このポンパドゥール伯爵夫人、かなり大きなサイズを飾っています(もちろんにせもの、しかもお安いもの)。
モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥールのパステル画です。
ご存知、ポンパドゥール伯爵夫人、1721-1764、は、平凡な市民階級出身でありながら、国王ルイ15世の寵姫として宮廷内で大きな勢力を持っていました。
同時に、文芸保護に熱心でした。
ルイ14世が君臨した17世紀、王侯の権力を称える重厚で儀礼的な肖像画が主流だった。
18世紀に入ると、もっと親密で優美な肖像画が描かれるようになる。
注文主は、王侯貴族のみならず、商人、銀行家、法律家、裕福な新興市民階級となる。
18世紀、油彩の肖像画だけでなく、パステル画の肖像画が流行した。
1720年、イタリアの女流画家ロザルバ・カリエラ(1675-1757)がパリに招かれた時、パステル新技法を伝え、その後流行した。
パステル画の名手が、モーリス・カンタン・ド・ラ・トゥール。1704-1788
ラ・トゥールの肖像画の特徴として、パステル独特の迅速な描写により、モデルの性格を生き生き捉えている、ところにある。
さて、ポンパドゥール伯爵夫人の絵の話に戻ります。
この絵は、ラ・トゥールが『パステル画は油絵に劣らないことを示すため』に描いた、と言われています。
ポンパドゥール伯爵夫人は、本名をジャンヌ・アントワネットと言い、平民出身でしたが、国王から侯爵領をもらいました。
才色兼備で幅広い教養を持ち、19年間、怠惰なルイ15世に代わって、事実上政治の中枢にいました。
また、当時の進歩的思想であった啓蒙思想を保護する姿勢を示しました。
啓蒙思想とは、非合理や不寛容を批判し、人類の進歩と幸福を図ろうとする哲学です。
そのため、この絵の机の上の本には、モンテスキューの『法の精神』や、当時政府やイエズス会から発刊を圧迫されていた『百科全書』があります。
出典∶ルーブル美術館Ⅵ フランス芸術の華
ルイ王朝時代 日本放送出版協会
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
百科全書、法の精神、地球儀、ポンパドゥール署名入り版画、手に持つ楽譜、背後の楽器、により、伯爵夫人の豊かな文芸趣味を称えている。
ほぼ等身大に近い。
1755年。
紙。
パステル。
175センチ×128センチ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます