しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「愛しすぎた男」 パトリシア・ハイスミス 

2009年04月18日 | 読書
「愛しすぎた男」 パトリシア・ハイスミス   扶桑社ミステリー文庫
 This Sweet Sickness     岡田葉子・訳

デイヴィッド・ケルシーはニューヨーク州フラウズバーグのチェズウィック紡績の技術主任で、化学者として高い評価を受け、下宿の大家マッカートニー夫人からは理想の下宿人として好ましく思われていた。
2年前デイヴィッドには結婚したい女性アナベルがいたが、アナベルは思いを伝える前に他の男と結婚してしまう。
そのショックから立ち直る為に、デイヴィッドはアナベルと結婚したのだと想像するようになる。
そして2人の生活を想像して、ニューヨーク郊外の田舎町ベックスブルックに一軒家を買う。
その家がデイヴィッド・ケルシーのものだと知られたくない為に、ウィリアム・ノイマスターと言う架空の身元を手に入れる。
そして週末には病気の母親を見舞うためと下宿を離れてその家に通っていた。
デイヴィッドは、アナベルが過ちに気が付き、自分と結婚すると信じ手紙を書き送っていた。
アナベルからはあまり好い返事が貰えなかったが、それは夫のジェラルドが邪魔をしているからだと思い込む。



気持ちは他人には見えないから、自分勝手に思い込むととんでもないことになる、という物語。
思い込みが強いとそれが真実だと思ってしまえるほどのもの。
解説にあったストーカーとはちょっと違う気がする。
ストーカーは必ずしも相手を思うのだけではなく、嫌がらせの要素も入っている気がするのだが。
デイヴィッドは失恋と言う自分の心の痛手から立ち直る為に、そんな事実はなかったと想像、やがてそれが妄想になる。
そしてアナベルも自分を愛しているという強い妄想が信念になってしまう。
それは、自分は優秀で他人には劣らないという優越感があったからかも知れない。
行動は全て、自分の中では理に適っているから怖い。
こうなってしまったら、もう誰のどんな言葉や行動でも軌道修正する事は出来ないのだろう。
デイヴィッドの他にもう1人、タイプは少し違うがそんな思い込みの強い人物が登場する。
同じ下宿人のエフィ・ブレナン。
エフィはデイヴィッドの恋心を抱くが、相手の気持ちは全く見えない女性。
相手のことを考えていると言う思い込みで反対に相手を追い詰めるから皮肉。
人との付き合いは怖い。
今まで読んだパトリシア・ハイスミス中でも面白い物語。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« イチロー選手、3086安打達成 | トップ | 2009 F1第3戦 中国GP »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事