医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

インフルエンザワクチンの副作用による死亡率

2008年12月16日 | インフルエンザ
インフルエンザ予防接種は小中学生らを対象に行われていましたが、副作用が問題化して1994年の予防接種法改正で任意接種となりました。接種者数は一時激減しましたが、高齢者施設で集団感染が相次ぎ、重症化を防ぐ効果が見直され2001年の法改正で65歳以上は一部公費助成する「勧奨接種」となりました。厚労省は正確に接種者数を集計しているわけではないですが、2003年度は65歳以上だけで1,000万人前後が接種しました。副作用はほかのワクチンより少ないとされますが、発熱やじんましん、ショック症状などです。

厚労省の統計によると、2003年の1年間にインフルエンザで死亡した人は概数で1,171人。特にお年寄りが命を落としやすく、厚労省は高齢者が接種を受けるメリットは副作用の危険を上回るとして「勧奨」しています。2003年度に厚生労働省に報告された中で、ワクチンの副作用と疑われる死亡例報告は、集計を始めた2000年度が3人、01年度は4人、02年度5人、03年度は9人と接種者増に合わせて増加しています。03年度に死亡した9人は50-90歳代で、接種との因果関係は未確定ですが、内訳は男性が8人、女性1人です。接種後に呼吸困難になり肝障害を起こした男性(当時84歳)や、高熱で急性心不全になった男性(当時66歳)など主治医が「接種と関連あり」としたケースもありますが、接種後に自宅で急死していて「因果関係不明」とされた事例もありました。

大半がお年寄りですが、02年度には1歳女児の死亡例も報告され、厚労相は全年代を通じた副作用の監視体制を指示しました。厚労省は予防接種法に基づいて、接種を勧奨している65歳以上の高齢者については副作用報告書を年1回公表しています。しかし、ほかの年代は本人の希望による任意接種で、薬事法に基づく副作用報告は同省に届くのですが年報は作っていません。03年度の冬はSARSとの同時感染に備える人らが接種に殺到し、全国で3000万人分に相当する約1460万本のワクチンが使用されました。ワクチン接種人口は厚労省の高齢者への推奨もあって近年急増しています。

インフルエンザワクチンの副作用による具体的な死亡人数は医師でも把握していません。「インフルエンザワクチンの副作用による死亡は交通事故で死ぬ確率より少ないですよ」程度の情報は伝えられるかもしれません。インフルエンザワクチンによる死亡率は3/1,000万ですし、交通事故の死亡率は1/2万6千です。

さて、2003年の1年間にインフルエンザで死亡した人は1,171人で、そのうちのワクチン摂取率など詳しい事はわかりませんが、仮に半分がワクチンを接種していて、していなかった人の1割が死なずに済んだとすればそれは58人、副作用と「疑われる」死亡例が9人ですから、全体とすればインフルエンザワクチンは勧奨されるべきなのでしょう。医学って難しいですね。

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タミフル:異常行動との因果関係

2008年11月05日 | インフルエンザ
今日は外来で、今年で最初のインフルエンザの患者さんを診ました。そこで以前問題になっていたタミフルについての記事をもう一度振り返ってみることにしました。


タミフル内服が異常行動の原因となるかが問題となっていますが、以下の中間報告があります。前回は論文の審査について書きましたが、これらの結果が論文として提出され、もし私が論文の審査員だったらどうコメントするかをまとめてみました。

最初の毎日新聞の記事は、かなり「バイアス(偏り)」があり、記者の主観が入った記事だということもおわかりいただけるかと思います。


(毎日新聞より引用)<タミフル>規制後、異常行動の割合減少 厚労省データ
服用による異常行動が指摘されているインフルエンザ治療薬「タミフル」に関し、10代の使用が原則禁止された今年3月以降、患者の飛び降りや走り出しといった異常行動の発生率が3分の1程度に低下したことが分かった。厚生労働省の研究班が今月、同省に示したデータなどで判明。

タミフル服用と異常行動の因果関係を示す重要なデータになる可能性もあり、研究班は詳細な分析を始めた。研究班は昨年から、全医療機関を対象に「突然走り出す」「飛び降り」「徘徊(はいかい)」「激しいうわごとや寝言」など重度の異常行動を起こした患者数や年齢などを調べ、今月16日、厚労省に報告した。

それによると、昨年10月1日から「原則禁止」になった今年3月20日までの約半年間に、重度の異常行動をとった患者は30歳未満で93人いた。このうち「突然走り出す」か「飛び降り」に該当したのは55人だった。国立感染症研究所(東京都)のデータによると、この期間の30歳未満のインフルエンザ患者は推計約600万人。重度の異常行動を起こす割合は、患者10万人あたり1.55人、「突然走り出す」「飛び降り」の発生率は同0.92人だった。

一方、10代のタミフル服用が原則禁止となった3月21日から9月30日までの約半年間で、重度の異常行動を起こした患者は35人。うち「突然走り出す」「飛び降り」は12人だった。この期間のインフルエンザ患者は推計約330万人で、重度の異常行動は10万人あたり1.06人。「突然走り出す」「飛び降り」は同0.36人の割合で発生していたが、禁止前に比べてほぼ3分の1に減った

研究班班長の岡部信彦・国立感染症研究所感染症センター長は「禁止後に飛び降りなどの率が減ったのは事実だ。タミフルと異常行動の因果関係は今後の調査も含めて判断したい」と話している。

岡山大大学院の津田敏秀教授(疫学)の話 飛び降りなどの絶対数は、インフルエンザ患者の減少を考えても、原則禁止後に大きく減っている。タミフルを処方された患者の割合が減ったためと考えられる。詳細な分析のため、異常行動のない患者への処方率について、禁止前後で変化を調べるべきだった。


私が感じるこの報道の問題点 この報道はつっこみ所満載です。
1,10歳代の異常行動に問題の焦点があるのに、どうして統計処理は20歳を境にするのではなく30歳を境にして比較されているのか。

2,10歳代を対象に調べると逆の結果になるので、あえて30歳以下で比較したのではないだろうかという疑いの余地が残ること。

3,比較対象が10月1日~3月20日と3月21日~9月30日という時期的な違いは影響がないのだろうか。10月1日~3月20日は秋~冬だし、3月21日~9月30日は全く逆の春~夏だ。インフルエンザの型は両期間で同じだったのだろうか。

4,調査対象をタミフル内服群と非内服群に分けるべきだ。単純に3月21日~9月30日に異常行動が減った→タミフルの処方も減っていた=タミフルのせいだ、というのは乱暴な推論だ。

5,非内服群も後半の3月21日~9月30日に異常行動が減っていたりしていないか。後半には家族への注意喚起が行き届き、患者に注意を払っているという安心から異常行動とする基準が高まり報告の数が減っただけではないだろうかという問題の答えが示されていない。



(NHKニュースより)タミフル未使用 異常行動2倍
大阪市立大学大学院の廣田良夫教授の研究班は、昨シーズンの冬に、全国およそ700の医療機関でインフルエンザと診断された18歳未満の患者およそ1万人について、幻覚が出たり大声で叫んだりする異常な行動がどれだけ起きたかを調べました。

その結果、異常な行動を起こしたのは、タミフルを服用した患者ではおよそ7200人のうち10%に当たる700人、服用しなかった患者ではおよそ2500人のうち22%に当たるおよそ550人で、タミフルを服用しなかったほうが服用した患者より異常な行動を起こす割合が2倍以上高いことや異常な行動を起こした患者のおよそ40%はタミフルを服用していなかったことが報告されました。

また、建物から飛び降りたり突然走り出したりする危険な行動に絞って分析しても、タミフルを服用したほうが異常な行動を起こす割合が高いという結果は出ませんでした

「タミフル」をめぐっては、服用後に建物から飛び降りるなどの異常な行動が相次いで報告されたことから、厚生労働省はことし3月、原則として10代の患者への使用を禁止しました。また、製薬会社の臨床試験では健康な大人の睡眠や脳波に影響は見られず、ラットを使った動物実験でも、通常の量では脳や中枢神経への影響は確認されなかったとしています

これらの報告を検討した結果、調査会は「これまでの調査で異常な行動との因果関係を示す結果は得られていないものの、引き続き調査を進める必要がある」としたうえで、原則として10代の患者への使用を禁止する今の措置は続けるのが妥当だとする見解をまとめました。

さらに、薬を服用していない場合や、「リレンザ」や「アマンタジン」など、タミフル以外の薬でも異常な行動が起きていることから、未成年のインフルエンザの患者は少なくとも2日間、1人にしないで観察を続けるよう注意を呼びかけることを決めました。


私が感じるこの報道の問題点 
1,嘘や結果に対する過大解釈はない。ただし、以下の記事にあるように、高崎健康福祉大と東京理科大のチームや米ワシントン大の和泉幸俊教授らのマウスの実験で脳に影響があるという結果に対するコメントがない。



(毎日新聞より引用)タミフル:異常行動との因果関係、決着つかないまま
「タミフルと異常行動の因果関係を示唆する証拠は見つかっていない」。厚生労働省の調査会は25日、疫学調査や輸入販売元の中外製薬が報告した動物実験の結果などから、こんな報告をまとめた。患者は、どう受け止めればよいのか。

インフルエンザ患者1万人規模(18歳未満)の調査結果は意外な内容だった。「タミフルを飲んでいる患者の方が異常行動の発生が低い」ことを示唆するデータが出たからだ。調査は、昨シーズン(昨冬から今春)に全国692医療機関から報告された症例のうち1万316件を用いてタミフル服用と異常行動の関係を解析した。この結果、タミフルを飲んだ7181人のうち異常行動・言動を起こした人は700人で、発生率は9・7%、飲んでいない2477人では546人で約22%だった。

しかし、この結果について、解析した大阪市立大の広田良夫教授は「開業医を介して患者家族に回答をもらうという非常に複雑な疫学研究だ。第1次の予備解析の段階で、今後の解析で結果はどう変わるかわからない」と強調する。患者の健康状態や他の薬を併用しているかなどの背景を考慮した解析ではないためだ。

出席した参考人も「集計の仕方で結果が大きく変わる可能性がある」と指摘。最終的な結論は、今後の解析に委ねられた形だ。中外製薬が報告した動物実験では明確な結論は出なかったが、タミフルが中枢神経に何らかの影響を与える可能性を示唆する研究結果も出始めている。

高崎健康福祉大と東京理科大のチームはマウスの実験で、脳に入ろうとする異物を排出する「P糖たんぱく質」が、タミフルの脳への移行も制御していることを解明。P糖たんぱく質のないマウスは正常なマウスに比べ、タミフル投与1時間後の脳内のタミフルの濃度が大幅に高くなった。荻原琢男・高崎健康福祉大教授は「幼い動物はP糖たんぱく質の働きが十分でなく、他の薬が働きを阻害することもある。ヒトでも年齢や体調などによっては脳への移行量が増大する可能性も否定できない」と話す。

米ワシントン大の和泉幸俊教授(精神医学)らは、ラットの脳組織にタミフルや代謝物を投与、脳内の神経興奮作用を観察した。神経細胞の情報伝達が促進され、興奮状態が生じることが判明。エタノール投与で刺激は強まり、タミフルとの相互作用で強まったと考えられた。和泉教授によると、タミフルとの相互作用が考えられる物質にはカフェイン、風邪薬などに含まれるエフェドリンなどもあり「患者が併用する可能性の高い薬との相互作用についても調べることが必要」と指摘する。

既にインフルエンザの流行が始まっているが、抗インフルエンザ薬の使用を従来より慎重に行ったり、「患者とよく相談する」という医療機関も出てきた。タミフルを服用すると、高熱などの症状が1日程度早く治まるとされるが、抗インフルエンザ薬を飲まなければ治らない病気ではないためだ。中外製薬によると、発売開始の01年2月~07年9月までの6年半に、国内で延べ3600万人が使用したと推定される。全世界の服用者の7割にあたり、日本でだけ多く患者に使われていることをうかがわせる。

亀田総合病院の岩田健太郎・総合診療感染症科部長は「一般的には安静にしていれば5~7日で治る。発症したら即、抗インフルエンザ薬を使うというのはやりすぎだ。効果と副作用の可能性のバランスを考慮し、重症化の危険性の高い高齢者など少数の患者に限定的に処方すべきだ」と話す。新潟大の鈴木宏教授(公衆衛生学)は「薬が多く使われるほど、薬が効かない耐性ウイルスができる可能性が高まる。服用の仕方を冷静に考える時期に来ている」と指摘する


私が感じるこの報道の問題点
1,嘘や結果に対する過大解釈はない。ただし、「開業医を介して患者家族に回答をもらうという非常に複雑(厳密でないと言いたいのだろう)な疫学研究」であるのなら、その厳密性の無さは投与群と非投与群で差が出ないように影響するはずだ。この点をどう考えるか。

2,「集計の仕方で結果が大きく変わる可能性がある」とあるが、両群をカイ2乗検定するとp値は<0.0001、すなわちこの結果は1万回調査を行って9,999回同じ結果が出るという意味である。もし今後結果が逆になれば、なんらかの人為的な操作が介入したと考えるのが妥当だろう。この点をどう考えるか。 3、記事に記載されているように、カフェインや風邪薬などに含まれるエフェドリンなど併用成分の影響を調べるため多変量解析を施す必要がある。

4,亀田総合病院の岩田健太郎・総合診療感染症科部長のコメント
「一般的には安静にしていれば5~7日で治る。発症したら即、抗インフルエンザ薬を使うというのはやりすぎだ。効果と副作用の可能性のバランスを考慮し、重症化の危険性の高い高齢者など少数の患者に限定的に処方すべきだ」
I agree with you. その通りだと思います。



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高齢者に対するインフルエンザワクチンの有効性

2007年11月24日 | インフルエンザ
これからしばらくインフルエンザ特集にします。65歳以上の普通に生活している(老人ホームや介護センターで暮らしていないという意味です)高齢者に対してインフルエンザワクチンがどれだけ有効かというLancet. 2005;366:1165.からの最新の報告です。(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

Efficacy and effectiveness of influenza vaccines in elderly people: a systematic review.

この研究はメタアナリシスといって過去の多くの研究をまとめたものです。全部で64の研究が検討されてましたが、方法が適切でないものなどを除外して、インフルエンザワクチンを接種した群16,357人と、接種しなかった群15,822人が比較されました。

結果は、接種群でインフルエンザや肺炎による死亡が121人(0.7%)に対して非接種群で180人(1.1%)と、接種群の方が有意に死亡率は少なかったようです。非接種群でも98.9%の方は死なないのですから(あたりまえです。今の高度な医療レベルのもと、そんなに簡単に亡くなってはいけないです)と、スタチンと同じように差が小さいと考えるのは早急です。ワクチンは保険が利かないので保険償還薬価というものはないのですが、窓口で自己負担を1,000円と仮定して、5,000円と高く見積もっても、16,357人に接種して59人の死亡を減らしているわけですから、なんと133万円で一人の命を救っている事になります。

死亡率の差が小さいことに関してはこの論文でも言及されていて「効果はmodest(地味・ほどほど)」だと表現されていますが、死亡以外にもインフルエンザや肺炎による入院を23%減らし、呼吸器感染症を22%減らし、心臓病を24%減らし、全ての理由による死亡を47%減らしたと報告しています。

まとめると、65歳以上の高齢者に対するインフルエンザワクチンの効果は「ほどほど」で、過度の期待は禁物だが、各種疾患や死亡を有意に減らしているということです。

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小児に対するインフルエンザワクチンの有効性

2007年11月20日 | インフルエンザ
インフルエンザ 早くも流行の兆し
全国的にインフルエンザの患者数が増加していることが国立感染症研究所のまとめで分かった。10月下旬に全国の定点医療機関から報告された患者数は、同時期としては過去10年で最多。早くも12月並みの水準になっており、同研究所などは「今年は流行のスタートが早い」と注意を呼びかけている。
 
同研究所の感染症発生動向調査によると、10月22~28日の1週間で報告のあったインフルエンザ患者数は、過去10年で最多となる1医療機関当たり0・2人。同29日~今月4日の1週間も0・26人と上昇している。
 
大阪府内では10月18日に大阪市西淀川区の民間保育所の園児から、府内における今シーズン初のインフルエンザを検出。府感染症情報センターの調査によると、今月10日までに府内のインフルエンザによる学級・学年閉鎖は、大阪市北区や泉南市などの4校・園で実施された。
 
岡山県では今月5~11日の1医療機関当たりの患者数は0・65人。昨年同時期の報告はゼロだった。同県では10月16日に、岡山市立東(ひがし)畦(うね)小学校で3年生1クラスが学級閉鎖となったのを皮切りに、同市や倉敷市を中心に、これまで延べ6校・園が学級・学年閉鎖に追い込まれている。
 
同県健康対策課は「例年に比べ、流行のはじまりが早い。急に寒くなれば、さらに患者が増える恐れもある。規則正しい日常生活を送り、ウイルスへの抵抗をつけるとともに、インフルエンザワクチンも活用してほしい」と語った。
 
一方、沖縄県は様相が異なる。同県では5年ほど前から、冬に加えて夏場にもインフルエンザが流行している。同県健康増進課によると、今年7月9~15日の1医療機関当たりの患者数は13・5人で、同県が定める注意報レベルを超えた。9、10月も高い水準で流行が続いたという。今月に入ってからも、一医療機関あたりの患者数は全都道府県で最多となっている。
(産経新聞より引用)


そこで、

小児ではインフルエンザワクチンの有効性はどうかというVaccine.2005;23:285. からの報告です。(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

Influenza vaccine in healthy children: a meta-analysis

この論文は過去の16の調査がまとめられているメタアナリシスで、とりあげられている調査は全て無作為化試験です。「インフルエンザ様症状」というあいまいなエンドポイントではなく、インフルエンザの診断を血清で確定診断しています。1歳から16歳までの健康な子供でワクチンを接種した群では2701人中61人(2%)がインフルエンザにかかり、接種しなかった群では1705人中256人(15%)がインフルエンザにかかりました。

具体的な数字をお示しします。
発症数/全体(割合)の順で示し、最初の方が接種群であとが非接種群です。

、、、、、接種群、、、非接種群
1990年、10/54(19%)、37/77(48%)
1991年、15/58(26%)、37/77(48%)
1993年、10/79(13%)、13/89(15%)
1996年、2/147(1%)、 37/163(23%)
1996年、10/160(6%)、37/163(23%)
2000年、13/46(28%)、26/51(51%)
2001年、22/311(7%)、96/296(33%)
2003年、35/327(11%)、96/296(33%)

全ての結果がインフルエンザワクチン有効でした。私はワクチン推進派でも否定派でもありません。接種しても2%はインフルエンザにかかり、接種しなくても85%がかからないのですから、この数字をみて個人がそれぞれ考え、利用するかどうかを決めればいいと思います。



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タミフルの有効性

2007年11月16日 | インフルエンザ
インフルエンザの季節になってきました。インフルエンザの治療薬タミフルがいったいどれくらい有効なのかという事はあまり知られていないようです。

タミフルはリン酸オセルタミビルといってヒトA型、B型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害し、新しく形成されたインフルエンザウイルスが感染細胞から遊離することを阻害することによりウイルスの増殖を抑制します。

Journal of American Medical Association. 2000;283:1016.からの報告です。
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★☆☆)

18歳から65歳までで発熱性の呼吸器症状があり38℃以上の発熱が36時間以上続いていない629人が対象となりました。タミフル75mgを一日二回内服する群(211人)(日本での通常量です)と、150mgを一日二回内服する群(209人)と、プラセボ群(209人)(タミフルと同じ形の偽薬を処方する群。この研究の調査がアンケートに基づいているために、単に内服しないというだけでは、内服していないから調子が悪いなどという先入観が結果を左右してしまうため)に分けられました。

全体の59.6%がインフルエンザだと確定診断されました。もちろん確定診断されなかった人でもインフルエンザの可能性はあります。

症状のある期間はプラセボ群が97時間、75mg投与群が76時間、150mg投与群が74時間でタミフルが有意に病期を短くしました。

病状は詳しくスコアー化されていているのですが、プラセボ群が686、75mg投与群が629、150mg投与群が887で、タミフル投与群で有意に改善されていました。

副作用として、嘔気と嘔吐がタミフル投与群でそれぞれ18.0%、14.1%認められ、プラセボ群の7.4%、3.4%と比較して有意に多かったようです。

タミフル75mgを一日二回内服すれば、内服しない場合の病期4日を1日短くする事が出来ます。内服しても病期は3日間ですから過剰な期待は禁物です。

ちなみに、タミフル75mgの薬価は363.7円で治療に用いる場合は5日間内服するので合計3,637円で3割負担だと約1,090円。予防に用いる場合は7日間の内服が必要で、保険が効かないので合計5,090円です。




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乳幼児のインフルエンザには生ワクチンが有効

2007年06月24日 | インフルエンザ
日本ではインフルエンザワクチンは不活化ワクチンでそれを皮下に注射しています。その他のワクチンとして弱毒生ワクチンを鼻腔内に投与する方法があります。

これら2つの方法と有効性が比較されました。

Live attenuated versus inactiveted influenza vaccine in infants and young children.
New England J Med. 2007;356:685.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

喘息と喘鳴のエピソードがない6~59カ月の乳幼児を無作為に不活化ワクチン接種群と弱毒生ワクチン接種群に分け、2004年~2005年のインフルエンザ流行期に有効性と安全性が調査され、その結果8,352人のデータが得られました。

弱毒生ワクチンを鼻腔内に投与する方法は不活化ワクチンでそれを皮下に注射する方法に比較して、有意にインフルエンザの累積罹患数を減らしました(3.9% vs 8.6%)。

ワクチン株と流行株が一致した場合も弱毒生ワクチンは有意に累積罹患数を減らしました(0.1% vs 0.7%)。

ワクチン株と流行株が一致しないA型インフルエンザの累積罹患数を減らしました(0.9% vs 4.5%)。

B型インフルエンザの累積罹患数は減らしませんでした(2.9% vs 3.5%)。

弱毒生ワクチンを鼻腔内に投与する方法は不活化ワクチンでそれを皮下に注射する方法に比較して、ワクチン歴のない6カ月以上の乳幼児において初回ワクチン接種後42日以内の喘鳴の出現率が高くなりました(2.3% vs 1.5%)。

6~11カ月の乳幼児では、最終のワクチン接種から180日以内のあらゆる理由による入院率が高くなりました(6.1% vs 2.6%)。

これらの結果から、喘息と喘鳴のエピソードがない12~59カ月の幼児には、弱毒生ワクチンの方が有効性が高いと結論づけています。

さて、医学も危機管理の一つですが、危機を回避する場合次の3つのケースが考えられると思います。



「1」危機回避の方法によって一人でも不利益を被る者がいれば、その危機回避の方法を採用しない。

「2」危機回避の方法によって利益を得る者が不利益を被る者より多ければ、その危機回避の方法を採用する。

「3」1と2の中間



そして、危機管理を考えるのに次のことを理解することも大切です。

自然に発生したリスクによる被害はあきらめるしかありませんが、人為的に発生したリスクによる被害はあきらめる事ができません。なぜなら、人為的に発生したリスクによる被害には責めることができる相手がいるからです。

つまり、インフルエンザというウイルスが原因で亡くなってもあきらめるしかないのですが、それを予防しようとして善意で行われたワクチンの副作用で亡くなった場合は、責める相手を見つけて不利益の原因を他人に求めようとします。あきらめることができないのです。

しかし、インフルエンザワクチンの副作用による死亡率でお伝えした事や、最近のタミフルの問題において、上の「1」の立場をとれば、社会全体として享受することができる大きな利益を失うことにもなります。

日本では多くの場合「1」の立場がとられます。狂牛病問題でもそうでした。アメリカは「3」、ときにイラク戦争のようにアメリカ兵が多少死んでも石油が得られて武器の輸出によって経済が潤えばいいという「2」のストラテジーを取る場合もあります。

さて、日本はいつ「喘息と喘鳴のエピソードがない12~59カ月の幼児に、弱毒生ワクチン」を始めるのか興味がありますが、「1」の立場をとる以上、おそらく始めないでしょう。


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タミフルの有効性(その2)

2006年02月19日 | インフルエンザ
昨年11月21日にインフルエンザ治療薬タミフルの具体的な有効性についてお伝えしました。
タミフルの有効性
もう一編、有効性と安全性を検証した論文があります。これから別の情報も得られますのでご紹介したいと思います。

Efficacy and safety of oseltamivir in treatment of acute influenza: a randomised controlled trial. Neuraminidase Inhibitor Flu Treatment Investigator Group.
Lancet. 2000;355:1845.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★☆☆)

インフルエンザに罹患した726人を対象として、タミフル75mgを一日一回内服する群(243人)と、75mgを一日二回内服する群(日本での通常量です)(245人)と、プラセボ群(238人)(タミフルと同じ形の偽薬)を内服する群に分けられました。

インフルエンザの症状のある期間はプラセボ群で中央値が116時間であったのに対して、75mg/日内服群では87時間、150mg/日内服群では81時間に短縮されました。

つまり内服しないと5日間続くインフルエンザの症状が3日半に短縮されるということです。

症状に対するタミフルの効果は内服から24時間以内に現れました。症状の出現から24時間以内に内服を開始した場合は症状の期間は75mg/日内服群で43時間、150mg/日内服群で47時間短縮されました。

スコアー化された病状や、症状による睡眠の障害や日常生活の質はタミフルの内服で有意に改善しました。

つまり、インフルエンザの罹患後24時間以内にタミフルの内服を開始した場合はとても効果があるということです。

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タミフルの有効性:総括レビュー

2006年02月15日 | インフルエンザ
昨年11月21日にインフルエンザ治療薬タミフルの具体的な有効性についてお伝えしました。
タミフルの有効性
最近53編の論文の結果をまとめて、タミフルも含めたインフルエンザ治療薬の有効性を調べた論文が発表になりましたのでお伝えします。

Antivirals for influenza in healthy adults; systematic review.
Lancet. 2006;367:303.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

53編のうち34編は「シンメトレル」という今ではほとんど使われていない薬のことですから、「タミフル」と「リレンザ」に関する19編に関してご紹介します。無作為試験だけを抽出し、膨大な数を対象としていますから、とても信頼性が高い結果だと思います。

具体的な数字は示されていないのですが、タミフルが有効であったのは、症状の期間(使用していない群では1.30倍)、通常の生活に戻るまでの期間(使用していない群では1.34倍)、気管支炎の合併(使用していない群と比較して0.40倍)、肺炎の合併(使用していない群と比較して0.15倍)、すべての合併症(使用していない群と比較して0.39倍)でした。

一方、有効性が認められなかった項目はすべての原因による入院(使用していない群と比較して0.40倍)と抗生剤や他の感染症治療薬の使用(使用していない群と比較して1.01倍)でした。

吸入治療薬リレンザに関しても同様でしたが、タミフルと異なったのは、通常の生活に戻るまでの期間(使用していない群では1.28倍)に対して有効と認められなかったことでした。

副作用は嘔気(使用していない群と比較して2.29倍)のみが統計学的に使用群で多かったとされ、嘔吐、下痢、腹痛、消化器症状は使用群で多かったとはいえませんでした。

症状に関しては、タミフルとリレンザは同様に、インフルエンザによる咳、頭痛、下痢、鼻水、咽頭痛を改善させてはいませんでした。

まとめますと、インフルエンザ治療薬タミフルとリレンザはインフルエンザの症状自体を改善しないものの、病期を短くして(具体的には以前お伝えしたように4日を3日に短縮する)肺炎や気管支炎といった合併症の頻度を下げます。

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小児のインフルエンザワクチン接種について

2005年06月18日 | インフルエンザ
少し気が早いのですが、今年の冬にはインフルエンザはどれくらい流行するのでしょうか。

厚生労働省の予防接種に関する検討会は小児のインフルエンザワクチン接種について「有効性には限界がある」として、これまで通り任意接種とする方針を決めました。小児接種については日本小児科学会が「1歳以上6歳未満では有効率20-30%であることを説明し、接種の推奨を」とする見解をまとめており、検討会も有効性や安全性を説明の上、希望者に接種するよう指摘しました。高齢者も従来と同じく、65歳以上と心臓や呼吸器などに重い病気がある60-64歳の希望者に国や自治体が接種を勧奨する定期接種を続ける方針です。検討会は有効性、安全性の高いワクチンの開発も求めています。

小児に対するインフルエンザワクチンの有効率はたった20-30%!と驚かれた方も多いと思います。こういう場合常に問題になるのは次の2つです。1つは、有効率と副作用の問題。2つめは経済的効果の問題です。例えば有効率が20%で副作用による死亡率が10万人に1人の場合だったらこの接種を続けるべきなのでしょうか。10万人に1人とはいえ死亡した子供にとっては接種をしなければ死亡しなかったという事になりますし、逆に接種が有効でインフルエンザで死亡するのを接種で免れた子供もいることになります。とても悩ましいところです。2つめの経済的効果の点では、接種を公費で行った場合にかかる費用と接種によってインフルエンザが軽症ですむ事による医療費の抑制効果のバランスです。これも非常に対応に苦慮するところでしょう。
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