標高が1000メートルに達する高地、奥飛騨温泉郷のひとつに数えられる山間の秘湯、福地温泉。ここは平安時代には村上天皇が湯治に訪れていたという入湯伝説が残るものの、温泉街自体は昭和に入ってから形成された、比較的新しい、13軒の宿からなる温泉街です。
ここの観光協会が発行する「もらい湯手形」は、宿泊旅館以外のもう一カ所のお湯をいただくことができるもの。旅館孫九郎に宿泊した今回、せっかくなので、黒川の「新明館」、乳頭の「鶴の湯」と並ぶ、屈指の人気旅館として知られている「湯元長座」のお湯をもらうことにしました。
小ぶりな玄関を入ると長い回廊が続く。その奥に庄屋屋敷を移築した、実に重厚な建物が現れます。中に入ると高い天井、黒光りする柱や梁など、重厚感の中に洗練されたセンスも感じさせます。
内湯は木の質感を活かした造りで、長方形の大きな浴槽が横たわっている。温泉は自家源泉の数本を混合した単純泉。当然ながら掛け流しで溢れたお湯は浴槽の縁から流れ去っていくが、このお湯は回収されて館内の床暖房に活かされているようです。
澄明なお湯は匂いも希薄で無味無臭。単純泉のマイルドな浴感です。
露天は岩露天となっていて庭園風。温まった体に北アルプスからの颪が気持ちいい。ここでは泉質より環境を愛でるのが吉かな。正直、お湯に特徴がないので、温泉だけではこの旅館の良さは伝わってこないのが正直なところ。
恐らく料理やサービスなどの総合力がこの旅館の人気を支えているのでしょう。それでも「もらい湯」の儲けにならん客に対するスタッフの接客に、この旅館の質の高さを垣間見たような気がします。
・場所:濃飛バス・福地温泉口BS
・泉質:単純泉、塩化ナトリウム-炭酸水素塩泉 46℃~76.1℃
・訪問日:2011年1月28日
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