たなぞうより
「天国に一番近い男」と言われている登山家の山野井泰史さん。
その意味は色々あるだろうが、やはりいつも命に関わる危険と隣り合わせと言う意味合いが大きいと思う。
事故や遭難で亡くなった後の身内の遺稿集はよくあるが、山と生きると決めた息子を応援しながら、無事をいつも待っているしかない家族の今の気持ちを知ってもらいたくて・・・と泰史さんのお父さんは本を書くきっかけをあとがきで言っておられる。
ケガをした・・・消息がわからなくなった・・・
突然入る一方的な連絡は待つ家族にとってどんな気持ちだろう。
詳しい状況はわからない、現地に行くこともできない、ただ待つだけ。
一度は大げんかをして反対をしたが、結局泰史さんを尊重して、応援すると決めたからにはもう何も言わず見守るだけだが、子供を心配しない親はいない。
泰史さんが結婚すると、心配は2倍になった。奥さんの妙子さんも泰史さんにまけないクライマーだ。
凍傷で短くなった不自由な指で、健常者以上のことをやってのける彼女に向ける気持ちの変化の様子も胸を打たれる。
泰史さん夫妻には、これからも多くの見守る人たちを感じながら、静かな挑戦を続けていただきたい。
いのち五分五分 / 山野井高有 著
★★★★☆