今日(7月26日)は曇という天気予報を裏切って青空が広がっている。季節感がはっきりすることは景気の上でも大事なことだ。先週世界の株式市場は景気回復期待から続伸して、良いサイクルに入る可能性が出てくる気がした。しかしエコノミスト誌は世界経済の本格的回復は甘いものではないと警鐘を鳴らす。天気の良い週末の読み物には相応しくないが扇風機の風を浴びながら重い話を読んでみた。
エコノミスト誌は今週から世界の4大経済圏について成長バランス回復のための処方箋を書き始めた。第一回目の今週は米国に関するもの。ポイントは米国が消費主導型経済から製造業・輸出牽引型の経済に転換できるかどうかというものだ。
GEが金融部門であるGEファイナンスを縮小して製造業部門を強化することを決めたように、アメリカの経済は転換点に差し掛かっている。住宅価格が堅調に伸びていた時、人々はより大きな家を求め、家の中にはものが溢れていた。消費は借金でまかなわれ、可処分所得に対する家計債務の比率は80年代の67%から2007年の132%に拡大した。
経済学者達は米国が消費を抑え貯蓄を増やし、それ以外の国が消費を増やすなら世界の不均衡は次第に解消されると希望している。金融危機後アメリカの消費者は税引後所得の5%以上を貯蓄を回すようになり、経常赤字は急速に縮小している。一時GDPの6%にまで達していた経常赤字は今年は3%にまで縮むとIMFは予想している。
民間部門の貯蓄拡大は財政赤字で相殺されている。オバマ政府の財政刺激策と不況による税収減の結果、今年の財政赤字はGDPの13%に達する見込みだ(2007年度から12%の増加)。これは不況の緩衝材である。この緩衝材を利用しているのは例えばGEだ。GEはケンタッキー州で低エネルギーの温水器(現在は中国で作られている)の製造を始めた。このプロジェクトは政府の助成金で支援されている。
景気刺激策の効果でアメリカ経済が安定しだした幾つかの兆候はある。例えばカンファレンス・ボードによるリーディング・インディケーターは6月に3ヶ月連続で上昇した。だがアメリカと世界にとって今のより大きな問題は、中期的にみて何が次の成長エンジンになるか?ということだ。アメリカについて具体的なチェックポイントは「アメリカは政府の景気刺激策を成長財源として継続的に頼りにできるか?」「消費者は回復するか?」「輸出は活気を取り戻すか?」という点だ。
第一の点については「やがて限界がくる」。ピムコのファンドマネージャーはアメリカの政治家は投資家に財政規律に対する懸念を抱かせ、長期金利を更に上昇させるような追加財政主出を嫌がると予想している。財政赤字がGDP対比で現在の2倍の82%に達すると予想される2019年までに支出を抑制すると思われる。
第二の消費についてモルガン・スタンレーのバーナー氏は年率2%の伸びまでは戻ると予想するが、これは93年から07年の平均伸び率3.7%よりはるかに低い水準だ。貯蓄と借入金の返済が消費支出を圧迫するからだ。この結果オバマ政権の経済顧問サマーズが述べるように「アメリカの経済再生はもっと輸出牽引型で、消費依存度合いを削減するものでなくてはならない」ことになる。
だが巨大タンカーのようなアメリカ経済を嵐の中で方向転換することは容易でない。アメリカが輸出産業に資源をどれ位の速度で投入できるかは明らかでないし、発展途上国の需要はかってのアメリカの個人消費を代替する規模ではない。従って消費型から輸出主導型の経済への転換は低成長を高い失業率の持続を伴うものと予想される。リセッションが始まってから、住宅やファイナンスなど与信関連業界で2百万人の失業者がでた。これは全失業者の3分の1に該当する。これらの人をより生産性の高い産業へシフトする必要があるが、産業間の労働力のモビリティが高いアメリカでもかなり難問のようだ。
アメリカが輸出競争力を高められるかどうかはドルの為替水準の影響も大きい。02年からドルは下落を続けていたが、昨年の金融危機以降投資家が外貨資産を売約してドルに換え、米国内に還流したため、ドル高が続いていた。最近再び下落傾向が出ているが、アメリカが輸出競争力を高めて、世界経済のリバランスに向かうことができるかどうかは中国が人民元の対ドル上昇を容認するかどうかにかかわるところが大きい。