一昨日(11月25日)にドバイ政府が政府系ディベロッパー・ドバイワールドの債務弁済を早くても来年5月30日まで待って欲しいと要請したニュースは、情報不足の中世界の金融市場を震撼させ全面的な株安を招いた。
情報不足の理由の一つは一週間前にドバイの首長マクトム氏が「ドバイは現在と将来の債務弁済に備えて直ぐに資金調達する」と安心させていたからだ。
少し古い1ヶ月前のエコノミスト誌の記事を見ると10月21日発行された目論見書によるとドバイ政府は40億ドルの債券発行と25億ドルのイスラム債を発行する予定と述べられていた。なお記事によるとそれまで投資家は「ドバイ政府は資産売却か銀行借り入れのロールオーバー(借換)で資金繰りを付け、新規の起債は行わない」と予想していた。
これらの話から推測すれば、ドバイは「不動産を売ろうとしたが思うように売れず、銀行に借換を頼んだが上手くいかず、隣国にイスラム債を売ろうとしたが上手くいかず弁済猶予を宣言した・・・」ということなのだろう。
もともとドバイは石油資源のない国である。そのドバイが積み上げた借金は800億ドルと推定され、その3分の2は地元投資家によるものといわれている。
ところでエコノミスト誌は「今週末からイスラム諸国では犠牲祭(イード・アル・アドファー)が始まるがドバイに投資した人は犠牲祭の精神を得る早めのチャンスを与えられた」と洒落た記述を行っている。
犠牲祭の縁起は「ユダヤ民族の始祖といわれるイブラヒム(アブラハム)が神から自分の子供を犠牲にささげよと啓示を受けた時、それに従おうとしたので神がイブラヒムの信仰心を称え、子供の替わりに羊をささげよと啓示した」故事による。
ドバイワールドに投資してきた域外人達はドバイワールドに資金がなくても、ドバイ政府が支援するだろうと推定し、ドバイ政府に資金がなくても、アラブ首長国連邦などの近隣国が支援するだろうと楽観的に考えていたのだろう。
アラブの神は今これらの人に犠牲を求めようとしているようだ。だが問題は神は等しく犠牲を求めるのだろうか?それともアラーを信じるものには軽い犠牲をアラーを信じないものには重い犠牲を求めるのだろうか?
その答はもう少し時間がたたないと分からない。