スマートフォンは我々シニア世代でも時々話題になります。
身の周りで起きた具体的な話では、山仲間でフェイスブックのグループ(非公開)を始めた時、一部の仲間から「スマートフォンを持っていないし、持つ積りもないのでスマートフォンがないと連絡を取れないような情報交換スタイルは止めてくれ」という話がありました。もっともこれはその人の誤解です。フェイスブックはPCからもアクセスできるからです。
次に先週千葉県でシニアの方(平均年齢75歳)にマイナンバーの講演をした時、話の進め方を決めるため、「スマートフォンを持っている方」「確定申告(還付申告)をe-taxで行っている方」を挙手で聞いてみました。正確な比率は計算していませんが、スマートフォンを持っている方は数パーセント、e-taxを行っている方はその数倍から10倍近くいらっしゃったようです。
このことはPCなどでインターネットにアクセスしている方はシニア層でも結構多いが、スマートフォン所有者はかなり少ないという統計と同じ傾向を示しています。
インターネットアクセスやスマートフォンの所有についてはPew Research Centerfが世界的な調査結果を発表しています。
Pewが「時たまでもインターネットにアクセスするかまたはスマートフォンを保有しているか」という調査を行ったところ、日本では69%の人がYesと答えています。これはお隣韓国の94%、米国89%に較べるとかなり低い数字です。
下の図は「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」と1人当たりGDPをプロットしたものですで、右上がりの相関関係があることが分ります。
つまり一人当たりGDPが増えると「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」が増えるという関係です。
日本やイタリアはその線の下にありますので、GDPが高い割には「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」が低い国ということができます。
その理由を幾つか推測してみました。
1つは「日本はスマホでない携帯電話が普及しているのでスマートフォンに対するニーズがそれほど高くない」という仮説です。
次に考えられることは、日本は高齢化が進んでいて、スマートフォンを利用しない高齢層の割合が高いということです。
Pewの調査によると、日本の青年層(18歳―34歳)の「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」割合は97%で世界トップレベルです(もっとも韓国・スペイン・イタリアなどは100%。米国は99%)。一方それ以上の年齢層の「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」割合は64%で、こちらは世界的にみると中位以下です。この年齢層によるギャップ(97-64)は33で、他の先進国に較べるとかなり高いといえます。
例えば韓国のギャップは8、米国は14、英国は13、ドイツは19です。
また低所得層と高所得層で「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」割合のギャップが大きいのも日本の特徴の一つです。
高所得層の「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」割合は86%で、低所得層の割合は51%でそのギャップは35です。これは韓国10、米国13、英国16などに較べるかなり大きなギャップです。
これらのデータを見比べると、日本では低所得高齢層の「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」割合が他の国に較べて低いということが
言えそうです。
国はマイナンバー制度の実施に伴い、マイナンバーカードの普及率を3年間で2/3程度にしたいと考えています。しかしマイナンバーカードのメリットをフルに享受するには、インターネットへのアクセスが必要です。マイナンバーカードを単なるIDカードとして使うのではもったいないと思います。
「インターネットアクセスまたはスマートフォン所有」について世代間や所得階層間のギャップが大きい日本では、まずこの問題を考えることが必要かもしれませんね。