金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

暗雲さす米国住宅市場

2007年08月29日 | 金融

昨日米国で「クレジットカードのデフォルト率が急上昇し、実体経済の悪化が懸念される」と書いたが、住宅市場の悪化も鮮明になってきた。ファイナンシャルタイムズ(FT)は以下のように報じている。

  • 自分の家を持つということはアメリカンドリームの真髄だった。問題はこの夢が悪夢に変わる兆候を見せていることだ。
  • ケース・シラー住宅指数The Case-Shiller housing  http://www2.standardandpoors.com/spf/pdf/index/SP_CS_Home_Price_Indices_Factsheet.pdfという統計的にみて最も強い住宅の価格指標が、昨日(火曜日)に多くの人が予測していたより悲観的な様相を示した。住宅価格は第二四半期に20の大都市圏で3.2%下落した。これは過去最大の下落である。価格が下落しなかったのは5つの大都市圏に過ぎない。
  • 月曜日にはコンドミニアムやコープなど集合住宅の販売在庫が1年間の販売金額まで積みあがったというニュースがあった。これらのことは米国の住宅市場が更に悪化する可能性があるという明快なメッセージを送っている。
  • 問題はサブプライムローンに限ったことではなくなってきた。一番価格の下落が大きいのは高額物件である。連邦住宅公庫適格物件を越えるサイズの物件のファイナンスは「ジャンボ・ローン」に頼ることになるが、ジャンボ・ローンのスプレッドが急拡大している。

S&Pが毎月発表しているこの指数がかなり市場参加者にグルーミー(憂鬱)な気分をもたらした。米国経済の原則は対円でドルを弱含ませた。

この結果本日(29日)の東京では円高と米国景気の悪化に嫌気がさして日経平均は4百円程下げている。一個人投資家としてはグルーミーにならざるを得ないが、一方市場展望を書く身としては、原稿締め切りぎりぎりまで筆を執らなかったことで、かなりクリアな予想が見えてきた。

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保険商品・銀行窓販の背景

2007年08月29日 | 社会・経済

今日(8月29日)の日経朝刊は「保険商品の銀行窓販が2007年にも全面解禁」というタイトルでメガバンクの販売戦略を紹介していた。この話自体目新しいものではないので、一種の埋め草のようなものだろう。

ところで読者諸氏は「どうして銀行が保険商品を販売することになったか?」ということを考えられたことがあるだろうか?中には「それは日米規制改革協議の中で決まったのだろう」と回答される方がいるだろう。そのとおりである。ただしその内容を詳しく見られた方は少ないかもしれないのでちょっと紹介しておきたい。

「規制改革イニシアチブ」は2001年に経済成長や市場開放を促進するため立ち上げられ、毎年12月に双方の政府が要望書を出している。米国政府の日本政府に対する要望書の中に保険商品の銀行窓販だとか郵政公社の民営化要望などが盛り込まれている。金融分野でいうと確定拠出年金の利用拡大のため「非課税拠出枠の拡大」「被雇用者拠出を認める」「加入者への投資助言サービスを認める」などという具体的な要望が出されている。

要望書の原文は英語だが、米国大使館はご丁寧に日本語訳をホームページに掲載している。→http://japan.usembassy.gov/pdfs/wwwfj-20061205-regref.pdf

これは余りマスコミが報じないことだけれど、日本の色々な規制緩和はこの要望にそって動いていることは事実なので、将来を予測するにはこの要望書に目を通しておくと良いだろう。なおこれをもって米国の内政干渉というのは当てはまらないかもしれない。何故なら日本も米国政府に要望書を提出しているはずだからだ。ただし私は不勉強にしてまでその要望書を見ていないが。

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