでしょうか」と問い
「いてほしい、耕一郎なんてお父ちゃんって懐いちゃって‥ ぅぅ
と言う文江に、
「奥さん達のために身を粉にして働きますからここにいさせて下さい」
と忠治は約束する。

昭和25年の幕開けです


味噌蔵に千晶が行って見ると、おそなえ餅の前に晶子が立っている。
「おはよう」と言ってから「あけましておめでとうね」と千晶が言いなおすと
「それは着替えてから。お座敷で。毎年そうしてるでしょ」と晶子が答える。

「さっきまで(ここに)おじいちゃんがいらっしゃったの
 毎朝、仕事があってもなくても まず蔵に来る、おじちゃんの日課
 ましてや 年乃初めですものね」
「いいお天気になってよかったわね」

「千晶、お母さんと クチきいてくれるようになったのね。
 ほら、クチきいてくれなかったから…」
「ごめんなさい」

晶子は洋一郎からあかりのことを聞き、会いに行ったこと
その時あかりが千晶に何を言ったかを聞いたこと
都座の息子さん(渉)のことも聞いたのよ と言う。
「(つぶやくように)辛かったわね 千晶 辛かった」
「あたし 岸元さんに言ったのよ、あかりを大切に 傷つけないで下さい って
 そしたら あかりに言われたわ 傷つくのなんてこわくない 千晶とは違うのよって
 お母さんもそうだったの?
 傷つくことなんてこわくなかった?」千晶が問う。
「さあねぇ」
「私はまだ子どもなのね 人を愛する資格なんてないのよね」と言う千晶に
晶子は言う。
「人は人、それぞれ自分のやり方で人を愛すればいいの」

千晶と晶子の会話は続く
千晶「あかりのことがあってから、あたしお母さんにいけないことをしたんじゃないかと
   思うようになったの」
晶子「いけないことって?」
千晶「会いに行くの 止めたでしょ?
   キライになってもいいの? 軽蔑してもいいの? って
   お母さんが自分で決めたことなのに…」
晶子「そうじゃないわ、千晶。
   娘なら自分の母に対して当然。でもあの時はカケだった。
   悪かったわね
   あかりさんに対してもそう。
   あかりさんを大切に思ってるから岸元って人にも、ああ言ったんだもの。
   東京に戻る前にあかりさんに会いにいってらっしゃい。
   さてと、お雑煮の支度しなくちゃ。それから千晶、着替えてね」

千晶「お母さん。
   野中さん、自首する前 あたしにあいに来たの。こう言われた。
   君は自分のお母さんを誇りに思っていい、思うべきだ。
   それから、今、もう一度自分の太陽を見つけたいと思っている」
晶子「そう、そうだったの…」
千晶「お母さんを誇りに思ってます ホントです」
晶子「ありがとう 千晶」


そして、千晶は晴れ着に着替え、弥之助、晶乃、友行がまっている座敷に行く。
着物姿を見て目じりを下げる弥之助。

「あけましておめでとうございます」と挨拶する千晶。


(つづく)   

『かりん』(82) ★あかり黙って諏訪に帰る

2006-01-11 23:55:27 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【82】 1月11日(水) ★あかり黙って諏訪に帰る

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
本間洋一郎 笹野高史
本間二郎  三波豊和
本間三郎  丹羽貞仁
北川正郎  山崎聡弘
花江    佐藤春日(だるま食堂のお運びさん)
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

(あかりの部屋に  黒電話があるんですけど‥?)

渉の猛アタックは続く
「まだ中途半端だけど命がけで守ってみせる ほっとけないんだよ!」
あかりは首を横に振る
「同情してくれてるのよね、同情なんて要らない、あたしは岸元を愛していた」
「あの男は死んだ」と渉。
「どうして千晶じゃいけないのよ」
「小森にも話したんだ、小森は言ってくれたよ。
 『あかりをよろしくお願いします』って
 幸せにして見せるから」
「あたしは不幸なんかじゃない、あたしのお腹には岸元の子どもがいるわ。
 あの人の分身が」
遂に話すあかり
「ウソだろ」「事実よ」
「その子ともども守るよ、俺の子どもだと思えばいいんだ!」
「岸元の子よ、あたしが一人で守ります!」
「本間!」と抱きしめようとする渉。
あかりは「やめて! お腹の子になんかあったらどうするの!」と抵抗する。

一人で路地を歩く渉。電信柱をゲンコツで叩く。

数日後、正郎がだるま食堂にあかりを訪ねてくる。
あかりが諏訪に帰ったこと、
渉に結婚を申し込まれたがはっきり断ったこと、
お腹の赤ちゃんのことも話したこと などを
「以上、報告」しに来る。
「あかりがいなくなったら急にさびしくなっちゃった」

湖水館では、洋一郎・二郎・三郎が頭を抱えている。
「殺された男の子どもを孕んでるなんてよう」とは二郎の言い方
「隠したって腹せりだしてくるんだ!
 ほっときゃ6月におぎゃあと産まれてくるんだ」
も二郎の言い方。
洋一郎は
「ほっときゃってどういう意味だ! どうするもこうするも産むしかないんだ!
 どういう事情があろうがワシにとっちゃ初孫だ」
と、あかりを不憫に思いつつ、孫という時だけ嬉しそうになる。

あかりは 本棚や机のないがらんとした自分の部屋で
壁にもたれて座っている。


だるま食堂の井戸のところで 千晶が鍋を洗っている。
出勤前の浩平に、消費者友の会の結果を報告する千晶。
「原口さんから電話あったの。
 味噌、お味噌汁にして試食したら好評だったんですって
 統制解除後の品目に、検討して下さるそうです。
 明日代表の方に挨拶に行ってきます」
浩平は喜び「実現したら 渉君やあかりさんをよんで祝杯だな」と言う
しかし千晶は顔を曇らせ「あかり諏訪に帰ったんです」と言う。
「君にも会わず?」

千晶は「あかりは私が殺したと思っている。
    あかりと岸本さんを引き離したと思っている」と 話す。
浩平は「それは違うよ。仕方のないことだったんだ
    ああなるのが岸元という男の運命だったんだ
    時間が解決してくれるよ、親友なんだろ?
    お正月に帰った時にでも気楽に訪ねてみたら」と励ます。
千晶の「そうは思えないけど」に
浩平は「ついてってやろうか?」と冗談まじりに言い「ドンマイドンマイ」と言う。


昭和24年大晦日、小雪がちらついている諏訪、小森屋

千晶の帰りを待ち、弥之助、晶子、友行、晶子が外に出てくる。
弥之助は「ちょっとそこまで見てくる」と迎えに行き
千晶は、半年ふりに帰省したのだった。

「ただいま」


(つづく)

『かりん』(81) ★渉 あかりにプロポーズ!

2006-01-10 23:50:04 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【81】 1月10日(火) ★渉 あかりにプロポーズ!

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
小森弥之助 小林桂樹
池田文江  もたいまさこ
北川正郎  山崎聡弘
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

「あいつを守ってやりたい」 という渉の言葉を思い出す千晶
部屋の『哀愁』のポスターの前に立ち、頬を寄せる恋人同士を指でなぞる千晶。
先日渉が抱きしめてくれたことを思い出し、座り込み静かに泣く。


小森屋の蔵

弥之助が立っているところに晶子が竹箒をもって入ってくる。
晶子の体調を気使い尋常小4年の時大腸カタルで死にそうになった事を話す。
「晶乃が屋根にのぼって、あきこーあきこーってな あきこー!あきこー!」
「魂よび?」
「近所の人たちも屋根にあがってやってくれた
 (大きな味噌樽を叩きながら)ならわしというものをバカにしちゃいかん。
 晶乃はあの時そうせずにはいられなかったんだ」
頷く晶子。
「千晶は正月帰ってくるずらな?」「ええ」
「うまいもん たーんと食わせてやってな」

だるま食堂の朝。
正貴・和子・耕一郎はケンカをしている。
浩平が「昨日どうだった?」と千晶に訊く。
「お味噌持って帰ってくれました。検討するって」
「個性的だろ、勝気の塊、女房にでもしたら大変だ」
「そうかしら、案外世話女房になって前に進めない人にはピッタリかも」
軽口をきく千晶。
忠治と文江は昨日の渉のことを心配して「なんのご用事でした?」と訊く。
「田上くん、あかりのことだったの。
 給料もらったらごちそうするって。そんなことわざわざ言いに来るなんて
 変な人ですよね」
誤魔化す千晶。

小森屋
今度は、晶乃が晶子に体を大切にするようにと言う。
「友行さんに申し訳ないってのは、痛いほどわかるわ。
 野中さんに会いに東京に行った、それで自首した、それは良かったわ。
 でもそれからよ、傍で見ていてもわかるほど仕事仕事って。
 無理はダメ」
「それこそゆっくり10年20年かけて返していくつもりで。
 友行さんは度量の広い人。わかってるわね」
「あたしは晶子を心配する。晶子は千晶の心配する。
 順番順番」


だるま食堂2階 黙ってオルゴールを聞く千晶。

あかりのアパート。
上野動物園には正郎も行ったようだ、埃まみれで・・と正郎は銭湯に行く。
あかりは久しぶりの笑顔で言う。
「楽しかった。出かけてよかった 渉君ありがとう」

渉 「本間、俺と結婚しないか 結婚してくれ」 

(つづく)

■『かりん』 第15週 (80) ★原口祥子、現れる

2006-01-09 23:50:41 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【80】 1月9日(月) ★原口祥子、現れる

作    松原敏春
音楽  渡辺俊幸 コンセール・レニエ(演奏)
主題歌 井上陽水
語り   松平定知アナウンサー 


時代考証 小野一成
方言指導 有賀ひろみ



小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
原口祥子  あめくみちこ  消費者友の会の人・浩平の知人
北川正郎  山崎聡弘
黒田忠治  佐藤B作
池田文江  もたいまさこ
花江    佐藤春日(だるま食堂のお運びさん)

      鳳プロ

小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代



制作統括  西村与志木

美術    荒井 敬   
技術    三島泰明
音響効果  石川恭男
記録・編集 阿部 格   
撮影    熊木良次
照明    関 康明
音声    佐藤重雄
映像技術  沼田繁晴 

演出    柴田岳志



解説(副音声) 関根信昭


・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

岸元事件から1ヶ月あまりが過ぎ、あかりを心配しつつ忙しくしている。

だるま食堂にメガネをかけた女性が入ってくる。
千晶を見て「あなたが小森千晶さんね」といきなり言い、
千晶がとまどいつつも「ええ」と返事をすると、
「かわいいわぁ~」

ほったて小屋 
その女性は浩平の知り合いで、名を原口祥子(しょうこ)
消費者友の会の人間だった。
浩平とは「浩平」「祥子」と名前を呼び合っている。
「突然来るんでびっくりしたよ」 部屋を片付けながら言う間宮浩平
「やっと時間ができたの。町の発明家さんみたくヒマじゃないの」
「我々の活動内容については浩平から聞いているわね?
 あとでこれ読んで(封筒を渡しながら)我々の活動の基本理念
 今後の展望は全てこれに書いてあるわ。
 今のところ活動は悪戦苦闘、でも何事も新しいことを始める時の産みの苦しみ」
浩平はもう仕事に行く時間だからと慌しいが
「よく話を聞いて役にたちそうなら前向きに考えたらいい。
 1つだけ注意しとくと情熱の塊のような人だ、つきあうのはしちめんどくさいよ」
と言い出て行く。

「味噌、もらえる? 持ち帰って検討してみるわ」と祥子。
「座りましょうか」と促し、メガネをはずし祥子は話し始める。
「浩平から手紙もらってね。長い付き合いだけど手紙もらったの初めて。
 便箋3枚全部あなたのこと。
 浩平とは動員先の相模原で会ったの。
 東大生って頭でっかちだと思っていたけど 浩平だけは違ったわ~」
千晶は訊く。
「お聞きしたいことがあるんですけど、前に間宮さん死に遅れた人間だ・・・って」
「浩平の専門は航空力学。戦闘機の開発をやらされたのね。
 その戦闘機に乗って多くの仲間が死んでいった、そして自分は生き残った。
 戦争責任をどっかと背負っているのよ 時代のせいとかできないの。
 だから次へと進めない」

あかりの部屋。 
渉が来る「タイヤキ買ってきた」
正郎が台所から「よく来るわねぇ 皆勤賞じゃないぃ?」と声をかける。
「あかり、おでん食べなさいよ、昨日みたく食べなかったらダメよ」と言い
「ごゆっくり」と仕事に出て行く。

渉は「ずっと家に閉じこもっていないでたまには外に出よう。
   上野動物園に行こう、象が来たんだよインドから インディラって言うんだ」
と誘う
しかしあかりは
「渉君、来ないでヨ・・もう
 大丈夫だから 心配なんでしょ? 自殺でもするんじゃないかって。
 そんなに弱くないの知ってるでしょ?」
「心配してくれるのはありがたいけど申し訳ないけど負担なの
 一人で大丈夫だから」
それでも渉は「タイヤキ食おうよ。5円もした。5円x6 
       安月給から30円も出したんだ、食えよ。
       口ん中にねじ込むぞ」
一口食べるあかり そして渉は「上野行くからな」と言う。
あかりは降参という感じで「うん」と答える。


諏訪 小森家
晶子が寝込んでいて、友行がおかゆを運んでくる。
友行は
「お母さんが『どうして私がおかゆを作っちゃいけないんです?』
 っておっしゃるんだ
 そしたらお父さんが、ほらちょっとソッポを向きながら
 『晶子は友さんに作ってもらったほうがいいんだよ』っておっしゃって」
と晶乃・弥之助の真似をしながら話す。
「(マジメな口調で)晶子、ちょっと根をつめすぎなんじゃないかな
 そりゃ速醸への切り替えで大変だ 銀行からお金も借りたしね
 でも君が一人でかかえ込むことはないじゃないか
 頼りないかもしれないけど僕だっているんだし順番にひとつずつやっていこうよ」
「はい わかりました」 「頼むよ」


夜、だるま食堂

渉が来たと文江が呼びに来るが「こんな遅くに・・どうしますか?」と
千晶の確認をとる。

千晶も不審がりながら降りていき、外に出る。

「聞いてほしい 小森許してくれ。
 本間を放っておけない。どうしても放っておけない。
 俺の全部で 田上渉の全部であいつを守ってやりたい。
 あいつを立ち直らせてみせる。それしか考えられない」

「どうしてあたしに謝るの。
 そうね、そうしてあげて。そうしてあげてください。
 田上君、あかりをよろしくお願いします。」


(つづく)

『かりん』(79) ★「千晶がどうしても許せないから」

2006-01-07 23:28:10 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【79】 1月7日(土) ★「千晶がどうしても許せないから」

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
本間洋一郎 笹野高史
本間二郎  三波豊和
小森弥之助 小林桂樹
池田文江  もたいまさこ
岸元道則  古藤芳治
北川正郎  山崎聡弘

      鳳プロ
      丹波道場

黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

岸元は銃弾に倒れて即死 24歳でした (とナレーション)

二郎はだるま食堂の電話で湖水館に状況を説明している
「ショックで気 失っただけだって医者も言ってる 大丈夫だ」

浩平・忠治・文江は考え込んでいる様子。
二郎は電話が済むと茶の間に入ってきて、
「死んだ人には申し訳ないと思うけど、一切が終わったってことです」
3人は渋い表情をする。
「たった一人の大事なイモウトなんだから…そう思っちゃいけねーですか、忠治さん」
「いや‥」と忠治は口篭もる。
「まさか殺されるなんてねぇ… あかりさんの目の前で…」と文江。
浩平が「岸元はある程度覚悟していたのかもしれません」と話し出す。
「殺されることをですか?」と忠治。
「暴力団がからんでいますからね。
 金を返せないで 何をしてくるかわからない筈がない。
 
 岸元にとっての敗北宣言は今までの生き方を自ら否定するっていうことです。
 その場合の完結方法は何か・・・
 自らの人生とその劇場で最後のクライマックスである死さえも自ら演出し
 そして演じた    うがち過ぎた見方かもしれませんが」

2階の部屋 
千晶と渉が眠っているあかりの様子を見ている所に、正郎がそっと入ってくる。
「あたしが悪かったのよぉ お金を作って持っていけばこんなことにならずに
 すんだのに」
「誰が頼まれても無理だったのよ」
「あかりがかわいそぉ」と泣く正郎。

あかりが目を覚ます。
「あの人は?」 3人とも目を伏せる。
「死んだの?」 小さく頷く千晶。
「そう」 「即死だよ」と渉。
「今、何時?」  「もうすぐ4時」
「そんな長い間、あたし気を失っていたのね。
 ああ夢だったらいいのにね。
 気を失う前のことが夢だったら」

千晶は励まそうとあかりの手をとるがあかりはその手を振り払う。

「千晶、約束通りここに戻ってきたわ。兄さんに諏訪に帰るように言ってくれない?
 今、会いたくないの あたしは大丈夫だから…そのうち帰るから」
「渉くん心配かけたわね(渉ちょっと笑顔になる)ありがとう もう帰って」
「悪いけど、呼ぶまで上がってこないで。一人になりたいの」
「あたしはそばにいるわ」と正郎。
「話し掛けなきゃね」

小森屋には洋一郎が謝罪に来ている。
「あかりは激しいところをもった娘で、思い込んだらカーっとつきすすんでいくような
 ところがありまして。
 突き進んでいるうちはいいが、いっぺんダメになるとガクーっと来るんで
 心配でしてね…」

弥之助は年長者の功で、
「本間さん、少し時が経てば・・・
 若い時は自分の方から危ないことにすりよって行くようなところすらある。
 そして心に引っかき傷や火傷をおうが、治るのも早い。
 そういうケイケンの積み重ねが大人になっていくって事なんじゃ……」
みんなも頷きながら、励ましの表情。

洋一郎が帰ってあと
「大変な結末だねぇ」
「明日の新聞に出るのかしらね」 などと話していると
弥之助が「誰か行かんでいいのか? 千晶のところ」と言うが
晶子は「千晶は大丈夫です。こういう時こそ親が出てっちゃいけないんです」
と千晶を信じている。

だるま食堂茶の間。
待っている千晶のところに正郎が階段を降りてきて
「千晶、あかりがよんでる」と言う。

部屋に行くと「帰るわ お世話になったわ」とあかり。
「諏訪に?」 と訊く千晶だが 「アパートに」
「もう少し横になっていた方がいいのに」と千晶は言うが
あかりは
「今、千晶と一緒にいたくないのよ どうしても許せないから。
 ゆうべのことよ。
 千晶さえ来なければあの人はあたしの側を離れなかった。
 そうしたら殺されずにすんだわ。死なずにすんだ。あたしが守り通した」
と千晶を責める。
「あかり、あたしが岸元さんを殺したような言い方するのね」
「そうよ 千晶が殺したの」
「あかり!」

「岸元は死んだわ でも生きている…
 あたしの心の中に… 体の中にも。
 あたしのお腹の中にはあの人の子どもが 岸元の分身が」
「何ですって」

「あたしは負けないわ この子と一緒に立派に生きてみせる
 このことまだ誰にも言わないで
 サヨナラ」
と言ってあかりは部屋を出て行く。

残された千晶は 一すじの涙を流すのだった。

忠治と文江が店の外まで見送るが、あかりは
お辞儀もせず、まっすぐ前を見て歩いていく。
正郎がちょっと困ったようにそんなあかりを見て、追いかける。

(つづく)



『かりん』(78) ★岸元 射殺さる

2006-01-06 23:22:58 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【78】 1月6日(金) ★岸元 射殺さる

小森千晶  細川直美
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
本間洋一郎 笹野高史
本間二郎  三波豊和
本間三郎  丹羽貞仁
組長     村松克巳
岸元道則  古藤芳治
坂崎     加藤 治  弁護士
女子事務員 いかりはるみ、東海林かおり(東亜クラブ)
暗殺者   瀬木一将  (今週の技闘指導)
組員     内木場金光、衣笠健二、加賀谷圭
記者     鈴木義男  折口明

      宝井商店
      鳳プロ
      丹波道場

池田文江  もたいまさこ
黒田忠治  佐藤B作
間宮浩平  榎木孝明

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

だるま食堂2階、あかりは眠っている。
二郎は湖水館に電話しあかりにケガはなかったことを話し
「今眠っている、必ず連れて帰るだで待っていてくれ」と言う。

浩平のほったて小屋。時計が8時を指している。
浩平はコーヒーをいれて、千晶・渉と 岸元の記者会見をあかりに知らせるかどうか
相談している。
「あと3時間ある あかり君に知らせるかどうか」
渉は、知らせた絶対に行くと言うだろう、あの男には会わない方がいいと言い、
浩平は岸元がどういうつもりで記者会見しようと思ったのか、それによるし、
本人(あかり)の意思があるのではと言う。
しかし渉は 本間は小森が岸元と引き離したと思っている、会えばどこまでも行動を
ともにすると言うに決まっている、と言い、
浩平の意見にも対しても
「あなたは関わりがないからどうでもいいでしょうけど、俺や小森は
 放っておけないんです!
 暴力団が絡んでいるんです、ヤツラもきっと来る、何が起こるかわからない」と言い
千晶が「記者会見の 公の席では大丈夫なんじゃないかしら?」と言っても
「あの男と関わったら破滅が待っているだけだ、俺が行って本間には近づくなと
 言ってきます」と譲らない。

浩平は「君はどう思う?」と千晶に聞く。
千晶は「わかりません」と答える。

渉 「わからない? 知らせれば本間の見に危険が及ぶかも知れないんだぞ」
千晶「知らせなければあかりは‥」
渉 「とにかく破滅が待っているんだ」
浩平「破滅に向かう意思もあるんじゃないかな」
渉 「あんた何言ってるんだ!おかしんじゃないのか?」
浩平「言いたい事は他人が介在してもいいのかどうかってことだ」
渉 「話にならない。あんたは本間には黙っといてくれ
   あとは俺と小森で決める」 と出て行こうとする。
浩平「わかった コーヒーぐらい飲んでいきたまえ」
千晶「あたし、あかりに知らせるわ。行くって言ったら‥」
渉 「行くって言うに決まってるじゃないか!」
千晶「その時はあたしも一緒に行く。あかりから絶対離れない。
   それで必ず戻ってくる」
渉 「無理だよ」
千晶「知ってて知らせないのは卑怯よ」
渉 「本間のためなんだよ」
千晶「隠してたってそのうちわかるわ どう思うと思う?」
渉 「恨まれても憎まれても、それであいつが立ち直れるなら‥
   それともお前、自分だけいい子になりたいのか」
千晶「そんなワケないじゃない。あかりの気持ちがすまないわ。
   知らせて、あとはあかりが決めること」
渉 「小森 それでも本間の友達か?」
千晶「二人は愛し合ってるのよ
   破滅になんて向かわせない、守ってみせる!」


だるま食堂2階

千晶がそっと入っていくと、あかりは起きて布団も畳んでいた
「あら・・お腹すかない?」 首を横にふる。
「社長から連絡なかった?」 「ないわ」
「兄さんは?」「旅館に戻ってもらってる」
「千晶、ごめんね。ぶったりして‥ゴメン」「いいのよ」
「今のあたしには何もできないのね、彼の連絡を待つことしか…」

「岸元さん、11時に東亜クラブで記者会見開くそうよ」
「何ですって?」
「岸元さん自身が新聞各社に連絡したんだそうよ
 行くわね? あかり。 あたしが止めてもムダね?」
大きくウンと あかり
「あたしも行く」「千晶は来ないで」「行く」「来ないで!」
「行くの! あかりから離れない。それから岸元さんとどんな話になっても
 一度ここにあたしと戻って来て」

「約束して」「出来ない」
「約束して。でなきゃ行かせない。これだけは譲れない」「わかったわ」


二郎があかりを迎えに来る。
忠治と文江が対応する
「お出かけになりました、どこへかは知りません」
「お嬢さんと一緒です」
「必ず帰ってきます そういう約束ですから。待っていて下さい」
忠治も必ず帰ってくることを信じている表情で頼む。


東亜クラブ

時計が11時5分を指している。
「遅いぞ」などと声がする中、岸元が弁護士バッジをつけた男と入ってくる。

水差しの水を 意味ありげに飲む岸元。
皆を見据え、あかりがいることに気がつき 一瞬あかりにほほ笑む…

「東亜クラブ社長の岸元です。
 結論から申し上げましょう
  本日をもって東亜クラブと ワタクシ 岸元道則は
  自己破産の申し立てを致します
 合理主義は破綻しましたが、今後の弁済は坂崎弁護士にお任せいたします。

 東亜クラブという劇場の舞台からは降ります。
 しかしまだ幕が降りた訳ではない、第1部の終了です、第2部にご期待ください」



演説を終え、奥のバーに引っ込む岸元。



 銃口が向けられている!
 銃音が 2発。


あかりにつきそい、千晶も奥のバーに入る。

岸元が撃たれているのを見て、あかりは気を失う
 

「あかり、しっかりして、 あかり!」




(つづく)