金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

日米の株価上昇格差は、煎じ詰めれば企業規模の格差

2020年07月14日 | 投資

少し前にIT大手のGAFAにマイクロソフトを加えた5社の株式時価総額が東証一部の株式時価総額を上回ったというニュースが流れていた。

このようにあるものの値段について自国のそれと他国のそれを比較して、ああだのこうだのという議論は時々あるが、意味がない場合が多い。

今から30年ほど前、バブルで日本の土地の値段が高騰していた時、皇居の土地の値段がカリフォルニア州全体の土地の値段に匹敵するなどという話がでたことがあった。だがこれは無意味な議論だろう。皇居の土地を売る訳はないし、売りにも出ていないカリフォルニアの土地を買うこともできないから。そしてまもなく日本のバブルは崩壊し、そんな比較自体むなしいものになったが。

これに較べて日米の時価総額の比較は意味がある。投資対象を選ぶ上で一番大切なことは成長余地のある大きな漁場を見つけることにあるからだ。大物に出会う機会がほとんどない小さな池に竿を入れるより、大物に出会う可能性が高い大きな海に向かって竿を振りたいものだ。

下のグラフはTOPIX・S&P500・ナスダックのETFの株価推移をグラフにしたもので、円ベースでみた3つの株価指数の比較と考えて良い。

このグラフからハイテク銘柄が多いナスダックは終始一貫して日経平均よりパフォーマンスが高いこと、特にコロナウイルス以降の反発力で大きな差が出ていることが分かる。

コロナウイルス以降ナスダックの株価上昇が際立っている理由は明確だ。

「テレワークやステイホームの拡大で、情報通信やネット販売が拡大している」ことだ。だからマイクロソフト・アップル・アマゾンなどの株価が急上昇しているのだ。

だがそれだけではない。

コロナウイルス感染拡大防止のために、テレワーク体制を持続的に拡大できるか?できないか?という見極めを投資家が無意識のうちに行っていると私は感じている。

日本でも緊急事態宣言前後はテレワークが一種のブームになり、多くの企業がテレワークを実施した。しかし緊急事態宣言解除以降一部の大企業を除くとテレワークを縮小して従来通りのオフィス勤務に戻る会社が多い。

総括すると日本ではテレワークはそれ程定着していないと言えそうだ。

何故日本ではテレワークが定着しないのか?

大きな理由は二つだ。

一つは人事制度の問題で、日本では従業員一人一人の職務内容や一定期間の達成目標を明らかにしていない会社が多い。だから団子のように集まって、上司の指示を仰がないと業務が回らない傾向があり、テレワークを進め難いのだ。つまり人事制度が成果追求型でないということだ。

二つ目は米国に較べると日本では企業規模の小さな会社が圧倒的に多いということだ。

テレワークを推進するには、システムインフラが必要だ。バーチャルネットワークVPNという社内LANを構築するには、相応のシステム予算やシステム担当者が必要であり、ある程度の企業規模がないと安定したテレワークを推進することは難しい。

テレワークには企業規模が必要なのだが、日本の経営者は会社を大きくするよりも、身の丈のサイズで存続することを選択する傾向が強い。

しかしアメリカでは合併等により会社を大きくしないと生き残ることができないことが多い。そして身の丈を大きくしても、需要減退や競争激化で破綻に追い込まれることも稀ではない。

だから生き残る会社の規模は大きくなり、テレワークを通じて、コロナウイルスの時代を生き残る体力を養うことができるのだ。

生き残る会社は更に情報通信技術を身につけビジネス拡大を目論むからマイクロソフトのようなITの巨人が更に大きくなり、ナスダックの株価を押し上げるという構図になっている。

自分が勤める会社のテレワーク化を推進することは骨が折れる仕事だが、ナスダックに投資するのは簡単な作業である。大きな海に向かって竿を投げ、シニアライフを明るくするのはそれ程難しい話ではないが、正しい竿の振り方を語る人は少ない。むしろ小物しかいない釣り堀のおじさんが自分の利益のために、釣り人を釣り堀に誘導するケースが多いようだ。

 

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