医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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女性ホルモン・エストロゲン補充療法は骨粗鬆症に有効か

2005年09月13日 | 総合
もともと閉経後の骨粗鬆症はエストロゲンの減少が原因の一つですから、それを補充すれば骨粗鬆症も良くなるのではないかというのはごく当然の発想といえます。欧米では長い間第一選択の薬物療法でした。ちなみに我が国ではエストロゲン製剤はエストロゲン、エストラジオール、エストリオールの三種類あります。

しかしその後の大規模臨床試験で驚くべき事実が判明しました。Journal of American Medical Association. 2002;288:321.からの報告です。(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

対象は16,608人の閉経後の女性です。エストロゲン製剤を単独で長期使用すると子宮内膜の異常増殖を誘発する危険があるため、プロゲステロン製剤も併用されました。この試験は閉経後の米国女性における喫煙・運動などの生活習慣や治療が心脳血管疾患や癌、骨粗鬆症などにどのような影響を与えるかを前向きに(過去をふり返るのではなく、その時点から未来にわたり調査する事)調査されました。

平均試験期間5.2年の時点で、エストロゲン製剤+プロゲストロン製剤投与群(8,506人)で、非投与群(8,102人)と比較して骨折と直腸・結腸癌のリスクは有意に減少しましたが、浸潤乳ガン発症のリスクはあらかじめ想定していたリスクの範囲を逸脱して高かった(非投与群に対して1.26倍、290人)ので、この時点でエストロゲン製剤+プロゲストロン製剤を投与する事は中止されました。その他脳卒中(212人、1.41倍)、肺梗塞(101人、2.13倍)のリスクが高まりました。またエストロゲン製剤単独投与群では平均試験期間6.8年の時点で脳卒中のリスクにも同様な結果が得られたためエストロゲン製剤単独投与も中止されました。

これらの決定が広く報道された結果、エストロゲン補充療法に対する考え方が世界中で変わりました。骨折やある癌を減らしても別の癌を増やしてしまうようでは治療として成り立ちませんね。この件に関して我が国の対応は遅れており、ホーリンとかエストリールというエストリオール製剤にはいまだに老人性骨粗鬆症という適応がついています。長期投与を避ける(長期投与って何年の事?5.2年で乳ガンが増えるのですよ。それに骨粗鬆症に長期投与しない事がありえるの?)とか、閉経直後の更年期障害の副次的な使用(じゃあ別の薬を投与すべきでしょう)とか苦し紛れの注釈があります。

今は何位かな?
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