医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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ニューロタン、糖尿病における腎症に適応拡大

2006年05月20日 | 生活習慣病
ニューロタン(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)という高血圧症の薬がありますが、最近この薬の適応症に「高血圧及び蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症」が追加されました。つまりこの状態には効き目があるから保険を使って処方してもいいと認められたということです。

以前、糖尿病による腎不全には薬剤の選択よりも血圧を下げる事ができるかの方が重要であるとお伝えしました。そうすると今回の適応症の拡大はその結果と矛盾する事になります。しかし、これはアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害剤)とアンギオテンシンII受容体拮抗薬という薬を使った大規模臨床試験を総合して判断されたものでした。アンギオテンシンII受容体拮抗薬であるニューロタンだけの結果はどうなのかということで、今回はその論文を調べてみました。

Effect of losartan on renal and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes and nephropathy
Lancet. 2001;345;861.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

対象は2型糖尿病と診断され、腎機能の指標である血中クレアチニン値が1.3~3.0mg/dl(体重が60kg以上の場合は1.5~3.0mg/dl)で(平均1.9mg/dl)尿中クレアチニン値に対する尿中アルブミン値の比が300以上の患者さん1,513人で、従来の高血圧治療薬(ACE阻害剤とアンギオテンシンII受容体拮抗薬を除く)にニューロタン50mg/日を追加する群(751人)とプラセボを追加する群(762人)に無作為に分けられ4年間調査されました。

この研究では、従来の高血圧治療薬にニューロタンを追加するということが重要点で、有効という結果がでれば従来の高血圧治療薬が持っている有効性に追加して新たな有効性が認められることになります。

調査項目は全ての原因による死亡と血中クレアチニン値が開始時と比較して2倍になることと末期腎不全で、心筋梗塞、脳卒中、心不全、不安定狭心症による入院、冠動脈または末梢の動脈の血行再建術、心血管系が原因の死亡も同時に調べられました。

結果ですが、死亡に関しては投与群で158人(21.0%)、プラセボ群で155人(20.3%)と有効性は認められませんでしたが(p=0.88)、血中クレアチニン値が開始時と比較して2倍になることに関しては投与群で162人(21.6%)、プラセボ群で198人(26.0%)(p=0.002)、末期腎不全に関しては投与群で147人(19.6%)、プラセボ群で194人(25.5%)(p=0.006)と有効性が認められました。

心筋梗塞、脳卒中、心不全、不安定狭心症による入院、冠動脈または末梢の動脈の血行再建術、心血管系が原因の死亡に関しては、不安定狭心症による入院(11.9% vs 16.7%)以外では違いは認められませんでした。

有効性が認められた項目はそれぞれ約5%のリスク軽減ができており、これは20人に1人の患者さんがこの薬の恩恵を得られるという事に匹敵します。4年間で5%ということはニューロタンが50mgで186円ですから、1人の血中クレアチニン値が開始時と比較して2倍になることと、末期腎不全、不安定狭心症による入院を予防することに関しては543万円かかるということです。しかしコレステロールを下げる薬が1人の有害事象を予防するのに1,000万円以上かかっているのと比較すれば医療費が少なくすみます。

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