横軸は時間の経過、縦軸は罹患者数、縦の点線はワクチンが導入された時期、実線はサーモグラフィーなし、点線はサーモグラフィーあり
最近、新型インフルエンザワクチンを接種したけれど、新型インフルエンザに罹患してしまう医療従事者(30歳代)が相次いでいます。ワクチンを接種したから症状が軽いかというと、そうでもなさそうなのです。多くの医療従事者の感触では、新型インフルエンザワクチンの有効率は50%です。大規模な調査の結果が待たれます。
以前、サーモグラフィーの効果が疑問だという記事をご紹介しました。これまで、サーモグラフィーの効果の試算がないようなので、自分で試算してみました。
こういうコンピューターシミュレーションはLab Viewを使うとコンピューター・プログラミングの専門家でなくても可能となります。
その前に各種のパラメーターを仮定します。
まず、平成21年5月8日に日本人で初めての患者が報告され、5月下旬には神戸を中心に約100名の患者が報告されました。厚生労働省の報告によると12月18日までの患者の累計は1,546万人です。患者数の算出は週単位で行われますから、28週間で100→1,546万という初期値と結果を現実と同じになるようパラメーターを設定することを前提とします。
厚生労働省 新型インフルエンザに関する報道発表資料
飛行機や船舶による入国者を1週間で14万人と仮定します。その中の新型インフルエンザ患者数は、海外での罹患割合を14万人に乗じることとします。
ここで、新型インフルエンザは以前お伝えしたように、3分の2が20歳以下ですから、学校もあるのに平日に飛行機や船舶により入国する者にはその割合は非常に低いのではないかという事に気がつきます。
サーモグラフィーというのは発熱や発熱に伴う症状がありながら、それを認識せず入国する人、及び認識して入国する人をスクリーニングするシステムです。インフルエンザに罹患した患者が他人に感染を広げる経過を、潜伏期間の3日間を含め8日間として、発熱期は3日間とします。
ここでもわかる事は、発熱している者や発熱後解熱した者は自分が罹患していることを知っているわけですから、自ら他人との接触を避けるでしょうし、他人もその人との接触を避けるということです。感染拡大防止に重要なことは、潜伏期の人がそうとは知らずに他人と濃厚接触することを減らすことであり、発熱している者を見つけ出すことではないということです。その点、学級閉鎖などの措置は、感染拡大防止に非常に有効であると、このシミュレーションをしていて実感しました。極端な話、国民全員を外出禁止にすると、このパラメーターの数値はゼロになり、これで感染拡大は収束します。
さて、潜伏期の人がそうとは知らずに濃厚接触してしまう人の数を1週間で10名として、その中で発症する人をその半分とします。インフルエンザの全経過8日と1週間7日はほぼ同じと考え、その補正は行わないこととします。
インフルエンザに罹患してしまうと、インフルエンザの患者に接触してももう罹患しませんから、インフルエンザに罹患した数を前週の罹患者数として、罹患者数+(ワクチン接種者xワクチンの有効率(70%と仮定します))/日本の人口を、罹患者が接触した10名の半分に乗します。ワクチン接種者数は12月18日までに1,020万人と報告されていますが、10月下旬から12月下旬までの2か月にリニアに増えたと仮定します。
このようにして求めた、罹患者数を図に示しました。Lab Viewではループ機能が簡単に設定できますから、同じ演算を繰り返し行わせることが可能です。
シミュレーションの過程で気がつくことは、サーモグラフィーが発熱患者をスクリーニングする数を変化させても、罹患者数はほとんど変化せず、罹患者数の変化は、各種のパラメーターの中でも、潜伏期の人がそうとは知らずに接触してしまう人の数に大きく依存しているということです。
さて、皆さんはうさぎとカメの話をダシにして「うさぎがカメを追いかけるとき、うさぎが今カメのいる場所まで走ったら、その間にカメも少し進む。そして、さらにカメのいる場所までうさぎが走っても、またその間にカメはちょっとだけ進んでいるはず。以降これの繰り返しだから、いつまでたってもうさぎはカメには追いつけない」という話を聞いたことがあると思います。
実際は、うさぎはカメに追いつけるのですが、追いつけないように感じさせているのは、距離を無限に区切ることによって、時間が進む考え方を妨げていることが要因です。追いつくぎりぎりまでの時間までで関数を収束させているので、これではいつまでたってもうさぎはカメに追いつけないのは当然です。
サーモグラフィーの効果への期待も同様です。サーモグラフィーを使えば、使わない場合よりも罹患者数は少ないはずと考えがちなのですが、それはごく限られた時間のみに有効なのであり、他のパラメーターの方が大きなウエイトを占めていることを考慮しないで考えているのです。
感染拡大に関連のある重要なパラメーターは
(1)、潜伏期の人がそうとは知らずに接触してしまう人の数
(2)、ワクチン接種者数
(3)、既に感染した人の数
でした。
最近新規感染者が減りつつあるのは、すでに感染した人の数が増えてきたことも要因であることは、非常に皮肉なことですね。私はコンピューター言語の専門家ではないので、このシミュレーションは不備だらけだと思いますが、コンピューター言語の専門でもなくても2週間講習に参加すればLab Viewを扱えるようになりますから、私でもシミュレーションのまねごとができたのです。労力を惜しまずにちゃんとやって下さいね、厚労省の皆さん!
そして、やはりサーモグラフィー代4億5千万円の税金を国民に返して下さいね。
厚労省と新型インフルエンザ (講談社現代新書)
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最近、新型インフルエンザワクチンを接種したけれど、新型インフルエンザに罹患してしまう医療従事者(30歳代)が相次いでいます。ワクチンを接種したから症状が軽いかというと、そうでもなさそうなのです。多くの医療従事者の感触では、新型インフルエンザワクチンの有効率は50%です。大規模な調査の結果が待たれます。
以前、サーモグラフィーの効果が疑問だという記事をご紹介しました。これまで、サーモグラフィーの効果の試算がないようなので、自分で試算してみました。
こういうコンピューターシミュレーションはLab Viewを使うとコンピューター・プログラミングの専門家でなくても可能となります。
その前に各種のパラメーターを仮定します。
まず、平成21年5月8日に日本人で初めての患者が報告され、5月下旬には神戸を中心に約100名の患者が報告されました。厚生労働省の報告によると12月18日までの患者の累計は1,546万人です。患者数の算出は週単位で行われますから、28週間で100→1,546万という初期値と結果を現実と同じになるようパラメーターを設定することを前提とします。
厚生労働省 新型インフルエンザに関する報道発表資料
飛行機や船舶による入国者を1週間で14万人と仮定します。その中の新型インフルエンザ患者数は、海外での罹患割合を14万人に乗じることとします。
ここで、新型インフルエンザは以前お伝えしたように、3分の2が20歳以下ですから、学校もあるのに平日に飛行機や船舶により入国する者にはその割合は非常に低いのではないかという事に気がつきます。
サーモグラフィーというのは発熱や発熱に伴う症状がありながら、それを認識せず入国する人、及び認識して入国する人をスクリーニングするシステムです。インフルエンザに罹患した患者が他人に感染を広げる経過を、潜伏期間の3日間を含め8日間として、発熱期は3日間とします。
ここでもわかる事は、発熱している者や発熱後解熱した者は自分が罹患していることを知っているわけですから、自ら他人との接触を避けるでしょうし、他人もその人との接触を避けるということです。感染拡大防止に重要なことは、潜伏期の人がそうとは知らずに他人と濃厚接触することを減らすことであり、発熱している者を見つけ出すことではないということです。その点、学級閉鎖などの措置は、感染拡大防止に非常に有効であると、このシミュレーションをしていて実感しました。極端な話、国民全員を外出禁止にすると、このパラメーターの数値はゼロになり、これで感染拡大は収束します。
さて、潜伏期の人がそうとは知らずに濃厚接触してしまう人の数を1週間で10名として、その中で発症する人をその半分とします。インフルエンザの全経過8日と1週間7日はほぼ同じと考え、その補正は行わないこととします。
インフルエンザに罹患してしまうと、インフルエンザの患者に接触してももう罹患しませんから、インフルエンザに罹患した数を前週の罹患者数として、罹患者数+(ワクチン接種者xワクチンの有効率(70%と仮定します))/日本の人口を、罹患者が接触した10名の半分に乗します。ワクチン接種者数は12月18日までに1,020万人と報告されていますが、10月下旬から12月下旬までの2か月にリニアに増えたと仮定します。
このようにして求めた、罹患者数を図に示しました。Lab Viewではループ機能が簡単に設定できますから、同じ演算を繰り返し行わせることが可能です。
シミュレーションの過程で気がつくことは、サーモグラフィーが発熱患者をスクリーニングする数を変化させても、罹患者数はほとんど変化せず、罹患者数の変化は、各種のパラメーターの中でも、潜伏期の人がそうとは知らずに接触してしまう人の数に大きく依存しているということです。
さて、皆さんはうさぎとカメの話をダシにして「うさぎがカメを追いかけるとき、うさぎが今カメのいる場所まで走ったら、その間にカメも少し進む。そして、さらにカメのいる場所までうさぎが走っても、またその間にカメはちょっとだけ進んでいるはず。以降これの繰り返しだから、いつまでたってもうさぎはカメには追いつけない」という話を聞いたことがあると思います。
実際は、うさぎはカメに追いつけるのですが、追いつけないように感じさせているのは、距離を無限に区切ることによって、時間が進む考え方を妨げていることが要因です。追いつくぎりぎりまでの時間までで関数を収束させているので、これではいつまでたってもうさぎはカメに追いつけないのは当然です。
サーモグラフィーの効果への期待も同様です。サーモグラフィーを使えば、使わない場合よりも罹患者数は少ないはずと考えがちなのですが、それはごく限られた時間のみに有効なのであり、他のパラメーターの方が大きなウエイトを占めていることを考慮しないで考えているのです。
感染拡大に関連のある重要なパラメーターは
(1)、潜伏期の人がそうとは知らずに接触してしまう人の数
(2)、ワクチン接種者数
(3)、既に感染した人の数
でした。
最近新規感染者が減りつつあるのは、すでに感染した人の数が増えてきたことも要因であることは、非常に皮肉なことですね。私はコンピューター言語の専門家ではないので、このシミュレーションは不備だらけだと思いますが、コンピューター言語の専門でもなくても2週間講習に参加すればLab Viewを扱えるようになりますから、私でもシミュレーションのまねごとができたのです。労力を惜しまずにちゃんとやって下さいね、厚労省の皆さん!
そして、やはりサーモグラフィー代4億5千万円の税金を国民に返して下さいね。
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さて、流行の山の部分に検疫がほとんど影響を及ぼせないことは次のような考察からも分かります。
国内での未感染率をx1,有病率をx2とします。既に感染して治った率が1-x1-x2です。また海外での感染率をuとします。潜伏期間は無視して、感染者は1週間あたり5x1人に感染させるとします。
1時間あたり、国内で
5x1x2×1.3×10^8/168 = 3.9×10^6 x1x2
人が新たに感染します。
また出入国による患者の増減は1時間あたり833(u-x2)人となります。
x1~1として、検疫が効果を発揮するのは
3.9×10^6 x2 ~ 833(u-x2)
つまりx2/u~2×10^-4くらいまでの時期であると言えます。
次に流行開始を遅らせる効果を見積もります。tの単位は1時間とします。
流行初期はx1~exp((5/168)t)なので、
検疫で患者流入を半分にすると、
t=(168/5)log2=23時間だけ流行が遅れることになります。
1日の時間稼ぎに4.5億円。これを高いと見るか安いと見るかには多くの意見があるかと思います。
重篤と考えられている鳥インフルエンザの予行演習ができたという点ではよかったですね。