橘玲(たちばなあきら)氏の、「バカと無知」を読みました。
びっくりするほど自分の思考と似ている上に、エビデンス(論拠)もしっかりしているので、読んでいるうちに付箋だらけになりました。
面白いと思った箇所には、AmazonのKindle電子図書の場合マーカーを引いて、実図書の場合は付箋を貼ります。
一通り読み終わったあと、マーカーや付箋を貼った場所だけ読み返します。
必要があれば、追加で調査します。
図書館で借りる本は、ノリによって経年劣化で色が変わるため付箋を貼れないのですが、そんな場合は紙を短冊状に切って差し込んでいきます。
本を買うか買わないかの判断基準は、半分以上のページに付箋や短冊を差し込む必要が出た場合。
図書館の複写制限は書籍の半分以下ですが、複写費用と時間を計算して、3分の1のページに付箋を貼る必要があったら、買ったほうが安上がりと計算できます。
逆に言えば、買う価値ありです。
逆の場合もあって、AmazonのKindleの場合、重要なところに赤をマークしますが、間違っているとか、論拠不明とか、矛盾した論理の部分に青をマークします。
図書館の本の場合、黒い印をつけた紙を挟んだりします。
青いマーカーや黒い印の紙が10箇所を超えたら、「読む価値なし」と判断して差し支えないと考えます。
残念ながら、このような本は存在します。
マンガにはそんなことしないですけれどね。1時間もあれば一冊読めるので。
付箋だらけになった「バカと無知」ですが、エビデンスを調べます。
IAT(潜在連合テスト)で、潜在的な差別、例えば黒人と白人では、白人であろうが黒人であろうが黄色人種であろうが、白人を善、黒人を悪と判断してしまう。
実際にやってみると、テストは恣意性を感じますね。
反応時間を計測しているそうですが、試しに意図的にというよりも、悪そうな白人はやっぱり悪そうなので、悪いイメージは白人だろうが黒人だろうが関係なく悪いと判断したら、なんだかよくわからない結果が出ました。
「ダニング=クルーガー効果」もしっかり調べる必要があると思って調べてみました。
ダニング=クルーガー効果は、そもそも能力が高い人がテストを受けると、自分ができたのだから他の人もできるはずと得点を低く見積もる自己採点をします。
能力の低い人が同じテストを受けると、よくわからなかったけれど、多分できているだろうと、得点を高く見積もる自己採点をします。
その結果、能力の高い人と能力の低い人の自己認識する結果は、ほとんど変わらなくなってしまうのです。
この結果から、著者は、「バカは自分のバカを認識できない」という強烈な論法を代弁しています。
代わりに、能力のある人は、自己評価を低くしてしまうのです。
これはしっかりデータを分析する必要があると思って、論文を当たりましたが、日本語の詳細な論文が見つからず、英語の論文をしっかり読む必要が出てしまい、詳細検討できていません。
というわけで、「バカと無知」は非常に面白く、納得する論理でもあるのですが、背景にある実験や理論の背景をしっかり検証しておく必要があるなと感じています。
たまに、論理がしっかりしていて、非常に筋が通っているのだけれど、基礎論文やデータまで確認すると、独自解釈してしまっている人というのもいるのですよ。
ものすごく納得の行く人の話を聞いた場合、しっかりと背景情報まで調べます。
その人を信じていないというよりも、一次情報まで遡って分析するのが、科学者として当然の好奇心で、最大の敬意の表しかただと思っています。
リーダーなどの中には、プレゼンが非常に上手で、研究予算をがっちり取れる人がいるのですが、肝心の実験を担当していないため、本質的理論を全く説明できない人や、聞くと担当者に丸投げする人とか、話をはぐらかしたり嘘を堂々という人とかもいるんですよ。
社長や教授でもいます。
だから予算を取れるんだろうなと思いますが、研究者としてプロフェッショナルかは意見が分かれるところです。
「バカと無知」はいいほうです。
睡眠時間を減らせないかと思って、ショートスリーパーの本を読んでいたのですが、冒頭に、「客観的な情報のみを書いています」と書いてあるにも関わらず、完全な私見や、専門がわからない医者の意見や、母数がわからないデータの平均で何%以上とか、分散や標準偏差の値などを全く考慮しないとか、そもそも集団わけが曖昧だったりして、青いマーカーを付ける必要が大量に発生して、読むのをやめた本があります。
そういうのは、詐欺師がよくやる手段なんですよね…。
せっかく買ったのに、AmazonPrimeで0円で読んだ本のほうが圧倒的にエビデンスがしっかりしていて、ショートスリーパーはリスクが有りすぎると思ってやめました。
Amazonでのレビュー数は前者が高いんですよね…。しっかりレビューしようかどうかは検討中。
つまりですね、世の中には読んで価値のある本と、読んでも無駄なだけの本があるんです。
その間ほかのことができずに、せっかく貴重な時間をかけて読むのです。
経済学で言う機会損失を計上するわけで、それは避けましょうと。
それで、結局それが有用な本か、無益な本かを見極めるためには、自分自身の知識と教養と経験が必要なのです。
本は他人の経験や思考を疑似体験して、自分の実践経験をするコストやリスクを削減します。
しかし、最終的には自分自身で実践して確かめる必要があります。
知識は使うための道具なのです。
ただ知っているだけではなく、それをどう応用するかなのですが、そのように知識を使っている人は少ないというのも事実です。