以前CTスキャンの被ばく量についてお伝えしました。CTスキャンでは従来のX線よりもはるかに多量の放射線が照射されるため、被ばくによるガン発生のリスクが懸念されていました。アメリカでは1980年当時は年間300万件にすぎなかったCTスキャンは、現在6200万件以上実施されています。そこで先月末、被ばくによるガン発生のリスクに関して論文がまとめられました。
Computed tomography--an increasing source of radiation exposure.
N Engl J Med. 2007;357:2277.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
1年2回のCTスキャンで被曝する線量は、日本の原爆投下時の爆心地から2マイル(約3.2km)離れた場所にいた生存被爆者が被曝した線量とほぼ同等であるそうです。その生存被爆者のその後のガンの発生状況を、日本人とアメリカ人のガン発生率の違いで補正したBiological Effect of Ionizing Radiation 7th Report (BEIR VII)というレポートを基にガン発生のリスクが計算されました。
現在のCTスキャン1回の被ばく量は10~20ミリシーベルトで、上の図は10ミリグレイ被ばくした時の年齢と肺ガンと大腸ガンの発生率です。横軸は年齢、縦軸は100万人あたりの発生人数です。(青線:肺ガン、赤線:大腸ガン)
グレイというのは照射側の放射線量を表わす単位で、シーベルトというのは臓器側の吸収量の単位です。同じ量の被ばくを受けても臓器により吸収量が異なるため厳密にはシーベルトとグレイは若干違ってきますが、便宜的に10ミリシーベルト=10ミリグレイとすると、40歳で10ミリシーベルトのCTスキャンを1回受けると100万分の180、すなわち1万分の1.8の確率で肺ガンが発症するリスクを負うことになります。20歳であれば100万分の250、すなわち4000分の1の確率となり、CTスキャンを受ける年齢が若いほど影響は大きいことがわかります。
論文の中で著者らは、現在のペースでCTスキャンを続けるとアメリカ合衆国の中で発生するガンの1.5~2.0%がCTスキャンを原因とする事になると、「腹痛や慢性的な頭痛で救急治療室を受診したら、医師の診察を受ける前にほぼ間違いなくCTスキャンを受けることになる」現実に警鐘を鳴らしています。
また、医師や病院が変わるたびに、同じ疾患に対して重複してCTスキャンを受ける患者も多いこともCTスキャンを増加させる原因の1つであり、このことを解決する1つの方策は、患者にCTスキャンのDVDを提供し、転院時にそれを持参させることであると述べています。
この報告は決してCTスキャンを非難するものではなく、CTスキャンが必要な場合に、怖がってCTから逃げることがないようにすることも重要で 「症状がある患者にとって、CTスキャンが素晴らしい診断ツールであることは間違いない」であり「われわれが推進していることは、CTの使用を本当に必要な状況に制限することであると結論づけています。
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Computed tomography--an increasing source of radiation exposure.
N Engl J Med. 2007;357:2277.
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1年2回のCTスキャンで被曝する線量は、日本の原爆投下時の爆心地から2マイル(約3.2km)離れた場所にいた生存被爆者が被曝した線量とほぼ同等であるそうです。その生存被爆者のその後のガンの発生状況を、日本人とアメリカ人のガン発生率の違いで補正したBiological Effect of Ionizing Radiation 7th Report (BEIR VII)というレポートを基にガン発生のリスクが計算されました。
現在のCTスキャン1回の被ばく量は10~20ミリシーベルトで、上の図は10ミリグレイ被ばくした時の年齢と肺ガンと大腸ガンの発生率です。横軸は年齢、縦軸は100万人あたりの発生人数です。(青線:肺ガン、赤線:大腸ガン)
グレイというのは照射側の放射線量を表わす単位で、シーベルトというのは臓器側の吸収量の単位です。同じ量の被ばくを受けても臓器により吸収量が異なるため厳密にはシーベルトとグレイは若干違ってきますが、便宜的に10ミリシーベルト=10ミリグレイとすると、40歳で10ミリシーベルトのCTスキャンを1回受けると100万分の180、すなわち1万分の1.8の確率で肺ガンが発症するリスクを負うことになります。20歳であれば100万分の250、すなわち4000分の1の確率となり、CTスキャンを受ける年齢が若いほど影響は大きいことがわかります。
論文の中で著者らは、現在のペースでCTスキャンを続けるとアメリカ合衆国の中で発生するガンの1.5~2.0%がCTスキャンを原因とする事になると、「腹痛や慢性的な頭痛で救急治療室を受診したら、医師の診察を受ける前にほぼ間違いなくCTスキャンを受けることになる」現実に警鐘を鳴らしています。
また、医師や病院が変わるたびに、同じ疾患に対して重複してCTスキャンを受ける患者も多いこともCTスキャンを増加させる原因の1つであり、このことを解決する1つの方策は、患者にCTスキャンのDVDを提供し、転院時にそれを持参させることであると述べています。
この報告は決してCTスキャンを非難するものではなく、CTスキャンが必要な場合に、怖がってCTから逃げることがないようにすることも重要で 「症状がある患者にとって、CTスキャンが素晴らしい診断ツールであることは間違いない」であり「われわれが推進していることは、CTの使用を本当に必要な状況に制限することであると結論づけています。
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この論文では、何を使ったが明記されており、グラフに示されているGyは臓器の平均吸収線量です。
> 便宜的に10ミリシーベルト=10ミリグレイとすると
論文にも書かれているように全身に均一に線量を受けた場合には、ある臓器の平均吸収線量(あるいはこの論文にも紹介されているCT線量指標)はおおまかには実効線量[Sv]と等しいと考えられます(ただし、実効線量は放射線防護のために使い、規定した体格に対して用いるという考え方もあります)。
しかしCTでは曝露する範囲が限定されているので、ある臓器の平均吸収線量=全体平均吸収線量とみなすと、その臓器の組織加重係数分、過大評価します。
その線質係数はX線、γ線では1、アルファ線では20などです。
つまりエックス線CTでは、グレイ=シーベルトとなります。昔はレム=ラドでした。
リンクを張られたWikipediaには正確にそのことが書かれています。
現在がんの闘病中ですが、参考になる記事の多いブログとして時々読ませていただいています。