ニュースの声(16) 北方領土 ビザなし渡航合意破棄
ロシア、強硬姿勢強める (朝日新聞2022.9.7)
2022年2月25日 。ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻が始まった日だ。
世界を暗雲が覆い始め、平和を侵す危険な入口への扉が開いた日だ。
西側と東側を分断するような危険な壁が作られ、
単にロシアとウクライナの二国間の問題ではなくなってしまった。
ウクライナを支援する国としない国、あるいは傍観する国。
ロシアを支援する国と世界が色分けされてしまうような危険な状態が、出現した。
ロシアはウクライナ侵攻後の3月、欧米とともに日本を「非友好国」に指定。
北方領土問題を含む日本との平和条約交渉の中断と、ビザなし渡航の停止を決めていた。
領土問題ばかりでなく、日ロ間の漁業協定の履行停止なども決めていた。
友好国と非友好国という対立の構図が出来上がり、自国の正当性を主張し、
対立する国々に対抗措置を計れば、益々溝は深まり、
解決のための話し合いの場は遠ざかっていく。
ロシアは孤立を余儀なくされる。
9月5日、ロシア政府は、北方領土の元島民らによる「ビザなし渡航」についての
日本との合意を一方的に破棄すると発表。
停止や中断ではなく、一方的な平和条約交渉の破棄という強硬手段である。
30年前の1992年4月22日、ロシア人の第一陣を乗せた船が、根室の花咲港に入港してきた。
二国間の住民同士が、互いに海を渡り交流を深める取り組みは、日本や関係者にとって
北方領土問題の解決へつなげる大切な試みだった。
これまでに、およそ1万4000人の元島民等の関係者たちが日本側から、
ロシア側からおよそ1万人が参加し、ホームステイなど草の根の交流を重ねてきた。
そうした試みが、侵略戦争の手段として一方的に破棄されてしまうことに、
プーチン氏の手段を選ばないルールを無視した姿勢が見えてきて怒りを覚える。
国民のための政治が、戦争の手段に使われてしまう。
なんと理不尽な行為なのだろう。
先人たちが、互いに国の代表として築いてきた北方領土への解決への糸口を
プーチン氏は切ってしまった。
合意破棄について、岸田首相は6日、事前の連絡もなく、破毀宣言をするロシアに対して、
「極めて不当なものであり、断じて受け入れられない」と発言しているが、
空しい言葉の響きしか感じられない。このことに関して、どのような対抗策をとるのか、
あるいは話し合いのルートを探るのか、発言からはなにも見えてこない。
元島民の平均年齢は86歳を超えて高齢化が進んでいる。
交流がいつ再開できるのか、そして再び故郷を訪問できるのか住民の不安が広がっている。
「これで振り出しに戻ってしまうのか」(元島民 85歳)
「揺さぶりなのか、本音なのか、ロシアの真意がつかめない政府同士が向きあって
一日も早く交流を再開して欲しい」 (両親が国後島出身 70歳)
当事者の声は、私たちの声でもある。
(ニュースの声№16) (2022.9.12記)
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