これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ひとつ覚え

2009年05月31日 16時31分19秒 | エッセイ
 月曜日と木曜日は、夫が夕食を作ることになった。
 彼は料理が苦手なので、どんなものが出来上がるか、内心ドキドキしていたのだが……。
 初日は、まずまずだった。メニューは、スズキの塩焼き、肉じゃが、もやしのお浸しで、合格点をあげられる味だった。肉じゃがに使った牛肉が、やけに美味だったところを見ると、きっと高価なものを買ったのだろう。

 まあいいや。ウチは酒もタバコもやらないから、食べ物くらい自由にさせておこう。

 次の当番では、真鯛の塩焼き、もやしと豚肉の炒め物、ホットサラダを作ってくれた。
 その次の当番では、甘塩鮭の網焼き、もやしと卵の炒め物、キャベツのお浸しだった。
 はたと気づいた。

 いつも、もやしが登場するじゃない……。

 娘にこっそり聞いてみた。
「ねえ、パパの作る食事って、必ずもやしがあると思わない?」
「うーん、そう言われてみればそうかなぁ……。まあ、美味しければいいんじゃない?」
 中一の娘は、さほど関心がないようで、ろくに相手をしてくれなかった。
 そりゃそうだけど……毎回、もやしばかりというのも芸がない。作ってもらって何だが、ここはひとつ、辛口意見も言っておきたい。
 私は気をつかいつつ、夫に話しかけた。
「もしかして、もやし料理にハマってるの?」
「うん。雑誌に出てたんだ」
「もやしが何回も続いてるって気づいてた?」
「……いや。そうだったかな?」
「たまには別の食材がいいよ。今度は他のにしなよ~!」
 軽いノリで言ったつもりだったが、返事がない。ああ、失敗だっ!
 夫も含めて、男性にあれこれ注文をつけるのは難しい。すぐにへそを曲げてしまい、いじけたりふて腐れたりする。何て面倒くさい生き物なのだろう。
 
 さて、その次の当番で、夫がどんな夕食を作ったのかというと……。
 調理中、キッチンから「ジャージャー」という、中華なべで何かを炒める景気のいい音が聞こえてきた。ちょっと、嫌な予感がした。
「できたよ~!」
 夫が自信たっぷりの声で、私と娘を呼んだ。
「今日は何を作ったの?」
 夫に話しかけながらテーブルを見ると、野菜炒めが盛り付けられていた。キャベツや人参、玉ねぎにニラに椎茸はさておき、真っ先に目に入ったものは、もやしだった。
 私は力が抜けたように、イスに腰掛けた。

 また、もやしかよ……。

 きっと、これからも、もやし料理が続くのだろうな。
 夫を変えるのは諦めて、私が発想を転換するしかないようだ。

 まあ、いいか……。食べ物くらいは自由にさせてあげないと。
 シャキシャキ、シャキシャキ。
 あー、おいし……。



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コメント (14)
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