ひねもすのたりのたり 朝ドラ・ちょこ三昧

 
━ 15分のお楽しみ ━
 

『かりん』(77)

2006-01-05 23:56:13 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【77】 1月5日(木)

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
田上 渉   筒井道隆
本間洋一郎 笹野高史
本間二郎  三波豊和
本間三郎  丹羽貞仁
池田文江  もたいまさこ
黒田忠治  佐藤B作
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

夜、だるま食堂
「都合により本日休業」の張り紙がはってある。

千晶が帰ってくる。あかりに会ったことは言わずダメ‥というように首を横にふる。
二郎はいったん上野の旅館へ、浩平は仕事に行く。
渉が「アパートで待つのを交代しようかと思ってた」と言うが、
「正郎さんによく頼んできたからいいわ」と返事をする。

倉庫でちょっと横になったあかりは目をさまし毛布がかけてあるのに気付く。
そして岸元もいないのに気が付く。
手紙が目に入り、読むあかり。

  「 私は自分ひとりの力で乗り切っていくさ、必ず連絡する。
    それまで千晶君のところにかくまってもらっていてくれ。
    私は君をあいしてしまったことを後悔していない
                       岸元
       あ か り 様    」


深夜、だるま食堂にあかりが来る。
忠治も文江も、千晶を急いでよび、二人が再会を喜ぶかと思いきや
うれしそうでない、様子が変だと気がつく。
「二人にして下さい」 二人は2階の部屋に行く。


岸元の手紙を見せるあかり。
あかり「何か言ったんでしょ。
    そうじゃなきゃ黙って姿を消す筈ないわ
    あたしから離れるように言ったのね?」
千晶 「そうよ頼んだわ!」 平手打ちするあかり!
あかり「どうして余計なこと言うのよ。今あたしがついていないといけないのよ」
千晶 「頼んだわ。離れてくださいって頼んだんじゃない。
    あかりを大切に考えて下さいって あかりを傷つけないで下さいって」
あかり「‥‥」千晶を見つめる
千晶 「あたしが岸元さんに言ったのはそれだけよ。
    あたしが頼んだからじゃないわ。あかりを傷つけたくないから
    姿を消したのよ
    最後に書いてあるじゃない・・愛したことを後悔していないって」
あかり「そうじゃないの。
    あたしは傷つくのなんてこわくない。
    傷つくのなんてこわくて人を愛せない。その人のために死んでもいいの。
    あたしと千晶は違うの。
    あたしたち離れちゃいけなかったの。
    どうして(倉庫に)来たのよ。バカバカバカ(泣く)」


湖水館では洋一郎と二郎が電話で話している。
「あかりを諏訪に連れ戻せ!」
「娘の親になんてなるんじゃなかったよ‥」
小森屋にあかりが見つかったと電話する洋一郎。
「千晶が同じようなことになったら・・・」と友行。

だるま食堂。
二郎が上野の旅館からとんできて、「今すぐ連れて帰る」と言う。
あかりは「帰らない、ふんじばれるもんならふんじばってごらんなさい」と
強情を張り、更に「帰れない」と言う。

千晶も「あかりつかれているんです、少し休ませてください
    私がついています、見つかったんですからいいじゃないですか」と
懇願し、二郎は「そういうことなら」と折れる。

そこに文江が「お嬢さん、お父様から電話」と呼びに来る。
1階に降りると、電話ではなく浩平が情報を持っていた。

「知り合いの新聞記者に聞いたが、
 岸元から新聞各社に連絡があってね、
 今日午前11時 東亜クラブで緊急記者会見を開きたいって」

(つづく)

    


『かりん』(76) ★千晶、潜伏先の倉庫に行く

2006-01-04 23:49:16 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【76】 1月4日(水) ★千晶、潜伏先の倉庫に行く

小森千晶  細川直美
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
本間二郎  三波豊和
北川正郎  山崎聡弘
岸元道則  古藤芳治
池田文江  もたいまさこ
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
黒田忠治  佐藤B作
間宮浩平  榎木孝明

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

倉庫。
岸元とあかり、それから正郎がソファに座っている。

海の近くなのだろう、ポンポン船の音がする。

あかりが手提げ金庫から書類を出し、正郎の前に立つ。
「正郎、よく聞くのよ、あなたしか頼める人いないんだから」
不安そうな正郎。
「何なのよぉ、アパートのまわり怖そうな人がウロウロしてるし。
 あたし、コワイわ。千晶たちが捜してる、とにかく連絡とってよ」
正郎の話は無視して
「この場所のセキモト金融っていう所に行って来てほしいの。
 東亜クラブの全株2万株を担保に現金で300万の融資を受けてきてもらいたいの」
「何ですって?」
「これが委任状」と、茶封筒を渡すあかり。
「あたしにそんなことできるわけないでしょ」
「先方には話してあるわ」
「あかり許して」
「あなたしか頼める人がいないって言ってるじゃない」

   「千晶は?」「係わり合いにしたくないの」
   「あたしはいいわけ?」「親友でしょ?」
   「千晶は?」 「ウルサイっ!」
   「おこんないでぇ」

「あたしが行ければあたしが行くわよ
 出て行けないから正郎に頼んでるんでしょ。
 お願い。あたしを助けると思って‥」


だるま食堂にあかりの兄・二郎が夕方近くに到着する。
浩平が東亜クラブについて説明をする。
「東亜クラブは、この8月から急激に業績が悪化したみたいだね。
 社長の強烈な自信に支えられた無謀と思える貸し付け業務拡大と
 急激な時代の変化だ。
 時代の生んだ寵児が時代の流れに押しつぶされているわけだ」
「頭が良すぎるのも考えモンってわけですか」と二郎。
浩平は続ける。
「会社の設立にあたって暴力団からかなりの資金を引き出しているのは
 確かなようです。
 岸元はミヨシ組から逃げるために姿をけしたようだね」

忠治が帰ってきて、二郎に挨拶する。
「途中気になって東亜クラブに寄ってみたんですが、人人人‥‥」ですよ。

「あかり   どこ行ったの」


倉庫 あかりと岸元は正郎が遅いと待っている。
あかりは「乗り切るんです」と愚直なまでに言うが、岸元は半分諦めかけ
「ひとつだけ間違いを犯したかもしれない‥‥
 感情というものを一切排除する、自分の行き方に持ち込まないこと、
 合理主義を貫き全てを・・・」
「そうです、それに共鳴したからこそ」
「君は不思議な女だなぁ
 君といるとどうなってもいいような気がしてくる。
 人並みの幸せとか人並みの安らぎとか、そんな言葉がよぎって仕方ない」
「やめて!」 あかりが遮る。

だるま食堂、渉がやってくる「いたか!」
忠治は文江の娘・和子とあやとりをして遊んでいる。
二郎が「警察に連絡を」と言うと
浩平は「岸元はとっくに岸元捜しに動いていますよ」と言う。
一緒とは限らないのでは‥という渉や二郎に
千晶は「まちがいなく岸元さんと一緒です、まちがいなく」と断言し
「あかりのアパートに行ってきます」と出かける。

あかりの部屋の前。
暴力団風の男が来てあかりの部屋を窺う。
千晶は正郎の部屋に用事があるようなフリをしていると
ちょうど正郎が帰って来て、「あらぁ、お待たせぇ」と千晶を
部屋の中に入れ、ドアをしめて「千晶ぃ」と泣く。



千晶が、あかりと岸元の潜伏先の倉庫に登場する。
あかりはちょうど、正郎に電話しに行っていて、いない。
「お金は融資してもらえなかったそうです」と岸元に言う千晶。
「君が彼のかわりってわけか」

千晶は岸元に「あかりをどうするつもりなのか」と訊く。
「あかりを誰より知っているつもりだから、
 あかりが無理にここにつれて来られたとは思っていない、
 全てはあかりの意思であなたと行動をともにしていると思っています。
 あなたの方があかりにひっぱられているのかも知れない」
と言った上で、更に
「あかりをどうするつもりなんですか、大切に大切に考えてあげて下さい。
 あかりを傷つけないで下さい」とお願いする。

スカーフを被ったあかりが帰ってきて、千晶がいるのに驚く。
「正郎君だよ、案の定金を借りられなかったそうだ」と岸元。
「正郎が千晶に話したの?」とあかり。
「無理矢理ききだしたのよ」と千晶。

あかりは「帰って」「(父や兄にも)元気にしてるからって言って」
「千晶に関係ない」とつっぱねるが
千晶が「あたしにできることないの?」と訊くと「えっ?」と訊き返す。
「力になりたいの」と千晶が言うと、あかりは
「しばらくほっといて、この場所は誰にも言わないで
 必ず社長とこの状況を乗り切るから‥‥
 千晶を巻き込みたくないによ」と言う。

「あかりをよろしくお願いします」と岸元に頭を下げ帰る千晶。

(つづく)

■『かりん』 第14週 (75) ★東亜クラブ・事情情趣 新聞に載る

2006-01-03 14:54:58 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【75】 1月3日(火) ★東亜クラブ・事情情趣 新聞に載る

作    松原敏春
音楽  渡辺俊幸 コンセール・レニエ(演奏)
主題歌 井上陽水
語り   松平定知アナウンサー 


時代考証 小野一成
方言指導 有賀ひろみ
技闘指導 瀬木一将



小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
本間洋一郎 笹野高史
池田文江  もたいまさこ
本間三郎  丹羽貞仁
北川正郎  山崎聡弘
管理人    武川修三  あかりと正郎のアパートの管理人
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
女子事務員 いかりはるみ
        東海林かおり(東亜クラブ)
雑誌記者  鈴木義男
        折口明
小森弥之助 小林桂樹
黒田忠治  佐藤B作
岸元道則  古藤芳治
組員     内木場金光
        衣笠健二
        加賀谷圭

      鳳プロ
      丹波道場  

小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代




制作統括  西村与志木

美術    深井保夫   
技術    横山隆一
音響効果  平塚 清
記録・編集 阿部 格   
撮影    石川一彦
照明    田中弘信
音声    山中義弘
映像技術  高橋直幸 

演出    兼歳正英



解説(副音声) 関根信昭

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

あかりの働く東亜クラブの経営は危機的状況に陥っていました。そして、あかりは千晶に別れを告げて姿を消したのでした。 (とナレーション)

だるま食堂の朝「本日閉店しました」の木札がかかっている。
朝食の時間だが、浩平はまだ来ない。忠治は「今、来ますって」と言いつつ
仏壇に手をあわせている。

浩平は新聞を手にやってきて、
「今朝の朝刊読んだか
 友達のあかり君、東亜クラブで働いているっていったろ?
 社長の岸元が昨日警察に呼ばれて事情聴取されたって出てる」
と教える。
「えっ」絶句する千晶。
「東亜クラブって何ですか?」と文江。
浩平はそれには答えず
「近いうちに正式検挙の可能性大だって。
 それに資金の大半が暴力団から流れているって」
と、記事をここというように指し乍ら千晶に新聞を渡す。

東亜クラブ摘発 の見出しが見える。

文江は
「だってあかりさんって早稲田の学生さんでしょ?
 実家が旅館で裕福でどうして働く必要があるんですか?」
と腑に落ちない様子。
また、それには答えず千晶は
「あかりは、暴力団に係わり合いがあるってことなんですか?」
と浩平に訊く。
「この記事だとわからないが、岸元が夕べから姿を消しているのが気にかかるなぁ
 まさか、彼女と行動を共にしているなんてことないだろうね」
文江が「だってゆうべここに見えましたよ」と言う
「東亜クラブのこと何か言ってなかった? 変わった様子は?」
浩平に訊かれ、千晶はあかりのアパートに行ってみると走り出す。

あかりの部屋のドアをノックしても返事がない。
かわりに正郎が起きてきて
「まだ諏訪からかえってきてないわよ
 急に行くって言い出して、今日で3日?4日?」と言う。
「あたしはゆうべ会ったのよ」と千晶。
「へんねぇ でも昨日は帰った形跡なしよ」
とまだ事情を知らない正郎が言う。
そこに新聞を読んだという渉もやってきて、
「東亜クラブに行ってみよう」という事になる。
千晶は正郎に
「今日はどこにも出かけないで、あかりから連絡がくるなり何なりしたら
 必ずあたしに電話して、いいわね 必ずよ」
と強く頼み、去る。

小森家でも、新聞を読みながら話題になっている。
「ヤミ金融か」
「あかりさんがそんないかがわしい所に出入りしていたなんてねぇ」
「50万円もの大金を出せと言ってきたなら、切迫しとるんじゃろな」
友行が
「9月30日までに私設金融機関は大蔵省に届け出て許可をとらなきゃいけない。
 でも、東亜クラブは出していないから、当局に睨まれるでしょうね」
と解説する。
調べてみたのだと言う。
「暴力団と警察ねえ、おつきあい願いたくないわねぇ」と晶乃。

弥之助が湖水館に様子を見に行った方がいいと提案し
友行と晶子は揃って出かける。

東亜クラブは人が押しかけていた。

湖水館では、洋一郎があかりのことをそれは心配している。
「あかりが あかりがいないんです。
 アパートに電話してるんですが、出ないんです。
 二郎を東京にやっているんだが、困った娘です」
友行がもしかしたら千晶のところにいるのでは‥と言い、
だるま食堂に電話してみることに。

だるま食堂では、千晶と渉が東亜クラブの様子を話している。
債権者だか野次馬だかでごった返していた、記者もいた
見るからに暴力団の人も・・・

そこに友行からの電話がくる。
千晶が昨日のあかりの様子を話して、
「あかりがいないの。どこかに行っちゃったの‥」と言う。
友行は「とにかく次郎さんが東京に向かっているから」と教えて
電話を切る。

あかりのアパートでは、管理人が正郎の部屋をノックする。
「なんだ、管理人さんか」
「電話。隣の本間さんから」と管理人。

だるま食堂では忠治が警察にだろうか電話している。
「本間あかり 19歳・・・早稲田の学生です」

(つづく)


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カナディアン・アコーデオン

     森のあいだを曲線の道が静かにのびていく
     深いブルーに沈み込んだ湖
     無数に舞い散る粉雪が風を形にして見せる
     冬の景色に流れそうなたそがれ
     君が誰だか知らないけれど
     僕は何にも言わないけれど
     恋の言葉は異国の響き ささやき
     冬を奏でる カナディアン アコーデオン     







『かりん』(74) ★東亜クラブ経営悪化そして姿を消す

2005-12-27 13:38:42 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【74】 12月27日(火)

小森千晶  細川直美
本間あかり つみきみほ
池田文江  もたいまさこ
岸元道則  古藤芳治
組長    村松克巳 ( ミヨシ組組長 )
花江    佐藤春日(だるま食堂のお運びさん)
組員    内木場金光、衣笠健二、加賀谷圭

      鳳プロ

黒田忠治  佐藤B作
田上 渉  筒井道隆

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

東亜クラブの奥のバー

ミヨシ組の組長が組員を3人連れて、岸元と話をしている。
あかりもいる。

「1040万いますぐ耳そろえて返してもらおうか。
 見込みがはずれたので君から手をひこうといってるんだ」と組長。
「ご説明願えませんか」との岸元に
「どうだったかね、(顔をぐっと近づけて)警察の居心地は」と聞く。
目を伏せる岸元だが
「隠すつもりはありませんでした。やましいところはない、だからすぐに帰ってきた」
と答える。
しかし組長は
「とにかく警察はまずい、信用に響く。
 いままで通りに商売ができるとは思わんので君から手をひく、
 危ない橋で君にはけっこう儲けさせて貰ったが潮時だ、
 1040万返したまへ」
と、言う。
岸元が契約と違うと言うと組員は岸元に手を出す。
あかりは「何するんです」と叫ぶが岸元は「下がっていなさい」と言う。

組長はさらに
「頭のいい人間は慨して策におぼれる
 大日商事への貸付が800万凍り付いている、金の回収がおぼつかん。
 私の契約は金を護り、金を増やすこと、
 それが出来ない時反古になる」 と言い放ち
組員達はさらに岸元をいためつける。
あかりは後ろから羽交い絞めにされている。
「明日の5じまで待とう、
 岸元さんよ、阿多mだけで成り立っているんじゃないゾ
 体が大事、命会ってこそそこのお嬢さんとたのしい夜を過ごすことができる
 逃げても無駄だ、どこにいても探し出す」
組長はそう言うと、出て行く。

あかりは倒れている岸元をだきおこそうとするが、岸元はふりはらう。
「1000万ぐらい返してやるよ」
「どうやって返すんですか?」
「銀行強盗でもはたらくか」と自暴自棄に笑う。
「昨日、竹中が姿を消した、
 同時に東亜クラブの再生資金300万がひきだされている
 なかなかどうしてやってくれるよなぁ」

岸元はあかりに
「本間君、君も私の前から姿を消した方が良さそうだな
 君を巻き込みたくない、明日やつらがここに来る‥そして‥‥」
と言うが、あかりは徹底的に
「どこにも行きません、大丈夫ですあなたはこんなことでダメになる人じゃない
 初めて私が愛したひとなんだから」
と励ます。
「私は私個人で自己を完結する、君がいては迷惑だ」と岸元は更に言うが
「あきらめないで下さい、そんな社長は見たくない、
 乗り切るんです、あたしがついています」と 岸元の頬を叩いてまで
奮起させる。

マルオ物産からの返済は、不渡りを出したから期待できず
関東銀行からの追加の融資は、警察によばれた以上もうだめだ という状況で
あかりは、先日差し押さえたナルミ輸送の倉庫に、ひとまず身をかくして下さい
と提案する。


だるま食堂

夜、今日も疲れた~ と片付けをしていると渉が入ってくる。
焼き魚定食を食べ、忠治が「たべっぷりがいいねぇ」と感心していると
文江は珍しく気を利かせて、千晶と渉を二人にする。
渉は「諏訪へは帰らない!」と言いにきたのだった。
だるま食堂の外で
「また食べに来るよ」
「ゆうべのこと悪かった・・帰り際・・あの時急に小森がいとおしくなった」
と渉。

そこにちょうどあかりが来る。
渉「お久しぶり」
あかり「見てのとおり元気はつらつ」と会話をして
渉は帰り、あかりはだるま食堂の2階の部屋に行く。

あかりは「ハイわかさぎの佃煮」とお土産を出す。
「たまに帰ると諏訪もなかなかいいところね、見直した」
などと言う。
千晶が「なにか用事でもあったの?」と聞いても
「娘のかわいい顔を見せないとね」とちょっとふざけて答える。
しかし
「霧が峰にも行って来たのよ、急に行きたくなって。
 秋の終わりって感じだった一面ススキで。
 空気を袋に詰めて持ってくれば良かった。
 霧が峰でずーっとずーっと千晶のこと思ってた。
 顔 よく見せなさい」
などというので、さすがに千晶も変に思う。
が「こんな顔でよかったらいつまででもドウゾ」と顔を近づける。

あかりはしばし見つめて、「帰るわ」と言い、部屋を出る。
千晶は窓から外の路地を見ると、あかりは窓の方を見上げて
そして走って去っていったのだった。

あかりは姿をけしたのでした とナレーション


(つづく)


来年につづきます

■『かりん』 第13週 (73) ▲ニュースで時間変更のため最初の5分のみ▲

2005-12-26 17:14:04 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【73】 12月26日(月)

作    松原敏春
音楽  渡辺俊幸 コンセール・レニエ(演奏)
主題歌 井上陽水
語り   松平定知アナウンサー 


時代考証 小野一成
方言指導 有賀ひろみ
技闘指導 瀬木一将



小森千晶  細川直美
本間あかり つみきみほ
黒田忠治  佐藤B作
池田文江  もたいまさこ
本間二郎  三波豊和
組長     村松克巳  ミヨシ組組長
岸元道則  古藤芳治
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
組員     内木場金光  衣笠健二  
        加賀谷圭
間宮浩平  榎木孝明
小森晶子  十朱幸代




制作統括  西村与志木

美術    深井保夫   
技術    横山隆一
音響効果  平塚 清
記録・編集 阿部 格   
撮影    石川一彦
照明    田中弘信
音声    山中義弘
映像技術  高橋直幸 

演出    兼歳正英



解説(副音声) 関根信昭



・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

さわやかな朝 (ナレーション)

外の井戸のところで 正貴・和子・耕一郎が歯磨きをしている。

文江が茶碗を並べ、千晶は味噌汁を作りながら鼻歌を歌っている。
忠治も機嫌よさように鼻歌を歌いながら「おはようございます」と入ってくる。
「夢見がよかった、宝くじがあたりパチンコがじゃんじゃん出て財布まで拾った」のだという。
「そりゃ届けなきゃ」と文江。「夢ですから」と言っても
「黒田さんは届ける人です」と文江が言い張るので
「今夜夢の続きを見て、届けます」と忠治。

食べ始めると、浩平はやはり味噌汁のおかわりをする。
「ホントに好きなんですね。諏訪の味噌や婿養子の口でもさがしますか」
忠治がからかうと、文江は
「飲むのと作るのでは大きな違いがありますからねぇ」とマジメに答える
しかし浩平は
「悪くないかも‥ でも小森屋はムリだな。
 千晶お嬢様にはとっくに心に決めたお方がおいでらしい」と千晶をからかう
文江も「ひょっとして昨夜の?」とちょっとピンときた様子。
が、千晶は
「おくさーん、間宮さんにお味噌汁のおかわりあげないで下さい」と抵抗。
「朝からそういうでまかせ言わないで!」
間宮浩平は笑って謝りお味噌汁のおかわりも食べ、
おわびに大学の先生から仕入れたとびっきりのコーヒーをご馳走すると言う。

裏のほったて小屋

浩平はサイフォンでコーヒーをいれている。
「仕事はどう?」 「だるま食堂は順調です」
「もう片方の大口の販路開拓 は?」「思うにまかせなくて・・・」
「忠治さんに聞いてるよ・・・」

「消費者友の会って知ってる?」と浩平が話し始める。
「アブラハム・リンカーン風に言えばだ、
 消費者の消費者による消費者の為の組合。
 ぶっちゃけた話が、モノのない時代に肉でも魚でも野菜でもそれこそ味噌でも
 いいモノを直接消費者に届けていく。
 卸問屋などを通さずに 直接生産者からいいモノを購入して
 希望する会員に届けていく」

 「へぇー。じゃぁ生産者と消費者を直接つなぐ組合ですか」


   ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

    切れてしまいました 


『かりん』(72) ★渉 諏訪に帰る?

2005-12-24 17:29:28 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【72】 12月24日(土)

小森千晶  細川直美
本間あかり つみきみほ
田上伝六  不破万作
花山信太  林 泰文
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
池田文江  もたいまさこ

      長野県富士見町のみなさん
          信州新町のみなさん  

黒田忠治  佐藤B作
田上 渉  筒井道隆

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

渉がだるま食堂を訪ねてくる。2階の部屋で話をする二人。

「久しぶりね あかりとも会ってなくって」
「小森はエライよ。
 こうと決めたら何でもしっかりやり遂げるから。
 俺は何をやっても中途半端で・・・
 『青い山脈』見たか? 高校時代思い出したよ」と渉。
千晶は仕事が忙しくて『青い山脈』はみていないと答えるが、
1年前の文化祭を思い出し、二人で「カルメン」の台詞を言い合って懐かしむ。

「あの頃は目の前がパーっと開けてた、 何でも思い通りになりそうでさ」
「あれからたったの1年よ、何でもできるし思い通りになるわよ。
 何にもかわらないわ」と千晶。
しかし 渉は外国語学校を辞めたと言い、仕事の悩みを打ち明ける。
「正式採用ではないし、残業はできないし、大学出が幅をきかせて肩身が狭い。
 映画のことなら俺が一番見ててよく知ってるのに見下されている・・・・。
 『カサブランカ』でハンフリー・ボガードがタバコ何本吸ったか
 言ってみろってんだ。
 俺は東京があってない、諏訪に帰ろうと思う。
 お盆に帰ったときホッとした。肩の力が抜けた。
 親父と酒を飲んだとき、親父はずっと一人ぼっちなんだと思った。
  
 ‥‥ 渉 しょんべんから戻ってくるまで そこにいろよ
     黙って東京帰ったら承知しないゾ ‥‥
 
 このまま諏訪にいてやろうかと言ったら『バカ野郎』と言われた。
 俺は映画館のオヤジが向いている。諏訪で気楽にのんびりやるさ」
千晶は
「いいわね。いい口実ができて・・・。お父さんひとりにしておけないですものね。
 でも私は反対。田上君にはこのまま東京にいてほしい。
 渉君、向う方角が違うんじゃないの。
 ハリウッドに行って映画を作るんじゃないの?
 半年ぐらいで尻尾を巻いて帰ってもお父さんは喜ばないはず。
 GOING MY WAY でしょ。一度はハリウッドに行かなくちゃ。」
と励まし、卒業式の花山の答辞を引用する。

   ‥‥ 何事によらず決してあきらめることなく
      希望を心の友として生きていくこと
      希望の光を見出していく明日を切り開いていくこと
      毛SS手日一人ではなく誰かと手を携えて ‥‥
 
「ハリウッドに行くとき、よかったわね、おめでとうと言わせて」
「あかりのことはもういいの?諦めきれるの?」と聞かれ、渉はうなづく。

1階では忠治は子ども達とすごろくをして遊んでいる。(写真のようなすごろくだろうか・・・)
千晶は文江にお酒をもらって渉と二人で飲む。
「今日はお酒を飲んでいい気分になって、明日もう一度考えて・・」
「わかった。もう一度考えてみる」と渉。
階段の下で耳をそばだてる文江と忠治。


表で帰る渉を送ろうとして、千晶がふらつくが渉が支えてみつめあう。
千晶はわざと男言葉で
「だまって諏訪に帰ったら承知しねえぞ。わかったな。」
と言う。
渉はだまってうなづき、千晶を抱き寄せる。

千晶「お酒のせいね」に対し
渉 「違う」と言って立ち去っていく。


(つづく)


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

花山くんは、写真での回想シーンでした

卒業式のシーンは 【35】 11月11日(金)




『かりん』(71) ★あかり 50万円を借りに来る

2005-12-23 19:39:03 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【71】 12月23日(金)

小森千晶  細川直美
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
黒田忠治  佐藤B作
本間洋一郎 笹野高史
本間二郎  三波豊和
小森弥之助 小林桂樹
池田文江  もたいまさこ
川原清三  河西健司
本間三郎  丹羽貞仁
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

昭和24年の夏

 青い山脈 の歌と、静止映像が映り
8月ロサンゼルスの全米水上選手権大会で大活躍した水泳の古橋 の写真が映る。

時代は新しくなっているところで、季節は秋10月に移った。


小森屋の味噌蔵
速醸の味噌の味見をする弥之助と見守る友行・晶子・清さん。
味噌をお湯で溶き、色・匂い・味をチェックした弥之助は
「うーん」と一言。
「いかがでしょうか」「おとうさん!」と催促する三人。
「やっとここまで来たか
 これなら代々のご当主様に叱られなくて済む」
「合格ね!」と晶子。
「友さん、よくここまで粘ったなぁ」
「清さんのおかげで」「ダンナの言う通りにしただけでして」と譲り合う二人。
「清さん、こりゃ小森屋の味だ。ワシが言うんだから間違いない」
「へえ」と頭を下げ、涙ぐむ清さん。
「大ダンナの顔が鬼や般若に見えて 今まで何度やけ酒かっくらったことか」
「今は何に見える」
「仏か お地蔵さんに」
笑い声が味噌蔵に響く。

茶の間で今後の資金の相談をする 友行・晶子、弥之助。
「速醸の蔵の改良に40万円、増産のための設備投資と材料費に40万円、
 あわせて80万円はかかります」と友行。
「そんなにかかるのか」と言う弥之助に対して晶子は
「よそはとっくに軌道にのせているんです
 ここで戸惑っていたら、取り残される」と譲らない。
「自家製塩の時の借金もまだ残っているしなぁ」と弥之助は渋るが
晶子は既に別の銀行と話をつけていると言う。
「速醸こそ命綱。
 この家と土地、担保にしていいですね。
 自家製塩の時はお父さんの顔と信用で借りたけど
 あたしにはまだそこまでの信用はないし・・・・」

「どうなんですか、あなた」と晶乃が 作ったのたもちを持って入ってくる。
「すり鉢ですった枝豆がいい味なのよ、
 そんなに甘くないから友行さんでも食べられるわね」

「友さんはどうなんだ、晶子、友さんに相談ナシで話を決めていたようだが」
友行はかまわないと言う。
「じゃあ、それでいいじゃないか」
晶子は「じゃ、あたしと一緒に銀行行って下さい」と
すぐに出かけようと割ぽう着を脱ぎ、友行も立ち上がる。

そこに、玄関口から「あかりです」と声がする。
夏休みにも帰省しなかったあかりが帰省してきたと言う。
「かわりばえしませんが 浅草のおこしです」とお土産を渡しに来た。
晶乃は東京の話を聞きたかったようだが、
洋一郎が待っているだろうからと友行は早く帰りなさいと言う。


湖水館の帳場

洋一郎の右に二郎、左に三郎が座り、
テーブルを囲み洋一郎の正面にあかりが座っている。
「50万円?」と半分笑い出しそうに洋一郎が聞き返す。
「何に使うんだ」
「投資よ 月に1割4分保証する」
「ひょっとして、東亜クラブって言うんじゃないか?
 雑誌にインタビュー記事と写真が出ていた」
「お父さん、経済ジップ 読んだの?」
「うん」
「あたし、そこで働いているの」
「何だって?」と二郎
「バイトだったんだけどだんだん面白くなって 今こういうことになってます」と
名刺を見せるあかり
「社長秘書ぉ?」驚く二郎・三郎
「50万、出せるの? 出せないの?」とあかり。
お茶を飲み、あかりの名刺を見ながら洋一郎は
「1つ訊く、ウソは言うなよ」と言う。
「お前、その東大生と妙なことになってるのか?」「どうなんだ?」
「やぁねぇ 勘ぐるんだから」とあかり。
「ビジネスです、岸元さんは仕事に私情を持ち込むような人じゃないわ」
「ホントだな。よし わかった」
二郎は
「あかり、まだ大学行って半年だぞ。勉強してればいいんだ」
と言うが、あかりは
「50万くらい どって事ないでしょ」とお金を無心する。
「会社 困ってるのか」洋一郎が訊く
「逆です」
「お金はあるが出さん。娘に金儲けさせてもらおうなんて思ってない!」
名刺を破り、
「東亜クラブなんて、すぐやめるんだ! 父親としての命令だ!」
と一喝する洋一郎。


だるま食堂

千晶の大口販路拡大は少々難航しているようだ。
「統制が解除されたら、って言っても
 どこもうちは全て公団にまかせてあるからって」
文江も
「何月何日に統制がはずれるって決まっているわけじゃないですものね」
となぐさめるように言うと
忠治は
「いや、決まっていると思う。GHQも公団の上の人間も知っているはずです。
 でも損前に利権をガッチリと取り込むンじゃないですかね」
と言う。
「別の手立てを考えないと・・・・・」と言っている所に
渉が入ってくる。


(つづく)


  ・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・:♪・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・

カナディアン・アコーデオン

     森のあいだを曲線の道が静かにのびていく
     深いブルーに沈み込んだ湖
     無数に舞い散る粉雪が風を形にして見せる
     冬の景色に流れそうなたそがれ
     君が誰だか知らないけれど
     僕は何にも言わないけれど
     恋の言葉は異国の響き ささやき
     冬を奏でる カナディアン アコーデオン     

『かりん』(70) ★野中出頭の新聞記事

2005-12-22 17:23:19 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【70】 12月22日(木)

小森千晶  細川直美
黒田忠治  佐藤B作
池田文江  もたいまさこ
本間洋一郎 笹野高史
小森弥之助 小林桂樹
花江    佐藤春日(だるま食堂のお運びさん)
飲み屋のおかみ 花 悠子
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
食堂の客  晶衛里仁  上野まさとし
        大和祐樹  福田浩平

      鳳プロ
      劇団ひまわり
      劇団東俳

野中辰彦  児玉清
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

だるま食堂にネクタイ姿の野中が入ってきて千晶に向かって微笑む。
「何でしょうか」「少し話せないかな」
野中の顔を覚えているらしい文江が 奥へどうぞと案内しかけるが
千晶は「2階へ行きます」と自分の部屋に向かう。
文江は「すぐお茶持って上がりますから」

2階の部屋。

千晶「どういうお話でしょうか」
野中「いよいよいなくなるんでね。その前にもう一度」
千晶「日本を離れられるんですね?」
野中「君のお母さん来て下すった」
千晶「私は最後まで止めたんですけど」

野中は続ける。
「君は自分のお母さんを誇りに思っていい、すばらしい女性だよ。
 知り合ったころはお互い若くて、お母さん魅力的だったが
 今とは意味合いが違う。
 立派に成長したっていうことなんだろうね
 それにひきかえ、ただただ無為に生きてきた私は自分が恥ずかしかったよ。
 そのいたたまれない恥ずかしさを今度晶子さんは私に教えて下さった。
 
 実はね、ブラジルに行ってくれないかと頼んだんだ。
 もちろん断られたよ。
 こう言った。小森友行の妻です、何があっても添い遂げます。
 笑うかもしれないが、微かに望みをつないでいたんだ。
 必死にすがれば晶子さんの固い意思が崩れて私の望みが通じるんじゃないかとね。
 晶子さんのご主人への愛する思いが数段強かった。
 言い換えればご主人の晶子さんへの思いがね。
 負け犬は消え去るのみだ。

 君にその気があればつたえてほしいんだが、
 今もう一度自分の太陽を見つけたいと思っている と」

「太陽」とつぶやく千晶

「繰り返すが、自分のお母さんを誇りに思うといい、思うべきだ
 千晶くん、幸せをつかみたまえ」

だるま食堂の店の外に出る二人。頭を下げて立ち去る野中。
路地には七夕飾りがゆれている。
近所に村木という表札が見え、空き缶竹馬をしている子どもが映る。


諏訪 小森家の台所。
晶子が台所に立つ姿を見て、晶乃のことを話す弥之助。
「それがなかなか良かった、台所が似合う、ただずまいというのがな…」
「お母さんに惚れ直した?」とお茶目に言う晶子
「朝っぱらから何を言うか」照れる弥之助
「アハハハハ」 大きな声で笑う晶子

茶の間のテーブルに戻り新聞を読む弥之助、友行が寝違えたと入ってくる。
顔が右に傾いている。
「全てまがっていることが大嫌いだから」とワシが治すと弥之助が
無理矢理治そうとするが、友行は晶子に治してほしいと言う。
晶子は台所に手を休め、後ろから頭に手を添えて治そうとし
自分も同じ角度に顔を傾ける。
弥之助に「晶子もまがっている!」と言われ、友行は後ろを振り向こうとし治る。

‥‥弥之助は新聞記事を話題にする。毎朝新聞。
「国鉄総裁が行方不明って言ってただろ? 見付かったって・・」

見出しには 下山総裁 無残な死 常磐線で死体四散
      他殺説が決定的  特別捜査本部を設置
など書いてある。
広告には「ヨット鉛筆」などある。

弥之助は「・・・死因は不明 と書いてある」と記事を読み
「物騒な世の中だ」と茶の間を出ていく。

友行は台所に立つ晶子に「晶子これ」とその新聞の小さな記事を見せる。

     野中辰彦出頭
       食料品配給公団連続詐欺事件
      仙台・長野と連続して、食料品
     配給公団の名をかたり、統制下の
     食料品を横領しようとし、共犯者
     三名・・・・・・

だるま食堂では、朝食の途中に千晶が晶子からの電話に出ている。
「自首したわ」
「わかったわ」
「お母さん」と言いかけて「(やっぱり)いい」と電話を切る千晶。
小森屋の事務室では、カーテンを開けて外を見ている。

今夜は七夕です とナレーション

友行と洋一郎が、先日と同じ店で飲んでいる。
友人のイシザキさんの話をする友行。
「かみさん、帰ってきたって‥‥ 
 にっこり笑って送り出してよかったと思うって、信じてよかった
 まちがってなかった
 人生は面倒だらけ、自分だけじゃないんですよね。
 人生、半分が面倒と言っていいかも」
「半分ですか」と洋一郎
「半分で乗り切っていくんですよ。ささやかなやすらぎや喜びがある。
 イシザキに言ってやったんですよ。
    良かったじゃないか、
    人生まんざらすてたもんじゃないな
    今まで以上にかみさんを大切にしろ って」
「そしたらイシザキさん、何て?」
「わかった 大切にする」

友行にお酒を注ぐ洋一郎。


(つづく)
   

『かりん』(69)

2005-12-21 14:27:58 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【69】 12月21日(水)

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
岸元道則  古藤芳治
藤原    沖 恂一郎
野中辰彦  児玉清
池田文江  もたいまさこ
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
女子事務員 いかりはるみ、東海林かおり(東亜クラブ)
専務    大塚寛(東亜クラブ)
学生    諸伏時夫  (東亜クラブ?) 
アイスキャンデー屋 松山秀樹 
         (だるま食堂前の路地でアイスキャンデーを売る)

      丹波道場
      劇団ひまわり
      劇団東俳

黒田忠治  佐藤B作
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

「おかえり」「ただいま」
「お茶でも」「いただくわ」  茶の間に座る二人。
「熱いよ」 「あなたは熱いの大丈夫なのよね」

「東京には3日いただけか」
「食堂手伝っていたらキリがないから
 裏の間宮さん、あなたによろしくって」
「発明に熱中してたかい?」
「開店祝いに立派なアドバルーン作って…」
「アドバルーンを!」
「東京の空に高々と だるま食堂新装開店」
「いい宣伝になっただろう」
「いい方ね」
「彼とは気があうんだよ、統制解除になったらウチもあげるか」

ひとしきり話をしてから晶子が言う
「あの人に会いました。
 思っていることを全部話してきました。あとはあの人がどうするかです。
 ありがとうございました」
そこに晶乃が入ってくる。
「お帰り」「お義母さん起きてらしたんですか」
「晶子が帰ってくるのに寝てなんかいられないわ」
友行は晶子をもうやすませようと「おやすみなさい」と行こうとするが
晶乃は「野中さんに会ったの?」「それで?」と聞こうとする。
友行は「明日にしましょう お義母さん」とさりげなく遮る。


だるま食堂

「だるま食堂はこれで見通しが立ちました、お嬢さんには次の作戦を 
 考えていただきませんとね」と忠治。
千晶は
「奥さん 午後、抜けてもいいですか。
 中野の藤原さんの所に行こうと思って・・」と話し出す。
末っ子の耕一郎はなにかこぼしたようで、
文江は口や顔や服をゴシゴシ拭きながら
「もちろんです」と答える。
「問屋の確保と大口の販路の開拓が必要ですが、
 どういう方法でどういう場所へ働きかければいいか聞いてきたいと思って」
浩平はむこうの方で頷いている。
忠治も
「お嬢さんが自由に動けるように花ちゃんやとったんだから」と答える。
末っ子の耕一郎は忠治の膝にのってきてご飯を食べる。

千晶が「勉強・勉強」と言っていると
浩平が「張り切ってますね、お嬢さん。諏訪の分身のかりんも
    応援してますよ。
    分身ともども芯は固いから」と声をかけてくる。
忠治は驚き「どうしてかりんのこと知ってるんですか」と訊くと
浩平は「千里眼で遠方まで見えるんです」と答える。
千晶が「母に聞いたのね」と言い、笑いあう朝食。

浩平は「張り切りすぎるとバテが来るぞ、
    短距離走でなくマラソンの要領で・・」とアドバイスする。



諏訪。
晶子と晶乃は蚊帳を繕っている。軒下には風鈴が下がり、ウチワが見える。

晶乃「千晶も知った上で野中さんに会いに行ったのね。
   千晶もずいぶんつらい思いしたでしょう」
晶子「あの人のアパートから帰ってきて東京を出るまで、ひとっことも
   口利いてくれませんでした」
晶乃「当然よ。あたしもできることなら口利きたくないワ」
晶子「あの子にはすーっかり嫌われたみたいです、仕方ないわ」
晶乃「仕方ないじゃすまないわよ」
晶子「お母さんにどう言われようと行ってよかった。
   会えてよかったと思ってます
   千晶は母と娘です、時間かけて笑顔を見せてくれるように努力するしか」
晶乃「あなたは気が済んだかもしれないけど残ったしこりを考えるとね
   友行さんだって痛手は大きかったと思うわよ」
晶子「主人には感謝しています。
   妻として死ぬまでずっと感謝の気持ちを伝えていくしかないのね…
   私にはかけげのない人なんだなぁって」
晶乃「今さら何いっても仕方がないけど
   もう2度とこんな心臓わるくするようなことひきおこさないでね。
   あたしだって若くないんだから。
   人騒がせな娘を持ったもんだわ」
晶子「申し訳ございませんでした」


中野の藤原家

千晶が相談に来ている。

藤原は
自分のところは酒屋を中心に小売店に卸すのがほとんどだったから・・と
前置きをして、そうでないところというと病院があった、と言う。
入院患者の病院食を扱うんだ・・と。
東京中の病院を行って似引き受けるとしたら大口にはなるがそうはいかない、
ほかには一流企業の社食・百貨店の食堂に食い込む、
ひゃ買っての売り場に置いてもらったら、売上がどうこうより、小森屋さんの味噌の
大宣伝になるんじゃないかな とアドバイスをくれる。
「どういう風に入り込めばいいかはわからないけど
 人が大勢来るところだ、東京営業所長どの」とお茶目に付け加える。


東亜クラブ
「本日の営業は全て終了しました」と張り紙。

岸元が社員数人を前に演説している。
あかりもその中にいる。
「東亜クラブを始めた頃、この手の金融会社は都内に10社程度だったのが、
 今は8000余りあると言われている。
 おまけにビジネスに有利と思われたトッチラインが資金の払底につながっている。
 勝ち残るには君達の奮起しかない。

 まず、広告を増やす。
 中川、新聞には毎週チラシを入れる
 それと全国紙は記事下広告を毎月。雑誌もだ」

顔を見合わせる社員。
「社長、大変な広告量になりますが…」と疑問をもらす。
それでも岸元は強気で
「かまわん! 広告を使って貸付にまわす金をドンドン増やすんだ
 100万使えば1000万入ってくる。
 ドンドン集めてどんどん貸す、近い将来取り扱う運用資金は1億を越える!」
と話す。


奥のバー

あかりと岸元が飲んでいる。コークハイを作っているあかり。
岸元はめがねをはずしている。
「どうかしたのか?困ったことでもあるのか。
 そんな顔は僕に見せないで欲しい」と岸元。
あかりは「社長見てると怖いんです。
     こんなに急速につっぱしっていいのかしら」
「僕のやってることに興味を失ったか」
「逆です、面白すぎるぐらいで…」
「ならいいじゃないか 面白ければいいんだろ?」
あかりは更に訊く
「人生は劇場だっておっしゃいますよね
 脚本を書き演出し主役を演じる
 だとしたら私の役柄は何ですか?
 私は何をすればいいんですか、教えて下さい」
「君は今のままでいい。今あるままで…
 走る速度は遅いぐらいだ。最近つくづく思う。
 あと2・3人、僕がいてくれたらいい…」


だるま食堂。
路地の奥のほうでは、アイスキャンデー屋が子どもたちにアイスキャンデーを売っている。
空き缶竹馬で遊ぶ子どもたちもいる。
だるま食堂の前の塀には「晋平ニ告グ」という張り紙が見える。

そんな夏の風景に、ネクタイ姿の野中が来る。

晶子が諏訪に帰って3日目の午後のことでした とナレーション

(つづく)

『かりん』(68) ★その絵を燃やして

2005-12-20 14:09:26 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【68】 12月20日(火) ★その絵を燃やして

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
野中辰彦  児玉清
池田文江  もたいまさこ
北川正郎  山崎聡弘
黒田忠治  佐藤B作
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

だるま食堂

忠治はリンタクの中で寝ているが、千晶が外出しようとするのを見て
「奥さんの行く先追いかけようとなさってませんか
 お出かけの時の様子を見ましたらよくよく思いつめたお顔でした
 おやめになった方がいい」と止める。
一度は外に出た千晶だが、戻ってきて2階の部屋に上がる。

野中の部屋

絵をひっぱりあううちに重なり合うように倒れてしまう二人。
野中が絵を持ち、あわてて離れる。

「みっともない男だと言っているだろう、矛盾だらけだと
 自分で自分が情けないよ」
「だからそんなあなたを救いに来たの。主人の許しを得てね
 だからあなたが立ち直ってくれないと諏訪に帰れない。
 その絵を燃やして。全ての過去に訣別してください。
 そして新しい生き方を見つけて下さい」
「近衛は、若い頃の君そのものだ。それが焼かれもいいのか。
 炎につつまれてもいいのか」
「かまわないわ。あなたのためになるなら」
「私のため?」
「諏訪であなたに会うまで何ともなかったのよ。
 ……遠い遠い苦い思い出だったの。立ち直ったのは主人のおかげ。
 私は小森友行の妻です。何があろうと死ぬまで添い遂げます。
 そんな女の絵をいつまでも持っていてもしょうがない。
 その絵の私は亡霊です、葬って下さい、2度と甦らないように」
「強いな 君は」
「太陽は自分に向かってくるものだけを照らす … 
 
 太陽はあなたから主人にかわったけど、
 私の心に刻まれて心の支えになってくれたの。
 胸を張って自分の新しい太陽を見つけてください。必ず見付かる。
 人生と呼べる人生が、必ず」
「どうしてこんなところまできてしまったんだろう。
 時間を取り戻せたらなぁ
 あおのころに帰れたらなぁ・・・・うううぅ」泣く野中

空き地で絵を燃やす二人。

だるま食堂では、忠治が晶子の帰りを狸寝入りして待っている。
文江は気を利かせたように話し掛けるが、晶子は2階へ上がる。

千晶も寝ているフリをしている。
「おきてたの? ただいま
 これで済んだわ。あたしのできることは全て。
 千晶の意には沿えなかったけど、あの絵は燃えたわ、燃えて灰になったわ」
答えない千晶。

翌朝

裏庭で晶子がマーガレットに水をやっている所に浩平が帰ってくる。
「マーガレット、お庭に咲いてるんですって?」
「他にも桜草、なでしこ、雛菊、かりんの木が一本…
 
 大きくならないですが5月に薄くれないの花を咲かせて… 
 10月ぐらいに実をならせて 父は千晶に分身だなんて言ってますけど」
「諏訪には行った事がないなぁ」
「気が向いたらいつでも。歓迎しますわ」
井戸のポンプを汲みながら
「そうか、諏訪に行ったらご主人の発明品が見れるんだ!」
「主人、話ができたら喜びますわ」

「そうか、わかった」と突然言う浩平、「わかったって?」
「こういうお母さんとああいうお父さんがいるとああいう娘さんができるってこと」
「あんな娘ってどんな娘ですか」
「かりんの香ってどういうのですか?」
「私は好きな香りです。さわやかで」
「さわやか・・。そういう香のする娘さん、
 自分で自分が窮屈そうなところはまだ19歳ですから
 カリンの実のように固いのかな?」
「堅くて融通がきかない?」
「芯が堅いってことでもありますから」
「とりあえず千晶のこと誉めてくださってるんです?」
「そうです。」

「それはそれは、ありがとうございます。
 私は今日で諏訪に帰りますけれど、千晶のこと今後ともよろしくお願いいたします。」
「わかりました。残念だなあ、もっとお話したかったのに。
 (ひそひそと)
 ここだけの話ですが、ボクですねえ、美人が好きなんですよ。世間には内緒ですよ。」
「まあ」

その夜晶子は諏訪に帰って行きました。とナレーション。


あかりの部屋。千晶がスイカを持って訪問したようだ。

あかり「どうして見送りに行かなかったの?」
千晶「お店忙しくて、疲れてたし。」
正郎「お母様わざわざ手伝いにきて下さったって言うのに、千晶って冷たいコねぇ
   この冷蔵庫ムスメ!」
あかり「おばさまと何かあったの?」
正郎「千晶隠さないで言いなさいよー あたしたちの仲じゃないの。」
あかり「どういう仲?」
正郎「お友達!親友! 生まれたときは別々でも、死ぬときも別々って仲。」
千晶「何にもないわ、ある訳ないじゃないの。ほらスイカ食べて。」


諏訪の小森家。
夜の12時をまわっていたが帰ってきた晶子を、友行は迎える。


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

太陽は自分に向かってくるものだけを照らす…

【40】 11月17日(木) 駆け落ちのいきさつ

で、語られています。


■『かりん』 第12週 (67) ★対峙する晶子と野中

2005-12-19 16:14:27 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【67】 12月19日(月)

作    松原敏春
音楽  渡辺俊幸 コンセール・レニエ(演奏)
主題歌 井上陽水
語り   松平定知アナウンサー 


時代考証 小野一成
方言指導 有賀ひろみ


小森千晶  細川直美
野中辰彦  児玉清
小森晶子  十朱幸代


制作統括  西村与志木

美術    深井保夫   
技術    三島泰明
音響効果  石川恭男
記録・編集 阿部 格   
撮影    熊木良次
照明    関 康明
音声    大塚 豊
映像技術  沼田繁晴 

演出    鈴木 圭



解説(副音声) 関根信昭


・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

晶子は千晶をふりきって野中に会いに来ました。 (ナレーション)

野中のアパート・・ひまわり荘の部屋に入る晶子。

晶子「この辺りかわってしまったわね。
   千晶に会ったんですって? どして?」
野中「ひょっとするとあの店に君が来るかと思って、矢も盾もたまらず…
   娘さんに感謝している」
晶子「違います。娘は私を呼んだりしない。
   私は自分でここに来ました。
   食堂の様子を見にではなく、あなたに会うために」
野中「私の気持ちが通じたわけだ」
晶子「そういう言い方はやめて下さい」
野中「かけないか、紅茶でもいれるよ」
晶子「私にやらせて。座ってらして下さい」
野中「いい娘さんだね。聡明だ。育て方があらわれてるよ。
   諏訪で君に19歳の娘がいると聞いたとき、私の娘じゃないかと思った。
   微かに目の前が開けたようなような気がした」
晶子「千晶は私と主人の子どもです」
野中「娘さんにもそう言われたよ」
晶子「千晶はここに来るのを泣いて止めたわ。
   お母さんを軽蔑してもいいのか、キライになってもいいのかって」


夕陽の差し込む部屋で一人じっと正座する千晶と、鉄棒人形が映る。

晶子「まだ熱いわ」
野中「?」
晶子「猫舌だったでしょ。お風呂もぬるめが好きで。
   そのくせヒノデ湯は長湯で・・・」
野中「先に帰っていいって言っても待っていた」
晶子「帰ってこないような気がして不安だったのかも知れない」

晶子「日本を離れるんですって?」
野中「だからその前にもう一度会いたかった」
晶子「どこ行くの」
野中「ブラジルだ、前からいる知人が来ないかって」
晶子「うそよ」
野中「うそじゃないよ」
晶子「例えそういう話があったとしても今のあなたは行く気はない。
   今日こうして会ってわかった、死のうとしてるのよ」

晶子「死んでほしくないから来たの。死ぬことも逃げることも」
野中「疲れ果てたよ、もういいんだ」
晶子「死ぬことも逃げることよ、辰彦さんお願い、逃げないで
   諏訪に帰れない。帰らない」
野中「だったら私とブラジルに」
晶子「何ですって? 二人でブラジルって何するの! 詐欺?だますの?」
野中「一切の過去を清算して…」
晶子「どこまで自分勝手なんですか! 都合のいいことばかり。
   犯した罪は消えるの? のうのうと知らん顔して。
   あたしさえそばにいたら・・・。
   そんな価値の人生に私を巻き込まないで!
   私あなたに死んで欲しくもない逃げて欲しくない。
   これ以上あなたを嫌いにさせないで。
野中「君は私に自首しろっていうのかね」
晶子「そうよ」
野中「それで犯した罪は償えるのか?
   この国は日本は私を破滅に追いやった罪を償えるのか?」
晶子「自分が日本の戦争の犠牲者だって言うのね?
   それはあなた一人なの? 国民みんなじゃないの?
   私の知ってる野中辰彦は自分の身に不利なことが起ころうと
   他人のせいにする人じゃなかっ」
野中「君はそんな事を言うために諏訪から会いに来たのか
   小森晶子はそんな言い方はしなかったよ。
   限りなく私に優しかったよ」
晶子「でもそれが耐えきれなかったんでしょ?
   そして耐え切れずあたしの前から姿を消した…」

晶子「あたし優しかったんじゃない。すがろうとしてた」
野中「すがろうと?」
晶子「獄中から出た後、別人だった。転向してひたすらふさぎこんで
   私から遠ざかる気がしてすがろうとした。
   あなたより、あなたを愛する自分の方が大切だったんです。
   今さらそんなことわかってもね……
   あなたが新しい人生を行くように説得することが今できること」
野中「私の結論はでている。会えてよかったよ」

押入からふろしきに包んだ絵を出す野中

野中「結局、最後に残されたものはこの絵だけだ」
晶子「死なないで! その絵を燃やして!    
   死ぬ時まで私にすがるの?」
野中「太陽だったんだ」


部屋で一人じっと正座する千晶と、鉄棒人形が映る。   
 

(つづき)

『かりん』(66) ★お母さんね 野中さんに会いに来たの

2005-12-17 23:05:32 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【66】 12月17日(土)

小森千晶  細川直美
黒田忠治  佐藤B作
池田文江  もたいまさこ
川原清三  河西健司
小森弥之助 小林桂樹
英      出雲崎 良
竹山     八木厚也
花江    佐藤春日  だるま食堂のお運びさん
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
野中辰彦  児玉清
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

「あたし野中さんに会ったのよ ここに訪ねてみえたの」
「いつ」
「もう5日になるかしら」

いきさつを話す千晶、

「ヒノデ湯近くのひまわり荘っていうアパート」
「あの人が来た時から野中さんじゃないかって思ったの」
「野中さん日本を離れるそうよ、絵を渡して欲しいって。
 でも断ったの。
 お母さん、いいわね それで? 絵なんていらないわよね
 話すだけは話しとかないとね」

晶子は東京に来た本当に理由を話し始める。

「私ね、千晶。
 野中さんに会いに来たの。本当の目的はそれなの。
 私も諏訪で会ったの。詐欺の人、あれが野中さん…
 手紙が来たの。
 ”決着をつけるときが来たようだ”って書いてあって死んじゃいそうで
 それでお父さんに話して来たの」

「そんなの口実よ、会いたい一心で来たんでしょ
 お父さんに話した? 許しをもらった?
 ひどい!ひどい! どんな気持ちで諏訪にいるか…」
「千晶がどう思おうと私はもう一度野中さんに会うの」
「お母さんしっかりしてよ。何しようとしてるかわかってるの?」
「あの人、あたしを待っている」
「もういないわ日本に」
「それならそれでいい」
「あの人を救えるのは私しかいない 立ち直って欲しいの
 歯車が狂ってしまった、それを直すの
 … 野中さん、あの町にいるのね …」

「あたしのお母さんに戻ってよ!」

「千晶がどう言おうと行くわ
 お父さんはあたしを信じて待っているといってくれた。
 その言葉に甘えさせてもらうの。
 妻としては落第なのよ・・・・母としてもね・・・

 今のあの人には私が必要なの」



朝、小森家。
晶子がいないので、晶乃が朝ご飯の支度をしたのだった。
弥之助は「同じ味噌を使っているのに晶子と違うなぁ」と言う。
晶乃の「微妙にって、どっちがお口にあうんですか?」
弥之助はここだけの話だが晶乃の方だと答え、ここだけの話だと念を押す。

清さんも「大奥さんのサトイモの味も懐かしい」と言い
竹さんも「油味噌が大好物でして…」と言うと
晶乃は「清さんも油味噌?」と聞く。
が、「俺は別に」と返事されたため、晶乃はすねる。
清さんは慌てて「五平モチうまかった」と言うが
晶乃は「竹さん、五平モチは待ってね」と清さんは無視してしまう。

弥之助は「台所もうけつがれていくんだなぁ」と感慨深げにしている。
「東京はどうだかなぁ」と思いを馳せる。

だるま食堂は、2日目も大繁盛である。
閉店後、千晶が「夕飯よ」と晶子を呼びに行くと、
晶子はきちんと着物を着て出かける準備をしている。
思いつめたような顔をして、止める千晶から目をそらし出て行き
野中の部屋の前に立つ晶子。

時 昭和24年7月2日のことでありました

とナレーション。


(つづく)

『かりん』(65) 

2005-12-16 23:14:23 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【65】 12月16日(金)

小森千晶  細川直美
本間あかり つみきみほ
田上 渉  筒井道隆
田上伝六  不破万作
池田文江  もたいまさこ
北川正郎  山崎聡弘
駅アナウンス 青砥洋(声のみ)

      鳳プロ

黒田忠治  佐藤B作
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

だるま食堂
田上父子が来ていると聞いた千晶と晶子は2階から降りてくる。
田上父子は開店祝いにとスイカを持ってきたのだった。
晶子が「あかりさん、2階にいらしているのよ」と言うと
渉は一瞬躊躇するが、千晶とともに2階の部屋に行く。

渉は「(東亜クラブ)もう辞めたんだろ?」と聞くが辞めてはいない。
千晶「あたし、岸元さんって人に会ったのよ」とフォローする。
渉 「素晴らしい人だと思ったのか?」
千晶「短かったからよくわからないけど、東大生で・・・
   自分をしっかり持っているみたい」と曖昧な評価になる。
渉 「それで金貸しかよ! あの男はインチキだよ」と強く言う
あかり「話にならない、あたし、帰る」
渉「あいつのいいように丸めこまれているんだよ」

千晶「田上君はあなたが心配だから言ってるんでしょ」
あかり「他に大切な人がいるでしょ、目の前に・・・
    あたしは今岸元さんに自分を託しているの
    これから何が起こっても受け止めるのは私」
渉 「それがのぼせ上がっている証拠だ!」

あかり「私とあなたのものさしは違うのよ。千晶のこと心配してあげて
    見ててあげなさいよ。千晶はずっとずっと・・・・
    あなたを追いかけて東京に来たのよ」
渉 「俺はお前を追いかけて東京に来た」
あかり「よく千晶の前でそんあこと言えるわね!」

あかりは出て行ってしまう。気まずい千晶と渉。
「汽車の時間 いいの?」と千晶は言い「あかりのこと諦めちゃダメよ」
渉は「ごめん・・・・」と謝る。


新宿駅、出発前の汽車の中。父・伝六の席を取り荷物をタナに置く渉。
「俺もこのまま諏訪まで帰ろうかな」と言い
 ふるさと (うさぎ追いしかの山 コブナ釣りしかの川~)と微妙な音程で
歌う渉。
伝六は「お前の歌はダメだ、俺は信州のオカッパル(岡春夫)」と
渉よりは上手く ふるさと を歌う。
そろそろ発車の時間だとアナウンスが流れ「ほんじゃな」と言う渉に
「ややこしくなってるのか?
 二人のお嬢様方とこじれちゃってるのか?
 男なんだからして、いついかなる時にも潔くな。
 アラカンやバンツマはいついかなる時も潔い」と言う伝六。

あかりの部屋では、具合が悪い正郎に料理させている。
包丁のトントンという音がリズミカルである。
あかりはイラついた様子で
「今、あなたの大切なものって何?」と正郎に訊く。
正郎の答えが遅いと「はやく答えなさいよ!」と更にイラつく。
「何よぉ、ぷりぷりしちゃってぇ 答えてあげないからぁ 」


だるま食堂2階、晶子が寝る支度をしながら話している。

「良かった、1日目お客さんいっぱいで
 浩平さん? お父さんの若い頃見てるみたい発明だなんて」
そう話し始めながら、あかりと渉のことを訊く。
「何はなしてたの? 詮索するつもりはないんだけど……
 千晶、今でも渉さんのこと好きなの?」
千晶は晶子の顔をじっと見る
「そうすぐには何でもないとは思えないものね
 人の気持ちってやっかいね。思うにまかせないし…」
「お母さんもそういうことあるの?」訊く千晶。
「そうね、どうかしら」とはぐらかすような答えをし、それでも
「いい? 千晶。母さんに出来ることがあったら 出来ないことでも
 話しなさい。
 話すと気分が楽になるからね」


千晶は「お母さん、かくしておけないわ」と話し始める
「あたし、野中さんに会ったの…」


(つづき)

『かりん』(64) ★イシザキさんの身の上話とだるま食堂開店

2005-12-15 23:04:46 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【64】 12月15日(木) ★イシザキさんの身の上話とだるま食堂開店

小森千晶  細川直美
間宮浩平  榎木孝明
本間あかり つみきみほ
本間洋一郎 笹野高史
池田文江  もたいまさこ
花江    佐藤春日  だるま食堂のお運びさん
アナウンサー 青砥洋  ラジオのアナウンサー(声のみ)

      鳳プロ

池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太
黒田忠治  佐藤B作
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

友行は洋一郎に結婚のなれそめを訊く。

洋一郎が22歳、奥さんは18歳で結婚した、無理矢理で押しの一手で・・
私の人生に引き込んで、苦労かけっぱなしであの世に見送ってしまった・・
「友行さんともう少し早く知り合っていたら見習っていたのに」と洋一郎。

友行は、例えば、例えばですよ、とイシザキという友人のことだとして
妻が結婚前の彼に会いに行くのを許す夫の気持ちを
延々とまるで自分のことのように話す。
飲み屋の店内には、ラジオから ♪酒は涙か溜息か が流れ、
次はデュエット曲が流れている。
「女房のことを考えた挙句に出した結論でね」と友行。
晶子から事情を聞いていた洋一郎は、途中で気がついたようだが
「奥さん、わかってますよ。
 お友達のイシザキさん、おつらいでしょう、顔で笑って心で泣いて・・」
と励まし、友行のコップにお酒を注ぐ。


だるま食堂は、いよいよ開店の日。11時ヨリと表に張り紙がしてある。
間宮浩平は紅白のアドバルーンを開店祝いと宣伝にと空にあげる。

食堂は満員で、厨房では文江がタマゴを混ぜながら、
注文の品の暗誦をしている。
「コロッケ、ひじき、冷奴、おひたし、煮魚、ご飯がふたつ」
「おひたしじゃなくキンピラ、ライスカレーをお忘れなく」と忠治。
「コロッケ、ひじき、冷奴、きんぴら、煮魚、ご飯がみっつ・・・」

「親子丼まだですかぁ?」と晶子が催促しに入ってくる。
お味噌汁も足りなそうで、千晶が作りますとてんてこ舞い。

間宮浩平は、風船に囲まれて寝ていたのであった。

夕方、あかりがお腹をすかせてだるま食堂にやってくるが
早々に売り切れになって、店仕舞いしていた。
あかりは「何か食べに行く?」と誘うが晶子がきていることを知り、
2階の部屋で話をする。
大学の様子やボーイフレンドはできたかなど聞かれるが、
あたりさわりのない答えを返し
「おば様こそ気をつけないと、諏訪の岡田時彦さんが泣きますよ」
と言う。

そこに渉が伝六と一緒に来た・・と文江が言いに来る。
顔を見合わせる千晶とあかり。

(つづく)

『かりん』(63)

2005-12-14 23:31:03 | ’05(本’93) 50 『かりん』
【63】 12月14日(水)

小森千晶  細川直美
黒田忠治  佐藤B作
本間洋一郎 笹野高史
田上伝六  不破万作
川原清三  河西健司
小森弥之助 小林桂樹
池田文江  もたいまさこ
飲み屋のおかみ 花 悠子  友行と洋一郎が一献かたむけた店
英      出雲崎 良
竹山     八木厚也
池田正貴  中村洋一   
池田和子  はた中美貴子 
池田耕一郎 越迫健太

      鳳プロ
      劇団ひまわり
      劇団東俳
 
小森晶乃  岸田今日子
小森友行  石坂浩二
小森晶子  十朱幸代

・‥…━━━★・‥…━━━★・‥…━━━★

だるま食堂の開店を明日に控え、チラシを電信柱などに貼ったり
魚・肉などを冷蔵庫に入れて準備に余念がない。
忠治もリンタクは休んで手伝うと張り切り、
「奥さんのお迎えは?」と千晶に訊く。
「来なくていい」と言われたようだ。
わざわざいらっしゃるのは、母親なればこそ、と文江は感心している。
そして
「緊張してきた、時間があればパーマ屋くらい行ってくるんですけどね」
と言う。
忠治は
「行ってらっしゃい、行ったほうがいい、行くべきだ」
と3段活用で「見た目が大事だから」と勧める。

小森屋では、晶子の出発の時間になっても、晶乃はふくれている。
事情を知らない弥之助は
「お前も行きたかったのか?」
「仏頂面して・・・」
「いずれ連れてってやるから年寄りがすねるんじゃない」
と晶乃のカンにさわることを言う。

セミのなく声がする中、晶子は白い紗の着物を着て出発する。
「行かせていただきます」の挨拶に
「ゆっくりしてきていいからな」
「連絡だけは頼むよ」
晶乃は「帰ってらっしゃいよ」とちくりと言う。
「煙たがられない程度にはやく帰ってらっしゃいよ」と言い直す。
友行も少々複雑な表情をする。

汽車の中で田上伝六と一緒になる。
伝六は映画監修組合の集まりが東京であるので、ついでに息子に会いに行くのだ
と説明。
渉のことを
「ハリウッドに行くなんて、大層なことを言ってます。」
と困ったもんだといいたげな、でも嬉しそうに話す。
「母親が途中でいなくなったからどうなるかと思っていたが
 なんとかまともだ。
 自分が失敗したから、女性を見る眼は養ってほしい」
と言い、さらに
「子どもを捨てる母親がどこにいますか
 捨てられたモンにしかわからない痛みっつうのがあります」
と自分の経験を話す。
黙ってきいている晶子。

湖水館の電話がなり、洋一郎が出ると、友行からだった。
「一献かたむけましょう」と誘われる洋一郎。

小森屋では弥之助が「電話かね?」と友行に訊く。
「今ごろどの辺か」と弥之助が訊くと
「韮崎ぐらいですかね」と友行。
「じきもうすぐ甲府、塩山、大月だ・・」
新宿には4時18分着らしい。
電話の相手が気になる弥之助は、友行が洋一郎を誘ったと知ると
「そうだな、晶子いねぇしなぁ」と言いながら
「わし、いるけどなぁ」とボソッと言う。
が 友行は「そうですね」とピンときていない。

夕方、迷わずに、だるま食堂に到着する晶子。
忠治は、真っ先に土下座するが「もういいのよ」と晶子。
パーマをかけた文江、子どもたち3人もきちんと挨拶する。
ちょうど帰ってくる千晶は「お母さん!」と声がはずむ。

2階の部屋で荷物整理をしながら、汽車の中で渉の父に会ったことを
教える晶子。
「明日は無事開店できそう?」と聞くと
「快晴間違いなし、念力で雨なんておいはらう!」と千晶。
「明日は手伝いますからね」と晶子も張り切る。

階下から「お夕飯の支度できました~」と声がする。
文江の髪型をこっそりと話題にする晶子と千晶。

諏訪の飲み屋さんでは、

♪さーけーは涙か溜息かー 心のうさの 捨て所~

とラジオから ♪酒は涙か溜息か が流れる中
友行と洋一郎が酌しあう。

友行の酒は長くなりそうです と
ナレーション

(つづく)