今までで需要曲線が導けたのだから、これに供給曲線が関わって価格が決まると考える人がいるかもしれません。ですが、まだそこまでは至ってはいないのです。
導かれていたのは、あくまでもAさんちという1つの世帯の需要曲線であって、需要・供給の関係から価格が決まるというときの「需要」は市場全体の需要を指すのですから。いわば、市場の需要曲線が必要になります。
市場の需要曲線とは、すべての世帯の需要曲線を統合したものであります。図1-7でこの過程を説明しています。
いま、論理の単純化の為に、社会には2つの世帯だけが存在するとしましょう。そして、それぞれの世帯の需要曲線はD1とD2であらわされているとします。これを、水平に足し合わせたのが市場の需要曲線に該当します。そなわち、肉1Kgの価格が5000円のときには、それぞれの世帯の肉の需要量は12Kgと13Kgになり、その和である25Kgが、市場の需要量になります。また価格が8000円のときは、それぞれの世帯の需要量は7Kgと10Kgになり、その和である17Kgが市場の需要量になります。
そして、AとBを結ぶことによって得られたD1+2が市場の需要曲線だといえるのです。
個々の世帯の需要曲線は、所得増加や好みの変化によって位置や形を変えますから、その統合されたものとしての市場の需要曲線もまた位置や形を変えるのは今となっては皆さん理解できますね。たとえば、景気が良くなって、人々の所得が高まれば、先に説明しているとおり、個々の世帯の需要曲線は右にシフトするのですから、これにともなって市場の需要曲線も右にシフトすることになります。