雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

追悼・船村徹 (11) さよなら 船村徹

2017-03-20 08:32:27 | つれづれに……

追悼・船村徹 (11) さよなら 船村徹
 
    船村徹は、2017年2月16日に亡くなった。
 その告別式が2t月23日、東京の護国寺桂昌殿で営まれた。

 告別式当日は小雨が降っていました。
「春を呼ぶやさしい雨」と司会者が表現していたように、
早春のやさしく、憂いを含んだ雨でした。

 護国寺桂昌殿の近くには、キングレコードの会社が近くにあります。
キングレコードは、船村徹と高野公男の二人が作った「別れの一本杉」を制作した会社でもあり、
音楽活動の出発点となった会社です。
当時苦学生の二人が、酒を飲み音楽への熱い思いを語り合った場所でもあります。

また、船村が生涯活動をつづけた「うた供養」の最初の場所が護国寺でした。
この活動は、『音楽界の仲間を追悼し、
いい歌にもかかわらずヒットに恵まれず埋もれていった歌を供養する』というものでした。
 
 この二つの理由から文京区の護国寺が葬儀会場として選ばれたようです。

祭壇のデザインは、雪を抱いた日光連山とお花畑をイメージして造られていました。
2015年に建てられた「船村徹記念館」の窓からはきっとこのような風景が広がっていたのでしょう。
28,000本の花々が祭壇を彩っています。

 故郷・栃木の雪をかぶった日光連山の上には、
「みだれ髪」(美空ひばり)の歌いだしの楽譜が掲示してありました。
船村氏の直筆楽譜だそうです。

 故郷・栃木県塩谷町松井酒造の日本酒「男の友情」や遺作となった
舟木一夫作詞の『都会のカラス』の直筆譜面も飾ってありました。(歌・村木弾 4月19日コロムビアから発売)。

 2016年には文化勲章を受章。天皇陛下より祭粢料(さいしりょう)を賜っていました。

 3名の方が弔辞を読まれましたが、内弟子の同門会会長である鳥羽一郎さんの弔辞が、朴訥で印象に残りました。


 鳥羽一郎さんの弔辞全文
  「たとえば俺が死んだなら、命の全てを灰にして、北の空から撒いてくれ」
  1年前、先生は俺にそんな歌詞の歌を歌わせて…
  あれは辞世の歌だったんですか? 遺言だったんですか?
  内弟子3年。その後もずっと俺の生き方・考え方を俺はぜんぶ教えてもらいました。
  先生は世界一の親父です。自分の神様です。
  心配や迷惑ばかりかけましたが、俺は親父の不肖の息子です。
  76曲も俺は親父の曲をもらいました。いちばん多くもらいました。
  そして、いちばんいい歌をいただきました。
  おやじ、ありがとうございました。それが俺の宝です。俺の自慢です。
  2月16日、親父の魂は俺のからだの中に入りました。
  俺は生涯、親父といっしょです。そして、いっしょに歌っていきます。
  同門会のみんなも同じだと思います。俺はそう覚悟を決めました。
  おやじ、それでいいんでしょう? それでいいんですよね?

            弔辞の最初に引用された歌は、
           「悠々と」(作詩・池田充男 作曲・船村徹 唄・鳥羽一郎)という歌です。
             引用は一番の冒頭ですが、二番に次のような詞が続く

     たとえば遠い旅に出て
     そのまま人生終われたら
     俺にして見りゃ悔いはない
     嘆くな泣くなわが妻よいとし子よ
     わかれていくのもまた定めまた定め

 喪主の挨拶が終り、静かにリムジンの霊柩車が入口に到着です。
 いよいよお別れの時が来たのです。
   鳥羽一郎氏の持ち歌である「おやじ」を、
   担ぎ手全員で歌いながら棺は霊柩車に載せられました。

 いよいよ車は火葬場に向かいます。
 そこに流れてきた歌は、船村が作曲し、26歳で夭折した親友・高野公男が作詞し、
  春日八郎が唄った故人の出世作「別れの一本杉」でした。

     泣けた泣けたこらえきれずに泣けたっけ
 「望郷の歌」が「お別れの歌」代わった瞬間でした。
 同時に、船村徹という大作曲家の終焉の時でもありました。
 でも、船村と高野の青春の友情物語は永遠に語り伝えられるのでしょう

  リムジンの霊柩車が去り、親族の乗ったハイヤーやマイクロバスも後を追って斎場を後にします。
   野辺送りの会場に繰り返し流れていた「別れの一本杉」の歌も途絶え、斎場は静かに幕をし閉じようとしています。

 参列者や多くのファンたちが護国寺から、雨あがりの街の中へと散っていきます。
 昭和の時代の名残りがまた一つ消えていきます。 

 さよなら、船村徹。
 そして、高野公男。


        ※ 参考文献
      演歌巡礼         船村徹著  博美館出版
      歌は心でうたうもの      〃   日本経済新聞社
      酒・タバコ・女そして歌    〃   東京新聞出版局
      昭和演歌の歴史      菊池清麿著 アルファベータブックス
      歌のなかの東京      柴田勝章著 中央アート出版
      昭和の歌手100列伝    塩澤実信著 北辰堂出版
      不滅の昭和歌謡        〃
             船村徹に関しては、「歌は心でうたうもの」がお勧めと思います。

   ※ 追悼・船村徹の連載は11回を数えることになり、私の想いは、
    回を重ねるごとに感情過多になり、
    時には饒舌な文章になってしまったところもありました。
    最後まで、読んでいただいた読者の皆さんに、
    「ありがとう」の一言です。
            (2017.03.19記)     (終り)
                                 (つれづれに……心もよう№56)

 

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