Liddle 症候群
Int J Mol Sci 2018; 19: 812
1963年に Liddle らは低レニンの抵抗性高血圧(180/110 mmHg)、低カリウム血症(K 2.8 mEq/L) 、アルカローシスを呈する16歳白人女性の症例を報告した。
アルドステロンは低値でスピロノラクトンは無効だった。epitherial Na channel (ENaC) の阻害剤であるトリアムテレン 100 mg 8時間毎内服と塩分制限で血圧は正常化(拡張期血圧 80 mmHg) し、血清K は 5.0 mEq/L に上昇した。
Liddle 症候群は常染色体優性遺伝の遺伝形式をとる。1994年に Botero-Velez らは連鎖分析を行い、ENaC のベータサブユニットの遺伝子変異が Liddle 症候群の原因であることを報告した。
ENaC はアルファ、ベータ、ガンマの3つのサブユニットからなる。現在、Liddle 症候群の原因となる遺伝子変異は31種類報告されている。ベータ、ガンマサブユニットの細胞質側のユビキチン結合部位が欠損する変異の報告が多く、タンパク質の分解が抑制される結果、遠位尿細管の管腔側に ENaC が蓄積する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5877673/
Liddle 症候群のシステマティックレビュー
Clin Exp Hypertens 2018; 40: 107-111
54症例の Liddle 症候群の確診例についてのシステマティックレビューの結果、発症年齢についてはばらつきはあるものの一般に30歳未満であることが示された。
Liddle 症候群のスクリーニングは30歳未満に対して行うことが提案されている。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28718682/
Liddle 症候群のケースシリーズ
J Clin Hypertens 2017; 19: 524-529
12症例(うち11症例は ENaC のβまたはγサブユニットの変異を確認している)を後方視的にまとめた。診断時の年齢は 15.5±3.3歳だった。ほとんどの症例は血圧コントロール不良で、血清K 3.0 mEq/L 未満、起床時のレニン/アルドステロンは抑制されていた。いずれも、トリアムテレン内服で血圧はよくコントロールされ、血清K は正常化した。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/jch.12949
Liddle 症候群の家系に対して遺伝子スクリーニングを行った結果についての報告
J Clin Endocrinol Metab 1997; 82: 1071-1074
K176 変異は ENaC のβサブユニットのC末端のフレームシフトを起こし、軽度の高血圧と軽度の低カリウム血症、低レニン血症を来す。
この変異をもつ家系で遺伝子スクリーニングを行ったところ6人の保因者が同定されたが、このうち高血圧を認めたのは2名、低カリウム血症を認めたのは2名だった。
LIiddle 症候群の臨床症状は同一家系内でもばらつきが大きく、診断されていない例もあるのかもしれない。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9100575/