医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

ラジレスは心不全で入院後の予後を改善せず、逆に副作用を増やす

2013年05月02日 | 循環器
高血圧症の患者の血圧を下げるためには、器を広げるという原理の血管拡張薬、器の中の余分な水分を抜いてあげるという原理の利尿薬、血圧を上げる物質を抑制する作用を持つ薬、など様々な薬があります。

その中でも、ラジレスは血圧を上げる物質を直接阻害するという新しいタイプの薬です。詳しくは「ラジレス」で検索すると載っています。この薬を販売している製薬会社は最近、自社の薬の効果を調べた医学研究で、内緒でその社員が統計解析に参加していたということや、その他の疑惑で、学会から真相の調査依頼を受けて神経質になっており、このごろは自社製品の「ラジレスが効かなかった」という情報も積極的に医者に公開して名誉挽回を計っています。しかし、だからといって、以前のことが無罪放免になることはないです。この件に関しては、もちろん研究者側も学会から調査依頼を受けています。

今回は、最近発表された、「ラジレスが効かなかった」という論文をお伝えしたいと思います。

Effect of aliskiren on postdischarge mortality and heart failure readmissions among patients hospitalized for heart failure: the ASTRONAUT randomized trial.
JAMA 2013;309:1125.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★☆)

心臓の駆出率が40%以下という、正常の3分の2以下に低下した心不全で入院した患者を対象に調査されました。心不全の時に上昇するBNP(ビー・エヌ・ピー)という物質が400pg/mL以上かNT-pro BNPが1600pg/mL以上であるという基準も設けられました。退院後、ラジレスを1日150mg内服する群と、内服しない群に分けて、12ヶ月後までの死亡と再入院が調査されました。

無作為に2群に割り当てた結果、ラジレスを内服する群は808人、内服しない群は807人になりました。結果的に平均年齢は65歳、駆出率の平均は28%と、正常の3分の1以下に低下した対象となりました。心不全の治療のため96%に利尿薬、83%にβブロッカー、84%にACE阻害薬かARBという血圧に対する薬が投与されていました。

12ヶ月後、ラジレス内服群では35%に死亡か再入院が起こり、非内服群では37%で、ラジレスが効果があるとは言えませんでした。逆に、低血圧、高カリウム血症、腎不全がラジレス内服群で増えてしまいました。

現在、ラジレス150mgは1錠で150円です。

ラジレスを処方されている患者さんは、こんな論文があると申し出て、もう一度担当の医者と相談することをお勧めします。

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