秋景色 月待の滝
北茨城の久慈川の支流、大生瀬(おおなませ)川が作り出す小さな滝。
『月待の滝』。
なんとも情緒の漂う名前だ。
高さ17㍍、幅12㍍で水に濡れることなく滝の裏側に行けるところから、
『裏見の滝』、『くぐり滝』とも言われている。
栃木県日光にも『裏見の滝』があり、
こちらはだいぶ前に崩落が進み裏に行くことは出来なくなっている。
また、残念なことに滝への遊歩道も落石発生のため通行止めになっています。 (2022.7.7情報)
元禄2(1689)年4月2日、松尾芭蕉が奥の細道行脚の途中この地を訪れました。
しばらくは滝にこもるや夏(げ)のはじめ
奥の細道によれば、廿余丁山を登つて滝有。
岩洞の頂より飛流して百尺、千岩の碧潭に落たり。
岩窟に身をひそめ入て、 滝の裏よりみれば、うらみの滝と申伝え侍る也 、とある。
この時代、『裏見の滝』は華厳の滝よりずっと有名だったらしい。いずれにしろ
「二十余丁山を登って滝にたどり着けば、岸壁の頂上から流れ落ちる滝」だ。
私が40年ほど前に訪れた時には、めったに人の訪れることもない辺境の滝で、
滝の裏側に祀られた不動明王に手を合わすことができました。
(月待の滝・新緑) (川合玉堂・制作1903(明治36)年)
流れ落ちる滝の裏に通じる道を、親子の巡礼でし
ょうか、杖を突いて登っていく様子が描かれてお
り、この絵に奥行きと物語性を演出しています。
(秋) 道路わきの駐車場から、滝へと向かう 沿道に、秋は紅葉が美しい。
(冬) 北茨城の寒い地域にある滝は、冬には凍結します。これもまた、風情がありますが、
寒いし、滝は萌える新緑、涼風を誘う夏、錦秋の秋がいい。
普段は二筋の夫婦滝ですが、水量が増えると子滝が現れて親子滝になります。
この珍しい形状のためか、古くから安産、子育て、開運を祈る二十三夜講
(二十三夜の月の出を待って婦女子が集う)の場とされたところから「月待の滝」と呼ばれ、
胎内観音が祀られています。(大子町観光協会案内)
近くには袋田の滝もあります。
(袋田の滝)
平安時代の歌人・西行法師も訪れたと伝わる「袋田の滝」です。
高さ120㍍、幅73㍍の滝は、大岩壁を四段に落下するところから
別命「四度の滝」とも言われている。
また「この滝は四季に一度ずつ来てみなければ真の風趣は味わえない」と西行法師が絶賛したことから「四度の滝」とも伝えられています。
袋田の滝は日光の華厳の滝、熊野の那智の滝と合わせて日本三名曝とも言われているが、
誰が選定した訳でもなく、諸説があるようです。
(季節の香り№38) (2022.12.13記)
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