美食と美湯・九州縦断バスと電車の旅(2)の続きです。
妙見温泉・雅叙苑の実に素朴な朝食をじっくり味わっていたら、気づけばバスの時間が迫っている。大急ぎで出発の準備をして、昨日、ここに来るときに乗った温泉バスで再び嘉例川駅に戻ります。
この駅から昨日の続き、特急「はやとの風」で肥薩線を北上します。肥薩線は熊本県・八代から鹿児島県・隼人を結ぶ路線で、当初は鹿児島本線として明治42年に全通したのだが、海岸沿いを走る現在の鹿児島本線(肥薩おれんじ鉄道)の開通によって、ローカル線に格下げされた経緯を持つ路線です。旅客数の減少で廃止も取りざたされているが、こういった観光列車を走らせて復活を期しているところなんですね。
嘉例川を出た列車は次の霧島温泉駅でも小休止。ここでボランティアの地元の方々により、名産のお茶を振舞ってくれます。
ひとつ飛ばして次の大隅横川駅でも小休止、ここも嘉例川駅と同様の開業当初そのままの古い木造駅舎を見学、嘉例川駅よりかなり大きい駅舎で、国の有形登録文化財になっています。
廃止された山野線の分岐駅だった栗野駅にも停車して、終着、吉松駅に着きました。ほとんど各駅停車、特急の体を成していませんね。観光列車だからまあいいが…
吉松駅では列車の到着にあわせて駅弁を売り歩いています。弁当を載せた台を肩からぶら下げる独特のスタイル…今や貴重な光景ですね。
ここで「しんぺい」に乗り継ぎます。この列車は吉松と人吉を結ぶ1日2往復の観光列車で、下りが「いさぶろう」、上りが「しんぺい」と名づけられた普通列車。
「はやとの風」と同様の展望スペースを持つキハ47改造のディーゼルカーだが、こちらは昔の客車列車をイメージしたクラシックなインテリア。特急ではないので、観光列車にもかかわらず、一部は自由席になっています。地元乗客の利便を考えてのことでしょう。
吉松を出た列車はずんずん勾配を登っていき、次の真幸駅でスイッチバックします。今回の旅で2回目のスイッチバックです。
真幸駅を出て4つトンネルを抜けると、右側に視界が広がり列車がストップします。これが日本三大車窓と称される展望で、えびの盆地と霧島連山が見渡せるとのことだが、この日は曇り空で霧島連山は見えません。残念…
全長2096mの矢岳第1トンネルを抜けると矢岳駅です。ここにはD51形蒸気機関車が展示してあって、運転台に登ることもできてちょっと嬉しくなる。蒸気機関車を運転して満面の笑みを湛えていた某国の国土交通大臣の気分ですね。
ここからは下り勾配、路線はループ線になっています。これが有名な大畑ループです。写真の左側の遠くに写っているのが大畑駅。ここまでトンネルを挟んでぐるっと山を一周しながら下っていきます。この駅もスイッチバックになっていて、ループとスイッチバックの合わせ技で高低差を稼いでいるんですね。この駅には蒸気機関車時代の給水塔が残っていて、苦労して急勾配を制覇していた当時が偲ばれます。
このあとはゆったりとラストラン。終着の人吉駅に着きました。九州横断特急に乗り継ぐ多くの乗客を見送り、ここで途中下車。市内のお店で大好物の鰻をいただく事にしました。
人吉駅からは、今度はローカル列車、球磨川に沿ってキハ40形の単行で進みます。キハ40は国鉄型ディーゼルカーの最終形。この形式、大量生産されたにもかかわらず、重い車体に馬力の小さいエンジン…累積赤字で混迷の度を深めていった当時の国鉄を体現するように、設計思想も迷走してしまっています。現在、エンジンが載せ替えられて多少はパワーアップしているようだが、轟音のわりにはなかなか前に進まないような感じがします。
車窓にはずっと球磨川が横たわる。昨夜の雨で球磨川の流れも激しくなっているようです。各駅停車でのんびり1時間半、ようやく八代駅に着きました。
八代駅でいったん駅の外に出て切符を買いなおす。ここから肥薩おれんじ鉄道に乗り換えです。この鉄道、九州新幹線の部分開業以前はJR九州の鹿児島本線だったところ。ところが新幹線の開業による平行在来線廃止の方針に従って、八代から川内までが第三セクター化されたものです。肥薩線をローカル線に追いやった鹿児島本線も今やこの体たらく…悲哀を感じるなぁ…
車両はHSOR100形。交流電化された路線を走るのにもかかわらずディーゼルカーです。交流電車は高価なので、敢えてディーゼルカーにしているとのこと。ならば架線も撤去すればいいのに…とも思うが、貨物列車があるのでそうもいかないようです。ともあれ、最新のディーセルカーは肥薩線のキハ40と違ってパワーもあって軽快。技術の進歩を感じます。
この肥薩おれんじ鉄道に乗るのは一駅だけ。次の日奈久温泉駅で降りました。この駅から大型トラックの行き交う国道3号線の歩道のない路肩を、少し南へビクビクしながら歩いたところにある鄙びた街並み、ここが南熊本の古湯、日奈久温泉です。
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