「腹八分目は医者要らず」と言ったのは貝原益軒だが、今日「腹七分目は長生きのもと」と言えそうな記事をニューヨーク・タイムズで読んだ。それはアカゲザルを使った長生きの研究に関するレポートが最近発表されたというものだ。
カロリー制限を行ったネズミが制限を行っていないネズミより長生きすることは実験で知られている。30%カロリー制限をしたネズミはカロリー制限をしないネズミより最大4割も長生きする。ネズミの場合寿命が短いので、実験は短期間で終わるが、霊長類は長生きするので実験結果を得るまでに時間がかかる。実験に使われたアカゲザルの平均寿命は27年で最高40年生きる場合もある。ウイスコンシン大学のColman教授とWeindruch教授が率いるチームによる今回の研究も20年以上前に始まった。非常に我慢強さを求められる研究だ。
今回の実験結果カロリー制限を行ったアカゲザルでは高齢により死んだ猿は13%で、カロリー制限を行わないアカゲザルでは37%だった。このことは霊長類でもカロリー制限が長生きに有益だという結論を与える。
だが科学者の中にはこの実験結果について異を唱える人がいる。その一つの理由は「カロリー制限が長生きに効果があるとすれば、カロリー制限猿の死亡数が、非制限猿の死亡数より有意に少ないはずだが、事実は統計的に有意な程の差はない」ということだ。もっとも総死亡数から年齢に関係のない病気(例えば鼓腸症)による死亡数を除くとカロリー制限猿の方がはるかに長生きするということができる。
しかし反論者は「カロリー制限が死亡の原因になっている可能性もある」として、死亡数の調整に反対している。
このような反論はあるもののニューヨーク・タイムズは「条件付ながら特別なダイエットを行うと人間も老化を遅らせることができそうだ」と報じる。だが必要なカロリーの7割で我慢できる人はほとんどいないだろう。腹八分目が良いことは知りながら、ついつい食べ過ぎるのが凡人の常だ。腹七分目で我慢できる訳がない。
そこで今注目されているのが、レスベラトールという天然の抗酸化物質のような物質から出来た薬を飲むことで、カロリー制限効果をだそうという研究だ。ニューヨーク・タイムズによるとケンブリッジに本拠をおくSirtrisという会社がレスベラトールの臨床実験を行っているということだ。
レスベラトールはポリフェノールの一種で赤ワインにも含まれている。ただしワインの中にはごく微量しかないので、ワインを飲んでもカロリー制限に効くことはないそうだ。
長寿の薬ができるまでは、腹七分目は無理でも食べ過ぎに注意はしたいものである。