金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

邦銀株が上昇する理由を推測すれば

2010年04月12日 | 株式

最近二つの先から「私のブログの記事を転載したい」「私のブログを紹介したい」という話を頂いた。その先の一つは日経マネーだ。どういうお話か詳しいことは知らないが、お断りする理由もないので応諾した。世界的に株価が戻ってきたので、日本の個人投資家の株に対する「食欲」も戻り、資産運用に関するブログや雑誌の購読数も増えているということだろうか?

ブログを転載されることは光栄なことだが、私自身自分がスマートな投資家ですか?と聞かれると首をかしげるところがあるので、エントリー(ブログの個々の記事)についてはあくまで「参考」に留めて頂きたい。

さて何故スマートな投資家という質問に首をかしげるのか?というと、ある邦銀株を沢山持って(絶対額ではなく、資産に占める比率の話です)、結構含み損を抱えているからだ。まあ、株を持っている理由が鞘取り狙いというよりは、長年積み立てた結果で売るタイミングを失している・・・という好意的な解釈も成り立つが。

さて先週あたりから邦銀株が値を上げ始めている。「循環物色の矛先が銀行株に向いてきた」という需給からの分析もあるだろうが、私は景気底入れ感から銀行業績の戻りが予想されていると見ている。

邦銀の決算がどれ位良いか?ということは分からない、いや一部具体的な数字も聞こえるのだけれどインサイダーと間違われてはいけない(そんなパイプはありませんが)ので、「李下に冠を正さず」でコメントは控えたい。

ここでは好決算が予想される米銀が邦銀のベルウェザーになるのではないか?という推測を語りたい。

11日付ファイナンシャル・タイムズによると、投資家は米銀の第1四半期の決算に高い期待を寄せている。株式市場のボラティリティが低く株式トレーディングによる収入やM&A関連の収入は低かったが、融資やFICC(固定利付債、通貨、コモディティ)関連の収益が好調だったとアナリストが見ているからだ。ゴールドマン・ザックスについてアナリストは、第1四半期の純利益は、前年同期比43%増しの23億ドルと予想するとトムソン・ロイターは報じていた。

JPモルガンのような商業銀行は、政策金利が超低水準で推移する中、高いスプレッドで融資を実行しているので、利鞘が拡大している。また貸倒費用が減少すると予想されることも好材料だ。

業績が向上するとボーナスが増えるのが米銀の常。FTによるとクレディスイスのアナリストは、ゴールドマンは収入の47%をペイに回す(前年同期は36%)と予想している。

資金需要がそこそこ旺盛で、貸出スプレッドの拡大を図ることができる上、色々な収入源を持つ米銀の収益が急回復するという判断は間違っていないと思うが、国内資金需要が低迷している邦銀に期待を寄せるのはどうかな?という疑問も起きる。さはさりながら、しばらくは邦銀株価にも少しフォローの風が吹くのだろう。

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米国金利、どれだけ上昇するか?に関心は移る

2010年04月12日 | 金融

今日のニューヨーク・タイムズのビジネス欄(ネット版)で一番読まれていた記事が、Interest rates have nowhere to go but up(金利は上昇するしかない)という記事だ。寄稿者のSchwartz氏について不勉強にしてよく知らないが、経歴を見るとkeen bird watcher(熱心な野鳥観察者)ということだ。野鳥と同様金利についても鋭い観察を期待するところだ。

記事はまず債券王の異名を持つPIMCOのビル・グロスの言葉を紹介する。「米国人は長い間金利のローラー・コースターは下降する一方だと考えていたが。今我々は相当な金利の上昇局面に面している」とグロス氏は述べる。

PIMCOの旗艦ファンド・Pimco Total Returnは、9ヶ月前には資産の半分を米国国債に振り向けていたが、現在は30%に圧縮している。これはファンドの23年の歴史の中で最低の資産配分だ。タイムズによるとグロス氏は米国債を売却して、欧州の債券特にドイツ国債や、ブラジルのような新興国の債券に資金を振り向けている。グロス氏が米国金利が上昇すると見る理由は、景気回復によるインフレ懸念と財政赤字拡大に伴う国債の供給過剰感だ。

米国金利の上昇は色々なセクターで兆候が見られる。30年の住宅ローン金利は先週昨年夏以来最高水準の5.31%に上昇しているし、モーゲージ・バンカー協会は今年の夏の終わり頃には5.5%まで、更に年末までには6%まで上昇すると予想している。

クレジットカードの金利も08年の第4四半期の12.03%という一番低い水準から今年2月の14.26%まで上昇している。これは2001年以来最高の水準だ。

長期金利がどれ位上昇するか?という予想は専門家の間で意見が分かれる。モルガンスタンレーは年末までに1.5%上昇する可能性があると予想しているが、JPモルガンの予想はもっと穏やかで0.5%程度の上昇というものだ。しかし幅はともあれ金利が上昇するということで、市場参加者の見方は一致しているとJPモルガン証券のフィックス・インカムのストラテジストは述べている。

☆   ☆   ☆

米国の10年国債の利回りは約4%で、日本の10年国債の利回りは約1.4%だ。これは歴史的な利回り格差ということだ。もし米国債の利回りがドンドン上昇すると、日本の国債金利も上昇するだろうか?

年金基金等機関投資家からすると、為替ヘッジ後の利回り格差が拡大すると、日本国債を売り、米国債に投資することになるから日本国債の利回りが上昇する可能性はかなりある。しかし銀行等の場合は、貸出の資金需要が強くないと集めた資金を国債で運用するしか術がないので、国債利回りが短期的に急上昇する可能性はそれ程高くないだろう。

日本国債の場合、むしろ気になるのは「年金を襲う2012年問題」かもしれない。この年から団塊の世代への年金支給が始まるので、厚生年金や国民年金の積立金の減少が加速するという問題だ。

そのインパクトを正確に予想することは難しいが、日本がデフレ基調から脱出できず、財政再建に目処もつけていないと「デフレ化の高金利」という非常にまずい状況に陥るリスクは低くはないと私は考え始めている。

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